オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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会議の始めの言い合いはガチなんでしょうか?それとも茶番?
多分、普通に仲悪いんだと思うんですけど。
一般大学生の私にはちょっと難しすぎる。


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「各【ファミリア】代表、揃ったな。ではこれより、定例の闇派閥(イヴィルス)対策会議を始める」

 

 ギルド長のロイマン氏の号令により、会議が始まる。

 私が今いるのは、ギルドの会議室。オラリオに存在する【ファミリア】の多くがこの会議に参加しているのだ。

【アストレア・ファミリア】の下っ端新人の私がなぜこの場にいるかと言えば、偏にヴァレッタ生捕りの経緯を説明させようとのことらしい。

 ギルドに顔を出したのは初日とあの双子のエルフと出会った時の2回だけなので、呼び出されるのも当然か。私の人間性やら能力やらを実際に見たいということだろう。

 

「その前に、現状の体たらくはなんだ、お前たち! 連日のように襲撃は絶えず、つい先日には大規模な奇襲さえ許しおって!」

 

 え? 待て待て待て。その口ぶりからすると、炊き出しの日にギルドは闇派閥(イヴィルス)の襲撃を想定していなかった? あるいは、襲撃を防げると思っていた? 

 …………いや、いい。私のような雑兵が何か言うべきではないのだ。

 

「さっさと害虫を駆逐してえなら、闇派閥(イヴィルス)も追ってダンジョン攻略も進めろなんざ、間抜けな注文を押し付けんじゃねぇ豚が」

 

 それに対していきなり暴言をぶつける猫人。

 おかしい、私の知っている猫はもっとこう可愛げのあったはずだが。

 ……春姫と会いたくなってきたなぁ。あの子は狐だけど。

 

「『遠征』に行った帰りに都市中を回らせやがって……頭の中身まで畜生に変わりやがったのか?」

「し、仕方なかろう! ゼウスとヘラが消えた今、都市の内外にオラリオの力を喧伝するのは急務! でなければ、第二、第三の闇派閥(イヴィルス)を生みだしかねん! 迷宮(ダンジョン)の『未到達領域』に辿り着き、オラリオの威光を示さなければ世界にも余計な混乱が……!」

「てめえの趣味の悪い席が後生大事だと、素直に吐きやがれ。その脂ぎった体で権力にしがみ付きやがって」

 

 ……これ本当に会話をする気があるんだろうか? 

 私もう帰っていい? 孤児院に行く予定もあるから早く終わらせてもらいたいのだけれど。

 ヨミは今朝方ヴァレッタを回復して帰ってきているから、子供達に兎なヨミを見せてあげられる。くだらない会話に興味ないから早く終わらせてくれ。

 そういえば、シャクティさんはここにいるけど、ヴァレッタの尋問は終わったのだろうか? 

 

「アレン、止めよう。話が進まない。率先していがみ合う必要はないはずだ」

 

 妥当な指摘、ついでに言うならロイマン氏にも言ってほしい。ギルドと【ファミリア】の連携が取れていないから、こんな事態になってるんだよと。

 しかし、残念ながら、それを言ったら余計な話が伸びること間違いなしだ。

 

「その口で俺の名を呼ぶんじゃねえ、小人族(パルゥム)。虫唾が走る」

 

 さては君、育った環境がよくなかっただろう? 

 今の【ファミリア】に入ってからも、言葉遣いを正すように教わらなかったのだろうか。

 

「意思の疎通さえできない眷属の態度、神フレイヤの品性が疑われるな」

 

 フレイヤ様の眷属だったの? 女神様的には眷属に美しくあることは求めないのか。それとも、ありのままのあなたが一番美しいのよ的な考えなのだろうか。

 別になんでもいいのだけれども。

 

 いや待て……アレンと呼ばれていた猫人と、リヴェリアさん、ロイマン氏の会話が全て茶番で、各々が代弁者として冒険者とギルドの軋轢を避けるのが目的だととしたら? 

