オラリオに求めたのは再会と斬り合い   作:幾何花なまり

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かなり遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。

今年の目標は、この小説のお気に入り2000人以上、評価数200人以上の赤バー目指して頑張ります!!
どうぞ今年も一年よろしくお願い致します。


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「おかえりなさい。貴女たちが無事でよかったわ」

 

 アストレア様に迎えられ、ホームへと戻ってきた。反省会は寝る前にやるそうで、とりあえずはお風呂に入り夕食を摂る。

 私は下っ端故、風呂に入れるのが最後なので時間がかなりある。

 どうしようかと悩んでいたところにアストレア様が私を呼んだ。

 

「夜切」

 

「はい?」

 

 私は返事をしてアストレア様の所に行く。

 

「私に何か御用でございますか?」

 

 何か仕事だろうか。

 とは言っても、私にできる事はそう多くない。人を斬る事、他には家事全般。その程度である。【アストレア・ファミリア】の正義に貢献する事は難しいぞ。正義を掲げて人を斬る事なら喜んでやるが、そんな話ではなさそうだ。

 

「アリーゼ達と反省会が終わったらでいいの。私の部屋に来てくれないかしら?」

 

「はい? 私がですか?」

 

 それはつまり夜遅くに神様とはいえ、女性の部屋に私が入るということか。極東的に言えば夜這いという事になるが、まさかそんな事はあるまいな。ははは。

 私が承知した事を伝えると、アストレア様は部屋に戻っていった。

 

 

 先に予定ができたとはいえ、今はかなり手持ち無沙汰である。

 あの女性との戦いが盛り上がれば今頃気分が良かったのだろうが、正直なところ不完全燃焼といった感じで動き足りない。中途半端に動いたせいで逆に身体が()()()()している。

 確か、ホームの庭には訓練場があったはずだ。貸してもらえないだろうか。

 アリーゼさんはおらず、ちょうど輝夜が椅子に座って暇をしている様なので声をかける。

 

「輝夜。外の訓練場を使っていいですか? 動き足りないので、風呂の順番まで思いまして」

 

「ん? ……使っていいぞ。場所はわかるか?」

 

「ええ。わかります。……せっかくですから、輝夜もしませんか?」

 

 どうせやるなら、人がいた方がいい。ついでに輝夜の実力も見る事が出来て一石二鳥だ。本音を言えば私が人と戦いたい。

 

 またすぐに仕事があるなら断ってくれて構わないが、どうだろうか。

 

「……そうだな。私も行こう」

 

 輝夜は少し悩んだ後、頷いた。

 

 リビングから訓練場へ移動しながら、今日の個人的な反省を輝夜に話す。

 

「今日の私はよくなかったですね本当に」

 

「お前は人を殺さないといけない病にでも罹っているのか?」

 

「あながち間違いではないかもしれませんねぇ。想像以上に先の女性が頑丈でした。私が戦ったことのある恩恵持ちの中では一番強かったですよ」

 

「そうか。レベルを話しているとは思わないが、何か言っていたか?」

 

 ふむ。レベルに関しては話していなかったように思われるが……

 

「【アストレア・ファミリア】にはLv3しかいないはずだと言っていたので、おそらくLv 3は相手取れるような実力は持っているのではないでしょうか」

 

「Lv3以上か。厄介だな」

 

「私が少し戦った感想になりますが、技術的な面はあまり高くないようでしたね。けれど、神の恩恵(ファルナ)によって身体能力がかなり高くなってるように思いました」

 

 戦えない事はないが、逃げに徹されるとしたら私ではおいつくことが難しそうだった。加速し始めたすぐならばいくらか並走できるだろうが、じきに離されてしまうだろう。

 力に関しても同じようなものだと思う。私の技術でいなすことは出来ているものの、それではどうにもならない様な程の力で押し潰される可能性はゼロでない。

 とはいえ、そう簡単にやられるつもりはないし、その場で技を昇華させて凌げばいい。

 

「そういえばお前は恩恵を授かってないんだったな……授かる予定はあるのか?」

 

「今の所その予定ははありませんね」

 

 授かってもいいが、そうしたら神に縛られる様な気がしてしまい、なんとなく恩恵を授かる事に気が進まない。

 そもそも、神の血を授かった人間は『人間』と言えるのだろうか。

 私は人の身のまま、人の限界に挑みたい。

 とは言っても、私も人間から外れてきている気もするが。

 

「必要になれば授かることはあるかもしれませんが、少なくとも今は必要ありませんよ」

 

「授かる気になったらアストレア様から授かるといい」

 

