こんな結末になりました。
ポンコツ世界のデュエルは双方向で動くからちょっと大変ですねぇ
ターンが回る―――デッキからカードが排出される
ユサの手札は5枚、ハンタの手札は4枚。
一件ユサが有利に見えるが墓地にあるカードの枚数の差を考えればハンタの方が有利かもしれない。そもそもブラック・マジシャンのデッキはかの決闘王が愛用したデッキだ。油断をしてよいものではない。
センセイの雄叫びが響き、刃金が肉を切り裂く音が響く。何度斬りつけても《右腕》は止まらない。己を傷つけた冒険者に逆襲をしようと巨大な質量と化した腕が荒れ狂い。迷宮の床、壁ごと叩き潰さんと暴れる。
いくら相手が理不尽なモンスターとはいえ大ぶりのテレフォンパンチをまともに受けることもなく適度な間合いを保ちながら戦闘を継続している。センセイには決め手がなく、それを持つのはユサだ。可能な限り急いで戦線に復帰しなければならない。
故に今はセンセイのことを思考の外に置き、目の前のハンタに集中をする。
モンスターの召喚。カードの展開はほぼ同時に行われた。
「手札の《マジシャンズ・ソウルズ》の能力を発動だ。こいつとデッキから《ブラック・マジシャン》を墓地に落とし、墓地の《ブラック・マジシャン》を特殊召喚するぜ。」
手札より墓地に送られた《マジシャンズ・ソウルズ》が自分とセットで送られた《ブラック・マジシャン》のカードに宿っているオドを吸い上げゲフィールドに魔方陣を描く。墓地に送られたはずの《ブラック・マジシャン》がフィールドに特殊召喚される。
攻撃力が高い大型モンスターを召喚できたハンタは安堵の息を吐く。これで相手攻撃に対しての盾が、相手を叩き潰すための剣ができた。基本的にデュエルは壁となるモンスターを可能な限り早く召喚しそれを盾にしながら展開を進めるのが基本的な流れだ。
攻撃を回避しながら展開を進めるようなって変態的な芸当は真面な人間にできるはずもない。
伝説的なモンスターである《ブラック・マジシャン》かつては決闘王の相棒として数多のデュエルに勝利を齎したエースモンスターはそこらの凡俗なカードなど歯牙にもかけない。このまま、通常召喚で―――周囲の光景が切り替わる。
《F.A.》モンスターの力が最大限発揮できる環境へと属性値が疑似的に書き換えられる。ユサとハンタの周辺は迷宮からは遥か過去【魔導時代】に作られたされるサーキットへと姿を変えた。数多のレーシングマシーンが競い、まるで過去の世界へと錯覚させるような光景。その栄華は熱気は幻と言えどハンタを圧倒した。
「手札より《F.A.ハングオンマッハ》を通常召喚。更にフィールド魔法《F.A.サーキットGP》を使用。」
《F.A.サーキットGP》から排出したオドを《F.A.ハングオンマッハ》が吸収、自身のレベルを1上昇する。《F.A.モンスター》は専用の罠・魔法が輩出したオドを吸収し際限なく強化されていく風に設計をされている
《F.A.ハングオンマッハ》Lv4 → Lv5
理論上は無制限だ。もっとも現実的には上限があるが……
フィールド魔法を使用したユサに対しハンタが歯軋りをする。フィールド魔法は自分の有利な環境へと作り変えるカードである。疑似的な環境とはいえ相手が有利になるフィールドに強制的に引きずり込まれた形となる。
それはハンタにとって巨大な化け物の胃の中に叩き込まれたようなものである。直ぐに消化されることはないだろうが急ぎ対策しなければジリープアーである。
そして、モンスターレベルを上昇させる能力を持つモンスターこれも危険だ。
「フィールド魔法ってかぁ。低ランクがよぅ生意気によぅ―――だからよ。その足搔き叩き潰してやるぜェ!!」
ユサの展開速度はハンタよりも上である。レベルを上げるモンスター、これにフィールド魔法が加われば危険なことはこの上なかった。
ここでハンタに迷いが生じる。果たしてこのまま《マジシャンズ・ロッド》を召喚して、《ティマイオスの眼》をデッキからサーチし融合召喚することので正しいのかだ。そんなに時間をかければユサが展開をさらに進め陣地を固めるだろう。
