オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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お久しぶりです。
大学生になりました。片道一時間半程度登校時間があるので、そこで書いていきたいと思います。

気がつけばあと6人の方の評価でバーが赤く染まります!
評価していただけると私はとんで喜びます!!


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「大丈夫ですか?! 三人とも!」

 

 恐ろしい爆発音がしましたがと、闇派閥が撤退してすぐに覆面で顔を覆ったリオンさんが到着した。

 他の人は素顔を晒しているのに何故なのか。私も笠をかぶって顔を隠した方がいい? 

 

「傷一つもらってねぇ。が、せっかくの幹部を逃しちまった」

 

 そっちは? と、ため息をつきつつ尋ねるライラさん。

 

「逃げてきた冒険者は、全員無事。今は宿場町(リヴィラ)に避難させてる。……ただ、最初に襲われた冒険者たちは……」

 

 ネーゼさんは口ごもり、その後に続く言葉はなかった。

 私が来た時にはすでにそれなりの人数が殺されていたようであるし、回復が間に合わなかった人間もいるだろうことは想像に難くない。

 

 ともすれば、私が同行して回復すれば間に合った可能性が高いが、それは結果論であり()()()()の話だ。

 私からそれをいうことはないし、誰かがそれを口に出すことはないだろう。

 

「く……! あと少しでも早く、駆け付けてさえいれば……!」

 

 優しいなぁ。

 唇を噛み締め拳を固く握って言うリオンさんを見て、ついそう思ってしまう。

 死んだのが何の力もない子供ならそう思う気持ちもわかるが、今回死んだのは冒険者で、彼等は死ぬ可能性を承知で潜っている。

 いわば、覚悟のある人間。

 そういう人間が死んだとて、そんな事は分かりきっていた事だろうとしか思わない。

 報復するか否かは置いておいて。

 

「つけ上がるな、間抜け。英雄でも気取っているのか? 未熟な私達が、全てを救えるわけないだろうに」

 

 苛立ちを隠すことなく、リオンさんへ向かって吐き捨てるように輝夜は言う。

 

「っ……! 訂正しろ、輝夜! たとえ至らない身であっても、最初から救えないと決めつけて実践する正義など、間違っている!」

 

 リオンさんは語気を荒げ、口調を強くして輝夜の指摘に食ってかかった。

 

「おい、リオン、やめとけって」

 

 今にも取っ組み合いの喧嘩になりそうな二人の間に、ネーゼさん割って入ることで制止させる。

 なんだかこなれてる感じが。

 もしかして、輝夜とリオンさんっていつもこうなんですか? 

 そんなことを思いながら、損傷の激しい遺体に手を合わせ、ヨミの力で整えて回る。

 

 リオンさんと輝夜の喧嘩…………まぁ、極東で地獄を見ていた輝夜と、言ってしまっては悪いが、このオラリオで2、3年活動している程度のリオンさんでは、経験が違いすぎる。

 若くて擦り切れておらず、清廉で潔癖なリオンさんの考え。

 人の黒くて暗くてどうしようもない部分を見て、摩耗して尚、それでも正義でありたいと思う輝夜の考え。

 

 同じく正義を志していても、この場を見てそれぞれ違う言葉が出るのは当然か。

 

「あーあーうるせぇうるせぇ。仲がいいのはわかったから、こんなところで言い合うなよ、お前等」

 

 二人の言い合いに白けた表情を浮かべたライラさん。

 この人も過去のことは何も教えてくれないので、想像でしかないが、過酷な環境で育ったであろうことが伺える。

 なんというべきか、『眼』が違うのだ。

 汚泥を啜って生きてきた人間特有の、何をしてでも生き残ることに長けた眼。

 

 みんな偉いなぁ。

 私のような棒振りだけの人でなしとは大違いだ。

 

「んで、お前も何アタシのこと見てんだよ? アタシに惚れたか?」

「すいません、つい」

「残念だったな、夜切。アタシには愛しの勇者様がいるから、お前の気持ちには応えられねえよ」

「勇者様? ……ああ、フィンさんのことですか。なら仕方ありませんね」

 

 一瞬なんのことだかわからなくなったが、二つ名というやつだったか。

 それにしても、フィンさんが勇者……勇者、ねぇ。

 私にはそんな大層なものには見えなかったが……ま、私の感想なんて誰も気にしない。考えるだけ無駄というものだ。

 何より、私は人にどうこう言える人間ではない。

 

「それに、お前が誰かと恋仲にでもなってみろ。極東姫様が黙ってないぞ」

「あらあら、わたくしの事をお呼びでございますかぁ? 小人(パルゥム)様」

 

 ほらな、そんな目で私に訴えかけてくるライラさん。

 さっきまで一触即発の状態だったのに、スッと輝夜がこちらに現れたことで、リオンさんは目を白黒させている。

 

 そんなリオンさん達の様子を見て、アリーゼさんは表情を少しだけ和らげると私たちに指示を飛ばす。

 

「みんな、まずは遺体を運びましょう。仲間に引き渡して、後は任せる」

 

 

「その後は、『寄り道』。……こういう時は、あそこに行くのが一番いいわ!」

 