「ははは、私みたいな人間がアストレア様から授かるなんて烏滸がましいですよ。所詮は人斬り。正義の名を冠する神の眷属になるには値しません」

 

 私は正義を人斬りの理由としてしか使わないが、このファミリアの人たちは違う。各々が自らの正義を持って活動している。

 そんな素晴らしい方々の中に私の様な人でなしが混ざっていいわけがない。

 今こうして行動を共にしていることすら申し訳なく感じる。

 私の返事に輝夜は苦笑した。それから、話を変える様に話し始めた。

 

「さっきはメンバーの前で叱って悪かった。副団長として、あの場面で言うべきだと思った。けれど、集団で戦っている時、一人の油断が仲間を危険に晒す事は覚えておいて欲しい」

 

「気にしてませんよ。あれは輝夜の言う事が正しいとわかっています」

 

 あれは間違いなく私のミスだ。作戦と私の戦い方が合っていなかったというのもあるが、作戦に頷いたのは私だ。

 作戦に納得し、できると言った仕事を任されて戦場に出たのにも関わらず失敗したのだから、悪いのは間違いなく私だ。新人が出来ると言ったのに失敗し、仲間を危険に晒したというなら上に立つ人間として妥当な対応だった様に思う。

 

「ですから、輝夜は何も気に病む事はありませんよ。それに、せっかくここに来たんですから模擬戦でもしましょう」

 

「……いいだろう。負けても文句は言うなよ」

 

「それ、神に言わせればフラグと言うやつらしいですよ?」

 

 訓練場の中心あたりに移って、お互いに五歩ほど歩いて距離を取る。

 恩恵のある人間からしたらこの距離は、無いも同然だろうか。

 

「魔法とスキルはどうしますか?」

 

「好きにしろ。お前は恩恵を授かってないから使えないだろう?」

 

「輝夜がオラリオに行ってから、私も魔法もどきを使える様になったんですよ」

 

「……本当か?」

 

「ええ。ちょっとみててください」

 

 私は輝夜に告げて、腰に差していた刀を抜く。

 それを右手に持ち振り上げ左腕を落とす。血が噴き出て激しい痛みが全身を駆け巡る。

 場違いな感想だとわかっているが、我ながら美しい切断面だと思う。

 

「何をしている?!」

 

 焦って輝夜が近づいてくるが、止まってもらう。

 ここからが本番だ。とは言っても、私のコレは地味で全く派手じゃない。

 

「───ヨミ」

 

 そう名前を呟くと、刀から淡い光が溢れ出し。切れた腕にまとわりつく。するとそれまでの出血が嘘だったかの様に止まり、光が離れ刀へと帰れば切り落としたはずの腕が新たに生まれていた。

 

「私の新しい手札はこれです」

 

「なんだそれは。……そんなことよりも、腕をいきなり切り落とすなどするな。私に無用な心配をさせないでくれ」

 

 それは申し訳ない事をした。

 でも、これが一番わかりやすいのだ。

 

「で、それはなんなんだ」

 

「先のは所謂()()というやつです」

 

 昔から私は精霊に好かれる体質ではあったが、力の弱い子が集まってくる程度のものだった。いつのまにか、私に集まっていた微弱な精霊達が一つに纏り、ここまで力のある精霊となっていたのだ。

 

「出来るのは傷や病を癒す事だけ。即死しなければどんな傷でも治せるみたいですよ」

 

 治せなかった傷や病は今のところ一切ない。

 私の斬り合い続けたいという想いを汲んで、癒し続ける様に進化したらしい。なんでこんなに私の為になってくれているのか、いまだにわからない。愛されていると言えば聞こえはいいが、理由のわからない愛はいつ愛想を尽かされるかわからない。

 無論、彼らには感謝している。これが無ければ、死んでいた場面がいくつもあるのだ。

 やはりモンスターは碌でもない生き物である。私が殺されるなら、斬られて死にたい。モンスターに殺されるなど、不名誉だ。

 

「それならそうと言ってくれればいいだろう? わざわざ大怪我する必要はない」

 

「わかりやすい方が良いと思ったので切りました」

 

 咎める様な視線を私に浴びせてくるが、どうせ治るからあまり気にする必要はない。下半身が吹き飛んでも治ったのだ。腕を落とすくらい本当になんの問題もない。

 私がなんの反省もしていない事を理解したのか、輝夜はため息を吐いた。

 

「さっきヨミと言っていたな。精霊の名前か?」

 

「私が名づけました。何せ私の周りにいた、名も無き精霊が集まって一つになって出来た精霊なので、人から知られている様な名前はなかったもので」

 

「……精霊が一つになる。そんなことがあるのか?」

 