 美の女神が言葉遣いを指摘しないか? と思ったが、あの言葉遣いや態度すら演技で本当はものすごく丁寧な人という可能性もある。

 

 そもそも、常識的に考えて会議が始まっていきなり冒険者に罵倒をし始めるギルド長や、それに対して暴言を吐く冒険者、不仲とはいえ挑発するようなことを言うなんて無駄なことを、都市最大派閥の二つが意味なくするわけがないだろう。

 

「もう既に帰りたい……なんで初っ端から殺気で満ちてるんですか、この会議……」

「アンドロメダさん、大丈夫ですか? 私のお茶飲みます?」

「いえ、遠慮しておきます……今はあまり口にしたくないので……」

「【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の険悪さはいつも通りでございますから。気にするだけ無駄かと〜」

「そういえば、アンドロメダさんのところの団長様は?」

「私に押し付けてどこか行きましたが??」

 

 どうやら藪蛇だったようだ。

 主神と団長、殴る。絶対殴る。なんて、呪詛を撒き散らし怨嗟の声を聞かなかったことにして会議に集中する。

 

「ロイマンを庇うわけではないが……先の奇襲を食い止められなかったのは儂の責任だ。詫びのしようもないわ」

「白昼堂々、しかも往来の中心での突然の凶行など、予想できていたとしても止められる者ではない。ましてや【殺帝(アラクニア)】の仕業となれば」

「フィンや我々が想定していたのは『爆発物』による混乱……」

 

 ガレスさん達に伝えていたのが仇となってしまった。そう言って顔を伏せるシャクティさん。

 

「『爆発物』? どういうこと?」

「『撃鉄装置』、あれの使用用途は『爆弾』の製造ではないかと踏んでおった、ということじゃ」

「スイッチを取り付け、誰でも作動できる『爆弾』と化せば十分脅威になりうる」

「魔剣や魔道具(マジックアイテム)とも異なり、戦闘の心得のない『信者』でも設置及び作動できる。警戒していたのだが……山が外れたか」

 

 或いはと続け、まだ切り時ではないと溜め込んでいるかとはリヴェリアさんの弁である。

 

 なるほど。確かに爆発物だと思ってたら魔剣による爆撃を起こされちゃったら仕方ないよね! 

 …………なんて言うわけないだろう。爆発物だろうと、魔剣での爆発だろうとどちらも似たようなものだ。あれだけ装備していれば目立つ魔剣による爆撃を防げないなら、目立たない爆発物による攻撃など、もっと防ぐ手立てがないだろうに。

 

 まさかとは思うが……そもそも避難計画なんて立てられておらず、昨日の祭りは囮にでもしたか? 

 

 

「あくまで予想にすぎなかったというのが一点。もう一点は警備を厳重にするあまり、敵の動きを誘いにくくしたくなかった」

 

 以前から思っていたが……ライラさんは男の趣味が悪いと言わざるを得ない。彼のどこがいいんだろうか? 

 私の中ではフィンさんどころか【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の評価は下がり続ける一方である。

 

「勇者様の中では、あの奇襲さえ予定調和であったと? 犠牲者の数も算盤で弾いて、小を切り捨てたので?」

 

 小を切り捨てたどころの話ではないし、あの数を丸ごと囮としたなら正気ではない。

 やるならせめて計画を共有しておけと伝えてあげようか? 

 

「被害の規模までは読めなかった、と言っても言い訳にしか聞こえないだろう。が、おかげで敵の本隊を叩くことができた」

 

 削れた闇派閥(イヴィルス)の人員と、こちらの被害は釣り合ってるのだろうか? 

 そもそも、闇派閥(イヴィルス)に与すのは、愛する者が殺されたり死んでしまったりした人間だ。いくらフィンさんが本隊を潰そうと、潰した以上に生まれている残された人達がいる限り、何も解決しない。

 

「大した勇者がいたもんだな」

「全くだ。常に選択を迫られる今の状況と、それを覆すことのできない自分がつくづく嫌になる」

 

 ギスギスとした空気感が部屋全体を伝播する。

 

「──はい、この話題ヤメヤメ! 私こんな不景気な話聞きたくないわ! 嫌な気持ちになってお菓子をやけ食いしてしまいそう!」

 

 そんな空気を一声で吹き飛ばしたのは、我らが団長アリーゼさんだった。最大派閥の言い合いに割って入った彼女を見て皆が驚いている。

 輝夜に至っては、頼むから余計なことと調子に乗るのだけはやめてくれと言った表情である。

 

