オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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「…………輝夜、ツキサキさん。離れてください。いつまでくっついているつもりですか?」

 

 リオンさんの冷たい視線が私らに突き刺さる。

 数年ぶりの再会で気分が高まりすぎたせいで、どうにも距離が近くなりすぎていたらしい。

 かっこよく再会できたと思ったが、これで台無しになっているかもしれない。隣に座っている輝夜を見ると、ニコニコしているので別に何も問題ないと確信した。言うまでもなく私の顔も、それはもうにっこにこである。

 

「うるさいぞポンコツエルフ。私たちは久しぶりに会ったんだ、これくらい近くとも問題はないだろう?」

 

「ぽ、ポンコッ?! ……アストレア様も輝夜に何かおっしゃってください!」

 

 リオンさんは、顔を真っ赤にして怒って? いる。

 さっきも見つめ合うとかなんとかで赤くしてたな。彼女のそれは初心とか、そういうものを越えて潔癖とでも言うべきだろう。

 もしかしてエルフってそう言うのに厳しいのかな? 恋愛下手とかそう言う次元ですらない。

 

「あら、いいじゃない。せっかく久しぶりに会えたんでしょう? だったら仲良くするべきよ」

 

 アストレア様に援護を求めたようだが、うまくいかなかったようだ。微笑みを浮かべながらこちらを見ている。

 多分味方につけるべき相手を間違えていますよ。

 

「───っ! ツキサキさん! 離れてください! 先ほどもアストレア様とあんな……」

 

「その、絶妙に誤解を招く言い方をやめてください……そもそも私と輝夜は──」

 

「え? 夜切……アストレア様と何かしたのか?」

 

「いえ、そんなわけないじゃないでs……」

 

 そんなに引かないで輝夜。こんな短時間で……とかやめて!? 私はいいけど(よくないけど)アストレア様に失礼すぎますよ! 

 

「あんなに顔を近づけて……何もしていないなんて言わせませんよ?!」

 

 言葉を被せるのをやめてください。

 というか、私は何もしていない。本当に何もしていない。なんなら会話すらできていないのだ。言いがかりも甚だしいぞリオン・リオン! 

 

「アストレア様、彼女たちに仰ってください。私たちは何も責められる謂れはないと」

 

 もうあなたしか止められる人はいなそうなのだ。助けてください正義の女神(アストレア)様。

 アストレア様は任せろと言わんばかりに頷いている。これなら安心して託すことができそうだ。

 

「あら? そんなこと言うの? …………ひどい人」

 

「っ?! やはり! 貴様アストレア様になんてことを!」

 

 ?! 

 顔を俯かせつつ、声を震わせてそんなことを言い放った。先ほどまでの慈愛に満ちた雰囲気はどこへ行ってしまったのか、今はただ悲しげな雰囲気を纏っており、手を目元へと持っていくことで、泣きまねまでして見せている。輝夜とリオンさんは、私へ絶対零度の視線を向けている。

 おかしい。アストレア様は、私を助けてくれるのではなかったのか? 

 

 私が悪者になっている雰囲気を、どうにかしようと口を開こうとすると、この部屋の扉が勢いよく開いた。

 

「弱きを助け強きを挫く! たまにどっちもこらしめる! 差別も区別もしない自由平等、全ては聖なる天秤が示すまま!」

 

 どっちもこらしめるんだ。

 

「願うは秩序、想うは笑顔! その背に宿すのは正義の(つるぎ)と正義の翼!」

 

 おお、カッコいい。

 

「【アストレア・ファミリア】団長、アリーゼよ! ふふん!」

 

 なんとも派手な自己紹介と決めポーズで扉から飛び出してきたのは、【アストレア・ファミリア】団長であるらしい少女だ。

 美しく輝いている緑の瞳からは、軽薄な言動とは別に深い思慮があり、真っ直ぐで強い意志を持っている様に感じる。滑らかな赤い髪をポニーテールに結んでおり、とても活発な印象を受ける。

 私も長い髪を後ろで縛っているので、私の中にちょっとした仲間意識が生まれた。

 

 彼女が入ってきてくれたおかげで、私が悪者にされていた雰囲気が完全に解消された。ありがとうアリーゼさん。君は私の恩人だ。是非とも輝夜にお茶を淹れてもらって、美味しく飲んでくれ。

 

「あら、アリーゼおかえりなさい。今日はお客さんがいるのよ」

 

 アストレア様が自己紹介をするよう、わざわざ促してくれたので、私も挨拶を返す。

 

「こんにちは、アリーゼさん。私は月咲夜切と申します。輝夜に会いに極東からやってまいりました。どうぞよろしくお願いします」

 

「輝夜に会いに?! 輝夜……あなた、ここに会いにきてくれる様な人がいたのね!」

 

 アリーゼさんもそんな反応をするのか……。リオンさんも驚いていたし普段の輝夜は一体どんな風にしているのだろうか? 

