読んでくれてありがとね先生。
2024.1.5
今日、私はトリニティにお邪魔した。
当然歓迎はされなくて、入るなり正義実現委員会に追い回されちゃって。何とかセイアに連絡をとってもらうようお願いしたら今日は席を外してるとかで、なんと牢屋に入れられてしまった。
委員長のマシロは正義! って感じの子で、必死に弁明する私をあれやこれやで悪だと決めつけようとしてきた。
後ろで見ていた副委員長のコハルも、喋らないけど警戒心でいっぱい。
何とか仲良くなりたかったけど、結果から言うとダメだった。
勘が告げて早めに帰ってきてくれたセイアが来るまで、私は泣きながらマシロに質問攻めされた。く、くやしい……。
ハスミやツルギがどこに行ったのか何て、聞けなかった。
彼女達の肩書きが全てを物語ってるから。
次は、絶対に仲良くなってみせる
2024.1.6
今日は、ゲヘナにお邪魔した。アルに連絡したけどどうやら彼女は学校には行ってないみたいで、そこには居ないわよと言われた。
とりあえず、ゲヘナの学校がどんな感じかだけ見ておきたくて、私はゲヘナに1人で足を運んだ。それが死ぬ程後悔することになるとは知らずに。
なんて言うか、本当にもう地獄だった。
無法地帯というか、何かもう世紀末みたいな。先生が居なくなってからしばらくして起きたゲヘナ─トリニティ間の戦争。聞いた話によると、その戦争でゲヘナのトップは皆もう……居なくなってしまったらしい。
それが、辞めたとかならいいけど、何となくそうでは無い気がした。
けれど、ゲヘナがこうなった一番の原因としては、風紀委員会が無くなったことらしかった。
委員長のヒナが……先生の後を追って。それを知った行政官のアコもいなくなって。
その後風紀委員会は瓦解して、もうこのゲヘナを取り締まる存在がなくなってしまったらしい。
食堂にいた、死んだ目で料理をする給食部のフウカ部長が教えてくれた。
彼女は、こんな世界でも頑張ってる私が守らなきゃ行けない子だった。
連絡先を交換して、今日は帰った。
2024.1.7
今日はアビドスにお邪魔した。あの日、もうアビドスには一人しかいないと言っていたホシノの事が心配になって、私はあの広い砂漠の国へと足を踏み入れた。
迷った。正直本当に危なかったと思う。
たまたまホシノが通りかからなければ、自治区のど真ん中で迷子になって餓死していたかもしれない。
本当に感謝。命の恩人。そう伝えたらホシノは無表情で何しに来たの?何て、少し嫌そうな顔をしてきた。悲しい。
それから、色々と話を聞こうとしたんだけど、まだダメみたいだった。距離を詰めようとすればするほど、離れていこうとする感じ。
また日を改めるねってて言って、来るならせめてちゃんと調べて準備しろって怒られた。
やっぱり、芯は優しい子なんだと思う。
2024.1.8
今日は、最近出かけ過ぎてたせいで拗ね始めたヒマリを1日構うことにした。
年上なのに最近遠慮なく甘えて来るようになったヒマリに、1人でいる時もその事を思い出してニヤけることが増えてしまった気がする。恥ずかしい。
彼女はよく膝枕とよしよしを所望する。そんな姿を見て、エイミが嬉しそうな顔をうかべてる。
こうしてみるとエイミがパパで、ヒマリが娘ねって言ったら、2人ともすごい顔してた。
ふふ、今思い出しても笑える。今の私の帰る場所は、あそこだ。
2024.1.9
今日は、百鬼夜行自治区にお邪魔した。
色んなところに行った経験から、先んじてユカリに連絡を入れて迎えに来て貰えないか頼んでみた。
けど、彼女はどうも忙しいみたいで、代わりにシズコって子が案内役に来てくれた。
彼女はお祭りが大好きみたいで、先生が居なくなってからずっと暗い雰囲気の百鬼夜行を見て寂しい表情で案内してくれた。
だから、今私がやっている事を伝えて、上手くいったら全部の自治区纏めて皆でお祭りをしようと約束した。
そしたら、泣きながら手を握ってきて、ありがとうって言ってくれた。
すごく、嬉しかった。
生徒の為に、何かをする。先生はいつも大変だなって思ってたけど、こんなふうに感謝して貰えるならとってもやりがいがあると思えた。
なんだか、先生の事を1つ知れた気がして、すごく嬉しくなった。
2024.1.10
今日は、ヴァルキューレ警察学校に行ってみた。
何だか全体的に慌ただしくて、カンナ局長が対応してくれたんだけど、あまりの慌ただしさに少し邪魔をしてる気がして申し訳なくなってしまった。というか、向こうが邪魔だという顔を隠さなかった。というか言われた。
