オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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感想・評価ありがとうございます!

原作アストレア・レコード読み終えました。
素晴らしかった。
輝夜が燕返しも真っ青なことしてて驚きました。これなら夜切くんにも、多重次元屈折現象を起こしてもらっても問題なさそうですね()




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「く、くく、くはは! ふふ、ふははは!! 馬鹿なやつめ! 私をこの程度で止められるとでも思ったか?!」

 

 闇派閥(イヴィルス)の襲撃があるかもしれないとの知らせを受けて、切る気満々でダンジョンに向かおうとした私だったが、リオンさんが「都市の秩序を守るべき私達が、秩序を乱すような行為をするべきではない」(キリッ)みたいなことを言ってくれた為、地上に居残り。

 それも、ギルドの一室を借りてそこでダンジョンについて教えてもらっていたのだ。

 私を絶対にダンジョンには向かわせない。そういう固い意志を感じる。

 

 しかしリオンさん程度の目論見がうまくいくはずもない。

【アストレア・ファミリア】としての仕事をこなす傍ら、ダンジョンについて個人的に調べていたのが功を奏した。

 一刻も早く闇派閥(イヴィルス)の襲撃が予想されている階層に行かなくては! その一心で、私に教えてくれる予定であった職員を説得。ギルド側が作成した試験を受けて、問題がなさそうだから帰って良いとの許可をもらう事に成功した。

 

「つまり、人生初のダンジョン攻略というやつがやれるわけです」

 

 ダンジョンへ向かう途中に出会った人に挨拶をしながら、進んで行く。

 少し楽しみになってきた。気分は旅行、あるいは観光である。

 ギルドの人は『冒険者は冒険を云々』とか何とか言っていたが、なんだったんだろうか? 

 正直適当に聞き流していたので、よく分からない。多分、冒険して早くレベルを上げろ的な事を言われたんだろうと思う。

 違ったら許して。でも、試験に書いてなかったから大事ではないんだと思うの。

 

「さて、では失礼して」

 

 ダンジョンに入った瞬間、左右から切り掛かられる。

 前へ跳んで回避し、振り下ろした状態の二人をの首を反射的落とす。

 ……これは、非常に幸先がいい。

 ダンジョンに一歩踏み込めば、ここは既に無法地帯である事をしっかりと教えてくれた偉大な先輩であった。

 

 首と体が泣き別れてしまった死体が転がっているが、噂によれば死体はダンジョンが吸収してくれるとか。

 残った物に罪はない。ならばここに残されている金や、その他の物資は頂いても問題ないだろう。

 

 ありがたく金を頂戴してから進んで行く。

 

「おお、彼がゴブリンですか」

 

 少し歩けば図鑑で見たようなモンスターが現れた。六匹の集団で現れたが、強さはイマイチ。特筆すべきこともなく、首を落とせばチリとなって消えた。

 魔石はその場に残さない事がきまりらしいので、砕いて撒いておく。持ち物は少ない方がいい。

 それにそんなもの(魔石)を売るよりも、ダンジョン内でも襲ってくれるらしい闇派閥(イヴィルス)の輩から金を頂戴した方が稼げるのだ。なんで奴らは死ぬのに金を持っているんだろうか? 

 直前にも屋台で飲み食いしているとしたら、頭おかしい。

 

「ふーむ、全く面白くない」

 

 そんなことを考えながらモンスターを灰に変えつつ進む。

 そろそろ闇派閥(イヴィルス)が襲ってきてもいい頃合いだと思うのだが……私の貴重な資金源である。

 

 やはりモンスターを殺してもなんら面白みがないので、さっさと18階層に向かう事にする。

 噂によれば、どうやら縦穴があるようでそこを落ちていけば、すぐに着くらしい。

 しかし、そんな場所がどこにあるかなど私は知らない。地図に従って正しい順路で行くしかないか。

 面倒な。

 気配を空間に馴染ませて、モンスターに気付かれないように進んでいこうと思う。

 

 

 