もしそうなれば、強いカードを召喚しても先程の《壊獣》でやられたようにあっさりと巻き返されるリスクが頭をよぎった。―――幸いにもここには《ブラック・マジシャン》こいつの力でひねりつぶせばよい。
恐怖と焦りに付き動かされハンタは《ブラック・マジシャン》に命令を下す。不明瞭な未来ではなく、取れる可能性の高い現在を取る決断を下した。今すぐ叩き潰さねば押しきられる。その恐怖がほかの選択肢を塗りつぶしていく。
「《ブラック・マジシャン》!!その目障りなぼろ車を攻撃しろ!!」
焦りを伴ったハンタの声に《ブラック・マジシャン》詠唱時間がない。速度重視の魔法を準備した。―――己の杖の魔力を収束させる。収束された魔力が数多な弾幕を作り出し、《F.A.ハングオンマッハ》を廃車を超え穴だけにしようと雨あられの様に降り注ぐ。よほどの格上でもない限りはそれだけで火力は十分。お釣りが来るほどである。
そう、対策がなければ―――だ。
「チェイン―――速攻魔法《F.A.ダウンフォース》を使用!!《ハングオンマッハ》のLvが2上昇する!!更に《F.A.サーキットGP》の効果、バトル中はF.A.モンスターのレベルを2上昇させる。F.A.魔法の効果が発動したため、《ハングオンマッハ》のレベルが1上昇する」
《F.A.ハングオンマッハ》Lv5 → Lv10
展開を進めるときには何らかのリカバリー・それを貫通する手段の用意をしながら進めていく。無論完全なものは用意できないし出来る限りはあるのだが、強いデッキを持つハンタはその準備ができていなかった。
古のサーキットで《F.A.ハングオンマッハ》が加速する圧倒的な速度差は《ブラック・マジシャン》が魔法を発動することすら許さず鎧袖一触。《ブラック・マジシャン》を粉々に打ち砕いた―――更に
「《F.A.ハングオンマッハ》はレベルが7を超えた場合、相手の墓地へ送られるカードは除外される。更に戦闘で相手モンスターを破壊したため《F.A.サーキットGP》の効果により1枚ドロウ」
《ブラック・マジシャン》は墓地に戻れず、除外される。その光景を見たハンタは歯軋りをする。除外された以上ハンタのデッキではモンスターの回収手段がなくなってしまったからだ。墓地であれば利用は可能であった。だが、除外されれば話は違う。
デュエル中にも関わらず、ハンタは展開の手を止めユサに対して怒声を上げる。
「あぁぁ!!除外だって?おま何よ。オイラ様のブラック・マジシャンに何してくれんのだよ!!」
ユサの脳内で時計の針が刻まれる。 序盤は自軍に有利な盤面を作らねばならない時間だ。妨害と展開を考えながらも《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の攻撃による傷で体力と集中力が蝕まれて行っているというのに下らない問答に対応はしたくない。
だが、これから展開を進める上で相手のカードの確認はしておきたい。故に相手の恐怖心をあおる言葉を選び―――否、現在の事実をハンタに叩きつける。
「―――展開しないんだったらこのまま叩き潰すよ?」
ユサの言葉にハンタは激昂―――自分のフィールドが空であることを思い出し青褪める。《ブラック・マジシャン》を呼び出す手段はない。故に盾として使えサーチ能力のあるモンスターを召喚する。
「あぁぁぁ!!舐めやがって!!!《マジシャンズ・ロッド》を通常召喚!!デッキから《ブラック・マジシャン》の名前が記された魔法・罠カードをサーチ《黒の魔導陣》を手札に加える。」
通常召喚は切らせた。有名なデッキだけに展開方法も知っている。―――警戒するべきモンスター、墓地にあるカードを考え少し相手の展開を見守る。
ハンタはユサの視線に気が付かず必死に次の展開へと進める
「《黒の魔導陣》を発動!!起動効果で―――」
サーチされるのも場に存在するだけでも面倒なカードである。ユサはここで動くことにした。
「チェイン―――速攻魔法《F.A.シェイクダウン》を使用。《F.A.ハングオンマッハ》の守備表示に変更して《黒の魔導陣》を破壊。」