流石に帰ろうかと思って、そしたら何とヴァルキューレ警察学校に襲撃がきた。
びっくりしたけど、お前はもう帰れとカンナが言うから手伝うよと言えば、しばらく黙ってから着いてこいと言われた。
その後、ヴァルキューレに大量に配備されているドーナツを奪いに来たラビット小隊を追い払って、その後は感謝の印としてドーナツを一箱貰った。
嬉しかったし、美味しかった。
2024.1.11
今日は、昨日襲撃にきたラビット小隊に会うことにした。
本当は、ああいう事をする子にはあまり近づかない方がいい気がしたけど、それでもあの赤い空の事件で活躍していた彼女達を知っているから、あれが本当の彼女たちじゃない気がして1度会ってみることにした。
当然、警戒された。凄い子達なのは知ってたから、もうどうせ勝てないからいいや、と思って銃を置いて手を挙げながら近づいていった。
結局拘束はされたけど、攻撃はされなかったから良しとする。
それで、昨日貰ったドーナツを4つ上げて、何があったのか聞いてみた。
けど、当然お前に教えることはないって言われて、火炙りにされて食べられそうになったので私は泣きわめきながら助けてって叫んだ。
流石に引いたのか、冷静になって逃がしてくれた。本当に危ないところだった。
けど、結局最後まで暴力も振るわれなかったから、取り敢えずまた会いに行ってみようと思う。
次の差し入れはどうしようか。喜んでくれたら嬉しい。
2024.1.12
今日は、おやすみ。
2024.1.13
今日はまたトリニティに行ってみた。もちろん、先に連絡を入れてセイアがいる時にお邪魔した。
逢いに行くと、少し申し訳なさそうな顔でマシロとコハルが前回の事を謝ってきた。あれは当然の事だから気にしないでいいって言って、でも、って言ってくれたから連絡先を交換して貰った。
それで、ティーパーティーにお邪魔してセイアと色々な話をしていると、急にナギサって子がやってきた。それで、何をしに来たのかと、セイアに何を吹き込んだと詰め寄られた。彼女のクマは今まで見た中で1番酷いもので、心配で手を伸ばしたら触るなって凄い剣幕で弾かれた。
彼女も、心に深い傷をおっている。
また来るねって行って、二度と来るなと言われた。大丈夫。絶対に見捨てないから。
2024.1.14
今日はゲヘナに行こうと思って、そこで私は凄い名案を思いついた。
アルだ。どうも彼女は便利屋をやっているらしく、彼女を護衛に雇うことにした。アルとも話せるし、これは一石二鳥。と思ったらすごい嫌な顔をされた。
何とか報酬を釣り上げて、ようやくこの依頼を受けてくれた。それでも嫌そうな顔は最後まで消えなかったけど。これ、経費で落ちるかな……。昔の私に領収書見せたら凄い怒られた気がする。これが、先生の気持ち……? いや、流石に何万もするプラモデルとかと一緒にされたくはない。
とにかく、アルと一緒にゲヘナを見て回った。
そして、出会った。ハーッハッハッハー! と特徴的な笑い方をしながらが当たり構わず爆破する、確か温泉開発部の部長のカスミ。そして辺りに転がった怪我人を白い髪の女の子が車に乗せて運んでいく。
本当にどうなってるんだこれ……とは思うが、今の私には目の前の事以上はどうしようもない。
とりあえずアルに報酬の増額を伝えて、この場を制圧する事にした。
アルは本当に強かった。右手のライフルで遠くの敵を一撃で落としながら、もう片方の拳銃で近づいてきた敵を確実に片付けていく。
報酬額も納得の実力だ。
最後にアルと一緒にご飯を食べてから帰った。……しばらく水しか飲んでなかったみたいで、凄く感謝された。
どうも本物のアウトローを目指しているらしいが、今のこのゲヘナで盗みを働こうとしない当たり多分この子めちゃくちゃいい子だ。
これからも、ゲヘナに来る時は依頼をして、それでご飯を食べてもらおう。
なんなら、毎回ご飯を一緒に食べて帰るのもすごくいいと思う。
2024.1.15
今日はミレニアムの中を一通り回ってみた。なんだかんだ、ミレニアムだって結構酷いし。
まずはヴェリタス。と思って扉を開けた途端、扉の外に空のエナジードリンクが流れ出て来てびっくりした。
そして中には、パソコンをカタ……カタ……と死屍累々と打つヴェリタスの面々。
私は急いで部屋を換気して、全員引っ張り出して医務室に叩き込んだ。
エナドリ最強とか言ってろくに食事もしてなかったみたいで、暫くはお粥生活。本当にいい加減にして欲しい。