 輝夜は訝しげにこちらを見てくるが、私としてもこれについてはよくわからない。精霊(ヨミ)の意思みたいなものは伝わってくるのだが、彼──あるいは彼女──は発話できるわけではない。

 会話ができたら別かもしれないが、できないので詳し事は全くわからない。私の事が好きで助けてくれると言う事が、今まで伝わってきた感情? の様なものからわかっていると言うだけだ。なぜ私のことが好きなのかはわからない。

 

「何かあれは。エルフに聞いてみるのもいいだろう。彼らは精霊に詳しい」

 

 何か問題があればそうしよう。精霊の言葉がわかる人が居れば、話をしてみるのもいいかもしれない。

 

「これで、幾らか安心できましたか? 傷はすぐに治せるので、怪我を気にする必要はありません」

 

「そうみたいだな。…………それができるなら、さっきの女も斬れば良かったんじゃないのか? それならいくら切っても死ぬ事はないだろう」

 

「それは…………そうですね。全く考えもしませんでした」

 

 やはり先の件は、私の大失態だ。

 

「まあいい。結果として誰も被害はないからな。次はしっかりしてもらうぞ」

 

 

 互いに再び距離を取り構える。

 少しの間をおいて、輝夜は掛け声と共に加速して切り込んできた。恩恵持ちの速さと力が合わさったことでその一撃の威力は恐ろしく高いが、避ける事ができない理不尽さはない。

 身体を逸らす事で回避し、私も刀を振るう。輝夜は驚いた様子を見せたがそれも一瞬のことで、すぐさま私の一線に刀を合わせることで凌いだ。

 

「…………前と何か変わった感じがしますね。何かしました?」

 

 技術が衰えていると言うわけではないが、どちらかと言えば成長していないと言う風に感じる。

 弱くなっていない。彼女は確かに強くなっている様に感じるのだが、それは身体能力が上がってできる事が増えた様な、技の駆け引きよりも力で切ると言う様な。

 私の剣術は、タケミカヅチ様ともう一人の見様見真似でできている。術理を理解していないなんて事はないが、どちらかと言えば感覚で振るっている人間なので、輝夜に感じた違和感をなかなか言語化するのが難しい。

 

()と戦わなくなった。と言う感じでしょうか? ……いえ、モンスターを切るための剣になったという方が正しい様に思えますね」

 

 これがしっくり来る様な気がする。

 こんな時期ゆえ治安維持のために連日見回りをしている様だが、だとしても冒険者が本来戦う相手はダンジョンにいるモンスターだ。そのほとんどのモンスターは本能のままに私たち人間を襲ってくる。

 私が輝夜と会えていなかったこの数年間で、彼女は人間よりもモンスターを多く切ったのだろう。その事で、対人剣ではなく対モンスターに合った剣の振り方となったのだろう。

 

「剣に関してお前ほど熱心に……狂った様に振るっていた人間はこの都市にもいなかった。だからお前が、私の剣を変わったと言うならそうなんだろう」

 

「戦う相手が変われば刀の振り方も変わります。今の輝夜の剣は、先も言った通りモンスターと戦う為の剣でしょう」

 

 まだ一合しか合わせていないが、おそらく間違いではないはずだ。

 

「……モンスターと戦う為の剣になった私とは戦いたくないか?」

 

「そんなことある訳ないじゃないですか。輝夜がやってくれると言うなら、私はいつでもどれだけでもやりたいと思ってますよ」

 

「そうか……そんなに求められても困るな」

 

「私が戦った相手しかり、おそらく表に出てきていない闇派閥(イヴィルス)の実力者がいるでしょう。それが輝夜のLvを大きく上回るLv 5やLv 6だった時に、モンスターと戦う為の戦い方では万が一があり得ます」

 

 Lv差による能力の差はどうにもならないが、戦い方や技の練度によっては覆せなくはない。タケミカヅチ様なんて、一般人の身体能力でLv 6と戦えるそうだ。ならば、鍛えている私や神の恩恵(ファルナ)のある輝夜が戦って勝てない道理はない。

 

「ですから、私と戦って対人の感覚を取り戻して欲しいと思っています」

 

 私も友人に死んで欲しくないのだ。私と何日か試合をすれば、かつての勘を取り戻した上で、さらに成長できるはずだ。

 彼女の才能と性格、神の恩恵を加味すればレベルの差が2つ程度は一週間程度で覆せるだろう。

 

「…………わかった。これから朝夕毎日試合をしよう。言われてみればここ数年は、夜切程の技術の高い相手と戦っていなかった。よろしく頼む」

 

「私こそよろしくお願いします。怪我も疲労もヨミがいくらでも癒してくれますから、死力を尽くした試合ができますね」

 

