オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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私は夜切と輝夜がなかよししてるのが見たかったのに……なんでこんなことに?

本編の少し先の未来(七年後)のお話です。
こんな未来になってるといいなぁという。





間話 グランカジノin夜切
グラン・カジノ①


「あぁん? 見ねえ顔だが……こんな場所に何の用だい、嬢ちゃん?」

「アンナ、アンナ・クレーズという名前に心当たりはありませんか?」

「なんだぁ? あの娘の知り合いか?」

「ええ」

「上玉だったぜ、あの娘。味見の一つくらいしておきたかったなぁ、はっはは!」

「はあ……? まあ、それはなんでもいいですから」

「あん?」

 

 淡々と答える女に、怪訝な声を上げる冒険者達。

 

「彼女が今、どこにいるかだけ教えてください」

「あぁ〜? 教えてやってもいいが、タダって訳にはなぁ?」

「お金ですか? あまり待ち合わせはありませんが」

「嬢ちゃん、カードはできるかい?」

 

 女の不安を滲ませた声に、ニヤリと笑って男はゲームの提案した。

 

「カードですか?」

「ああそうだ。俺は暴力は好かねえ……だからゲームをしようじゃないか」

 

 下を向き口元に手を持っていって悩み始めた女に近づき、男は肩に腕を回す。あわよくばという腕を振り払おうと身震いするも、弱い力ではそれが叶うことはない。

 そんな女の非力な様子に下卑た笑みを浮かべながら、耳元に顔を寄せ劣情を多分に含んで囁く。

 

「俺は情報を賭ける。嬢ちゃんは金か……自分を賭金にしてもいい」

「なるほど」

「あの時も、冴えねえ親父とこうやって勝負して、娘を譲ってもらったのさ」

「そうですか。で、行うゲームはなんです?」

 

 いつの間にかするりと腕を抜けていた女は淡々と尋ねる。

 

「ポーカーはどうだい?」

「ぽーかーですかぁ。あまり得意ではありませんね……」

「嫌ならこの話は無しだ。どうする、嬢ちゃん?」

「わかりました。やりましょう」

「いいねえ! そうこなくちゃあ!」

 

 女の即答に、手を打ち喜色を浮かべる冒険者達。

 出入り口は既に塞がれ囲まれている。

 

「それで、何を賭ける? 金か、身体か、何でもいいぜえ?」

「では私は身体を」

 

 またもすぐさま答える女に、男達の汚い歓声が上がり騒がしくなる。

 女の顔は伺うことはできないが、

 

「へへへ、俺はアンタみたいな女を何人も歓楽街に売ってきた。負けちまったら、その身体でなんとかするしかないだろ?」

「そうですねえ。まあそれだけでは無いとも思いますが」

「じゃあ、早速ゲームを」

「いえ、私の身体が準備できていません」

「今から楽しみだって?! ははは、とんでもねえ淫乱じゃねえかよ!」

 

 一連の会話を通して声色が一切変わっていないことに気がつかず、情欲を隠すことなく騒ぎ立てる男達。

 

 だがそれも一瞬の事。

 

 目の前が赤く染まり静まり返る。

 

「は?」

 

 胸元から取り出された短刀が振るわれ、女の腕が宙を舞い、心臓の音に合わせるように血が噴き出した。

 

「ああ、失礼。見苦しいところをお見せてしまいましたね」

 

 静まり返った酒場を見渡して首を傾げると、少しして納得がいったように頭を下げた女。

 右手に握った短刀をくるくると手の中で遊ばせている。

 

「な、何をして?!」

「ですから、私の身体を賭けたんですよ?」

 

 やはり先程と変わらず淡々と答える女。

 今となってその異常性に気がついた時にはもう遅かった。

 

「ほら、私の左腕。肩から下。死神をも殺せる左腕ですからねえ? それなりに価値は高いはずですよ」

 

 遊ばせていた短刀を放り投げ、鞘をうまく合わせることで収める。それを胸にしまい、切り落とされた腕の付け根を持ってぷらぷらと手を振らせる。

 

「腕のことでしたらご心配なさらず。ほら、この通りいくらでも癒せますから」

 

 淡い光が切断面を包むとたちまち出血が止まり、新たに傷一つない美しい腕が生まれる。

 こんな事ができる人間を、男たちは【ディアンケヒト・ファミリア】の【聖女】しか知らなかった。明らかな眼前の異常事態に、もはや喚くことすらできない。

 

「そういえば、金が無くなれば体を賭けるのでしたね? あなた方も情報がなくなれば、体を賭けてくださるということでしょう?」

 

 フードで隠れていた女の顔が顕になる。

 

「安心してください。このとおり全部綺麗に治せますから」

 

 そう言って凄惨に笑う女を見て、男たちはようやく理解した。

 この場においての獲物は女ではないのだと。己は決して強者ではなく、狩られるだけの弱者なのだと。

 

「あなた達は暴力が嫌いなようですが、私は暴力が大好きなんですよ……しかし弱いものいじめは好かない」

 

