オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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アストレア・レコード(ダンメモ)見直してたんですが、ヴィトー君は夜切君と相性良く無い気がしてきた。こいつも人斬り好きだけど、全く悩んでないし。
と言うかこいつそもそも誰とも相性がいいとは言えないのでは?

ちなみに夜切くんは輝夜の前だと言葉遣いが割とぐだります。


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「はあっ!!」

 

「甘いですよ!」

 

 輝夜の一閃が私の首へと迫るが、それを見切り返す刀で首を狙う。輝夜もそれを読んでいたのだろう、大袈裟に身体を逸らし刀の軌道からずらす。身体能力が高いが故にできる動きだ。

 大きく距離が開く。仕切り直しか。

 

 力強く一歩を踏み出し、輝夜へと肉薄する。間合いを詰め、先のように距離を離されることがないよう斬撃を繰り出す。私も全力ではないとはいえ、輝夜はそれらをギリギリ認識することができるようで、危なげなくとはいかないもののどうにか凌いでいる。

 

 私としては鍔迫り合いになることと、距離を取られることは避けたい。

 身体能力で劣る私では距離を詰めることは難しいし、鍔迫り合いになる前に受け流す事しかできない。万が一にでも刀が歪んで仕舞えば、後の斬り合いに支障が出る。

 まあ、私の技量で歪むなんて事は滅多にないだろうと思うが、ものすごい力で叩かれたらわからない。

 

 偶に繰り出される輝夜の斬撃を紙一重で避け続ける。

 いくらか打ち合うと、輝夜に隙ができる。

 あからさまな隙に、誘われてる? と疑問に思うがしかし、死ななければいくらでも癒せる。どんな事をしてくれるのか愉しみに思いながら切り付ける。

 

 私の斬撃は輝夜の右肩から左腰にかけてを深く切り裂いた。私に生暖かい血が大量に吹きかかる。

 思ってもいない状況に一瞬困惑していると、袖を掴んで引き寄せられた。咄嗟に逃れようとするもそれも叶わず、力任せに押し倒される。輝夜は私に馬乗りになった状態で、私が輝夜につけた切り傷とは逆に、左肩から右肩にかけて深く切り裂いた。刀を挟みその上で水の微精霊を使った事で、致命傷は避けた。

 とはいえ私の体は一般人で、明らかに重症。輝夜の傷も浅くない。このままだと間違いなくどちらも死ぬ。

 ふらついている輝夜は刀を支えにしてどうにか立っている状況だ。私の顔のすぐ横に刺さっている刀をね。これ、私が無理やり避けなければ間違いなく死んでいた。

 

「ヨミッ!」

 

 私の声に反応し、私と輝夜の身体を淡い光が包み込むようにして広がる。瞬く間に出血が収まり、傷が塞がる。あくまで止まって塞がっただけ。完治はまだしていない。複数人にかけるのは時間がかかるのだ。

 輝夜は刀から手を離し私の体の上に倒れ込んできた。

 

「バカめ。油断するからだたわけが」

 

 ヨミの力で治療されながら私の耳元で輝夜が言う。

 

「訓練だからと思ってのってみましたが、次はもう絶対に乗りません。掴まれたら終わりって、私どれだけ儚い命なんですか?」

 

 タケミカヅチ様と戦っていた時は、「身体を切らせて掴んで殺す!」という様な事をしていなかった。私がやりたかったことは、剣術でタケミカヅチ様を超えることだったのである。

 確かに柔術に合気といった事は習ってはいたが……刀を片手に出来るほど習熟していない。

 

「ひとまず私は、お前に一泡吹かせられて満足だ」

 

「次はしっかり切り飛ばさないとなぁ」 

 

 首以外ならどうにかなる。首は試したことがないが、流石に無理だろうと思う。

 私たちを包んでいた光は、いつの間にか消えていた。ヨミがいなくなったという事は、完全に治ったとみていいだろう。

 水の微精霊に頼み、私と輝夜の頭と身体を水で流す。服の上からなので少し気持ち悪いが、血塗れで戻るよりはマシだろう。

 