 ようやく『中層』と呼ばれる階層まで来れた。今が13階層であるから、輝夜達に追いつくにはあと5階層も下らなくてはいけないということか…………。

 私が着いたところで、輝夜達の仕事がもう終わっているという可能性はかなり高くなってきた。

 来るべきじゃなかったかもしれない。

 

「に、にげろぉおおおお!!」

闇派閥(イヴィルス)だぁ?!」

 

 いくらか進んだところでそんな叫び声が、正面から聞こえてきた。こちらに向かってくるようである。

 

「この先に闇派閥(イヴィルス)がいるんですね?」

「ああ! お前も早く逃げろ!」

「くそっ! 俺の仲間が!」

 

 なるほどなるほどぉ。

 

「数はどれくらいですか?」

「わっかんねぇよ! 急に襲われて逃げてきたんだ!」

「いつあいつらが向かってくるか分からないわ! 私は先に行くわよ!」

「ええ、どうぞお気をつけて」

 

 口角が上がっているのを自覚する。

 ええ、ええ。決して闇派閥(イヴィルス)の事を歩く財布だなんて思っていませんとも。普段街中での殺しては止められているけれど、今私がいるのはダンジョン(無法地帯)であって証拠は残らない。なんて思っていませんとも。

 

 期待に胸を膨らませ、速度を上げて進んで行く。無論、気配は消したままだ。理性も技術もないモンスターとのつまらない殺し合いなどしたくない。

 

 

 しばらく歩けば開けた場所に出た。

 私の眼前に広がるのは凄惨な殺害現場。冒険者であったと推測される者はもはや原形を止めていなかった。

 辺り一面に血飛沫が散っている。一歩踏み出せばぴちゃりと不快な音を立て、たちまち履物が血に染まってしまう。

 むせ返るような血の匂いがあたりに充満している。

 

 遺体は腹を裂かれ瞳は抉り出されおり、手脚は削がれ指の爪は全て剥がされている。何度も、何度も執拗に刺されたであろう刺し傷が無数に残されていた。冒険者であったモノの表情から伺えるのは、自らを辱めた者に対する恐怖と憎悪。

 冒険者もそれに抵抗したのか、白いローブを血に染めた死体もかなりな数転がっている。

 

 今まで見てきた闇派閥(イヴィルス)の人間に、ここまでのことが出来るとは到底思えない。それに加えて冒険者の反撃で闇派閥(イヴィルス)がこの数殺されたとしたら、そもそも冒険者はあんな傷を負って死ぬことはないだろう。

 

 流石にこの人たちから金を取るような真似はしない。

 立派に戦って死んだ者には相応の敬意を。

 手を合わせて黙祷を捧げる。

 

「で、問題は……」

 

 この広場の隅で手を繋いで寝ているエルフの少女二人である。

 得物は…………ふむ。

 

「そこのエルフのお二人、生きていますか?」

 

 リオンさんで学んだ事だが、エルフは身体的接触を極度に嫌がる。

 訓練で伸びたリオンさんを立たせ、手を離してからいくらかして「さ、触らないでください!」と言われてしまった。

 そこまで気にする必要ある? と言って終えばそれまでではあるが、リオンさん的には許せなかったのだと思う。

 

 そんなことは置いておいて、問題はこの二人だ。

 肌の色は白と黒。身に纏っているのは…………なんだろうか? 露出の激しい……アマゾネスの服装ようなもの。年頃は十四、十五あたりに見えるが、エルフだからもう少し歳をとっているかもしれない。

 私の知っているエルフは、露出を嫌いながらも色んなところを出してる人が多い。しかしこのエルフは、なんだかんだ露出の多いエルフを基準に考えても、あまりにエルフらしからぬ格好をしている。

 言ってしまえば最早裸だ。

 

 私は十四、五程度の見た目の少女がこのような格好をしていることに、慄いた。都市にとって絶対に良くないと思うのだが。

 子供達がこんな格好に憧れたらどう責任を取ってくれるんだ。

 

「こんなところで寝ていては危ないですよ」

 

 近寄り声をかける。

 

「あら? ディナお姉様、お客様だわ」

「本当ね。ヴァナ。歓迎しなきゃ!」

「こんにちは……ああ、地上ではこんばんはでしょうか?」

 

 立ち上がり、お互いの服を叩く様子を眺める私。

 何を見せられてるんだろうか? これが露出狂ってやつかな? 