 

「あら、団長。私に会いに来てくださる方がいないと思いまして?」

 

「ええ! 正直に言うといないと思っていたわ!」

 

「やはり、アリーゼもそう思いますよね」

 

「イラッ☆」

 

 お、おお。アリーゼさんそれは思っていても普通はあまり言わないやつでは? リオンさんも頷いているし……。

 彼女らのじゃれ合いを見ていると、なかなかな言葉の応酬をしている。実は不仲なのかと心配になったが、アストレア様が変わらずニコニコ彼女らを眺めていたので、問題ないとみた。

 

「ほら、二人とも? お客さんの前よ。いくら二人の仲がいいとはいえ、お客さんを忘れてはいけないわ」

 

 アストレア様の言葉に私は苦笑いするしかなかった。アリーゼさんたちの会話に、私の会話能力では入り込むことができないのだ。これが斬り合いであれば、いくらでも間に入れるし喜んで入るのになぁ。

 

「もうこんな時間ね。外も真っ暗だわ。夜切、あなたは今日の宿はもうう取ってある?」

 

「…………」

 

「あらあら、夜切さん。お宿を予約するのをお忘れでして?」

 

 輝夜が揶揄ってくるが、残念ながら私にそれに反応してやる余裕などない。

 完全に宿を取るのを忘れていた。彼女が誰かと共に寝泊まりしていることを全く想像していなかった。オラリオへ来る前にタケミカヅチ様と、宿は輝夜の家でいいんじゃないかと、適当なことを話していたので、宿のことなどかけらも頭になかった。

 ま、まずい。宿の予約を忘れたので泊めてください。なんて言えるわけないだろ! 

 そんな私の動揺を見透かしているであろう、アリーゼさんに輝夜、アストレア様はわざとらしく言う。

 

「輝夜の友人らしいもの、まさか宿を取り忘れていたなんてことはないわよね!」

 

「団長さん、私もそう思いますわぁ。友人が事前になんの断りもなく、女性の家に泊まろうとしていたなんて、そんなこと……あるわけございませんよ」

 

「せっかく来たのだから、泊めてあげようかと思っていたんだけど……当然宿をとっているわよね。残念だわ……ふふ」

 

「アストレア様?!」

 

 いや、ここはもはや開き直って、野宿でもいいのではないだろうか? 

 ここへ来る途中に路地裏もかなりあったし、いざとなれば、オラリオを囲んでいる壁の上でも問題ない気がしてきた。

 ここのファミリアで寝泊まりするよりも、よほどいいだろう。野宿なら、私が少し不便なだけである。ここに泊めてもらうなど、迷惑をかけるべきではない。

 

「いえ、ご心配には及びません。せっかくですから、夜のオラリオを観光するついでに宿を探して参ります」

 

「冗談よ。でも、本当にいいの? 輝夜と積もる話もあるでしょうに。気にせず泊まっていってもいいのよ?」

 

「ご迷惑でないならお願いしたいのですが、やはり、大勢の女性が暮らしている中に私が泊めていただくのは、ご迷惑になってしまいませんか?」

 

 アストレア様がよくても、他の団員の方が嫌がっているのにもかかわらず、泊めてもらうのはよくないだろう。

 リオンさんは特に嫌がりそうである。それが普通の反応だと思われる。

 

「私は泊まってくれても構わないわよ! せっかくだし輝夜の小さい頃の話を聞きたいわ」

 

「…………そう言えば、輝夜の話を聞いていませんでしたね」

 

 アリーゼさんはどうやら私が泊まってもいいらしい。

 輝夜の子供の頃の話……しかしヒューマンの男性となんて……とか言いながら、うんうん悩んでいる。どんだけ輝夜のこと知りたいんだ。

 ようやく覚悟が決まったのか、顔を上げた。

 

「私も、ツキサキさんがとまることに異議は…………ありません」

 

 最後の最後まで迷っていたようだが、それでも輝夜の昔話を聞きたいらしい。そこまで覚悟決めて聞くほどの話はないのだけど、いいのそれで? 

