オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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お気に入りと評価が増えていてモチベーションも爆上げでした。
お気に入り・評価してくださった方ありがとうございます!!
日刊ルーキーでランキングに入っていてとても嬉しい………(感無量)

リューさんが、オリ主のことを名前+さん呼びするのは解釈不一致だっので苗字+さんに直しました


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「輝夜の友人? あいつに友人がいたのか? あの性悪腹黒猫被りのあの女に?」

 

「…………」

 

 えっと、輝夜? 一体全体何をしたらこんなに言われるようになるでしょうか? すっごいズタボロに言われてますよ? 私はあなたの友人としてとても心配しています。私はここまでの罵倒を生まれて初めて聞きました。

 そこらの盗賊もここまで言うことはなかった。いや、あいつらは学がないだけか。所詮盗賊、語彙も懐も貧相なのは仕方のないことよ。

 

「あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか? 本当に私は輝夜の友人でして、極東から今日到着しまして会いに来たのですが……」

 

 とても疑わしげに空色の瞳でこちらをみてくる金髪のエルフ。エルフは誰も彼もが美しい顔立ちをしているらしい。先ほど会ったリヴェリアさんも他に並び立つ者がいないんじゃないかと思うほどの美貌だったが、この少女も負けず劣らずの美貌を持っている。一応私は彼女のことを少女と表現したが、噂によるとエルフは長寿らしいので、少女かどうかはわからない。リヴェリアさんは間違いなく少女と言われる年齢ではないだろう。そういう雰囲気だった。

 しかし、オラリオに来てから色んな人を見たが、私の故郷とは違って様々な髪の毛の色だったり顔立ちだったりしてなかなか面白い。狐以外の獣人がいることもここへ来て初めて知った。あの耳頼んだら触らせてくれないだろうか? 

 

 思考がとんでもない方向へ飛躍してしまった。

 これも全部目の前の少女がとんでもない罵倒を始めたからだ。私悪くない。

 そんなことを思いつつ返答を待っていると、私の様子からようやく信じたのか少女が答えた。

 

「私はリオン、この【アストレア・ファミリア】に所属しています」

 

 リオンさんというのか。なんとも生真面目そうな方だ。リオンさんと何かする約束をしたら私が忘れていても、待ち合わせの時間とか考えて伝えてくれそうだ。

 

「先ほども申し上げましたが、私は月咲夜切と申します。輝夜に会いにここまで来たのですが、街では会えませんでしたのでホームがあるここまで来た次第です。…………わがままを言って申し訳ないのですが、彼女が帰ってくるまでここにお邪魔していてもよろしいでしょうか?」

 

「輝夜にここまで来てくれる友人がいるとは思えないが……彼女が帰ってくればわかることだろう。どうぞお入りくださいツキサキさん」

 

 リオンさんなんでそんな目で私を見るんだ。輝夜を訪ねてここまでくる人間がいるのかとか言わないであげてください。あなたの中での輝夜はどうなっているんですか? 彼女ぼっちなんですか? もしかしてファミリアではぶられてたりします? 

 そ、それはともかく私を中に入れてくれるらしいので大人しく着いていこう。

 

 ──────────────────

 

「ここが応接室になります。荷物はあまり邪魔にならない所へ置いておいてください。私はまだ仕事が残っているので、ツキサキさんは輝夜がくるまでここでお待ちください」

 

「ありがとうございます。リオンさん」

 

 リオンさんに促されて応接室までやってきた。外観からしてすごく綺麗な西洋建築だったから、内装も相当素晴らしいものなのだろうとは思っていたが…………正直想像以上であった。

 おそらく高級であろうソファに机。ガラス窓には何かの紋様の様な装飾が施されており美しい。部屋は隅々まで掃除されており埃があるようには見えない。おそらくかなりの値段がするであろう花瓶に花が生けられておりなんだがおしゃれだ。ここにひかれている絨毯も高額な物なのだろう。

 …………なんだこれは! 私が故郷で住んでいたあの部屋はここと比べてしまったら犬小屋ではないか! こ、これが経済格差か……。時折盗賊を襲って金品を得て、神様や子供達と悪くない暮らしをしていたはずなのに…………。私はこの部屋と外観だけで今まで積み上げてきた暮らしの価値観が壊されそうだ。神様は子供たちから援助を受けるなんて……みたいなことをおっしゃっていたが、多少の援助を受けてでも子供たちにもう少しいい暮らしをさせてあげるべきなのではないだろうか? ここと比べてしまったらあの神社なんて…………。