 

 

 

「おお、綺麗ですねぇ」

「夜切にもそんな感性があったなんて、私驚きだわ!!」

「失礼な。美しいものは美しいと感じるに決まってるじゃありませんか」

 

 同意を得ようと他の人に視線をやれば黙って逸らされる。

 他人から見た時の、私の人物像が窺い知れた瞬間であった。

 私の事なんだとおもっているんだ。

 

 美味しいものを食べたら美味しいと感じるし、輝夜とか師匠とか美人をみたら綺麗だと思う感性くらい持ち合わせている。桜で彩られた山を見ればもちろん風流や風情を感じるに決まっているし、【アストレア・ファミリア】での生活もとても楽しいと思っている。

 世の中には世界が灰色に見える、なんていう人がいるらしいが、むしろ私は常に輝いて見えると言っても過言ではない。

 

 風に靡く黒と一条の銀閃があれば、それだけで私の世界は美しい。

 

 そんな私の返答に、くすりと優しく笑ってリオンさんと輝夜の方を向き諭す。

 

「現実を見つめるのも、志を持つのも、どちらも間違いじゃない。だからもう少しだけ、肩から力を抜きましょう」

「「………………」」

 

 

「厄介事しかねえダンジョンでも、この18階層だけはいいな。モンスターさえいなけりゃ、家を建てて住んでもいいぜ、アタシは」

 

 ゆったりとした空気が流れる。

 

「いいわよね、本当に楽園みたいで。……ねぇ、私が死んだら、ここに埋めてくれない?」

「……なっ」

 

 なんてことないような話をするように、輪の中へ投げられた。

 動揺したリオンさんの声が響きわたる。

 

「家じゃなくて墓か。そりゃいいな。くたばった後ならモンスターなんか関係ねぇ。アタシも乗った」

「私も〜」

「お洒落な墓にしてよね!」

「皆さんとならいいですね」

 

 しかしながらリオンさんの反応とは裏腹に、ライラさん、マリューさん、イスカさん、セルティさんが口々に賛成の意を示した。

 そんな【アストレア・ファミリア】のメンバーの様子に、リオンさんは激しく取り乱して叫ぶ。

 

「何を言ってるのですか!」

 

 私もリオンさんと同じで何を言っているんだという気持ちである。

 さっきの惨殺死体を見て、自分たちもそうなるかもしれないとでも思ったんだろうか。

 

「間に受けるなよ、リオン。冗談だって……半分はな」

 

 そういう冗談は、流石の私も笑えない。

 たとえ冗談だろうと、縁起でもないこと言わないで欲しいと思うのは、私の身勝手なわがままだろうか。

 ようやく彼女に居場所ができたのだ。

 

「私達冒険者だしね。いつ命を失うかわからないし……」

「それは、そうですが……!」

 

 否定しきることのできない言い分に、リオンさんは口ごもる。

 

「青二才のエルフめ。お前は死ぬ覚悟ができていないのか?」

「そ、そんなことはない! そんなことは、ないが……そうだとしても……」

「もしものためだよ、リオン。たとえダンジョンや闇派閥が関係なくたって、いつかは死ぬんだ」

「そーそー。ならその時は、好きな場所で眠りたいって話。リオンったら真面目すぎ」

 

 輝夜の言葉へうまく返事をすることのできないリオンさんに、ネーゼさんとイスカさんが続ける。

 その理論ならば、死ぬ時は私が一番始めだろうか。恩恵のないただの人間であるし。

 寿命的にも耐久的にも。

 

「……それでも、不謹慎だ……」

 

 リオンさんは顔を俯かせながら、訥々と思いを語る。

 

「私はそんな日は来てほしくない。いや、そんな日が訪れないように……私はこの時を守り続けたい」

「それがリオンの願い?」

 

 最後には、確たる意思を以って想いを、或いは、自身にとっての誓いを口にする。

 

「ええ。かけがえのない友と、共に在りたい。……おかしいですか?」

 

 そんなリオンさんの様子に【ファミリア】の皆さんは、静かにとても尊いものを見るような視線を送る。

 

「……ライラ、なんですか、その笑みは?」

「べっつにー? くっせーこと言ってんなぁ、このエルフ、な〜んて思ってないぜ?」

「エルフの中でも、お前のように面倒で意固地な者はいまい。その化石のごとき頭、もはや治らんなぁ。嗚呼、嘆かわしい」

 

 輝夜の皮肉も、普段とは随分と違って優しさの滲み出した声色。いつもなら隠すことのできていたそれも、リオンさんが相手だからこそ、溢れてしまったのだろう。

 

 

「どういうことだ、輝夜! 馬鹿にしているのか! 馬鹿にしているのですね!」

 

 しかしリオンさんはそれに気がつく様子はなさそうである。

 私も何か言うなんて無粋なことはしないさ。

 

「ライラも輝夜も褒めてるのよ! リオンのそれは、とても素敵な『正義』だって!」

「まったくそんな風には見えませんが……」

 

 

 

「いいか、夜切」

「はい。どうかしましたか?」

 