「だってそうじゃない! みんな都市を守るために最善を尽くしているのに、それを責め合うなんておかしいわ!」

 

 ハッとした表情を浮かべるのは冒険者達。フレイヤ派、ロキ派に別れて彼らもギスギスしているのかと思っていたが、反応を見る限りそうでもないらしい。

 

「反省するところはする、いいところは称え合う! それが正しい話し合いというものよ! 子供にだってわかるわ!」

 

 胸を張って自信満々にそう主張するアリーゼさん。ほとんどの冒険者がそんな彼女の姿に毒気を抜かれたようだ。身体から余計な力が抜け、先ほどと比べるとかなり落ち着いている。

 

「…………そうだね、君の言う通りだ。さぁ、建設的な話をしよう」

 

 

 

 

 

 

 

「今日まであった事件、及び伝達事項はこれくらいかな。他に共有しておきたい情報はあるかい?」

 

【ガネーシャ・ファミリア】による闇派閥(イヴィルス)の倉庫制圧時に、凄腕の魔法剣士らしき女と遭遇し、軽くあしらわれたこと。

【フレイヤ・ファミリア】のアレンさんとオッタルさんによれば、アダマンタイトの壁を突き破った手練れの戦士。しかも見立てによれば、低くともLv6であるらしい。

 

「輝夜、まさかとは思いますが、アルフィアさんじゃないんですか?」

「しらん。だが、あの女なら【ガネーシャ・ファミリア】を戦闘不能にするくらいできるだろうな」

「しかし、フィンさん達は考えてもいないように見えますよ」

「私達は前に接触した時点で、アストレア様が【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】には伝えてくださった」

 

 その上で関係ないという判断をしたのだろうと輝夜。

 本当に問題ないのか? とは聞かない。

 

 

 

「先日の襲撃でヴァレッタ・グレーデと交戦及び捕縛しました」

 

 本当か? と疑いの視線が私に集中する。というより、こいつは誰だという感じだろうか? 

【アストレア・ファミリア】に新人が入ったとは知らせていたが、レベルは伝えていなかったし、なんの実績もない新人がLv5の闇派閥(イヴィルス)幹部を拘束したと聞かされて、それを疑うのは当然のことだろう。

 

「そもそも、てめぇは誰だ?」

「失礼しました。私、【アストレア・ファミリア】に先月から所属しております、月咲夜切と申します」

「一月でLv5を拘束できる? 馬鹿を言うんじゃねぇ」

 

 圧を放ちながら、私を睨め付けてくるアレンさん。

 この言い方をすると、私が冒険者になって一ヶ月だと思われてしまうのか。

 

「ここへ来るまで、それなりに戦場に身を置いていましたので。心得はあります」

「なにがそれなりにだ、阿保」

 

 輝夜はちょっと静かにしていてください。

 

「ならてめぇは、Lv5以上の実力があんのかよ」

「モンスターが相手となるとわかりませんが、対人でしたら」

 

「アレン、彼が【殺帝(アラクニア)】を」

「喉を潰し脚の腱を切った後、腕を折り顎を砕くことで、反抗できないようにして拘束しました」

「私も確認しているが……それはもう酷い有様だった」

 

 顔をしかめてそう言うシャクティさん。

 私としては、結局治せたのだから問題ないだろうという感じである。

 是非とも一度極東に来てもらいたいものだ。オラリオなんて目じゃないレベルで頭おかしいのがたくさんいるから。

 と、そこでアンドロメダさんが声を震わせながら尋ねてくる。

 

「よ、夜切さん。それ……本当ですか?」

「ええ、まぁ、かなり手こずりましたが」

「付け加えるなら、【殺帝(アラクニア)】を蹴り飛ばして壁打ちしていらっしゃいました」

「手こずったって……反抗心を潰すのに?」

 

 輝夜が余計なことを付け加えた。

 アンドロメダさん? なんで私から離れるんですか? さっきまで割と近かった気がするんですが? 私、敵の幹部捕らえたんですよ? 

 リオンなんて人を私に紹介したんですか、じゃないですよ。

 というか、この場にいた人間ほとんどから距離を取られた気がするのはどうして? 