《黒の魔導陣》が破壊される。ハンタの陣地に残ったのは《マジシャンズ・ロッド》のみ。防がなかったということは対策が手札にない《ブラック・マジシャン》ということだろう。
《F.A.シェイクダウン》の残留オドを回収し《F.A.ハングオンマッハ》のレベルが上昇する
《F.A.ハングオンマッハ》Lv8 → Lv9
ハンタは破壊された《黒の魔導陣》を見て歯ぎしりする。現時点でハンタの手札は2枚。ユサの手札は3枚だ。盤面を含めればユサの方が有利になっているだろう。切り札となるあのカードが来るまでは耐え忍ぶしかない。
ハンタは自分よりランクの低い冒険者に追い詰められているという事実に目眩がしていた。この屈辱はただ殺すだけでは晴らすことができない。地獄を見せてやると誓う。
ターンが回る―――デッキからカードが排出される
ユサの手札は4枚、ハンタの手札は3枚。
デュエルは魔法儀式、デュエリストの展開を待たず進んでいく。どちらのデッキが優れているか、どちらの運命力が優れているか試されていた。
排出されたカードを見たユサの顔色は変わらず、ハンタは喜色満面となる。【デスティニードロー】とでも言うべきか、ハンタは土壇場で逆転の一手となるカードを引き当てた。
喜色を浮かべるハンタにユサは内心ギャンブル弱そうと思ったが、面倒が起きる前に可能な限りの対策――自分の盤面の展開を進め始める。
「墓地の《F.A.シェイクダウン》の効果を発動。フィールド魔法《F.A.サーキットGP》を破壊し、F.A.モンスター《F.A.ウィップクロッサー》をデッキから特殊召喚。《F.A.サーキットGP》が墓地に行ったことでF.A.カードをサーチ。フィールド魔法《F.A.シティGP》を使用する」
フィールドがサーキット会場から高層ビルが立ち並ぶ摩天楼へと切り替わる。魔導時代の都市を舞台に行われたシティGPその会場がフィールド魔法で再現されていた。
地上よりそのレースの熱気に満たされ応援する観客の摩天楼よりレースを見下ろすエグゼグティブ達。だが、誰も彼もがこのレースを楽しみにしていることが分かる。過去の栄光の再現。
F.A.魔法の残留オドを回収し《F.A.ハングオンマッハ》のレベルが上昇する。
《F.A.ハングオンマッハ》 Lv7 → Lv12
《F.A.ウィップクロッサー》Lv4 → Lv8
ハンタはユサの展開を鼻で笑う。己の運命力で引いたカードが最高であった。故に勝つのは己である。ハンタは舌なめずりをする。
そして、ハンタは仰々しく手札よりモンスターの通常召喚を行う。
「ひゃははっ、ひゃははははっ―――!!!無駄な努力お疲れさん。オイラは手札から《マジシャンズ・ローブ》を召喚。」
これで墓地とフィールドを合わせて5枚の魔法使いモンスターが揃った。ターン開始時にドロウしたカード《円融魔術》をかざす。―――ユサが警戒をするカードの一枚。
ユサはモンスターを破壊して除外することも考えたが取り消す。墓地のカードだけでも召喚できる融合モンスターは存在するのだ。下手な真似をして予想外のモンスターを召喚される方が目が当てられない。
有名すぎるデッキの弊害、墓地のモンスターとフィールドのモンスターを見ればだいたい融合召喚をされるモンスターは予想ができる。
「《円融魔術》を使用する!!墓地とフィールドの魔法使い族モンスター5体を除外!!!―――生贄を食らい現れよ。偉大なる御業をもって我が敵に滅びをもたらせ!《クインテット・マジシャン》」
《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》、《ブラック・マジシャン》、《マジシャンズ・ソウルズ》、《マジシャンズ・ロッド》、《マジシャンズ・ローブ》……5体の魔法使い族モンスターが闇に食われ、一つの影に取り込まれてゆく。
影が一つとなり現れるのは遥か昔、【暗黒時代】に最前線で魔人と戦いを続け、人類の生存権を守り続けた偉大なる魔法使いの残影。力写札に転写されてなお、その英傑は莫大な魔力を誇る。
ハンタの目がギラギラと輝き、声高に哄笑する。自分にふさわしいと思い込んでいるハンタが持つ最強の魔法使いの召喚。ユサに対して破滅の言葉を吐き出す。
