ロリ程危険な存在はいない 作:祝福
第1話 Où vont les oiseaux lorsqu'ils quittent leur cage ?
雨
俺は曇天の空を眺めていた
身体が冷えていくのがわかってきた
動きたくても動かない身体。重くなっていく瞼
僅かに動いた目が捉えたものは
首の無い、ボロボロの身体だった
そこで俺は──
地獄を観た
焼けた部屋。焦げ臭い部屋
場面が変わる
校庭。何も持たない己を笑う者
後ろ指を指す者
頭を撃たれ、蹲る己
それを蹴り、踏み、また撃つ者
ゴミ袋に入れられ、ゴミ置き場に投げ捨てられた己
場面が変わる
場面が変わる
場面が変わる
場面が──
横たわった己
力尽きた身体
雨が降る
眺めた空は、曇天
ああ──
奥底から煮えたぎる怒りが
止まらない
真っ白な天井が視界に入った
消毒液の臭いが鼻腔を擽る。病室らしい
──長い間寝ていたようだ。身体が怠く、動きづらい
腕に刺さっていた点滴を引き抜き、カーテンレールに掛かっていたハンガーに掛けてあるボロボロだが、まだ着れるトリニティの制服を着る
焼けた煤のような部位があるが、あくまでそれだけで済んでいる事が奇跡だろう
学生証も焼かれ、己の持っていた銃は奴らに奪われ、質屋にでも売り払われただろう。奴らならそうする筈だ
……この学園はゴミ箱だ。吐き溜めの奥底にある、穢れた箱庭だ
燃えたぎる怒りが渦巻くが、闇雲に叩きつける事はしない
ましては銃もない今では、軽く捻られるだけだ
──銃が必要だ
窓の外を見る
透き通るような蒼い空が、怒りを更に燃え上がらせる
この籠から出て行ってやる
窓から飛び降りた
「───え?」
トリニティの救護騎士団員の鷲見セリナは、もぬけの殻となった病室を見て呆然とした
ここは、三階である
空いてる窓
顔を青くしたセリナは、慌てて団長に連絡を入れるのであった
トリニティの端には、壊れた銃等が捨ててあるエリアが存在する
通称:廃棄場
定期的に掃除されまっさらな空間になるが、基本的に日常ゴミや生ゴミといった物が優先で片付けられ、壊れて修理不可能となった銃や、古くなった銃が捨てられてる場所は後になる
リサイクルされマガジンやグリップ、サイレンサーやスコープといった後付けできる部品や他の機械部品の素材になったりする
ここに来たのは、そういった捨てられた物を繋ぎ合わせて銃を作る為だ
作業している者からすれば、止める理由も無いし寧ろ減るから助かるぐらいだろう。通り抜けても文句所か視線すら向けない
こちらからすればありがたい。タダで銃が手に入るのだ。願ったり叶ったりだ
今までだと、新しいのを買っても奪われるなり壊されるなりされてたので、幾つか作る事にした
矮小な身体だし怠さが抜け落ちないが、それでも一刻も早く吐き溜めから抜け出す為の武器を手に入れる事を優先した
真っ黒なハンドガンを見つけた
隣に白いハンドガンもあった
……蝶のような物が彫られている。二丁でセットのものだろうか
どこにも悪い部分が無い。なぜ捨てられていたのだろうか
整備の為一旦分解する
……異常は無い。このまま使える
規格に合う、比較的頑丈なマガジンを廃材から引き抜いて、装着する
軽い。だが、持つと不思議としっくりくる
まるで奪われる前に持っていた銃と同じ、肉体と合うような、そんな感じがした
……他にも探そう。2つでワンセットという事は、片方でも奪われたら力が発揮できないという事
青い銃身を持つライフルを見つけた
これも不思議と吸い込まれるような感覚がする
手に持ち、確認する
……これも壊れていない
おかしいが、壊れてない事を変に思わなく感じる
元から手元にあったかのような、そんな感じがする
規格に合う弾も拾い、黒白のハンドガンと青いライフルに込める
……良い、銃だ
ライフルを背負い、ハンドガンを腰のホルダーに入れる