帰ったらヒマリにエナドリ臭いと言われた。流石に私は悪くない。
2024.1.16
今日は百鬼夜行。シズコにまた案内してもらって、しかもどうやら彼女から案内役を買って出てくれたみたいで、つい嬉しくて抱きついてしまった。
それで、まだ見てない場所を教えて欲しいと言ったら、なんだか怪しい研究施設の様な場所に連れてこられた。
そこにはサヤという研究大好きな子がいて、後彼女に逢いに来たという銀髪の髪の子が椅子に座ってぼーっとしていた。
というか、見た事ある子だなと思ったら、アトラ・ハシースの方舟でフウカ部長と一緒にいた子だった。
話を聞くと、どうも味覚喪失になってしまったようでここに来たらしかった。
あのとき周りにいた三人がここにいない事を、私は聞けなかった。
彼女の目を見れば、何となくわかったから。
2024.1.17
今日はまたトリニティ。あのナギサって子にどうしてももう一度会いたかった。
当然面会拒否。どうすればいいかセイアに電話で相談したけど、そんなの私にも分からないと言われた。
ただ、少しだけ教えてくれた。
ゲヘナとの戦争。当然、そんなもの1番に狙われるのはトップだろう。現にゲヘナのトップはもう居ないのだから。
それと、ティーパーティーにいたミカって子も。
ミカという子がセイアとナギサを庇って、死んじゃったらしい。目の前で幼なじみを無くして、心に蓋をしてしまったんだとか。
それを聞いて、私は逆に燃え上がった。絶対に、絶対に彼女の心を助けてみせる。だって、ミカって子が今のナギサの姿を望んでいるはずがないから。
ノアが助けてくれたから私には分かる。
そうだよね、ノア。
ノア………。
2024.1.18
今日はおやすみ
20241.19
今日はラビット小隊に会いに行った。どうもお腹が空いたせいで色々と襲撃してるみたいで、私はコンビニでいくつかお弁当を買って持っていった。
あと、発電機が置いてある事は前回の事で気がついたから、ミレニアムの電子レンジと、後日持ちする冷凍食品も持っていった。
また初手拘束されたけど、クーラーボックスに冷凍食品を入れた後に解放してくれた。
それで、何故わざわざ私達にこんな事をするのかと聞かれたから、もう他の人を襲わないでって言った。それと、これからも食事を持ってくるとも。
それからは色々と4人で話し合いをしてたみたいで、内容は聞こえなかったけど結構白熱してた。
出た結論は、別に私の言うことは聞かないけど持ってくる分には好きにさせる、というものだった。まあ、食事を持ってきているうちはそう暴れないと思う。
最後に、リーダーのミヤコちゃんに変な人って言われた。
それ、先生とはいえ女の子に言うことじゃないからねっ!
2024.1.20
今日はアビドスにお邪魔した。今度は、ちゃんと準備して。
また来たの? って言われたけど、それは当然。だって約束したから。
お土産をいくつか渡したら、受け取らないって言われてしまった。そういえば、ホシノはあの時も紅茶を飲んでくれなかった。人から貰うものが怖いのかもしれない。
それと、まだ黒い封筒に従って協力しようとしているのかと聞かれた。
そうだと言うと、ホシノは渋々何があったのか教えてくれた。
あの封筒の持ち主、黒服。ホシノを誘拐して、何かの実験をしようとしていたらしい。
それを聞いて、ようやくあの時のホシノの様子に納得した。
けれど、そうなるとなぜ、あんなものがあそこに置いてあったんだろう。
それに、そうなるとあの紙は確かに信用しない方がいいのかもしれない。
けれど、今はそれだけじゃなかった。たとえあの封筒が罠で、先生への手がかりでもなんで無いとしても、今している事を辞めるつもりは私には無かった。
見て回って、わかる事が沢山あった。この世界には、救いの手を待つ子が沢山いる。
彼女達を助けられるのは、きっと先生の意志を継ぐ私だけだ。そう伝えると、ホシノは変わった大人だね、と言った。
大人と言ってくれるのはすごく嬉しかったが、変わった、というのは少し不服だった。それもこの前言われたばっかりだし。
帰り、ホシノがラーメンを奢ってくれた。すごく美味しかった。
2024.1.21
今日はゲヘナに行った。アルに護衛を頼みに事務所に行こうと思ったら、その途中で襲撃にあってしまった。流石に1人では厳しい数で、焦って逃げようと思ったら助けてくれた子が居た。
ハナコだった。
どうしてここにいて、助けてくれたのか聞こうとおもったら、すぐにどこかへと言ってしまった。