 私は輝夜と斬り合えて嬉しい。輝夜は強くなれて嬉しい。

 これが、うぃんうぃんの関係てやつだろう。

 

 仕切り直しだ。

 先は輝夜が踏み込んで来たので、次は私から攻める。輝夜の様な速さは出せないが、突然現れた様に感じさせる事はできる。

 感覚としては、私の体を世界と一体化させる様な。世界と混ざり合い、私自身を自然に溶け込ませる。そういう感覚で相対する。

 

 タケミカヅチ様に聞いたところ、目の前にいるのにいないように感じ、間合いを測りにくい。蜃気楼のような、或いは空気の様に感じる。

 とのことだ。

 正直なところ私はこの解説を聞いて、向かい合った相手の感覚は何も理解できなかったが、とにかく戦いにくい事はわかった。

 

 事実、今私がゆっくりと輝夜の方へ歩み寄っているが、彼女は特別構える事はない。このままではなんの対処もされず切れてしまうので、私は刀を振り下ろすと同時に威圧する。驚愕の表情を浮かべた輝夜は、すんでのところで私の刀を受け止めた。

 私は力の面で恩恵持ちに大きく劣る事を理解しているので、無理やり弾き飛ばされる前に距離を取る。

 

「本当に恩恵がないのか?」

 

 輝夜は驚いた表情のまま尋ねてくる。

 

「技術ですよ。タケミカヅチ様にも認められるくらいには高度ですが」

 

「……スキルやステイタス頼りはダメだということが、これだけで理解できる」

 

「当然ですよ。自惚れでも無く私やタケミカヅチ様は恩恵が無くても、恩恵のある人間と対等以上に戦えますから」

 

 技術を高めようとしない子が多くて悲しいとタケミカヅチ様はおっしゃっていた。つまりそれは、輝夜の言っている事なんだろう。

 私も今とは比べ物にならないほどの力を持ったら、技術を疎かにしてステイタスを上げる事に力を入れてしまうかもしれない。数字で成果がはっきりと見えるし、何より技術を向上させるよりも簡単に強くなれる。だから技術を疎かに、ステイタスを上げる事だけに集中してしまうのだろう。

 

「もういい時間だな。今日は終わりだ。明日は本当に斬ってしまって構わない。いざとなればポーションもあるし、夜切の……ヨミもいる」

 

「わかりました…………傷は残さないので安心? してください」

 

「ツキサキさん、輝夜! お風呂が空きました! あなたたちの番ですよ…………なんで血の池ができてるんですか!?」

 

 リオンさんが私たちを呼びに来た。

 あ、処理するの忘れていた。腕はヨミが食べてしまったので無くなっているが、血は残ったままだ。

 

「すみません。すぐに片付けます……ヨミ、血を飲み干してください」

 

 再びヨミが現れ飛び立った血液の上を一周する。すると先ほどまであった凄惨な殺害現場の様な様相から、元の訓練場に戻った。

 淡い光であったヨミは、血を啜り腕を取り込んだ影響で赤黒く染まっていた。ヨミは傷や病を治したり、血を浴びたりすると赤黒く変色する。大体数十分程度で元の淡い緑色に戻るのだが、それまでは血で染まった色になっている。

 血を啜るたびに傷を癒す早さが上がっているので、ヨミは血を得る事で成長しているのだろう。私との相性は最高だ。

 

「え、せ、精霊様?」

 

「よし。リオン、夜切行くぞ」

 

「わかりました。リオンさん。この子はヨミと言いましてね───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝夜の次に、つまり一番最後に風呂に入った。服を精霊に頼み洗ってもらって食事も終えた。

 と言うわけで、本日の反省会である。

 

「魔石製品工場が襲撃されて建物は全壊。何か盗まれているかもしれないけれど、崩れてしまって詳細はわからない。【ガネーシャ・ファミリア】が今調査してくれているわ。闇派閥(イヴィルス)の目的も未だ不明よ」

 

「全く、闇派閥(イヴィルス)の奴らもなんで魔石製品工場を狙うのかねぇ? うざいったらありゃしねぇぜ」

 

 アリーゼさんが端的に今日の報告。ライラさんが愚痴をこぼした。

 目的がまだわからないと言うのが面倒だ。目的がわかれば次の襲撃場所の候補や、対策を講じられるが、何もわからないとなるとどうしても後手に回ってしまう。

【アストレア・ファミリア】としても、それは悔しいのだろう。全員の顔が少し悔しげに歪む。

 

「でも、人的被害はゼロ! 私たちの頑張りは無駄じゃないわ!」

 