 服を叩いていると表現したものの、その布面積では尻を触っているようにしか見えない。

 衆道というのは、まぁ噂に聞いたことはあるが、女同士というのは……なんというのだろうか? 

 あいにく、それを表現する言葉は私の知識にはない。

 

「ここはこんな有様ですし、お二人も早く地上に戻られた方がいいですよ」

「ふふふ、心配してくれるのは嬉しいけど私達とっても強いのよ」

「ふふふ、貴方が何人いようとも敵わないくらい強いのよ」

「それはそれは……今のオラリオの状況を思えば、お二人の様な実力者がいらっしゃるのは頼もしい限りです」

 

 二人はニコニコと笑うだけである。

 取り調べでもするべきか? それとも背中を見せた方が襲ってきやすいか? 

 

「それでは、私は18階層に向かわなければいけませんので」

 

 いくらか逡巡し、不意打ちしやすいだろうとこの場を去ることにした。

 ここで襲われなくても問題はない。18階層に向かうことが目的なら、いずれにせよ戦えるわけだし、そうでないなら……冒険者の犠牲が増えるか? 

 

「いい事を思いついたわ!」

「まだ、何か?」

「私達が『楽園』に連れて行ってあげればいいのよ!」

「はい?」

「いい考えね!」

「それはどういう……?」

「「貴方は私達に着いてくればいいだけよ!」」

 

 どうやら18階層まで連れて行ってくれるらしいが……闇派閥(イヴィルス)の増援を、勉強しとけと言われていた私が連れていくのはまずいか? 

 輝夜あたりに怒られそう。

 

「そう言えば、こんな惨状を作り出した原因に心当たりは?」

 

 最後の抵抗としてした私の質問に対して、二人はこてんと首を傾げた。

 

「まぁ! ひどい事をする人がいるのね!」

「ええ、怖くて仕方がないわ! けど私とお姉様がいれば、そんなこと気にする必要はないわ!」

「……そうですか。ならこの先も警戒しなくてはいけませんね」

 

 ふーむ? なら、まぁ、お世話になっておこうかな。

 たとえどんな風に転ぼうとも、【アストレア・ファミリア】なら巻き込んでも問題はないはず。

 私が戦えばいいだけの話だから。

 

 

 

 

 

 18階層を目指して三人でダンジョンを進んでいく。

【ステイタス】のない私はそこまでの速度は出せないため、置いていかれるかと思っていたが、どうやら気遣いをしてくれた様である。

 頭おかしいくせにそんな気遣いできることに驚きだ。

 

「と、まぁ私はこんな感じで今に至る。というわけです」

「私達とっても似ているわね!」

「貴方は一人だけだったのにすごいわ!」

「はは、私も師匠に会わなければ貴方達のようになっていたかもしれません」

 

 先行していた二人は私の言葉に足を止めて、振り返る。

 この姉妹も相当な苦労をしていたようである。今まで虐げられていた分の苦痛に、恨みつらみ。言葉にすることも傷ましい扱い。

 二人の過去を聞いた私からすれば、よくもまぁそこで生きるのを諦めなかったなという感想だ。

 今の様子を見れば、死ななかったというだけで、壊れてしまった様ではあるが。

 

「さぁ、ここがダンジョン18階層!」

「『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』!」

「これは…………!」

 

 思わず声が出てしまうほど美しい光景が広がっていた。

 目隠しをして連れてこられていたら、まさかダンジョンの内部だとは思わないだろう。

 天蓋は一面青空で、木々が広がり小鳥の囀りが聞こえる。

 いや、小鳥の声ではなくモンスター? モンスターはこの階層で生まれることはないと聞いていたが、そんな事はないんだろうか? 