 

「他の団員も許してくれるはず! 遠慮せずに泊まっていのよ」

 

 アリーゼさんがそういうと、アストレア様もリオンさんも頷いている。

 輝夜が、私の意見は? と言っているが、貴方はどうせ賛成するんだからいいじゃないと、アリーゼさんに言われていた。

 どうやら、私に泊まりの許可が出たらしい。

 

「では、ありがたく泊まらせていただきます。宿の予約をすっかり忘れてしまっていまして、とても助かります」

 

「どうぞ泊まっていって。輝夜のお友達ならいつでも歓迎するわ」

 

「さあ、食事にしましょう! 私、お腹が空いたわ! 夜切もいるんだし、せっかくだから今日は豪華にしましょう! さっすが私! いい案だわ!」

 

 アリーゼさんはパッと立ち上がると扉を開けて出ていってしまった。食事の準備をしてくれるようだ。私は今夜、泊まるだけ泊まっておいて、何もやれることない男となるのだ。

 何か手伝えることがあればいいのだが、そもそも私がいるだけで、少なからず【アストレア・ファミリア】の面々も気を遣ってしまうだろう。そうなると、なるべく動かずに静かにしているのが正解かもしれない。

 

 アリーゼさんに続くように皆、部屋を出ていった。私もついていくように言われたので、ついて行く。アストレア様とリオンさんは、先に居間へ行くらしい。

 

 私は輝夜に連れられ、泊めてもらえる部屋へと案内してもらっている。二人で並んで廊下を歩くだけで、少し感動してきた。

 

「やっと二人になれましたね」

 

「ええ、貴方がお宿をご予約されなかったおかげですね」

 

 輝夜は私のことを皮肉ってくるが、これくらいいつものことである。久しぶりに聞く彼女の皮肉に、懐かしさを覚えた。

 

「私はてっきり、輝夜が一人で家に住んでいると思っていましたので、泊めて貰えばいいかなと考えていたんですよ」

 

「女性の家にアポなしで泊めてもらえると思うなよ、馬鹿者」

 

「ははは、それもそうですね。タケミカヅチ様がおっしゃっていたので問題ないかと思いましてね」

 

「は? タケミカヅチ様がそんなことを?」

 

「天界にいた時は旅行に行くと近くの友神───男神女神関係なく───に泊めてもらっていた。と、おっしゃっていましたね」

 

 神様と話していた時は、それなら問題ないなと思っていた私だが、ここへきて、さすがにそれはまずいと理解した。私の中の輝夜の容姿は、数年前の小さな頃で止まっていたので気にしていなかったが、顔合わせて見れば、かつてのような子供同士の関係ではないと悟った。

 私も彼女も元服しているし、成人なのだ。相手の都合を伺うことくらいするべきだ。刀ばかり振っていたせいで、どうにもその辺りの常識とでも言うべきものへの意識が、足りていないようだ。

 

「はぁ……まあ、私のところにはいつ来てもいいが他の人間にするなよ。さすがに迷惑だろう」

 

「気をつけます。今度は、輝夜にも事前に伝えておくようにしますね」

 

 そうしておけ。と言うと、輝夜は少し歩く速度を上げた。

 

「ここが、夜切の泊まる部屋だ。早く荷物を置いてこい。アリーゼたちが腹を空かせて待っている」

 

 扉を開けて部屋へ入るよう促してくれたので、軽く礼を言って部屋へ入る。

 中に入ってまず目につくのは、正面の窓だ。今は陽が沈んでしまっているためわからないが、おそらく陽の光が入ってくるようになっているのだろう。先ほどまでいた応接室と同じような美しい装飾がされている。右側にはベッドが備え付けられており、その傍には小さな机。上にはランプが置いてある。

 左にはクローゼットが存在しており、私の荷物も十分入りきるだろう。荷物を床に散らかさずに済みそうだ。

 荷物を一通りクローゼットへ仕舞い込み、部屋を出ようとした。

 が、輝夜に着物を渡すのを忘れていた。ちょうど今は、私と輝夜の二人だけなわけだし、渡すならここだろう。チラリと輝夜の様子を窺うと、早くしろと、言わんばかりにこちらを見ていたため、急いで一度閉めたクローゼットを開き、着物を抱える。

 

「すみません、お待たせしまたね」

 

「おそい、早く行くぞ。今日の夕食は豪華らしいからな」

 

