変態のフリーレン 作:ゼーリエ様が1番可愛い
勇者ヒンメルの死から29年後。
北川諸国シュヴェア山脈。
剣の里。
フリーレン一行はロリ可愛い里長の頼みで魔物退治を行っていた。
「なあ、フリーレン。こいつはどういうことだ?」
巨大な主を倒し、残りの群れも殲滅し、洞窟の中を覗き見たシュタルクは意味が分からないといった顔で疑問を口にする。
「あれは勇者の剣だ」
「そうだね。魔物が集まっていたのはそいつのせいだ。聖域は強力な結界で入れないのに、魔物はそれを破壊する衝動を抑えられない。よっぽど勇者の剣が怖いんだろうね」
「そういうことじゃなくて……」
シュタルクの言いたいことは分かる。
フリーレンは端的に真実を答えた。
「シュタルクの想像通りだよ。──ヒンメルはこの剣を抜けなかったんだ」
選ばれし勇者ではなく、選ばれなかった有象無象──ヒンメルはそのうちの一人だった。
それでもヒンメルは諦めなかった。自分が偽物の勇者でしかないと理解した後も足を止めることはなく、ついには魔王を倒して世界に平和を取り戻してみせたのだ。
偽物の勇者が己の実力のみで本物の勇者へと至った英雄譚を、フリーレンは誇らしげにシュタルクとフェルンへと語った。
「勇者の剣なしで魔王を倒すって、勇者の剣に選ばれるよりもよほど凄いことなのではないですか?」
「そうだよ。ヒンメルは凄いんだ」
フェルンの言葉を受け、フリーレンがむふーと胸を張りながらドヤ顔を浮かべる。
その傍らで、シュタルクは台座に突き刺さった勇者の剣を興味深そうに眺めていた。
「気になるなら試してみれば?」
「勝手に触れてもいいものなのか?」
「大丈夫。先っぽだけならバレないよ」
フリーレンがそう言うと、シュタルクは心做しかソワソワした様子で剣へと近づいていった。
もしかしたら、自分なら抜けるかもなどと考えているのかもしれない。こういうものに惹かれるあたり、やはり男の子だ。
「くっ! うおおおー! ──はぁ、ダメだ、びくともしねぇ……」
しかし勇者の剣が抜けることはなかった。
シュタルクは少しだけしょんぼりしている。
「フェルンも試してくれば?」
「いえ、私は──」
「こういうのは記念にやっとくもんだよ?」
「……では」
シュタルクと場所を代わり、フェルンが剣の柄に手を添える。
初めは片手で、その後は両手を使って力を込めてみたが、剣は微動だにしなかった。
「……不思議です。そんなに深く刺さっているようには見えないのに、動く気配すらないなんて」
「女神様の魔法が掛かっているからね」
力技でどうにかなるなら、それこそアイゼンあたりがとっくの昔に引っこ抜いているだろう。
彼なら剣や台座どころか、その下の地面ごと根こそぎ抉り取れるに違いない。
「さて、最後は私かな」
フェルンに続き、フリーレンも台座へと近づいていく。
以前、勇者一行で旅をしていた時も、フリーレンはこの勇者の剣に触れている。
ここに未だに剣が存在しているということは、つまりフリーレンでも抜けなかったということだ。80年以上時が流れたからといって、その結果が変わることはないだろう。
だから、この行為に意味はない。ただ、弟子に向けて『記念に』と言った手前、師である自分も空気を読んでおくことにしただけだ。
というか、むしろ剣が抜けた時の方が一大事だ。魔王を倒して平和になった世界で、勇者の剣が必要になる場面など考えたくもない。
ましてやフリーレンは杖を持って戦う魔法使い。剣など生まれてこの方一度も握ったことがない。仮に選ばれたとして、一体どうやって使えばいいというのか──。
「……えっ?」
ガコン、と。
そんな音が、どこかから聞こえた気がした。
「あっ」
「? どうした? フリーレン」
「……フリーレン様?」
台座の方を向いて固まっていたフリーレンが、ギギギ──と、壊れかけの機械のような動きで振り返る。
その顔はまるで、『外に出して!』とお願いされたのに間違えて中で発射してしまった時のような表情だった。
「…………抜けちゃった」
****
旅の途中で立ち寄った街。宿の中。
フリーレンは自分の部屋にフェルンとシュタルクを呼びつけていた。
フリーレン一行が宿に泊まる際、以前と違って最近は二部屋取るようになっている。
いや、以前から二部屋取っていたのは変わらない。ただ、部屋の振り分け方が変わったのだ。
前までは男と女で別れていたのに、最近は大人と子供で分かれるようになった。この場合の大人とは精神年齢のことではなくあくまで実年齢──つまりフリーレンの一人部屋である。
その結果何が起きたかというと……フリーレンの性欲が限界を迎えた。
「よく来たね。二人とも」
「なんですかフリーレン様。今からシュタルク様とお出掛けするところだったんですけど」
「ああ、デートの邪魔しちゃったか。それはごめんね」
「……デートじゃないです」
「えっ、デートじゃないの? 俺はてっきり──」
「デートです」
「……どっち?」