 

「ふふふ、綺麗でしょう? 美しいでしょう?」

「私達が綺麗だと思うのだから、貴方ももちろん美しいと思うでしょう?」

「ええ、素晴らしいです。私が今までに見た景色の中でも、五本指に入るくらいには美しい」

 

 でも私はこの景色よりも、刃を交わし合うような景色の方が好きだ。

 

「ここまでどうもありがとうございます。それでは私はこれで」

 

 ここまでわざわざ送ってくれた二人に対して目礼を挨拶とする。

 

 それと同時。

 

「「ダメよ。貴方は永遠に私達の物にするもの!」」

 

 私の腹と首を狙った一撃。

 それを、一歩下がり紙一重で回避する。

 

 

「ははは、どうやら随分と惚れっぽい様で。気移りの激しい方はいただけませんよ」

 

 挑発を交えながら刀を振り抜き、間合いを取る。

 先に手を出してきたのはあちら。私に交戦の意思はなかったものの、仕方なしに迎え撃つことになってしまった。

 

 いやはや全く、残念で仕方がない。私は貴方達と仲良くなれると思ったのに、残念ですよ。ええ。

 ───本当に残念だ。仲良くなれると思ったと言う言葉に嘘はない。

 私は刀無しには生きられないし、貴方達はお互いが揃っていなければ生きていけない。

 

「…………無ければならないモノが『人』である分、私よりも健全かもしれませんね」

 

 だからなんだと言う話であるが。

 

「あら? 外れてしまったわ?」

「夜切は私達の愛を受け入れてくれないのかしら?」

 

「失礼な。外れたのではなく、正しくは避けられてしまったですよ。妖精(エルフ)のお嬢さん方?」

 

「ああ、後……」

 

「───そこに落ちている腕はどちら様ので?」

 

 

 

 

 ───────────────────────

 

 

 

 

 闇派閥(イヴィルス)の兵はアリーゼとライラ、ヴィトーと対峙していたのは輝夜であった。

 

 入れ替わり立ち替わり、目まぐるしく戦況が変わる。

 火花が散り、銀閃が走る。

 刀による一閃は振るわれるごとに赤い花を咲かせ、剣の一撃は三人を前進させた。宙をかけるブーメランは輝夜とアリーゼに生まれる隙を潰す。

 

 闇派閥(イヴィルス)の兵は瞬く間に数を減らしていく。

 輝夜と打ち合っていたヴィトーも決して無傷とは言えないほど、血を流している。

 

「なるほど……お強い! 噂に違わぬ腕前です。これが【アストレア・ファミリア】!」

「ふん、威勢が良かったのは始めだけか? 外道」

 

 ヴィトーの言葉に苛立ちを隠さない輝夜。

 幾度も首を狙ったが、その度に闇派閥(イヴィルス)の兵を盾にする事で避けられる。盾に出来ないように切ろうとすれば、それと同時に一般兵による攻撃を狙ってくる。

 一対一であれば確実に首を落とせる相手である分、邪魔が入って切れないとなれば酷いストレスに感じられる。

 

闇派閥(イヴィルス)の幹部? でも貴方みたいな人、情報も二つ名も聞いた事がないわ!」

 

 闇派閥(イヴィルス)の援護があるとはいえ、輝夜の実力でも攻めきることのできない戦闘力から、闇派閥(イヴィルス)内での立場を推察した。

 

「悲しいことに、私は覚えにくい顔をしているようでして。特徴がないのか仲間内でも『顔無し』と呼ばれている有様です」

 

 大袈裟に肩をすくめて嘆いて見せるヴィトーの言葉を興味なさげに聞き流す輝夜。対照的にアリーゼとライラは警戒を強める。

 

「あとは、そう……関わらせて頂いた方は、ほぼほぼ始末してきましたので」

 

 髪の色を除けば、印象に残るものがない。常に細められた瞳と笑みを宿す唇は、他人を欺くための仮面のようですらある。

 

「はっ! その話し方に態度、要するに剣狂い(夜切)の下位互換と言う訳だ」

 