 動けない男たちの首に一人ずつ、短刀を添えて歩きながら訥々と語る。

 

「どうぞ、そちらへお座りになって?」

 

 女が席に着けば、添えられた部分から血が一筋流れる。

 

「さぁ、ゲームを始めましょう」

 

 その夜、路地裏の汚い酒場から男達の絶叫が絶えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、私これから攫われた彼女を攫ってこようと思います」

「おいおい、せっかくのサシ飲みってのに他の女の話かぁ? アタシは悲しいぜ」

「他の女の話って……まあ、そう言われればそうなんですかね?」

 

 一昨日とは打って変わって、賑やかな酒場で私はライラさんと二人向かい合って座っている。

 今日はお互い休みということで、アストレア様が私の計画を後押ししてくれているのかと錯覚するほどだ。

 

「せっかくアタシもおめかししてきたってのに」

 

 おめかし。

 

「なら私もしっかり正装できましたから釣り合ってますね」

「正装でこんなとこくんのはアホだろ」

「それぶーめらんってやつですよね?」

 

 ちなみに今着ているのは、アマテラス様にいただいたものなので相当良いものである。まあ正装なんて茶化してみたが、少し洒落た普段着と言っても問題ない。

 頂き物は使ってこそ、である。

 

「やっぱりアホだな」

 

 最近私の扱いが雑で悲しい。

 七年くらい前はもっと客人として扱われて……たか? 

 剣狂いだとか、剣キチだとか闇派閥だとかそんなことを言われていた気が……。

 あれ? 

 もしかしてあまり変わってないんじゃ……??? 

 

 ま、まあ別にいいだろう。それはいま重要じゃないのだから。

 話を戻そう。

 

「私がよく行く花屋にアンナさんという方がいるのですが、その方が賭博の賭け金となってしまい、連れて行かれたらしいのです」

「物騒だな。まだ噂になるような人攫いだとか人身売買とかあんのか」

「そういうことは、私よりライラさんの方がよっぽど詳しいでしょうに」

「乙女の口からそんな言葉言わせんなよ恥ずかしい」

「???」

 

 何言ってんです? 

 グラスを大きく呷って、ああぁと乙女にあるまじき声を出しながら顔をうずめる。

 私は酒がそこまで得意では無いのでちびちび水を飲んでいる。ヨミが冷やしてくれるので美味しい。ついでにライラさんのも冷やしてあげてる。

 

「んで? どこに売られたって?」

 

 顔を上げたライラさんが半眼で尋ねてくるので、聞き出したことと探ってもらった情報を話す。

 

「まずは交易所、そしてそこから」

「歓楽街かぁ? 腐ってんな」

「いえ、カジノの人間に。ということらしいですよ」

「おいおい、本当にそれこんなところで話していい話か?」

 

 それもそうだ。

 あまり人に聞かれていいことはないだろう。

 

「うち来るか? 団長達もいるし」

「いやあ、それはちょっと困ると言いますか、面倒なことになりそうと言いますか」

「なんでだよ? いいだろ別に。やましいことがあるわけでもないんだし」

「『幼女を家に連れ込んだ』なんて噂が立つのは嫌なんですが……仕方ありません。うちに来てください」

「誰が幼女だ。アタシは23だっつってんだろ」

「本当ですか? 随分と若く見えますよ」

「ロリコンって噂流すぞ」

「流石に不名誉すぎるのでやめてください」

 

 荷物を持って立ち上がり、金出せというライラさん。

 金出せ??? 

 

「あ、会計はコイツが払うんで。先店の外行ってんぞ」

「私のお小遣い少ないんですけど」

「お、そんなこと言っていいのか? アタシ帰っちゃおっかなぁ?」

「いやあ、すごい払いたくなってきました! ぜひ、是非是非私に払わせてくださいよ」

「じゃあ頼むわ〜」

 

 あぁ、わたしのなけなしの6000ヴァリスがあ。

 

 

 

 

 

 

「そもそもあそこはギルドの管轄外、アタシ達が口出しできるもんじゃねーぞ」

 

 シャクティはなんか動いてるらしいけどなと、グラスを呷りながら言うライラさん。

 所変わってここは私の住んでいる家、もとい【タケミカヅチ・ファミリア】の一室で、私の部屋である。

 そんな部屋で私は、タケミカヅチ様に黙って秘蔵の酒引っ張り出した。それを注いで接待中。

 後で二人で飲もうという話だったが、どうか許してほしいのです。人命に比べたら軽いものでしょう? 後でもっといいお酒買ってきますので許してください。

 

「大体お前何するんだよ? アタシ等に出来ることなんてほとんどねえぞ」

「ええ、ですから私が裏忍び込んでアンナさんを攫います【ガネーシャ・ファミリア】とお雇いが警備してますが、私からすれば穴だらけですねえ」

「馬鹿野郎。お前、それしてバレたらどうすんだよ。お前がお尋ね者になるのはいいけどよ、アタシらにも【タケミカヅチ・ファミリア】にも迷惑かかんだろ」

「ええ、ですから、これを」

 

 机に置いてライラさんに見せたのは一枚の招待状。

 