「輝夜、終わったみたいですよ」

 

「ん? ああわかった。今日は終わりにしよう」

 

 立ち上がり刀を鞘に納め、ホームに戻る。

 

「あ、そうだ。輝夜頼みたいことが」

 

「なんだもう今日はやらないぞ」

 

 ちがう。どんな目で私をみてるんだ。

 

「自制がないみたいに言わないでください……今日アストレア様と行った炊き出しの帰り道に、面白い人を見つけたんですよ」

 

「誰彼構わず切っていたことはないが……面白い人か。どんな厄ネタだ?」

 

「厄ネタだなんてそんな……微精霊達が病人を見つけまして、せっかくですから人助けをしようかと」

 

「それなら何故アストレア様がいらっしゃったら時にしない」

 

「……存在感が強かったから。あとは私が今日まで調べた高レベルの冒険者の容貌と合わなかったので」

 

「病人で、オラリオで会った中でも極めて存在感が強く、お前が調べた有名冒険者には当てはまらない。それは間違いなく厄ネタだ」

 

「そこですぐに突撃しなかった私を褒めて欲しいですね。……そんなことはいいので、明日の朝一緒に行きませんか?」

 

 オラリオに来てから感じたことのない程強かった。おそらく多少抑えられているのであろうが、それでもかなり。

 オラリオ側の人間なら心強いだろうが、闇派閥(イヴィルス)の人間だとすると厄介極まりない。

 

「アストレア様には話したのか?」

 

「ええ、強い存在感のある病人がいたので明日アストレア様抜きで行くと」

 

「わかった私も行こう。アリーゼには私から伝えておく」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

「輝夜に夜切さん戻ってきたんですね。お風呂は空いてます。好きな方から入って…………なんて格好をしてるんですか?!」

 

 輝夜とリビングに戻ってきたら、リオンさんに怒られてしまった。

 

「どうかしましたか? 私の格好と言っても……別におかしな所はありませんが」

 

「貴方はっ! ふ、服をしっかり着てください!! ここには貴方以外女性しかいないんですよ!!」

 

 ああ、そういう。極東で深く関わった事のある女性? はちびっこか婆様、アマテラス様くらいだ。とりあえず終わった事を報告しようと、何も考えずに戻ってきてしまった。気をつけよう。

 

「輝夜! 貴方が一番の問題だ!!」

 

「私が何をしたって言うんだリオン」

 

「夜切さんと言う男性がいるんだ! なんで貴女はそんな淫らな……だらしのない格好をしてるのだ!!」

 

「なんだ? 潔癖なエルフ様は(わたくし)に欲情していらっしゃるので?」

 

「そんなわけないだろう!!」

 

 今の輝夜は、裂けた着物の上から羽織りをつけてなんとなく上半身を隠しているだけなので、確かに扇情的? かもしれないが。

 

「リオン、それくらいにしておけ。ハァ、輝夜お前も服をしっかり着ろ。オレでもどうかと思うぜその格好」

 

「輝夜言われてますよ、しっかりしてください」

 

「夜切さんが私をあられもない格好にしなさったのにそんなことおっしゃるんですか?」

 

「夜切さん? 輝夜その格好でウロウロするな!!」

 

「それを言ったら、輝夜こそ私の上に乗って随分と激しくしてくれたじゃないですか?」

 

「あられもない……上に乗る……激しい……?! あなたたちは何をしてきたんだ!!!」

 

「「訓練だ(です)」」

 

 リオンさん面白い人だなぁ。顔を真っ赤にして怒ってる。

 これが神の言う「むっつりすけべ」というやつか。ちょっとそれっぽい単語に過剰に反応してしまうらしい。もしかして、普段厳しくて潔癖なのはそれを隠すため……? 