 人を不快にさせる能力は優ってるようだなと付け加え、ヴィトーの挑発を鼻で笑い、流れで近くにいた闇派閥(イヴィルス)の兵を数人まとめて切り裂く。

 今の斬撃は良かったと頷き、これでも切れない夜切の異常性を再確認する輝夜。

 

「それで? 貴様の言いたいことはそれだけか? 全く……聞くに耐えん戯言だったな」

 

 これじゃあ【ガネーシャ・ファミリア】が可哀想だと肩をすくめる。

 

「アリーゼ! ライラ! 輝夜!」

 

 それと同時にリューの声が聞こえてくる。

 他の闇派閥(イヴィルス)を無力化し、ネーゼと共に駆けつけようとしていた。

 

「……お仲間ですか。貴方達に加え、別の上級冒険者を相手取るとなるとさらに分が悪い」

 

 チラリと声のする方に目をやり、戦況を眺め冷静に現状を把握する。

 

「それでは、正義の名に踊らされるお嬢さん方、ごきげんよう」

「させると思うか?」

 

 闇派閥(イヴィルス)の末端に暴れさせこの場から離れようとするヴィトー。それに対し輝夜は言うが早いか、一瞬で距離を詰め切り付ける。

 

「この距離を?!」

「どこぞの剣狂いならカウンターだ」

 

 まさかこの距離を一息に詰められると思っていなかったヴィトーは、驚愕に目を見開き反応が遅れた。輝夜の放った一閃は、片足を深く傷つけ大きく体勢を崩す。

 太い血管を切られたのだろう。足からは血が治ることなく、どくどくと流れ続ける。

 庇おうとした闇派閥(イヴィルス)の人間も、アリーゼとライラの援護によって次々と無力化させていく。

 

「安心しろ、私は優しいからなぁ? 殺しはしない」

 

 崩れ落ちたヴィトーに、頬から顎にかけて短刀を刺す事によって魔法の詠唱を封じる。次いで手脚の腱を切り動けないよう処理。懐からポーションを取り出し患部にかける事で、簡単な止血を行おうとした。

 

 その瞬間、恐ろしいほどの業火が輝夜を襲う。

 

「っ?!」

 

 直前に察知し咄嗟に避けたものの、完全に避ける事は叶わず火傷を負う。

 回避した事で距離が開き、その間に白いローブを纏う闇派閥(イヴィルス)の兵はポーションを使用してヴィトーを回復させる。

 

 すぐさま再び爆撃が起こったことで、その場にいた全員が硬直する。

 転がるようにして現れたのは、美しく妖艶雰囲気を醸し出す肢体を赤黒く血に染めた二人のエルフ。見れば、ダークエルフの少女は片腕が失われいる。

【アストレア・ファミリア】や他の闇派閥(イヴィルス)の兵には一切視線を向けない為、輝夜を狙った砲撃というわけではないようだ。

 普段浮かべている嗜虐的な笑みは失われ、初めて理解者を得たかのような、或いは未知の感情に浮つくような、言いようもない表情をしている。

 

「逃げるんですか? 私のような恩恵のない人間(獲物)がいるというのに?」

 

 誰一人現在の状況を理解できておらず、混迷の様相を呈する18階層に新たに声が響く。

 声の主は、普段は足音一つたたずに歩くくせに、今は態々地面を踏み締める音を立てて近づいてくる。

 刀からは血が滴り落ち、着物の羽織にも派手に返り血が付いている。

 

「どうして?! どうして私達の愛を受け入れてくれないの!?」

「貴方の言っていた輝夜って女がいるから!?」

 

「え? …………いえ、別にそういうわけではありませんよ」

 

 未だ状況を飲み込むことのできていない【アストレア・ファミリア】やヴィトーを置いて、夜切は話し出す。

 

「貴方達の境遇には同情しますし、Lv 5まで上り詰めた偉業も努力も賞賛に値しますとも」

 

 並大抵の努力や覚悟ではそこまであげられないでしょう? と尊敬のこもった声色で言い、パチパチと送られた拍手は、静まり返った場にいやに響く。

 