 まぁ、子供達は楽しそうに暮らしていたから問題はないか。

 それにギルドで聞くところによるとこの【アストレア・ファミリア】は、かなり有名らしいではないか。そうしたら、それ相応に稼ぎが多いということだろう。

 子供たちには極東へ帰ったときに、輝夜の住んでいる屋敷が広かった話をしてあげよう。きっと自分のことの様に喜んでくれるはずだ。あとは、お土産にいいものを買っていってあげよう。できればついでにお金も稼いで、彼女らにもっといい暮らしをさせてあげたいなぁ。

 

 なんて考えていたが、ここで輝夜が帰ってくるまで何もせずに待っているだけと言うのは、手持ち無沙汰で仕方がない。とはいえ、よその屋敷で適当にふらつく客なんて迷惑でしかないと私は知っているので大人しくしている他にないのだ。

 リオンさんが私の話し相手となってくれればいいのだが、彼女は何やらやることがあるらしく出ていってしまった。

 うーむ、やることがない。抱えている私の刀がカタカタと揺れて何かを主張してくるが、無視する。悪いな、流石に他人様のお家で刀に話しかけている不審者に私はなりなくないのだ。あとで、あとでかまってあげるからね? だからちょっと落ち着いてくださいお願いします。

 

 どうにか暇を潰したい。しかし部屋から出るのはやはりまずいだろう。そうなるとこの部屋でできることで、かつこの部屋を荒らさないでやれることだ。あとは、不審者にならないこと。

 

 じゃあ、持ち物の整理でもしようかな? 

 そう思いついて、持ってきていた風呂敷を広げる。あ、これこの部屋若干荒らすやつだ。…………申し訳ないなぁ、多分許してくれると信じよう。輝夜がお世話になってますと謝礼を持ってきたのである。いずれにせよどうせ広げることになるのだ、遅いか早いかの問題のはずだ。

 

 さて、まず風呂敷から出てきたのは、女性用のえんじ色が主の着物。これは輝夜への贈り物である。オラリオでは極東で仕立てられた着物はかなり高価なのではないかと思ったため持ってきた。彼女は普段紅色の着物を着ていたので贈るならこれかと思った。子供たちにも聞いたし、神様にも相談した。これなら間違いないだろう。

 

 次に取り出したのは大量の塩と茶葉。輝夜が世話になっているファミリアがあることは、手紙の内容から知っていたので何かお礼の品をと、思い準備した。

 本当は私の好きな煎餅や羊羹やらを贈ろうと思っていたのだが、ここへくるまでに砕けたり潰れたりしてダメになってしまうだろうと、神様に言われたので泣く泣く断念したのだ。私がせっかく買ってきて風呂敷に詰めてたと言うのに、神様に取り上げられてしまった。まぁ、そのあと子供達と一緒に食べたので別にいいのだが……私は輝夜とその友人らとも食べたかったのだ。

 そう言うわけで日持ちして形が崩れても問題ないものとして選ばれたのが、この茶葉と塩だったのだ。変なお茶はもらっても迷惑─一度神様への贈り物として届いた───なだけだが、私が持ってきたのはなかなかお目にかかれない高級品だ。きっと喜んでくれるだろう。塩は、オラリオに来る途中に寄った、塩の生産で有名な極東の街である。そこの塩むすびが美味しかったから買った。今思えば米を買ってくればよかったかも知れない。というか、オラリオに米はあるのだろうか? もしなかったら、私は生きていけないぞ。

 

 で、最後に出てきたのは筆と墨。子供達と神様が餞別にと言うことでくれた。子供達が私のために一生懸命考えてくれたと思うと、とても嬉しい。もらった時は思わず抱きしめてしまった。いい子に育ってくれていて私は……とても嬉しいよ。私のような人斬りになんて、なるべくならないでくださいね。

 まぁ、彼女らはどうやら冒険者になりたいようなので、人を斬るなんてことにはそうそうならないはずだ。

 彼女らがここへくるまでに闇派閥(イヴィルス)が壊滅しているといい。その犯罪者集団がいるだけで、人を切らなければいけない場面が多くなってしまうだろうから。

 

 私としてはいくらいてくれてもいいのだけど。

 たとえ犯罪者だとしてもオラリオの犯罪者だ。故郷の破落戸や、盗賊、人斬りなんかよりも強いのだろう。それらと斬り合いができると考えると……やはりここへ来たのは間違いなかったように思える。

 

 ──────────────────

 

 部屋の外に人の気配を感じて目を覚ます。

 どうやら少し眠ってしまったみたいだ。新しい環境に疲れていたのだろう。筆も墨もしっかりと風呂敷に包んでおいたし、謝礼も机の上に置いてある。部屋を見渡してもどこか酷く汚しているような感じもしない。強いていえば、私自身が旅路の汚れで汚いことくらいである。もしかして、割と問題か? 

