フリーレンぽいエルフの話   作:フリーレンのそっくりさん

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なんちゃってヒンメルとの思い出

「君、フリーレンぽいね」

 

 

それをいつ言われたのかは忘れてしまった。

五百年は前だった気はするけど、六百年前のような気もする、それとも七百年前だったかな?

 

いや、まだ私があっちの世界に居た時の話だから千年は前の話になるか。

 

まだ私がただの人間で、資産家の父の跡取り……のスペアとして物置小屋で暮らしていた時の話だ。

あの頃の私は外に出ることは決して許されず、日がな一日色々な知識が込められた本の山を漁るか、寝ることしかすることがなかった。

退屈だったけど、この牢獄みたいな箱庭でも最低限の衣食住は保証されていて、外の世界はガスマスクがなければ肺がやられちゃうぐらい汚れていて、明日を生きるにも苦労するぐらい大変な世の中になっていると本で知っていたから家出しようとは思わなかった。

 

自由ではなかったけど、本があればいくらでも時間を潰すことは出来た。満足はしていなかったが、当時の私は夢を見るほど世界に期待はしていなかった。

だけどある日、そんな私の環境を哀れに思った兄がくれたユグドラシルというフルダイブ型のVRゲーム。それが私の人生を変えた。

 

 

君、フリーレンぽいね

 

 

あぁそうだ。

色とりどりの世界。初めて見る動植物達。匂いや感触はなかったけど、生まれて初めて見た色鮮やかなもの達に釣られて、危険なエリアに飛び出してしまった私はそこでヒンメルに出会ったのだ。

 

ヒンメルは昔に流行ったとある漫画の大ファンであった。

そしてその漫画に登場するキャラクターに成りきるロールプレイヤーであり、ずっと仲間を探していたらしい。

 

私はその漫画のことは知らなかったけど、アバターの種族がエルフでキャラクリがその漫画の主人公にそっくりだったらしいからしつこく勧誘されたんだ。

知らない漫画の成りきりになんて付き合えないとその時は断ったけど、ヒンメルは私への勧誘を諦めなかった。

あんまりにもウザったくて、彼と同じレベル帯になった時にはうっかりキルしちゃったけど、それでも諦めないというのだから、一度は運営に報告してBANして貰うことも考えたことはあった。

 

だけどヒンメルは私を勧誘こそすれど、私の行く道を塞いだりはしなかったし、ダンジョンに潜るときは自然と前衛を引き受けてくれていた為、一緒にいて都合が悪くなることはなかったんだ。

 

それにヒンメルはいつの間にか、僧侶のハイターや戦士のアイゼンを仲間にしていて、前衛のヒンメルとアイゼン、後方の私、支援兼回復役のハイターのパーティーのバランスはお世辞抜きで良く取れていた。

 

それでもヒンメルの勧誘を断り続けていたのは多分、今のままでも大丈夫だろうという楽観的な考えもあったんだろうが、私中心の世界が誰かに舵取りされるのが嫌だったんだと思う。ヒンメル達のことは嫌いではなかったけど、私が正式にパーティーに入れば、リーダーであるヒンメルに名目上従わなければならなかったし、それは気ままに冒険する私のプレイスタイルには合わないと思ったんだ。

 

だから私はある日、いい加減に諦めてくれればとヒンメル達に内緒で行ったこともないエリアに飛び出し、そこで悪徳ギルドのアインズ・ウール・ゴウンに目を付けられた。

 

あのギルドは最悪だ。

変態と狂人と変態しかいない。

唯一まともな聖剣士はいつもヤギ頭と喧嘩してどっかに行くし、私をなめ回すように見てくる鳥頭とスライムには嫌悪感しかわかなかった。

 

その頃には私もゲーム内レベルは最高値だった為、会って直ぐは一対一に持ち込むことでまだ何とかなったが、それも直ぐにあのギルドの長であるモモンガが私の使う魔法とスキル、そして戦法の穴をついくてくる攻略方を見つけて出して、逃げに徹することになってしまった。

 

『もう貴方に勝ち目はありませんよ。いい加減、うちのアイテムを返してくれませんか?』

『やだよ。これは私が倒したモンスターからドロップしたんだ。モンスターに盗まれたのはそっちの不手際でしょ?まるで私が盗んだみたいに言わないで欲しいな』

『ならキルして奪うしかありませんね』

 

そしてエリアの限界まで追い詰められてあわや絶対絶命、そんな時に現れたヒンメル一行だ。

 

『大丈夫かい、フリーレン?』

 

まるでヒーローみたいな登場の仕方だったから狙ってたんじゃないかと疑ったけど、ボックスの絞りカスまでむしり取られそうになっていた私は彼らのお陰で逃げきることに成功したんだ。

 

『フハハハ!!!いいだろう!此度は貴様らの勝ちだ!このモモンガが貴様を勇者と認めてやろう!』

 

まぁそのせいで、悪役ロールをしていたあっちに勇者認定されてずっと敵対することになったんだけれども。

あの事件が切っ掛けで私はヒンメルのパーティーに入ることになったんだ。

 

『やった!ついにフリーレンが仲間に入ったぞ!』

『だから私の名前はフリーレンじゃないって』

 

私の本当の名前は……なんだったか。

皆がフリーレン、フリーレンと呼ぶからいつの間にか忘れてしまった。

 

十年ぐらいしかあっちの名前は使わなかったし、千年も使ってるものだからもうこっちが本名でもいいかもしれない。

 

 

「どうして今、こんなことを思い出したんだろう?」

 

 

もうそろそろプレイヤーが此方の世界にアバターのまま転移してくる百年周期が近づいているからだろうか?

 

私はユグドラシルのサービス最終日の最後までログインしていたらこの世界に飛ばされた。

最初の数百年は私以外にプレイヤーなんていなかったし、階位魔法の使い手は私だけだったからてっきりそういう物なのかと思ったけど、ある時から百年感覚でプレイヤーが転移してくるようになったのだ。

 

レベルや人数はランダムっぽいけど、その転移してくるプレイヤー達は例外なくサービス終了までゲームにログインしていた者達に限る。

 

ゲーム終了時、私達は全員ログインして星を見上げていた。

 

何を話していたかはもう覚えていないけど、確か三人ともリアルの生活が上手く言ってないと愚痴を溢していたような気がする。

 

だからそうだ。今回こそヒンメル達が来るかな?と私はふと彼らのことを思い出したのだ。

 

「フリーレン様?」

「ああ、ごめん。考えごとしてた」

 

もし、次が彼らならこの素晴らしい世界のことを胸がいっぱいになるまで教えてあげようと……長寿のエルフとも言えど流石に寿命が近いのか、年寄り臭いことを柄にもなく考えてしまったようだ。

 

私は最近出来た弟子に連れられて、気ままな旅を再開することにした。

 

 

 

 

──アインズ・ウール・ゴウンの到来まであと6年。

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