 リオンさんを可愛がる輪を抜け出してこちらへ輝夜が歩み寄ってくる。

 

「もしもの話だ。もし、私が死んだら───」

「輝夜」

 

 言葉を途中で遮り、それ以上は言わせない。

 聞きたくもないし、言って欲しくない。

 だから、私は輝夜が何か話す前に言葉を伝える。

 

「安心してください。【アストレア・ファミリア】の誰が死にかけようとも、必ず私が癒します。必ず」

 

 たとえ都市が火の海に包まれようと、爆発が起きて粉々になろうと。

 はたまた、隻眼の黒竜が世界に滅びを齎そうとしても。

 遍く全ての障害を私が斬り裂くから。

 

 だからどうか、どうか死なないで欲しい。

 

「もし私のいないところで殺されでもしたら、いかなる人間であろうと、一族郎党を滅ぼすので」

「夜切……」

 

 

「ダメに決まっているだろう馬鹿者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、そこのエルフか触っている兎は何だ?」

「はい?」

 

 輝夜の指すほうを見れば、白い兎がリオンさんの足下にじゃれついている。

 どこかの猫被りと違って貴方はとてもかわいい、なんて言いながらすごいなでている。

 

「あれ? ヨミ、そんな風になれたんですか?」

「せ、精霊様?!」

「ええ、間違いなく。常に一緒にいますから、気配を間違えることはありません」

 

 ぴょんと跳んで私の頭に乗ってくる兎──もといヨミ。

 腹の辺りを抱えて、胸元に連れてくる。

 くふ、でろーんと伸びててかわいい。貴方、ずっとこのままでもいいですよ。

 

「変身できるのか。精霊ってすげーな」

「みたいですねぇ。今初めて知りました」

「かわいい! 私もさわっていいかしら?」

 

 アリーゼさんの声に、ヨミは私の頬をぺしりと叩いてから跳び移る。

 わぁ! と顔を輝かせて、恐る恐ると言った風に撫で始めた。他の団員の方々もアリーゼさんとヨミを囲って、お触りしている。

 ずっとそのままは嫌らしい。ちぇ、かわいいのに。

 それは兎も角……うさぎだけに? 

 

「うちで飼っていいですか?」

「私も賛成するわ! だって、こんなにかわいいもの!」

「飼うも何も、そもそもヨミってんならウチに住んでんだろ」

 

 確かに。これからはホームに神出鬼没の兎が現れると言うことか。

 もしかしたら、アストレア様が膝の上にヨミを乗せて撫でている様子を見られるかもしれない。

 …………何だか笑いが止まらない気が。

 

「その気持ちの悪い笑みは、何を想像されたので?」

「夜切お前なんかおかしいぞ!?」

 

 失礼な。気持ち悪くなどない。

 私は人と動物が戯れているのを見るのが好きなのだ。なんだか癒される感じがして。

 

 

 

 

 

「……たのしいなぁ」

「だろう?」

「オラリオに来てよかった」

 

 ダンジョンの中であるとは思えないほどゆったりとして、優しい時間が流れているこの空間。つい気が抜けてしまっていたのか、ポツリとこぼれ落ちた私の言葉。

 それを拾い上げた輝夜に、横から囁くように声をかけられる。

 その言葉に頷き輝夜の方を向けば、大切な宝物を見るときのような表情で【アストレア・ファミリア】の方々を眺めていた。

 

 それは、ついぞ極東では私が見ることのできなかった──彼女が見せることはなかった表情で。

 

 暗く深い泥に絡まり、真っ暗な闇の中で必死にもがいていた彼女が、明るく清廉な日の当たる場所で、自分の居場所を見つけられた事を確かに理解した。

 

 そっか。

 

「いいな」

 

「ん? 何か言ったか」

「……いや、何も言ってませんよ」

 

 漏らすつもりのなかった言葉が漏れる。

 輝夜にはっきりと聞き取られなかったのが、幸いか。

 

 輝夜は私の表情を見て怪訝な顔をすると、大丈夫かと心配そうに尋ねてくる。

 問題ないと私は答えたが、輝夜の雰囲気から感じとるに、どうやら問題ないようには思われていないらしい。

 

 

 私のような人間では、彼女のその表情を引き出すことなど出来ないのだと、そんな事はわかりきっていた。

 そう、わかりきっていたことだったのだ。

 わかりきっていたことだけど……いざ目にすると、少し思うところがある。

 

 最後に彼女が笑っていれば、私はそれでいいのだ。

 

 それで、よかったはずなんだけどなぁ。

 

 もう一度、輝夜の横顔をちらりと盗み見て思う。

 息を吐き上を見上げれば、ダンジョンの中とは思えないほど澄んだ青空が広がっていた。

 




今話の要約。
自分の知らない表情を引き出せる上に、あの子の居場所なアイツが羨ましくて仕方ない。

夜切が重い男になってしまった。

次回はそんな青い悩みを輝夜にさっくり切ってもらって会議かな。

前書きでも書きましたが、あと少しでバーが埋まります。
面白いと思っていただければ、評価をよろしくお願いします!!!

アーディちゃんについて

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