槍の勇者が原因でピィピィ言うだけのお話   作:私は鳥になりたい

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大オチの章

 あの後は、結局大したことは起こりませんでした。

 何しろコッチには運営(アトラ)がいますから。必要なことは大体片付いて、私は太鼓持ちに徹し続けましたよ。

 

 そうしてイベントをクリアしていくことでアトラと尚文は愛を深めて行き、ついには世界を救ったことでゴールイン!

 ご結婚おめでとうございます!!

 

 という展開になりました。

 

 その道中では「姉さん!? まさか勇者が姉さんを洗脳していたなんて……だから俺のハーレムに入らなかったんだな!!」などとほざくアレ(タクト)がいたりしましたが。

 一蹴しました。

 おかげで鞭の勇者に選ばれてしまい、大変でした。

 

 色んな事があったけれど、槍の勇者(ですぞー)に殺されることもなく平穏無事に終わりました。

 普通に天寿を全うして、老衰で逝くことができました。

 

 薄れ行く意識の中、私は心から安堵していました。

 

 よかった……よかった……

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「あ、孵るみたいですよ」

「そうか」

 

 ふと気付けば、遠くの方からそんな小さな声が聞こえてきました。

 ここはどこ? なんだか狭くて暗くてとっても息苦しいような……

 

 同時に感じるのは、とてつもない弱々しさと苦しさ。

 全身の筋肉やら内臓やらを一気に失ったみたいな、そんな今にも死んでしまいそうな辛さが襲ってきます。

 

「ピィ!」

 

 うわぁ、眩しい!!

 あまりの眩しさに目を開けていられなくて。ただ、鳥の雛の鳴き声が聞こえます。

 

「ビ、ィ……」

 

 ――ここはどこですか?

 そう言おうとしたところ、聞こえてきたのは今にも死にそうな鳥の声でした。

 

「え? もう一羽!?」

「ピィ?」

「マズい! コイツ死ぬぞ!!」

「え、ええ……っ!? 死んじゃうんですか!?」

 

 

 

 

 

 卵を割ったら、黄身が二つあった。

 そんな経験、一度くらいはあるかもしれません。いわゆる双子の卵です。

 コレは人間からすれば「黄身が二つでラッキー」と思うでしょうが、鳥からすると致命的です。

 

 そもそも説明するまでもありませんが「黄身は雛になる部分」で「白身は雛になるまでの栄養の部分」です。つまり卵の中で白身の栄養を受けて成長するわけですね。

 ですが卵の中に黄身は一つが基本。白身も一人前しか用意されていません。

 

 そのため双子の場合「片方の黄身が栄養を独占して一羽だけ産まれる」か「二つの黄身が分け合った結果、栄養が足らずに両方とも死んでしまう」辺りが一般的だそうです。

 健康状態に差こそあれど、二羽とも産まれてくるというのは中々どうして珍しい結果のようで――

 

 

 

 ここまで説明すれば、なんとなく分かりますよね?

 

 

 

 何かバグでもあったのか、それとも天文学的な確率で発生してしまった保証対象外な例外的誤作動なのか、それとも私という異物が混入したこと自体が過ちだったのか。

 

 死んだと思った私は、フィーロの妹となって再び生を受けました。

 

 フィロリアルという種族のおかげでしょうか? 栄養不足で死にかけていたもののなんとか持ち直して、なんとか生きています。

 お姉ちゃんの様に激しく暴れ回れないものの、やさぐれ尚文パーティの一人として細々とやっています。

 名前も「姉がフィーロなら妹はリアでいいだろ」という尚文の有り難いお言葉で、前世と同じリアです。

 

 ただ……

 

「フィーロちゃーん!!」

「ぎゃああああ!! 来るなあぁぁっ!!」

「ぐはぁっ! はっ、こっちにはリアちゃんも!! リアちゃーーん!!」

「ひいいいいいっっ!!」

「リアちゃんに何するのっ!!」

「むっはあああぁぁっ!!」

 

 双子だからでしょうか?

 成長した私の姿は、フィーロ姉さんとそっくりです。人化した時の姿もそっくりに……

 

 おかげで槍の勇者が寄ってきて寄ってきて……

 姉さんが「お姉ちゃんの責任」ということで蹴り飛ばしてくれますが、蹴り飛ばしてくれるのが呼び水となってしまったのか……

 

「嗚呼……フィーロたんとリアたん、まさかお二人が双子姉妹となって天使の姿も同じという奇跡のような世界がこの世に存在しようなどとは……この元康、一生分の幸運を此処で使っておりますぞ!!」

 

 まさかのやり直し元康(ですぞー)が登場です。

 

 この世界には来ないって言ってたじゃない!! 嘘つきいいいぃぃっ!! それとも私、私が弾き出されて登場する世界に迷い込んだの!? まさかあそこで元康相手に余計なちょっかいを掛けたのが原因!?

 

「フィーロたーん! リアたーん!!」

「ピイイイイイイィィッ!!」

 

 

 

 私は今日も、槍の勇者が原因でピィピィ言っています。

 

 

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