 リオンさんのイメージが私の中で変わった瞬間である。

 

「では、私は着替えてきます」

 

「私は風呂に入ってくる。夜切着替えを用意しておけ」

 

「私がやる! 夜切さんはやらなくていいです!!」

 

 着替えって言っても、普段下着一枚で歩き回ってなかったっけ? 

 まあなんでもいいか。

 明日安い着物を買い占めておこう。このペースで毎日やっていたら、一日一枚の頻度で服がダメになってしまう。これから毎日斬り合いっていうのはやめておこうかなぁ。

 

 

 着替えてリビングに戻り、アリーゼさんが夕食を作っているのを眺めていると、輝夜が風呂から出たらしい。

 

「だから輝夜! 服を着てください! 夜切さんだっているんですよ!」

 

「いらん。そもそも夜切に私を組み伏せて襲う様な力も根性もない」

 

「そういう問題じゃない!」

 

 ……信頼されていると思おう。確かに私が組み伏せようとしても、返り討ちにされるのが目に見えている。そもそも、襲う気はない。

 下着の輝夜と輝夜に言う割には薄着なリオンさんを横目に、風呂場に向かう。

 

 

 食事の片付けも終わり反省会となった。

 特に語ることはないが、強いて言うならば私と輝夜が明日は別行動をすると言うことくらいだ。

【ディアンケヒト・ファミリア】や【ミアハ・ファミリア】に頼むべきではと言う意見もあったが、どちらかと言えば危険因子の確認といった所なので私たちが行くと言う説明をした。加えて、【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】にも、連絡してから行くことになっている。

 あの病人さんが暴れたら正直な所、ファンさんやリヴェリアさんでもきついと思うが、それを言ったら私たちも変わらないので万が一のことを考えると、連絡は大切だ。

 …………私は別に今日の夜連絡せずに行こうなんて一瞬も思いませんでしたとも。ええ、ええ。そんなまさかね。

 

 輝夜にすごく視線を向けられたがおそらく気のせいである。

 

 

 ─────────────────────────

 

 

「うーん、煩悩を感じますねぇ」

 

「煩悩というな、今集中しようとしてるんだ。静かにしておけ」

 

 いくらお気に入りの着物や羽織りではないとは言え、一日に二枚も三枚もダメにしてしまうというのは、出費の面から考えても良くないと思ったので、普段は精神修行や細かい技術などと言った、着物が裂ける事のない鍛錬をすることとなった。

 当然の帰結である。

 そして現在輝夜は、いわゆる【明鏡止水】と呼ばれるものの習得に励んでいる。

 まあ芳しくないが、始めてまだ二時間程度だ。これくらいで習得されてしまったら、それなりに時間をかけた私の才能の無さが浮き彫りになってしまうので早すぎるのはやめてほしい。せめて、せめて数日はかけてほしい。

 

「輝夜、夜切! 朝食の準備ができたわよ! って何してるの?」

 

 いつもはもっと血みどろでどれがどっちの血かわからないじゃない? と続けるアリーゼさん。

 時間切れの様だ。

 輝夜に声をかけようとそちらを見ると、瞳の焦点が合わず存在の強度ただいうのだろうか、それが凪いでいる。タケミカヅチ様には遠く及ばないものの既に何か掴みかけている様だった。

 

 …………なるほどね。私よりも才能がありそうで怖い。

 

 この状態は私が肩を叩くなり、アストレア様に声をかけてもらうなりすればすぐに戻るだろう。とはいえアリーゼさんの声で戻らないとなるとそれなりに深いかも? 師匠とタケミカヅチ様以外にできていた人間()を見たことがないので、正確なところはわからない。

 今後は切り替えが課題といったところだろう。

 

 坐禅を組んでいる輝夜の頭を軽く叩く。

 

「っは!?」

 

「あといくらかすれば習得できそうですよ。全く、私がどれくらい時間をかけたかわからないのに……なんでそんなに早くそこまでいけるんですか?」

 