全部ここで拾った物だ。まだ使える物があるが、ここはトリニティ。金持ちや貴族とかが通う場所だ
娯楽の為に買った物が、無意味に消費され捨てられていく。やれデザインが嫌だの性能が嫌だの…………それも含めて銃だろうオプションだろう。自分で整備すれば愛着も湧くだろうに。脳に湧いたのは蛆虫だろうか
まあ良い。そのおかげで小金稼ぎもできる
使えそうな銃を拾い集め、軽く整備する
廃棄油や整備用品もあるから、片付けられなければ金に困らなくなるだろう
勿論、売る場所はブラックマーケットだ
学生証がなければ自治区内の施設は殆ど使えない。働いてる大人なら話は別だが、ここはキヴォトス。学園都市……というより学生都市
学生である事の証明が出来なければ使えない施設塗れだ
だが、ブラックマーケットは学生証が無い者やヘルメット団といった不良集団も愛用する場所だ。偶にオークションもやっているらしい
とある店にジャンク品の銃を売り払う。結構な金額になった
いくらジャンク品でも銃は銃だ。それなりの金額になる物を大量に売ればケースに札束が埋まるレベルの金額を手に入れる事ができた
マニア向けの銃が多いらしく、その手の人に横流しする気でいるようだが、こっちからすれば金を貰えれば良いから気にしない
服屋でトリニティの制服のレプリカを買い着替える。本物は自治区内で学生証が無ければ買えない
テロリストのような奴らが蔓延るキヴォトスならではのレプリカ品だ。ガワが似ていれば自治区内に居ても可笑しくない格好に成れるのは便利だ
これからやる事はまさにテロリストに近いが、向こうからやってきた事だ。徹底的にやろうか
マーケット内にあるホテルで一夜を過ごす
そこそこ値が張るが、金はあるので問題無い
だが、従業員も盗人気質がある。やはりそういう所の者は相応の気質だろう
一直線でケースに手を伸ばした従業員の両腕を撃ち抜いて
「高い金を払った割にサービスは成ってないな。その腕で見逃してやるから消えな」
一目散に逃げた従業員を尻目に、別の従業員が部屋に飲み物とピザを置いていった。タダで良いらしい
平らげてからシャワーを手早く浴びる。また別の従業員がケースに触ろうとしてたのを見て呆れながら頭に黒白ハンドガンを突きつけて
「聞いてないのか?さっき別の奴の両腕を撃ち抜いたばかりなんだが」
とりあえず右肩を撃ち抜いて、部屋の外に蹴り出して、サービスを要求する事にした
部屋の扉を廃棄場で拾った鎖でガチガチに塞いで、サービスで来た飲み物を飲んで寝る事にした
こうでもしないと寝てる内に持ってかれるだろうから、警戒するに越したことはない
タオルを脱ぎ捨て、全裸で布団に潜り込んだ
朝
起きてケースを確認。……盗られてない
銃もある、小道具もある
怠さも消え、好調となった身体
──あの雨を思い出した
地獄を思い出した
ああ、怒りが湧き上がる
でも、それも今日で終わりだ
一糸纏わない、つけられた傷も無くなった美麗な肢体を見て、確信した
死んで、この子に成ったのだ
同時に、この子は死んだのだ
なら、この子が成せなかった事をしよう
内に秘めた怒りは、この子の物だ
俺はあくまで、それを手伝う事にしただけだ
昨日買い漁った下着とレプリカを着衣。腰にホルスター、白黒ハンドガンとマガジンを、背中に青いライフルを背負う
手に整備用小道具と金が入ったケースを持ち、チェックアウト
どこからか嗅ぎつけたのか、ヘルメット団が集団で襲いかかってくる
どうせ昨日の従業員だろう
そういえば、青いライフルを撃って無かった
丁度良い。これから起こる出来事の前哨戦にさせてもらうとしよう
構えて、撃つ
青い神秘がヘルメット団を複数人貫く
一撃で複数人が気絶した。良い、火力だ
ついでに残りはハンドガンで倒していく
良い。馴染む
何処に流されたか分からないが、いつかはこの子の銃も取り戻そう
その前に、トリニティで