こんなに仲のいい二人を妨害するつもりはフリーレンにもない。
ただ、少し見せたいものがあっただけだ。
「大丈夫、時間は取らせないよ」
フリーレンが鞄の中から一枚の紙を取り出す。
四つ折りにされたそれは広げると一辺2mほどの正方形となり、用紙いっぱいに複雑な魔法陣が描かれているのがフェルンたちの目に入った。
「……何ですか、これ」
「ふふふ、見ててね……」
杖を手にしたフリーレンが、体内の魔力を練り上げていく。
膝立ちになり、片手を床につき──そしてキメ顔で叫んだ。
「いでよ、アウラ!」
カッ、とまばゆい光が部屋の中を満たす。
思わず目を塞ぐフェルンとシュタルク。やがて光が収まり、恐る恐る目を開けると、そこには今まで存在していなかったはずの人物──アウラの姿があった。
彼女は全裸だった。衣服を一切纏っていなかった。代わりに全身から水を滴らせていた。
どうやら直前までシャワーを浴びていたらしい。
フェルンがシュタルクの両目を素早く封じ込める。
「……これはどういうことかしらぁ、フリーレン」
「『従魔を召喚する魔法』って言ってね。深い絆で結ばれている相手を、遠くにいても呼び寄せることができるんだよ」
身体を隠そうともせずに不快感をあらわにするアウラに対して、フリーレンが得意気に答える。
アウラは顔がいいので、フリーレンからアウラへの好感度はほとんどカンストしている。
また、アウラからフリーレンへの好感度も、『
魔法を発動するための条件は完璧に満たしていた。
「こういうのって、事前に私に伝えておくのが筋じゃない?」
「アウラのスジは丸見えだけどね」
「やかましいわぁ」
召喚する魔法はあっても、通信する魔法はない。
そのためアウラ側が召喚されるタイミングを操作することは今のところ不可能だった。
「ところで、何か着る服はないのかしら」
「もちろんあるよ。……じゃーん! メイド服〜」
「……なによこれ。リーニエの服に似ているわね。というか丈短くない?」
「ロングもいいけど、ミニスカメイドはストレートにエッチだと思うんだよね」
「あなたの性癖は聞いてないわ」
フリーレンが予め用意しておいたえちちな下着とえちちなメイド服を、文字通り不服そうな顔で着用していくアウラ。
普通、魔族は服を着ない。服を着ているように見えるのは実際には身体の一部であり、人間を騙すための擬態の延長のようなものだ。魔族を殺すと服もろとも消滅するのがその証拠である。
しかしフリーレンはアウラたちに人間らしい生活を強制させていた。まず、魔力で肉体を構成させ、その上に人間と同じ衣服を着用させる──。
何故、こんな面倒な真似をさせているのか。
ひとえに着せ替え人形として楽しむためだった。
「で、私は何の用で呼び出されたかしら? 服従させたい人間か魔族でも見つかった?」
「いや、全然」
「は?」
「最近、フェルンとシュタルクが毎日のようにズッコンバッコンしていてね。それ自体は人間の本能として推奨すべきことなんだけど、相手がいない私としてはムラムラして仕方ないんだよ。ああも見せつけられると、どうしてもひとり遊びじゃ物足りなくなる」
「……なら、二人に交じればいいじゃない」
「ダメだよ。知らないの? 愛し合うカップルにちょっかいを掛ける無法者と百合の間に挟まる男は、後ろからゾルトラークされても文句は言えないんだよ?」
「聞いたことないわ」
じりっ、とフリーレンがアウラに一歩近づく。
反対に、アウラは頬から汗を垂らしながら一歩退いた。
「……バカじゃないの? 本当に、そんなことのためだけにこの私を呼び出したって言うの?」
「そうだね、バカみたいだ。……でも、性欲には勝てない」
アウラの背中が壁に激突する。
行き止まりだ。もう逃げられない。扉から遠い位置に召喚の魔法陣を置いたのは、逃走を図らせないようにするためだったらしい。
「フェルン! シュタルク! 黙って見てないで私を助け──っていない!?」
「二人ならデートに出掛けたよ」
「なら、私たちもそっちに行きましょう! そうね! そうしましょう!」
「ダメだよ。さっきも言ったでしょ? 熱々のカップルを邪魔しちゃいけないって。ましてや大人が若者の恋愛に茶々を入れるなんて以ての外だ」
フリーレンの右手が伸びてくる。
せっかく着たはずの衣服を、彼女は早くも脱がそうとしていた。
「待っ、待ちなさい! あなたにはヒンメルがいるでしょう!?」
「……残念だけど、ヒンメルはもういないんだよ」
「そうじゃなくて……! 操を立てるって話はどうなったのよ!?」
「ふふっ、知らないの? アウラ」
妖艶に微笑みながら、500歳以上年上のお姉さんが耳元で囁くように言う。
「女の子同士なら、浮気にならないんだよ?」
「そんなわけ…………んっ、いやぁ♡」
なお、召喚する魔法はあっても帰還させる魔法はないため、行為が終わった後、アウラは自力で拠点の村まで帰らされることになった。
遠距離恋愛に耐えかねていつでも彼女を呼び出せるようにしたDV彼氏感。