オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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感想・評価ありがとうございます。すごく嬉しいかったです!!

私はダンメモ準拠で書いていたのですが、本の方のアストレアレコード買って読みました。
ヴァレッタさんって元から有名だったんですね。リューさんのリオン呼びの理由も初めて知りました。
というわけで、どちらも軽く修正しました。

早く『最悪の七日間』に突入したい。ウキウキの夜切くんを書きたい。


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「夜切殺すなよ」

「なんで恩恵のない私がそんなこと言われるんですか?」

「リオン死ぬなよ」

「そんなに月咲さんは危ない人なんですか?」

「見てくれに騙されるよ。こいつは面がいいだけの剣術狂いだ」

 

 酷い言われようであるが、どこにも否定できる部分がない。

 

「なるほど、普段猫をかぶっている輝夜と同じというわけか」

 

 リオンさんもなかなか言うようである。輝夜さん怒ってますけど大丈夫そうですか? 

 

 リオンさんと向かい合い、木刀を軽く握り自然体になる。

 

「では夜切さん、始めましょう」

「承知しました」

 

 さて、状況を整理しようか。

 お互いに持っている武器は木刀。リオンさんは木刀を普段から使っているらしい。魔法の使用は禁止、私は負傷した際に精霊の使用を許されている。それに加えて、私は木刀でリオンさんの身体を切り付けることを禁じられている。

 

 リオンさんは油断なく構えており、攻めてくる様子はない。

 

「私から行きましょう」

 

 ゆるりと踏み込み、木刀の間合いにリオンさんを収める。そのまま首を狙って一閃。

 

「っ?!」

「なるほど、これは防げますか」

 

 私の一撃は咄嗟に挟み込まれた木刀によって弾かれる。やはり力の差があることを実感した。切るつもりで切れば、木刀ごとやれたであろうが……まぁいい。今は必要のないことである。

 

 体制を整えると同時に疾風の如き速さで突撃してくるリオンさん。まともに受ければ、私の様な貧弱な人間は爆散四散すること間違いなしであるが、それはまともに受ければという話。

 速さの乗った鋭い突きを、私の得物を側面に当てることででいなす。

 

 なるほど、輝夜に師事していたというのは確からしい。

 

「月咲さん」

「なんでしょうか?」

 

 私に突きをいなされたリオンさんは、油断なく構えたまま尋ねてくる。

 

「本当に恩恵を授かっていないのですか?」

「私の記憶にある限り、という枕詞がつきますがいただいたことはありませんねぇ」

「言い方が輝夜そっくりだ」

「……褒め言葉として受け取っておきますね」

 

 お話はこのあたりで一旦終了だ。私の考えが伝わったのだろう、リオンさんは再び木刀を振るう。

 それを見切り最小限の動きで躱わし、振り切ってしまい無防備なリオンさんの胴体に、反撃として蹴りを一発入れる。いいところに入った様で、顔を顰めるリオンさん。

 

 うまく合わせたことで、あの速度の身体を蹴ったにしては私の体に負荷はかかっていない。

 体術もタケミカヅチ様に教わっていたのだ。タケミカヅチ様には遠く及ばないが、それでも体術でもLv 6までならやれるとのお墨付きをいただいてる。

 リオンさん程度と言ったら悪いが、刀を使えなくなったとしても戦える。

 

「…………貴方は一般人ではないと理解しました」

「はて? 私は歴とした一般人ですよ? ステイタスはありませんから」

 

 先ほどまでとは雰囲気を変えたリオンさんは、速度を上げて切り掛かってくる。

 自身の笑みが深くなるのを自覚しつつ、私もそれに応じた。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

「おい輝夜」

「なにか?」

「お前の同郷は本当に人間かぁ?」

「本人と神様曰く人間だそうで」

「お前は認めてねぇと」

「何が『レベルの差など技術で覆せますよ』だ、あの男」

 

 リオンと夜切の訓練、もとい模擬戦を観ながら会話をする輝夜とライラ。

 ライラは輝夜が夜切の人外っぷりを、猫被りできなくなる程度には思っているらしいと察した。

 