「ええ、アリーゼの言う通りよ。あなたたちの働きは皆が認めてくれているわ」

 

「それで? 夜切が戦ったて言う闇派閥(イヴィルス)の女はどうだったんだ?」

 

 沈んだ雰囲気をアリーゼさんとアストレア様が励ます事で払拭し、次に私の方に話題が振られた。

 

「私は恩恵がないのでLvを基準に話す事はできませんが、女の言動からLv 3以上ではあると思われます。特徴は暗かったので断言はできませんがおそらく桃色の短髪に、四尺五寸──170セルチ程度でした。獲物は大剣を所有しており、そこそこの対人経験がありそう……と言ったところです」

 

「Lv 3以上ですか……すごいですねツキサキさん、よくそれを相手に戦えましたね」

 

 私の報告にリオンさんが感心した様子を見せる。

 

「極東の武神様に認めていただける程度には、対人戦が得意ですからね」

 

 強い人間と斬り合いたいが為に磨いた結果そうなっただけで、あまり褒められた動機ではないのだ。

 正義を掲げるリオンさんに誇れる様なことではない。

 

「その特徴はおそらく【殺帝(アラクニア)】だな」

 

あら……あらくにあ?なんとも呼びにくい名前で。

 

「Lv 5で闇派閥(イヴィルス)の中でも上位の実力者ですね」

「なるほど……捕えることができていればよかったのですが…」

「いいのよ夜切!私たちの誰か一人だけが戦うことになってたら、危なかったもの!怪我人もいないわ!」

 

 逃してしまったのに、そう言われると私の立つ瀬がない。

 本来なら相手の手札を削れたはずなのに、私の油断がその機会を不意にしてしまって申し訳なく思う。

 私は斬り合いが好きだが、そのせいで一般人に被害が及んでしまうと言うのは望ましくない。

 その程度の良識は私にも存在している。

 

 その後の会議は、今後も治安維持に力を入れる事や次の炊き出しの事などを話した。もちろん私も全面協力する事を伝えている。

 普段から都市に貢献していれば、いざという時に好きな様に動いても許されるだろう。

 普段は街に貢献し、いざという時は好きに動く。これが私の良識だ。

 闇派閥の人間の様に常に好き勝手やるわけではないのである。

 

「あ、そうそう。夜切は明日休んでいいわよ!」

 

「はい?」

 

「オラリオに来たのに、仕事漬けは可哀想だもの! 来てすぐに仕事をしてくれたんだし、オラリオを見てきたらどうかしら?」

 

 ありがたい申し出ではあるが、いいのだろうか? 

 他の方々は見回りに行くそうだし、一人でとなるとここへ帰って来れる自信がない。

 

「私が着いていくわ。子供達の様子も見たいと思っていたしちょうどいいわね」

 

「アストレア様が行かれるのですか?」

 

 私の内心を感じたのかアストレア様が、着いてきてくださると仰った。リオンさんが驚いている様に私も驚いている。

 アストレア様が着いてきてくださると、言ってくださったのに私が断る事はできない。

 

「ありがとうございます。明日はお休みさせていただきます」

 

 私も出かけたくないわけではないので、ちょうどよかったのかもしれない。

 正直な事を言えば輝夜と行きたかったが、また次の機会でいいだろう。これからまた数年会えないわけでもないし。

 

「それじゃあ、明日も頑張るわよ! 解散!」

 

 会議が終わったのでアストレア様の部屋に行こう立ち上がったところで、アストレア様に呼ばれた。

 

「明日出掛ける時にお話ししましょう。だから今夜はゆっくり休んで」

 

「わかりました。明日はよろしくお願いします」

 

 

 頭を下げて、自分の部屋に戻る。

 

 明日は仕事がなくなり、アストレア様と出かける事になった。

 女神様と出掛けるのは初めてだ。オラリオの治安はお世辞にもいいとは言い難い。出先で何事もなければいいが……。

 

 私が襲われる分にはなんの問題もない。アストレア様が襲われでもしたら私如きでは責任が取れない。

 どうか明日は安全に過ごせます様に。

 私が祈る神などいないが、そんな事を祈って眠りについた。




ヨミ/精霊
オリ主くんの周りにいた奴が集まってできた。
人型になる予定も言葉を発する予定もない。今作のペット枠。
主食は血液や肉。精霊に食事という概念があるのか知らないけどうちの子は食べます
名前の由来は黄泉、甦り、月詠/月読。
夜や死を司るツクヨミに、死の底から回復して戻ってくる甦り。
この辺りから取りました。

いつも、評価・感想・誤差報告ありがとうございます!
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アーディちゃんについて

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