 

「んん、現在は【ガネーシャ・ファミリア】の牢で拘束されているはずですから、フィンさんも向かってはいかがでしょうか?」

「そうだね。この会議が終われば、僕も一度そちらに加わろう」

 

 周りの人間の態度に、なんともいたたまれない気持ちになったので、話を終える意味もこめてフィンさんに話を戻す。

 

「さて、最後になるが……『本題』に入る」

 

 私の意図に気がついてくれたのか、元々切り出すつもりだったのか。どちらにせよ、ヴァレッタさんについては一区切りを付け、『本題』へと話題は移された。

 

「【ヘルメス・ファミリア】の偵察によって、闇派閥(イヴィルス)の新たな拠点が見つかった」

 

【ヘルメス・ファミリア】……確かアンドロメダさんの所属しているところか。彼女曰く、主神と団長が問題児すぎて辛いだそうだが、能力のある問題児らしいことが察せられた。

 実力はあるのに、どうにも頭のおかしい人っているよね。

 

「廃棄された施設を利用しているようです。これまでと異なり、かなりの規模……それも三つ。内部までは探れませんでしたが、一般人を装った三原の数からいっても、相当に『臭う』。おそらくは『本拠地』と言っても過言ではないでしょう」

 

 座っていた椅子から立ち上がり、淡々と過不足なく情報を並べていくアンドロメダさん。先ほどまでのなんとも情けない顔とはあまりに違っていて、凛々しい。

 情報の精度に自身があるのだろう。

 

「情報を精査し、ギルドも敵のアジトだと判断した。よって、この三つの拠点同時に叩く」

「一つは【アストレア・ファミリア】が行くわ!」

 

 普段からもっと自信を持てばいいのにと、割と最低なことを考えていた私を置いてアリーゼさんが声を上げた。

 隣からした食い気味な立候補に、アンドロメダさんは肩を跳ね上げ、フィンさんは苦笑している。

 

「本拠地に突入する【ファミリア】を募るんでしょう? 機動力なら【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】にも負けはしないもの!」

「フィン、我々も【アストレア・ファミリア】と連携する。それならば頭数も十分だ」

「わかった。なら予定通り、一つは僕達が。もう一つを……オッタル、頼めるね」

「いいだろう……」

 

 とんとん拍子に決まっていく突入班。

 都市二大派閥が参戦を表明するだけで冒険者達の士気が上がっている。私の思っている以上に信頼されているみたいだ。

 

「話の腰を折るようで恐縮ですが、罠の可能性は?」

「それも見越した上で動く。突入隊に十分な戦力を割くことはもとより、他の区画にも目を光らせる」

 

 それなら民衆もある程度は守れるだろうし、問題はなさそうだ。どこまで本気で民衆を守るつもりがあるのか知らないが。

 私は詳しく知らないが、力のある派閥にギルドから協力要請を飛ばして各区画の警備に当たらせるようだ。ロイマンさんもそこでごねない辺り、フィンさんのことはかなり信用しているように見える。

 

「【ヘルメス・ファミリア】は都市全域に警戒を。異常があった際、迅速な情報伝達を頼む」

「了解しました。派閥のものに徹底させます」

 

「あ、ところでシャクティさん」

「どうかしたか?」

「ヨミ──付けていた精霊は会議の始まる少し前に帰ってきたのですが、回復してしまってよかったんですか?」

「は?」

「シャクティさんの指示では? 変な時間に帰ってきたなとは思いましたけど」

「待て、夜切。そんなはずはない」

「【ガネーシャ・ファミリア】の人の指示に従うように伝えておいたので、回復の指示が出ていたことは間違いないと思うのですが」

 

 シャクティさんはハッとした表情をすると、すぐに顔を歪めた。躊躇いながら重苦しく開かれた口から言葉が発せられる。

 

「私は…………私は間違いなく、指示をしていない」

 

「「「?!」」」

 

 告げられた事実に、私を含めた全員が目を見開く。

 ヨミが指示を間違えた? いや、かつての戦場で、仲間の顔を全員覚えて負傷すれば即座に回復してみせたヨミだ。こんな簡単な指示を違えるはずはない。

 

「シャクティ、今すぐ【ガネーシャ・ファミリア】に戻ってくれ! ヴァレッタの……いや、【ファミリア】の確認を!」

 