「アトレアス様夫妻? 誰だこれ」

「アスフィさんをヘルメス様の人に言えない行為の数々で脅して準備してもらいました」

「最低だなお前」

 

 私にバレるくらい杜撰な方が悪いのだ。

 

「それで? 夫妻ってんならお前ともう一人要るだろ?」

「そうですね」

「なら輝夜でも呼んで……だと流石に極東色がすぎるな」

 

 アリーゼ? ネーゼ? マリュー? と首を傾げるライラさん。

 

「やれやれライラさん。普段の勘の良さはどこへ行ったのですか?」

「……いやいやいや、待てよ夜切。一回落ち着こうぜ? それは間違ってる」

「いえ、私が選んだ最高の人ですから間違いなどあるはずがありません」

 

「ライラ」

「おい待て手を握るな、優しく包むな、呼び捨てにするな」

「結婚しよう」

 

 ガタッ!? 

 ん? なんか今隣の部屋から音が。

 

「嫌に決まってんだろ気色悪い!!!」

「なっ!? 嘘でしょう? 私の顔こんなにいいのに!」

「ざけんな! そういうことじゃねえよ! アタシを巻き込むなって言ってんだよ!!!」

 

 私が握った手をうざそうに振り払って叫ぶ。

 そんなふうに拒否しなくても……私だって傷つくのだ。

 

「でも、私の知り合いや友人にライラさん以外いい人がいないんですよ!」

「さっき巻き込むなって言ったばっかりだろうが」

「じゃあ逆に誰を連れて行けばいいんですか?」

「そりゃ、輝夜だろ」

「もちろん私も彼女を誘おうかなと思いましたよ」

「それが正解だろ」

「でも、私と輝夜でカジノに乗り込むって無謀でしょうに」

「いや、別にお前ら弱くねえじゃん」

「強くもないじゃないですか」

「お前はやる気がないし、大抵輝夜は引きが悪いな」

 

 だって大して面白くないし。仕事にもほとんど使わないし。

 

「こんな二人が欲望渦巻くカジノの最も繁盛しているところに行ってみたらどうなることか……身包みを剥がされて最後は血祭りですよ」

「一応聞いてやるよ……誰が?」

「カジノのオーナー」

「お前もう家から出るなよ危ないやつだな」

「万が一輝夜が連れて行かれてしまったら、私は何をするかわかりません」

「カジノの平和はアタシに託されてんの?」

「そうなりますねえ」

「なんで犯罪者予備軍、つーか犯罪者の手伝いをアタシが……」

「え? その言い方はひどくありません?」

 

 犯罪なんてしてないのに。

 私がしてるのは治安維持への貢献だけである。

 

「んで? それはいつの招待状なんだよ」

 

 ため息と共にそんな質問が。

 確かに確認してなかった。早めに相手を見つけろと言われたから、2日後とかだろうか? 

 

「ふむ」

「で、いつ?」

「明後日みたいですねえ」

 

 まっすぐに見つめ合う。

 

「帰る」

 

「あぁああああ!!! 待ってください待ってください!! 私も今日受け取ったんですよ!?」

「うるせー!? 知るかよ! ふっざけんな! 巻き込んでおいて明後日とかどうにもならねえだろうが!?」

「大丈夫ですから! アスフィさんをもう一度脅せば!」

「犯行予告を私にするなよ!?」

「どうせまだ仕事してるんですから問題ありません」

「ああ……そりゃまちがいねえ」

「ついでにヨミで疲労回復させてあげれば報酬になるでしょう」

「…………アタシは心底同情するぜ」

 

 何が? 

 とにかく、急いでアスフィさんのところへ向かって、ライラさんの服と私の服を作ってもらわなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はわわわ!! 夜切様が結婚!? あのお方は【アストレア・ファミリア】の……!」

 

 夜切とライラが慌ただしくアスフィのところへ走っていくのを、障子の隙間から見送った金狐は顔を真っ赤にして足をぱたつかせる。

 

「早くタケミカヅチ様にお伝えしなければいけません!!」

 

 一部始終を聞いていたはずなのに、都合の良い(都合の悪い)部分だかしか彼女の頭の中にはない。

 夜の街へ慌ただしく出ていった新婚の二人、そんなのってもう……! 

 

「そうしたら、アストレア様にも……ああ、何より輝夜様にお伝えしなければ!!」

 

 

 夜切の受難は……いや、ライラの災難は、まだ始まったばかりである。

 




ちなみに春姫の打出の小槌を夜切くんが受けても弱くなるだけだったりします。
自分の身体でやれることを限界まで突き詰めて出来上がっているので、変に動けるようになると感覚が狂ってしまうのです。
要するに自力のバフ以外は受け付けないピーキーすぎるキャラ。
だから集団に混ぜることはせず、単独で動かすのが効率がいいんですね。

次の話は、動揺するタケアスFと荒ぶる輝夜、巻き込まれるリューさん、置いてけぼりのアリーゼ達ですね。

正義失墜の視点

  • 夜切
  • リュー
  • 輝夜
  • その他
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