「《クインテット・マジシャン》は召喚に成功時相手フィールドのカードを全て破壊する。―――格の違いってのが出てきたなぁ低ランク!!」
一時的に封印を解かれた《クインテット・マジシャン》の凶悪な固有魔法がユサの陣地を蹂躙する。それは生きとし生けるものを枯らす、崩壊させる、破滅を呼ぶ力。
肉があればまだ抵抗は可能であるが肉の無い精霊や力写札で召喚されたモンスターであればひとたまりもない。
そびえたつ摩天楼が砕け散り粉々になって地上へと降り注ぐ。発生した土煙がユサの陣地をかき消し―――直ぐに煙は吹き散らされた。
晴れたユサの陣地には無事に生き延びた《F.A.ハングオンマッハ》 が存在していた。
「オレは墓地の速攻魔法《F.A.ダウンフォース》を使用し、《F.A.ハングオンマッハ》のモンスターレベルが上昇させていた。《F.A.ハングオンマッハ》は自分よりレベルが低いモンスターの効果を受け付けない。そして、破壊され墓地に送られた《F.A.シティGP》の効果を発動。F.A.カードをサーチ。サーチしたフィールド魔法《F.A.サーキットGP》展開する」
《F.A.ハングオンマッハ》 Lv10 → Lv13 → Lv16
起死回生の必殺の一手。それを防がれたハンタは驚愕する。決闘王と同じブラック・マジシャンを使用したデッキ―――全てのカードを揃えきれた訳ではないが、こんな低ランクに負けてよいデッキではない。いや、たとえレベルが高いとしても《クインテット・マジシャン》が負けるはずなどないのだ。
だが現実は非常である。淡い幻想はユサの言葉とともに脆く砕け散った。
「《ハングオンマッハ》!!《クインテット・マジシャン》を攻撃!!」
《F.A.サーキットGP》の効果により戦闘中はF.A.モンスターのレベルが上昇する。
《F.A.ハングオンマッハ》 Lv16 → Lv18
残留オドを存分に吸収しレベルを上げた《F.A.ハングオンマッハ》はその莫大なオドを全て推進力へと変換。一瞬で音速の壁を越え、《クインテット・マジシャン》を貫き風穴を空ける―――力写札で投射された体は持たず粉々に粉砕、除外される。
ハンタはその光景に恐慌する。このままでは自分が殺されてしまう。何か対策は―――あった。
化け物に進化した《F.A.ハングオンマッハ》は《クインテット・マジシャン》を破壊したばかりで直ぐにこちらに来れそうにない。そして、低ランクの前にはモンスターがいない。
唯一の起死回生のチャンスである。ユサを殺し、身分不相応のデッキを奪う。あのデッキは高ランクであるハンタにこそふさわしいデッキだ。魔具を起動し、剣を抜いてユサへと走り出す。
幸いにもユサは満身創痍である。簡単に殺せるはずだ。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」
ハンタは絶叫しながら剣を大上段に構え、叩き切ろうと走る。もはや後などはない。全てを書けた乾坤一擲。
だが、現実は無常であった。ユサは腰からソートオフされたショットガンを取り出す。それを見たハンタは驚愕し目を見開いた。マンハンター!!人間しか殺せない武器。何故そんなものをと問う前に
「あのさ。センセイが体術が苦手なオレに対策を用意しなかったと思う?」
そのユサの回答を聞いて怒鳴り散らそうとするハンタを無視し、散弾銃の引き金を引く。銃弾の種類はバックショット。大型の散弾は人間にとっては致命的な攻撃力を誇る。しかもハンタは魔具を起動し、高速でユサに駆け寄ってきていた。
相対速度がバフとなり、散弾銃の威力が増す。銃弾は深くハンタの体を食い荒らし、ズタズタに引き裂く。その衝撃でハンタは仰向けとなり倒れた。
銃弾によるデュエルの決着。
何とも締まりのない結果であるが仕方がない。
そして、ユサはそれを気にする時間はない。未だどうにか相手を抑え込んでいるセンセイと肥大化を続ける《右腕》との戦いに参戦しなければならないからだ。