「お前にそれを言われてもな……妹ならもっと早くやる」

 

「ふむ、まあ貴女がそう思うならそうなんでしょう」

 

 私は妹君と深い関係があるわけでもないので、どれだけの才能を持っているかは知らない。曰く一族の最高傑作らしいが、どうなんだろう。

 

「なんだかわからないけど、早く来なさい! 朝食の時間よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「では行きましょうか」

 

「わかった。場所は覚えてるんだろうな」

 

「当たり前じゃないですか。精霊さんたちが連れて行ってくれます……昨日の場所に連れて行ってください」

 

 私が言うと、キラキラと色の変わる淡い光が私たちを先導する様に動き出す。

 

「では助手のかぐよさん着いてきてください。……患者のところへ向かいますよ」

 

「誰がかぐよだ……承知しました。夜先生」

 

 実は今私たちは変装というものをしている。どれだけ効果があるかは知らないがやらないよりはマシということで、私は医者の夜先生。輝夜は夜先生の助手である()()()さんという偽名を使っている。

 とりあえずそれっぽく見せるために、白い羽織りを着用している。我々の身分は、極東から出てきたばかりの医者とその護衛兼助手ということになった。いつもの様に腰には刀を差しているが、それに加えて医療器具の入った箱を持っている。

 これもそれっぽくするためだけで、実際何かするとしたらヨミがなんとかしてくれる。

 本人(人?)もやる気は充分な様だ。時折フラフラと出て行っては疲労回復をしている。どうやら普通の人間には見えない様になれるらしい。

 

 何はともあれ、かなり適当ではあるが、とりあえず【アストレア・ファミリア】の人間だと思われなければいいのだ。

 私はほとんど認知されていないだろうが、輝夜は【アストレア・ファミリア】の副団長ということで有名なので、できれば和装も避けたいと思っていたが()()()()感が否めないということで結局和装となった。

 問題しかない気がするが、かと言って一般人にやらせるわけにもいかない。私一人が一番いいかもしれない。あれ? 私一人だけの方が良かったのでは? ……まあいい。よくないけどいいさ。

 敵なら敵で、私たちのどちらかが情報を持って帰ればいいのだ。私一人だけよりも、輝夜と行った方が情報を持って帰ることのできる可能性は高い。

 

「まさかオラリオに来て初めて二人で出掛けるのが、患者を診る為とは想像もしていませんでした」

 

「夜先生、仕事中でございます。なるべく私語を慎んでください。ただでさえ私たちは目立つのですから」

 

「オラリオだと、極東の服装は目立ちますねぇ……私も後で洋服というものを買っておかなければ。郷に入っては郷に従えという言葉もあります」

 

「仕事が終わればいくらでも買いに行けますよ。ですので今は仕事に集中なさってください」

 

 ……私たちは何をしてるんだ。輝夜の淡々とした話し方に、とてつもない違和感を覚える。

 

 ふむ。微精霊によれば、対象は昨日の場所から動いてないらしい。

 潜伏してるのだろうか? 

 あそこは確か住宅街と言われていた。もしも対象が闇派閥(イヴィルス)ならば、これからは一般人の多く住んでいる通りにも潜伏している可能性が高いと考えなければならない。闇派閥のほとんどは地下に居ると聞いていたのだが、面倒だな。

 

 精霊の導きによって着いたのは…………これはなんだろうか? 