「恩恵なしに精霊と共に在り。夜切は古代の英雄か?」

「あんなものは英雄なんてものではございません」

 

 ああ、と続ける輝夜。

 

「万人殺せば英雄とでもおしゃるのでしたら……確かに英雄様でございましょう」

「…………そんなに殺してんのかよ」

「ええ。届いた手紙には毎回、やれ盗賊を何人殺しただの、やれ朝廷に刃向かう謀反人を一族郎党切っただの……」

「やべーやつじゃねぇか!」

 

 わたくしが言えたことではございませんが……と内心自嘲する。

 

「…………なぁ」

「なんでございましょうか?」

「もしかしてお前も…………いや、なんでもねぇーよ」

「左様ですか」

 

 お前もそうだったんじゃないか。そう尋ねようとしたライラであったが、踏み超えていいラインではなかったと自戒する。

 輝夜に向けていた視線を、夜切とリオンの方へ戻した。

 

「おいおいおい! 夜切絶対何処かの神の眷属だろ!」

 

 夜切がリオンの木刀を弾き首元に当てているところであった。

 驚いて再び輝夜の方に呼びかける。すると輝夜は心底感心したとでもいう様子で頷いていた。

 

「……あいつ寸止めなんて本当にできたんだな」

「おいっ! できないかもしれないと思ってたのかよ?!」

 

 輝夜の言葉にドン引きするライラ。

 まさか仲間が想像以上の危険晒されているとは思っていなかった。

 夜切はLv 5のヴァレッタの腹を裂いているのだ。たとえ木刀だろうと、仲間の首元に当てられていると考えて終えば気が気でない。

 

「子供達に教えていたなどと宣っていたが、どうやら本当だったらしいな」

「……夜切に教わった子供とか恐ろしすぎるぜ」

「まぁ、極東の武神様がメインではあるはずだ」

 

 心配あるまいと言った輝夜であったがしかし、夜切みたいな人間と武神の教えを受けた子供が複数人? 極東恐ろしい国である。ライラは静かに震えた。

 

 

 

 

「どうでしたか? 私もなかなかやるでしょう?」

「……完敗です。やはり貴方は一般人は名乗れないと思いますよ」

「極東にはまだまだ化け物がいますよ」

「どんな国ですか」

「修羅の国ですかねぇ」

 

 私の実力では師匠に遠く及ばないし、タケミカヅチ様に一太刀入れたとは言えそれ以降は剣を合わせていない。私はまだまだ未熟者である。

 

「まぁ訓練だからこそ、ここまで私も戦うことができただけです」

「しかし、月咲さんは普段の得物じゃなかったはずです」

「いえ、普段の得物でも変わりませんよ」

「お前には魔法があるだろう? 遠くから延々と魔法を重ねていれば簡単に殺せる」

「私は殺しなどしない!」

 

 私の代わりに輝夜がリオンさんの疑問に答える。

 簡単に私の弱点を明かすなという視線を送ったが、輝夜にはどうせすぐバレると返された。

 最近は魔法斬りが出来ないかと訓練している。以前師匠に聞いた時には、魔法の綻びを切れと言われた。正直なことを言えば私は、魔法の綻びなどほとんど感じ取ることができないのだが、師匠ができるなら私もやらなければならない。

 

 というか、リオンさんは人を殺めないと決めているのが意外である。アストレア様風に言うのなら、それもリオンさんの正義と言ったところだろうか。

 とは言え、こんな時代に不殺とは…………これまた難儀なものである。

 

「夜切お前本当に恩恵ねーのかよ」

「はい?」

「アタシはお前に恩恵がないってのが信じられねぇ」

 

 ここでライラさんに声をかけられた。私に恩恵がないことが信じられない様である。

 しかし、ないものはないのだ。

 

「な、何を急に服を脱ぎ出してるんですか!」

「あぶなっ?! 私の背中を見せてないことを証明しようかと……ちょっと、魔法使うのはやめていただけませんか???」

 

 私の弱点を知ってすぐにつこうとするのはやめてください。

 リオンさんを宥めてから、ライラさんに背中を見せる。

 