ハンタとのデュエルによって浪費した時間が《右腕》を強化していた。センセイがどうにか攻撃を避けているが当てられるのも時間の問題だろう。
ハンタとのデュエル中にドローしたカード。こいつが効かないようであれば撤退を視野に入れなければならない。
「速攻魔法《禁じられた聖杯》を使用。相手のモンスター効果を無効化する!!」
己の【豪運】に運命を託し発動した魔法。《右腕》の周辺のマナを吸い上げる機能が一時的に止まる。強化されていた《右腕》はマナの不足によりその機能を損ない。強化された力を失う。細く枯れた状態へと萎んでいった。
今の状態であれば、勝てる可能性がある。センセイを見ると、既に体力、魔力とも使い果たしており、武器を構えてはいるがとどめの一撃を絞り出せるか怪しい状態であった。
《F.A.ハングオンマッハ》の強化された結果に起きた化け物じみた火力があれば、仕留められる可能性はある。故にユサは命令を発する。
「叩き潰せ!!《ハングオンマッハ》」
《F.A.ハングオンマッハ》が最後の一撃とばかりにこれまで吸い込んできたオドを推進力に変え右腕に突き進む。鋭い槍のようなフロントで右腕をズタズタに切り裂きさいた。
それが致命傷となったのか右腕は力を失い動くことを止め、そのまま動かなくなっていた。
【デュエリスト】
否―――受けたダメージを回復させるために能力を回復へと割り振ったようだ。ゆっくりとではあるが右腕がマナを集め回復し始めていた。このままでは最初の戦闘の焼き直しになるだろう。そして、センセイとユサは消耗しきっている。勝てるかどうかが不安であった。
【不滅】ともいえる生命力を持つモンスター、その《右腕》だけという姿はある有名なモンスターを想起させる。それは決闘王が使用していたデッキであり、インセクターがアルカトラズの海へと投げ捨てたモンスター。
未だなお語り継がれる最強のモンスターの一柱《封印されしエグゾディア》
何故迷宮をうろついていたのかは不明であるが、ここで封じ眠らせなければ大いなる災いとなるだろう。そして、それは決闘王の名を汚す事件へとつながりかねない。
一人のデュエリストとしても、ユサは決闘王の名を汚すようなことは避けたかった。
空白のカードを取り出す。これはモンスターを封印するときに使用する媒体だ。最後の力を振り絞り、空白のカードを《封印されし者の右腕》に向ける。
【デュエリスト】【構築世界/ストラクトワールド】【豪運】
「決闘王の名において希う。《封印されし者の右腕》よ。封印を受け入れよ。引き裂かれた欠片が揃うまでしばしの眠りにつけ」
《F.A.ハングオンマッハ》で引き裂いたことがよかったのだろうか。《封印されし者の右腕》はごねることもなくあっさりと封印を受け入れた。封印されたカードを見てほっと一息を吐く。
決闘王の使用していた《封印されし者の右腕》の再発見。大騒ぎになりそうな話題である。現在ネオドミノシティに《左腕》と《右足》は封印されており、ピースはそろっていない。
故に召喚はできないのだが、新たに再発見されたことは弾みになるだろう。狂人達の奪い合いに巻き込まれなければよいがと考え―――ユサの思考は纏まらない状態になっていた。
血が流れ過ぎた。デュエルで魔力を使い過ぎた。平時であれば問題がない程度の消耗だが、致命傷を受けた状態であればそれすらも命を脅かしかねないダメージだ。
センセイがハンタを縛り上げている姿が見えた。後はセンセイに任せても大丈夫だろう。
戦闘が終了をしたことで緊張が解けたユサの意識は闇に押し込められていった。慌てて駆け寄ってくるセンセイを見ながら、迷宮で倒れるという無様をさらしたことに叱られる可能性は考えたが、今の自分ではそこまで気を回せない。
叱られるのはどうせ未来の自分だ。頑張ってもらえばいい。
そんな益体の無いことを考えながらユサの意識は闇の中に沈んでいった。
敵は《封印されし者の右腕》でした。
能力はエグゾディア・ネクロスの能力を参照して作成しました。
5体揃えば最強ですが。5体揃わないと使えないカード。しかも、色々な組織から狙われるというオマケ付……特級呪物だろうか
後始末については次の話で記載します。