 

「ここが患者が居る場所の様ですよ……ただの家にしてはなんだか見慣れませんが」

 

「ここが……これは教会です。常識ですよ」

 

 なるほど教会というのか。何か行う場所? なのだろうか。世界の中心なんて呼ばれる都会には不思議なものがあるなぁ。

 

 入る許可をもらおうと扉を叩く。

 

「こんにちは、御免ください。病人がいると精霊様に伺って参りました。……いらっしゃいませんか?」

 

 確かに気配があるので、中にいることは間違いない。

 この距離で感じられるのは【アストレア・ファミリア】の面々では対処できないであろう事くらい。フィンさん達も厳しいのではないだろうか。都市最強と呼ばれているオッタルさんはどうか知らないが。

 

「いらっしゃる様ですが、開けていただけませんね。治療は必要ないということでしょうか?」

 

「「…………」」

 

 開けてくれないな。

 言い方が胡散臭かったせいだろうか。精霊に聞いてきたとか怪しすぎるのも納得である。私も最初に精霊を見た時は妖の類かと思った。今も正直疑っているが、タケミカヅチ様がそういうのではないとおっしゃっていたので違うのだろう。

 

「……仕方ありませんね。もしかしたら患者が意識を失って倒れているのかもしれません。ひとまず開けてみましょう」

 

 軽く扉を押してみると簡単に開いた。

 居留守を使う農民に取り立てするときの方法を、まさかオラリオに来てまでやるとは思わなんだ。

 入ると、中には長椅子が並べてあり、正面の大きなガラスの面から光が差し込んできている。

 広さはそこそこ、問題なく刀は振るえる。しかし広さ的にも、教会の造り的にも魔法による爆破でもされたらたまったものでは無い。私の身体では生き埋めにでもなったらかなり面倒だ。

 

 空間把握のために散らした意識を正面に向ければ、恐ろしいほどの美貌を持った妙齢の女。

 艶のある灰色の髪を長く伸ばし、私たちが侵入したのにも関わらず一瞥も向けず開くことのない瞳。漆黒のドレスを身につけ、纏う雰囲気は強者のそれ。

 

「家主の許可なく踏み入るか。煩わしい雑音共よ」

 

 ……随分と尊大というか、高慢というべきか。どちらにせよ、第一印象から厄介な人間であろうことが察せられる。

 

「これは……失礼しました。万が一のことがあってはいけませんから」

 

「あいにく、私は医者など呼んだ覚えはない。私の微睡の邪魔をするな」

 

 とりつく島もないとはこのことか。

 

「私の治療は少々特殊でございまして、不治の病であるとか呪いであるとか、そう言った類の専門にしております」

 

 ですからと、私は続ける。

 

「貴女のその病も治すことができると思っております」

 

 沈黙が場を支配する。

 輝夜はここへ来てから一言も話していないが、どうやらこの場所と女性を観察している様子。輝夜の反応からして、今のオラリオで有名な人間ではなさそうだ。

 私の見立てとして、かなり重い病を抱えている様だ。それに加えて激毒という言葉でも及ばない様な恐ろしい毒と、それなりの期間近くにいたのかそれも合わさりひどい状況になっている。

 毒の方はそれ以上の毒を浴びせられたことがあるので、簡単に解決できそうだが…………病の方はわからない。

 

「医神ですら匙を投げた、この忌々しき罪を治すと?」

 

「ええ。毒の方は間違いなく」

 

 何故その身体で動けているかわからない程度には壊れている様に見えるから、治したいと思っていると考えていたが……失敗したか? 

 

「……それだけ言うならやってみせろ。神の力(アルカナム)を使えないとは言え、神でも治すことのできなかったコレを癒すことなど出来ぬだろうが」

 

 どうやら許されたらしい。神でも治すことのできなかったと言うのは聞いてないぞ。大見得切ったのに治せないなんて言うのは目も当てられない。

 輝夜も私に本当に治せるんだろうな? といった視線を投げかけてくる。

 …………治せるかどうかなんて私もしらない。

 

「承知しました。では───ヨミ」

 

 私が呼べば、医療器具から淡い光が飛び出し女性の周りを取り囲む。

 

 ヨミから送られてくる情報に私は首を傾げてしまった。

 治そうとすると断られる? 私が奪った? 生まれながらの罪? 