 フィンさんの指示にシャクティさんが駆け出そうとすると、まるで見計らったかのような折に、【ガネーシャ・ファミリア】の団員が駆け込んでくる。

 

「会議中申し訳ありません! 【殺帝(アラクニア)】が、逃走しました!」

「被害は?」

「看守が五名、全員殺害されました! その他囚人も脱獄! 団員を捜索に当たらせています!!」

「わかった。見つかり次第捕縛し、牢屋に連れ戻せ」

「はっ!」

「だが、【殺帝(アラクニア)】は追わなくていい。無理に追えば余計な犠牲が増えるだけだ。やつも逃走中に騒ぎは起こすまい」

 

 シャクティさんの指示にはっきりと返事をした団員を見送り、扉が閉まることを確認すると、私を含め部屋にいた全員が重苦しいため息をついた。

 

「すまない。【殺帝(アラクニア)】を逃してしまったのは私たちのミスだ」

「面倒なことにはなったが、僕達のやることは変わらない。三日後『掃討作戦』を行う」

 

 三日後の作戦が終われば、一度子どもたちに会いに戻ろう。こちらで買ったお菓子を持って行けば、きっと喜んでくれるはず。

 子どもたちのために、私達冒険者は一丸となって、さっさとこのくだらない戦を終わらせてしまおうじゃないか。

 

「気取られないよう、最新の注意を払ってくれ。それでは、解散」

 

 

 

 

 

「はい?」

「ですから……朝早くに出てから帰ってきていないのです」

 

 会議がようやく終わり、私は孤児院に訪れていた。昨日言った通り、子供達の様子を見にきた訳であるが、どうやら上の子はいないらしい。

 こんな時に家出とは、なかなか元気な子である。

 

 …………いや、それはおかしい。

 あんなに下の子達を大切に思っていたあの子が、それを置いて家出なんてするとは思えない。

 そもそも、下の子達はどこに行った? 

 

「……下の子達はどこにいらっしゃるか伺っても?」

 

「………………すみません、まだ、心の整理が……ついていないので」

 

 そっか。

 

「いえ、不躾な質問でした。私はあの子を探してきます」

 

 

 

 

 

 見つけたらここへ連れてきますとだけ伝えて孤児院を出る。

 

 朝早くに出て、もう日が沈みかけているのにも関わらず帰ってきていない。先生と下の子達は昨日の襲撃で……。闇派閥(イヴィルス)の人間の多くは来世だか、天界だかで愛する人と再開することを願っているらしい。

 

「…………ふぅ」

 

 小さく息を吐き、くだらない思考は首を振って払いのける。

 

 敵の本拠地を叩くのは3日後だったか。なら、あと2日は少女を探すことができる。

 ひとまず、今日は用事ができたので一晩開けるということを【アストレア・ファミリア】の皆さんに伝えなくては。一度ホームに帰ってそれから……ネーゼさんに頼んで嗅覚を貸してもらおうか。

 

 ネーゼさんに断られて私一人でやるなら、何の手がかりや証拠もなしに、人攫いやらなんやらの多いこの都市で少女探しか。

 私は比べるまでもなく、探すよりも行方不明にさせる方が得意なのだが……まぁ、私が頑張ればどうにかなる可能性があるというなら、持てる力の全てを以って探そうじゃないか。

 

 だって、子どもは幸せになるべきなのだから。

 

 




ヴァレッタさんには逃げてもらいました。
そろそろ原作から逸脱させたいところ。

名前が出てきたので、別に本編に関係ない夜切と春姫の関係を
・春姫→夜切:私たちで言う近所の綺麗なお姉さん的なやつ。ただし、神様にも勝るとも劣らない美貌を持った。という注釈がつく。
・夜切→春姫:膝に乗ってきて尻尾を絡めたりしなだれかかってきたり、すごく懐いてくれるわんこ。わしゃわしゃしてた。貴族の娘だなんて知らない。

このままいけば、いつか未来で女神の魅了を弾くくらいには男性観破壊されてるので、いつか間話で書きたい。
夜切くんと春姫達が同年代なら、ヒロインは春姫だった。逆に上なら白黒エルフ。

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正義失墜の視点

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