 …………いや、一応毎日水浴びをしていたし、着物を洗ってもいた。だからそこまで汚くないと思いたい。

 今からどうにかすることはできるが、流石に他所様の屋敷で魔法を使うのはまずいだろう。どうやら詰んでいるらしい。

 

 どうにかしようとしていたが、部屋の外の人は待ってくれないようでゆっくりと扉が開いた。リオンさんかな? ようやくきてくれたのか。私は他所のお宅で、ひとりぼっち。寂しかったんだぞ。

 

「こんにちは、あなたが輝夜のお友達?」

 

 女神がいた。リオンさんが来たら、寂しかったですよ! とか言おうと考えていたが、そんなものを一瞬で吹き飛ばす完全な不意打ちだった。

 今の私の表情は目を見開いてとても間抜けな顔をしているだろう。しかし、それをどうこうするような余裕はない。あまりにも衝撃的だった。

 女神様が美しいのはアマテラス様のご尊顔を拝んだ時に知ったつもりだったが、この女神様は方向性が違った美しさだった。全ての子供達を愛しているような慈愛に満ちた表情、その善性が溢れんばかりに優しい雰囲気。言ってしまえば、とてつもない母性と善性が私を襲った。

 どうにか衝撃から持ち直し、座っていたソファから立ち上がり頭を下げる。

 

「し、失礼しました。私は月咲夜切と申します。輝夜の友人で、極東から彼女へ会いにここまで参りました。主神様にご挨拶も伺わず、部屋を借りてしまい申し訳ありません」

 

 どうしよう、全くおちつきそうにない。

 この方の神聖な雰囲気はどうにも、私のような人間にはつらい。「善」のおーらとでも言うべきものをを纏っているのだ。薄汚れているどころか、どろどろに汚れている私には眩しすぎる。

 輝夜さん。さてはあなた、この方の善性に絆されましたね? 幼い頃ですが、何か色々悩んでいた様子もあったし。本当に良い神様に出会えたようでよかったよ。

 

「ふふふ、いいのよ。輝夜のお友達が来てくれただけで嬉しいもの。私はアストレア。輝夜たちの主神よ。よろしくね」

 

「そう言っていただけますと、助かります」  

 

 微笑みを以て答えてくださるアストレア様。

 それだけで私など浄化されそうである。

 するとアストレア様は私の向かいにあるソファに座った。促されたので私も断ってソファへと座る。正面から見つめられると、私のことを見透かされる感じがしてなんとも恥ずかしい。母にバレたくない隠し事を暴かれているような気分である。まぁ、私に母がいた記憶はないのだが。

 

 ニコニコしたまま見つめられること数分。

 私から何か話すのもなぁと思ったので、アストレア様に合わせるように微笑みながら見つめ返していた。

 ……私はなにをしているんだ? 美しい神様と数分見つめ合うなど、なかなかない経験だろうが、どうにもいたたまれない気分になってくる。

 リオンさん助けに来てくれないかな? 正義の眷属なんでしょう? 私は困っているので手を差し伸べてください。あ、相手は正義の神(アストレア)様でしたね。

 

「…………何をされているんですか?」

 

 リオンさん! 絶妙な間できてくれた! ……もう少し早く来てほしかった気持ちもないとは言わない。

 

「あら、リオン。夜切とお話ししていたのよ」

 

 挨拶以外何も話していないと思う。

 

「私からはみ、見つめ合っていただけに見えましたが」

 

「そんなことないわよ。全くリオンったら」

 

 初心なのねぇなんて言って笑っているアストレア様。

 私も見つめ合っていただけだと思います。あとリオンさん、見つめ合っているの見たくらいで恥ずかしそうにしないでください。こちらまで少し恥ずかしくなりそうじゃないですか。

 

「あなたも、アストレア様と見つめ合うなんて! 不埒な真似はやめなさい!」

 

「あれ、これ私も悪いんですか?」

 

 こっちに飛び火してきた。会話を始めようとしてくれなかったアストレア様が悪いのだ。正義はこちらにある。

 