 わからないなぁ。こんなことは今までなかった。早く治してくれと言われたことはあるが。

 

「いつからこの病を抱えていらっしゃるので?」

 

「生まれた時からだ」

 

「では、明確に悪化したのはいつですか?」

 

「…………恩恵(ファルナ)を授かった時だ。スキルとして私に定着したと聞いている」

 

 ますますわからなくなってきた。恩恵によって悪化する病など聞いたことがない。

 そもそも恩恵がない私にとってスキルがどういうものか、全く理解できていないのだ。尚更私にどうにかできる様には思えなくなってきたな。

 ヨミからも常に困惑した感情が伝わってきて、私も更に困惑している。竜の血ですら消してみせたヨミが、スキルとは言え治せないなんてことはないと思うのだが、どういうことだ? 

 

「…………失礼を承知で伺いますが、そのスキルの名前を聞いても?」

 

 

「【才禍代償(ギア・ブレッシング)】」

 

 

 なるほど。……ぎあぶれっしんぐですか。

 しかし、極東の言葉に直してくれないとわからない。どうにもオラリオの言葉は難しい。

 

「はぁ、才能の代償ということだ」

 

 理解できていない私に、ため息をつきつつも教えてくれた。

 

「失礼しました。オラリオに来たばかりの人間でして、聞きなれない言葉の意味はどうにも……」

 

 ともあれ意味は知れたので問題はない。

 私が聞いたところによれば、神の恩恵(ファルナ)は眷属の可能性の発現を促すものであるらしい。【経験】を積むことで【ステイタス】に望みを反映させる。

 そこから考えるに、この女性は自身の才能に対して代償を望んだ。或いは、才能に対して代償がなくてはならないと思う様な経験をしていたということ。

 ヨミから送られてきた情報も併せて考えてみると…………自身の病は才能の代償として相応しい、治すことで逃れる気はない。みたいなことだろうか? 

 飛躍しすぎている気がしなくもないが、まあいい。

 

 ヨミは病の治療を諦めた様で私の方は戻ってきた。毒は綺麗に消すことが出来た様だ。竜の血ほどではないが、なかなかに厄介だったらしい。

 

「期待していなかったが、やはり癒すことはできなかった様だな」

 

 ヨミが私の方に戻ってきたものの、おそらく体調に変化がなかったのだろう。うまくいかなかった事を理解した様子で私の方に身体を向けた。

 

「力及ばす申し訳ありません」

 

「なら早く失せろ。今の私は機嫌が悪い」

 

 まあ、これでどの程度の脅威か理解できたのは収穫だろう。しかし、敵が味方かわからなかったのは失敗だったから。私たちが教会に無断で入っても殺されていないことから、意味なく人を殺す様な人間ではなさそうだ。

 返してくれそうであるし、さっさとホームに戻って情報共有をしよう。暴れられたらなかなかに厳しそうであるし、警戒もどれだけ意味があるのかわからないなぁ。

 

「最後に一つだけ聞いてもよろしいでしょうか」

 

 私の問いかけに女性に答えることはなかったが、否定もされたいなので続ける。

 

「貴女の罪とはなんですか?」

 

 最悪戦闘だが、私は最低限輝夜を逃せばいい。【アストレア・ファミリア】にはかなりの迷惑をかけるが、闇派閥の人間ならば爆発するのが早いか遅いかの違いだろう。

 こちらの味方だとしたら……腹を切ろう。

 

 いくらかの沈黙の後、女性は短く答えた。

 

「出ていけ」

 

 私と輝夜は一礼して教会を出る。

 私には女性の声に、やりきれない思いが込められている様に聞こえた。

 




書くことは無いと思いますが、夜切くんは竜を切ってます。
人型になって人里に降りてきて女攫っていたとか。
しゃべる化け物もいる事をこの時知ったそうです。このタイミングで死にかけたとき、精霊がまとまってヨミになったらしい。
まるで主人公が覚醒するみたいだ。

アルフィアの病気は妹さんを超えるか、同等のものができないと治らなそう。ベルくんに会っていたら母親パワーで治すらしいですし。

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アーディちゃんについて

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