「そのままの貴方達なら好意を持てたかもしれない」

 

 しかし、と態度を一変させ、酷く冷たく突き放すような態度で、むしろ何の興味もない路傍の石を見るような、そんな視線を送り言葉を続ける。

 

「─────弱者を嬲るようになった(強くなろうとすることをやめた)貴方達に、好意を持つ理由がないというだけ」

 

 胸元から布を取り出し、刀についた血を拭い、刃に映った空の色を見て満足げに頷く。

 そして、切り落とした腕を放り投げ渡す。

 それを受け取った姉妹は下を向き身体を震わせる。

 

「「あは、あははは! あははははは!!!」」

 

 夜切の言葉に何を思ったのか、突然大きな声を上げて笑い出した。

 無邪気で純粋で、しかしどこか決定的に壊れている。そんな笑い声。

 

「「次に会うときは殺して(あいして)あげる!!」」

 

 それは殺意(あいじょう)に満ちた宣言であり、ともすれば恋文のようだった。

 

「ええ……楽しみにしていますとも」

 

 姉妹だけに見えるように口を動かし応える夜切。

 

 まるで自分達だけの秘密を共有するような、周りに隠れて密会しているような、そんな背徳的で甘美な感覚が身体を走る。瞳を潤わし頬を上気させた姉妹。

 

「無様な『顔無し』を連れて帰りましょう! お姉様!」

「そうね! これからすぐにダンジョンに潜らなきゃいけないもの!」

「…………迎えも来てしまったようですし終わりの様ですね」

 

 ヴィトーは姉妹の嘲笑に言葉を返すことなく、撤退を支持していく。

 

「待ちなさい!」

「やめろ団長。ふざけた風だが、こちらを誘ってる」

「どうせ、森の中に罠が目一杯あるんだろうよ」

「っ!」

 

 アリーゼは、輝夜とライラの言葉に冷静さを取り戻す。

 

【アストレア・ファミリア】が登場してからの死者は出ていないものの、始めに襲われた者の中には死んでしまった人も多い。

 一方で、闇派閥(イヴィルス)の兵も冒険者の死傷者以上に削ることができたことに加え、新たに幹部を割り出たり、幹部とも渡り合える実力が【アストレア・ファミリア】にあることを確認できたりした。

 

 結果だけを見れば、『悪』の一端と『正義』を掲げる者の戦いは『痛み分け』という表現が適切な終幕となった。

 

 




夜切
人殺しとかしてても別に何とも思わないので、姉妹に関してはよく頑張ってLv 5になったんだねって感じ。
底辺からそんなに頑張って強くなったのに、今は満足して弱者の虐殺(無駄な事)をしてるのが許せない。もっと上を目指せよ。私の事が気に入った?雑魚いくら殺してもレベルあがんないよ?強くなって出直してこい。
要するに斬っても許される強者が欲しいから、強くなれよってこと。

姉妹
夜切に自分達と似た匂いを感じた。武神を斬れる奴が狂っていない訳がないのであってる。魅入ってしまったのが刀か惨殺かの違いだけ。
要するに「私たち姉弟だったんだね!」ってこと。頭おかしい。
現在は、夜切をぶっ殺す(に会いに行く)為にヘディンヘグニを殺せばLv上がるかしら?的なことを考えてる。
手加減しているとはいえ、武神と同レベル(夜切)から逃げ切ったのでLv 6になる。

輝夜
戦闘時の態度が夜切に似てきた。原作よりも強く容赦がない。毎日のように斬り合ってるから仕方ない。
化け物(剣狂い)と斬り合ってるので、ヴィトーくらいならそこまでの脅威ではない。
夜切と訓練(斬り合い)してたのでLv 4になってる。そろそろLv 5になりそうなくらいには経験値があったり。
タケミカヅチ様と殺し合いではないとはいえ、致命傷を負いながらそれを無理やり回復して、斬り合いを一月毎日続けていると考えれば、成長チートとかなくても妥当なはず。
むしろ遅いくらいでは?
ステイタスの情報とかあげた方がいいかな?

アーディちゃんについて

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