「まあまあ、落ち着いて。それよりも私は彼から輝夜のお話が聞きたいわ」

 

「私は落ち着いています! …………しかし、輝夜の話は私も聞きたい。ツキサキさん、是非とも話してください」

 

 顔を真っ赤にさせながらリオンさんが否定している。どう見ても落ち着いてない。

 それはともかく、輝夜の話か。ここ数年は手紙でしかやり取りしていない。そうなるとあまり話せることは多くないなぁ。というか、恥ずかしい。

 

「わかりました。彼女と私の出会いから今までのことを、脚色に脚色を加えて話しましょう!」

 

「恥ずかしがらなくていいのに」

 

「……これで輝夜に仕返しができます」

 

 ニコニコしながら私の心を読まないでください。仕返しって何するんですか? というか輝夜に何をされたらそうなるので? 

 

「その前に、こちらをどうぞ。輝夜がお世話になっていると伺ったので、謝礼でございます」

 

「そんな、気にしなくていいのよ? けれど、頂いておくわね」

 

「これは?」

 

「茶と塩ですよ。極東は、周りを海で囲まれていますので海水から作られた塩です。こちらでは紅茶がよく飲まれていると聞いていたのですが、せっかくなので極東の緑茶も飲んでいただきたいと思いまして」

 

 渡すならいまだろうと思い、持ってきた謝礼を渡した。

 見つめ合っている間に渡しておけばいいとは思ったが、話を切り出す勇気が私にはなかった。

 輝夜の話をしようとしていたのに、それの流れを途切れさせてしまう形になったのは申し訳ない。私の会話能力だとどのあたりで言い出せばいいかわからなかったのだ。

 

「是非みなさんでお飲みください。輝夜が淹れ方を知っているはずなので美味しく飲めると思いますよ」

 

「私は緑茶というものを飲んだことがないので楽しみだ。ありがとうございます。ツキサキさん」

 

「私もあまり飲んだことがないわね。輝夜に淹れてもらうのが楽しみになってきたわ」

 

 どうやら喜んでいるようで一安心だ。

 でも、塩には触れてくれないんですね。私も出されたら困る自信があります。私は行き当たりばったりで生きてるから仕方ない。やっぱり米俵を背負ってくれば良かったかもしれない。

 

「リオン、これをキッチンに置いてきてくれないかしら?」

 

「わかりました、置いてきます…………まだ、輝夜のこと話さないで待っていてくださいね?」

 

 どれだけ聞きたいんだ。

 そう言うと、リオンさんは茶葉と塩を抱えて出ていった。

 

「じゃあ、私はリオンが戻ってくるまであなたの旅の話が聞きたいわ」

 

 アストレア様は目を光らせて尋ねてくる。

 旅の話とは言ってもそこまで何かあるわけではないのだが、神様からのお願いだ。何かなかっただろうか? 

 

「そうですか? わかりました。そうですねぇ、では途中で迷子になってしまった話をしましょう」

 

「迷子? あなたももしかして天然なのかしら?」

 

「天然ではないと思いますよ……」

 

 人差し指を顎に当てて首を傾げるアストレア様を見て、苦笑しながら答えた。

 

「迷子になった時なんですがね、なぜか遺跡に出てしまいまして……そこに住んでいた蠍のようなモンスターと出会いました。とても強そうでしたね。私一人ではどうにかできそうもなかったので、逃げてきました」

 

「それは大変ね! どのあたりに居たか覚えてる? 私からギルドに頼んでおくわ」

 

「そうですね、地図はありますか? ─────ありがとうございます。………………おそらくですが、この辺りです。あいにく私も迷ってそこへ着いてしまったので正確な位置はわかりません」

 

「いいのよ、場所がある程度わかるだけでも助かるわ」

 

「他には──────」

 

 

 

「夜切がきているのは本当か?!」

 

 

 

 大きな声が聞こえてきた。

 まさか? 

 

「あら? あなたのお友達が帰ってきたようね」

 

 アストレア様が笑う。

 

 ようやく会えるのか。

 随分会っていなかった、数年ぶりだ。

 

 バタバタと廊下をかける音が聞こえていたが、この部屋の前で止まり、扉が開かれた。

 お互い満面の笑みを浮かべて声を出す。

 

 

 

 

「───一太刀入れるのに随分かかったじゃないか? 夜切」

 

「───タケミカヅチ様に一太刀入れたんだ。褒めてくれてもいいんだよ? 輝夜」

 

 

 

 

 

 




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