「革命を」
足取りは軽い
これから起こすのは、トリニティ史上最大の事件だ
同時にこうなった原因も解明するだろう
この子は、最後まで抵抗したのだ
潰れかけの端末に残っていた映像記録
中々鮮明に映った映像は、まさに物的証拠その物だった
これを提出して、ゲヘナに転校する
どうせ邪魔は入るだろうし、最悪正義実現委員会が出てくるだろう
関係無い
後は、やるだけだ
教員に証拠を提出し、転校許可を貰った
「……トリニティに有るまじき大問題ですね。ティーパーティーに渡して……」
「上は腐ってます。このままそれぞれの教室のモニターに流しましょう。音声も全部です」
「わかり、ました……流します」
『あはははは!!情けない田舎娘がここに来るんじゃないわよ!!』
『なんですのこの汚らしい銃は。優しい私がゴミ箱に捨てて差し上げますわよ。おほほほ!!』
『貴女の家を浄化しましたわ。これで晴れてトリニティから消えてくれます?ふふふふふ』
トリニティ総合学園。朝の点呼確認の最中
モニターに流れた映像と音声は、学内全土と全分派を巻き込んだ大惨事の引き金となった
『…………見ただろう?聞いただろう?』
『これが実態だ。証拠だ。内容だ』
『観て、聞いて、理解しろ』
『もう止められないだろう?』
『今から、悪を粛清する』
『逃げられると思うなよ、クズ共』
あるクラスから逃げ出した生徒が校庭まで走って逃げようとする
「標的がノコノコと出てきた。所詮はその程度の考えしかなかったんだな」
応答を聞かずに両足を撃ち、転倒させる
「銃を奪い、学生証と寮を燃やし、捨てた」
持っていた学生証を目の前で砕き、地面にばら蒔いた
銃を踏み抜いて破壊する
「ああ、あの焼かれた時は、熱かった」
全員の肩を踏み砕く
「腹を撃たれた時は、痛かった」
青いライフルで、腹を撃ち抜く
ソイツらはその場で失禁したが、関係無く撃ち続けた
「そういえば昏倒した時、連続で頭を撃ってたな」
ハンドガンで足を撃つ。何度も何度も
「確か、背中にも───」
「そこまでにしておけ」
構えた銃を、横から掴まれた
剣先ツルギ先輩がいた
「──なんで止めたんですか」
「それ以上は看過出来ないだけだ。お前はそこまで悪だったか?」
「悪はコイツらです。完全に折らなきゃ繰り返す」
「その為のウチらだろう」
「何もしないのに?」
「それは──」
「観てるだけの正義は不必要です」
起きていた1人の眉間にハンドガンを撃ち込んで気絶させた
それを観て苦い顔をしたツルギ先輩を横目に、校門から出る
「……そこまでやってしまうと、戻れなくなるぞ」
「戻る事は無いでしょう。敵でない事を祈りますよ」
早足でトリニティ総合学園から去る
ゲヘナに向けて、突き進む
「チッ。早めにウチに入れれば……いや、遅かれ早かれか」
情けない姿を晒した奴らの後処理を他のに任せ、私は荒れるティーパーティーに連絡をする事にした
「……ウチらは黙認します。当然、正義は彼女にあったからですね。コイツらは矯正局に投げ込みます。ええ、当然退学にさせますよね?戻る場所はブラックマーケットにでもさせれば良いでしょう。良い薬になります」
「え?まぁ……退学でなくてもどの派閥から無限に後ろ指を刺されるでしょうね。どの派閥に居たか次第ですが、ね。しっぽ切りでしょうけど」
「出てきたところで、彼女に消されるだけでしょう?彼女が行った場所はゲヘナです」
「人が変わったような感じもしますが、怒りってそういうモノです。ゲヘナに行けば更に磨かれるでしょう。その状態で矯正局から出てきた所で、見つかりでもしたら……まぁ、死んでなければ良いですが」
電話を切る。これ以上の話は無意味だ
「情報を精査するまでもない。……上の責任は上の責任だ。少しでも足元を見るようになれば良いが」
……食べ歩き、楽しかったぞ
──天釣エンジェ
いつか、また行こう