「どうですか? 傷一つないでしょう?」

「確かに……ねぇな」

神の恩恵(ファルナ)を傷というな」

「言ってませんよ……背中を切られるなんて、油断して切られたと言っている様なものですから」

「お前の傷は精霊で治るんだろう?」

「強い情念をこめて切られた傷は治りが悪いんですよ」

 

 どこぞの人もどきの竜もどきにつけられた傷は治りが悪かった。あんなのに付けられた傷が嫌すぎて、ヨミに頑張ってもらったのは忌々しい記憶である。

 

「傷のことはわからねーが、なんでリオンの速さについていけるんだよ」

「慣れだと思います」

「慣れ?」

 

 ええ。ライラさんの疑問を肯定して続ける。

 

「私の師匠とタケミカヅチ様(武神様)の一閃はそう簡単に見切れるものではなかったので、それと戦える様になるには見える様になるしかなかった。というわけです」

「輝夜も武神様と夜切の師匠様のことを知ってんのか?」

「化け物も化け物だ。おそらくだが、対人戦に限れば武神様は都市最強を超える」

「…………ならお師匠様はどうなんだよ」

「あの人は…………イカれてる」

 

 ……言いたいことはあるが、端的に表すのなら妥当な言葉である。私も剣に狂っているという自覚はあるものの、師匠ほどではない。

 

「あの人は極東最強の剣士。そして……大罪人だ」

「大罪人? 何やらかしたんだよ、お前の師匠」

「神殺しをしました」

「はぁ?! それマジかよ?!」

「マジもマジで大マジですよ。何故切ったのかは教えてくれませんでしたが」

 

 その時送還されたという神は、かなり力のある神だったらしい。おそらく…………死合ったのだろう。そして殺した。ただの人の身で神を殺す。

 

「…………夜切さんは神殺しなどという大罪は犯していませんよね?」

 

 リオンさんが不安そうに尋ねきたのに対して、私は笑って答える。

 

「私には神を殺すなど畏れ多くてできませんよ」

 

 ええ、ええ。

 

「お前……何か隠していないか?」

「まさか! 神に誓って神殺しなどしておりませんとも」

 

 安心しました。と胸を撫で下ろすリオンさんは、ずっと素直なままでいてほしい。

 嘘はついていませんとも。嘘は。

 

 輝夜は何か言いたそうな目で私を見てくるが、無視しておこうと思う。そんな輝夜を見たライラさんも、お前まじか?! とでも言うような目で見てくるが、おそらく気のせいだと思う。

 

「ま、まぁとりあえずホームに戻ろうぜ?」

「アリーゼもそろそろ帰ってくる頃でしょう」

 

 

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 

 

「いらっしゃい、アストレア」

「随分と遅かったなぁ? 正義の女神様」

「こんにちは、フレイヤ、ロキ」

 

 迷宮都市オラリオのとある一角で、三柱の神が会合を始めた。

 

 それで? とフレイヤがアストレアに聞く。

 

「急に集まって欲しいだなんて……どうしたのかしら?」

「ウチらは忙しいんや。はよう話し」

「私の眷属(子供たち)が灰髪の女性魔導士と接触したわ」

「灰髪の魔導士?」

 

 フレイヤは首を傾げ、ロキは訝しげにアストレアを見る。

 

「子供たちの見立てでは推定されるレベルは6以上」

 

 アストレアの言葉に目を見開き驚く。

 

「【猛者】と同等以上で、灰髪の女魔導士…………」

 

 言葉を反芻し、苦い顔をする二柱。

 

「うちの子たちが言うには、オラリオの人間ではないらしいわ。だから闇派閥(イヴィルス)の人間じゃないかと思ってあなた達に伝えておこうと思ったの」

 

 頭に浮かぶ人物はいるものの、今まで都市を守り続けてきた偉大なファミリアの人間である。アレがオラリオに仇なすような事をするとは思えない。

 

「そいつに心当たりはある。けど、間違っても闇派閥(イヴィルス)に与するようなやつやない」

「そうね。私もそう思うわ」

「あなた達が言うなら信じるわ

 

 

 

 

「【静寂】のあるふぃあ……ですか?」

「ええ! オラリオ最強を誇った【ヘラ・ファミリア】の一人よ!」

 

 寡聞にして存じ上げない方の名前が出てきましたねぇ? 