 扉を閉めて居間へと足を運び始める。

 着物は居間で渡してもいいのだが、他の方がいる中で渡すのはなんとなく恥ずかしいうえに、他の方への用意がないので申し訳ない気持ちになる。

 

「輝夜、これをどうぞ」

 

「ん? なんだ…………着物?」

 

「ええ、オラリオでは着物がなかなか高価な物ではないかと思ったので、極東の着物を貴方へのお土産に渡そうと思いましてね……その、よければ受け取ってください」

 

「私に?」

 

 こちらを向いて小首を傾げる輝夜。

 私がオラリオまで来て、君以外の誰に渡すんだ。察してほしい。私は今、かなり緊張してるんだ。

 

「貴女のために、ここまで抱えてきました」

 

「……もらっていいのか?」

 

「受け取ってくださらないんですか?」

 

「…………ありがとう。大切に着る」

 

 胸元で着物を抱えながら、そっぽ向いているが、彼女からお礼が聞こえた。

 

 

 食事をするために居間に向かっているのだが、お互い恥ずかしくなってしまい、とてもじゃないが顔を見ることができない。

 

「あっ、私はこれを部屋に置いてくる。少し待っていてくれ、すぐに戻る」

 

 輝夜の部屋の前を通ったようで、着物を置きに部屋へ入ってしまった。

 さっきは緊張した。タケミカヅチ様は、人に贈り物をするのは慣れれば緊張しなくなると、おっしゃっていたが、私はなかなか慣れそうにない。

 昔から何度か贈っていたが、毎回緊張していた。

 

 そういえば、今日の彼女は、いつかに私が贈った髪飾りをしていた。

 未だに使ってくれているのか…………つい、頬が緩んでしまった。

 

 

 

 ──────────────────────

 

「ふー」

 

 扉を閉めて一息つく。

 顔が熱ってしまって仕方がない。

 あいつが、プレゼントなんてしてくれるのが悪いんだ。

 

 それはともかく、早くこれを置いて食事に行かなければ。アリーゼたちも待っているだろう。

 しかし、今の状態でいったら間違いなく揶揄われる。それは、なんとなく癪に触るので、やっぱり顔の火照りが治るまでここにいよう。

 

 風呂にも入らずベッドに横になるのは嫌なので、椅子を引いてそれに腰掛ける。

 それにしても、何年か見ないだけで夜切の美しさに磨きがかかっていた。私と同じ黒髪は、腰のあたりまで伸ばされており、それが組紐で一本に束ねられていた。切れ長ながらも、穏やかそうな瞳を持っていて、まつ毛も長い。すっと通った鼻筋に、常に優しい笑みを浮かべている口元。

 小さい頃から、綺麗な顔をしていると思っていたけれど、ここまでになっているとは想像していなかった。前に見た美の女神(フレイヤ)に勝るとも劣らないようにすら感じた。

 そのせいで、私は無駄に意識してしまったと云うのに、あいつと来たらなんでもないみたいな顔をして微笑んでいた。なぜ私だけ意識しければいけないんだ。お前も私を意識しろ、このたわけめ。

 

 

 でも、私が極東にいた頃にあげた組紐をつけてくれたのは、とても嬉しかった。

 手紙でやり取りはしていたから、忘れられてはいないだろうと思っていたが、あれから何年も経っているのにもかかわらず、未だそれを使っていてくれたのだ。

 私にとって、極東での生活は決して良いものとは言えなかったが、夜切が私の贈り物を大切にしてくれている様子を見ると、価値のないものではなかったと、そう思えた。

 

 ひと心地ついて、ようやく顔の火照りもなくなった。

 ゆっくりとしすぎたかもしれない……。アリーゼたちが遅いだの何だの言ってくるような気がする。何も言われないよう落ち着けていたはずなのに、結局小言をもらってしまいそうだ。

 しかし、顔が紅いと揶揄われるよりましだろう。

 

 そう自分を納得させて立ち上がり、扉を開けて外へ出る。

 

 触れてくれなかったが、夜切は気がついていたのだろうか? 

 今日、私はお前がくれた髪飾りを着けていたんだぞ。

 

 私もお前の組紐に何か言ったわけではないが、髪飾りを付けていることに触れてほしいと思ってしまうのは、私の我儘だろうか?




各キャラクターの言葉遣いはこんな感じでいいのかな……?
キャラクターの心情を書いてみたけどすごく難しい。

これからも頑張って書いていきますので、感想・評価・お気に入り登録お願いします!!!

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