 

「【ゼウス・ファミリア】と双璧を成していたあの?」

「そうよ! 夜切と輝夜は運がいいわね! あの英雄に出会えるなんて!」

「私は恐ろしくて仕方がなかった」

「凄い方だったようですね」

「凄いなんてものじゃないわ! 三大クエストの一つであるリヴァイアサンの討伐の立役者よ!」

 

 私には何が何だかわからない言葉を並べられてしまい、混乱しているが、とにかく凄い人なんだろう。

 

「つまり、敵対の可能性はねーって事だな?」

「ないと思うわ!」

 

 私はその、【ゼウス・ファミリア】や【ヘラ・ファミリア】の事をよく知らないため何とも言えないが、オラリオの住民からしたら大英雄様と言ったところだろうか。

 そんな英雄が闇派閥(イヴィルス)に与することはないと。

 

 …………まあ、確かにそうか。

 

 戦えそうもなくて少し残念ではある。

 

 それはそうと、

 

「では、何故このタイミングでオラリオに現れたんでしょうか?」

 

 

 

 

 

「それは…………」

「私たちが未だに闇派閥(イヴィルス)の残党を滅ぼしていないから、でしょうね」

「どう言うことかしら?」

「それはアストレアが相手でも言えないわ」

「まぁ、約束みたいなもんがあったちゅーわけや」

 

 アストレアの疑問に、フレイヤとロキは言葉を濁して答える。

 詳しいことはわからなかったアストレアであったが、【ファミリア】の間で何かやり取りがあったのだろうと察する。

 

「とにかく、彼女の事は気にする必要はないはずよ」

「ウチもそう思うで。そいつのこと気にするくらいなら、しっかり闇派閥(イヴィルス)の方を警戒しとき」

「わかったわ。眷属(子供たち)にもそう伝えておくわ」

 

 アストレアは二柱の言葉を信じ、微笑んで頷く。

 

「じゃあ次は、自分とこの新人さんについて話し」

「新人?」

「いいわね、私もあなたのところの確か…………夜切? だったかしら」

「何で名前まで知っとんねん、おかしいやろ」

 

 フレイヤに言われたことで理解するアストレア。

 確かに夜切は、【アストレア・ファミリア】に新しく入団した人間であると紹介していた。

 

「彼はそうね……やんちゃな子、かしら?」

「やんちゃ?」

「ええ、この前ヴァレッタ・グレーデと交戦したって話をしたじゃない? あれ、彼がやったのよ」

「はぁ?! そんなわけあるかい! Lv 1がLv5を退ける。そんな話があるわけないやろ!」

「それをやんちゃの一言で済ませていいとは思えないわ」

 

 あの剣狂いをやんちゃで表すアストレアはやはり大物である。

 

「そう言えばロキのところの子供達に、ギルドであって道を教えてもらったと言っていたわよ」

「【アストレア・ファミリア】の新人ってそいつのことかい!」

 

 なら納得や。そう言って頷くロキ。

 

「フィンから聞いたで。えらい親指がうずくってな」

「あら、ロキの子がそんなに気にするなんて……私も興味が出てきたわ」

「お前はその悪癖をやめい」

「夜切も『美の女神』はひと目見てみたいと言っていたわ」

「なんや? オラリオの人間じゃないん?」

「ええ、うちの子の友人って紹介されたの」

 

 女神の会合はこうして過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 




師匠
死剣だとか呼ばれていた女剣士らしい。
夜切の戦闘スタイルはこの人の戦い方の真似。圧倒的な剣術と、回復によって永遠に戦い続ける。
夜切の回想?的なものに出てきて盛られるだけで、本編に出番はない。

夜切
とある人斬りの大罪人を、美しいと思ってしまった哀れな男。彼女の剣に、姿に、魅入って仕舞わなければ、タケミカヅチ様の下で真っ当な英雄になったかもしれない。
一人称と口調は師匠の真似をしている。とは言え17の青年。たまに口調は崩れる。

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アーディちゃんについて

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