今日はトリニティは学校のある日だと記憶していたけれど、何か訳でも有るのだろうか。また今度会えたら聞いてみよう。
アルとのゲヘナ旅は平常運転だった。帰りは一緒にご飯を食べた。
2024.1.22
今日はまたミレニアム。ヴェリタスは多少元気を取り戻したようで本当に良かったと思う。
今は私が健康管理をしていて、エナドリ中毒を治す為に色々と頑張っている。
ことある事にエナドリ……エナドリ……と這いずりながら寄ってくる彼女たちははっきりいってゾンビみたいで怖かった。美味しいし元気が出るのはわかるけど、今の年齢からそんなに頼っていたら色々と心配だ。
私は心を鬼にして、薄めたエナドリを彼女たちに与えた。
泣きながら喜んで飲んでいた。こっちも泣きたくなってきた……。
2024.1.23
今日、特異現象捜査部にネルが遊びに来た。
何か仕事ないか? と言われて、どうしようかと思って、今は無いけど今度エイミも入れて三人でアビスに捜索に行こうと約束した。
だから今日は特に無いかな、と言うと、ヒマリが何故か勝ち誇ったような顔で追い出そうとしていたので、急遽私は今日2人に仲良くなって貰うことにした。
方や知の最強。方や武の最強。
ぜひ仲良くなってもらいたい。それはきっとミレニアムの未来にも繋がるだろう。
なんて、ただの建前で本当は私の生徒に仲良くなって貰いたいだけ。
皆でご飯を食べて、ゲームしたりして遊んだ。負けず嫌いが災いして、ネルが何度もヒマリに勝負を挑んでた。
私は、ゲーム開発部を思い出してちょっと泣いてしまった。
2024.1.24
今日は、百鬼夜行。やっとユカリが会えるって言うから、行ってみた。
百鬼夜行紛争調停委員会。そこの長を務めるユカリは、今日初めて知ったけど何と1年生だったらしい。
凄い! って褒めたら、悲しそうな顔で、ただ尊敬する先輩たちが皆いなくなっちゃったからだと教えてくれた。ちょっと地雷を踏んだかもしれない。私はただ、抱きしめてヨシヨシしてあげた。そんな事くらいしか出来ないから。それでも、嬉しそうな顔をしてくれるのは嬉しかった。
それと、教えてくれた。あの日来てくれたミチルの事。
彼女たち忍術研究部は、先生がいなくなってから独自で先生を探し回っていたらしい。
それは百鬼夜行だけでなく、トリニティだろうがゲヘナだろうが可能性があれば何処へでも飛び回ったと。
そして、その過程で二人とも死んでしまったのだと。
ミチルは、今1人らしい。そして、どうか助けてあげて欲しいと言われて、私はもちろんと答えた。
そして、いざミチルに連絡して見たけど、残念ながら連絡はつかなかった。
また今度、出直そう。
2024.1.25
今日はトリニティに行った。ナギサは早めに何とかしないと手遅れになる気がして、今日は色々と用意した。本当はミチルとも会いたかったけど、まだ連絡がつかない。とりあえず、出来ることをする事にした。
良いお茶は普段から飲んでいるだろうから、前セイアが興味津々だった事も思い出して色んなフレーバーの紅茶を用意してみた。
後は、お茶菓子。私が好きなやつをいくつか持ってきた。
そしていざ会おうとして見れば……正直に言うと、案の定。部屋に近寄らせても貰えなかったし、セイアにも程々にしてやめておいた方がいいと言われた。
けど、私は諦めない。茶菓子や紅茶をぜんぶセイアに渡して、また出直すと言って今日は帰った。渡したお土産を物珍しそうに見ていたセイアを見て、ちょっと嬉しくなった。
2024.1.26
今日もトリニティ、いや、ナギサに会いに行った。
すぐに追い返されて、今日はセイアも会えなくて正義実現委員会に顔を出した。
コハルとマシロに挨拶して、少しお話した。
正義とは何か!みたいな硬い話になる度にコハルがフォローしてくれる。2人は結構上手くいってるみたいで、それについては少し安心した。
けれど、2人はすごくゲヘナの事を恨んでるみたいだった。
当然と言えば当然なのかもしれないけれど、私はゲヘナにもいい子達が沢山いるのを知っている。だから、一括りにしてしまうのは少し悲しかった。
けど、多分今の私の言葉は届かない。今は仲良くなることに専念して、また来るねって言った。
2024.1.27
ユカリに呼び出された。ミチルが死んだって。
私は、何も出来なかった。
2024.1.28
もういい
せんせい。あいたい。
2024.2.6
今日はトリニティにお邪魔した。当然、ナギサに会いにだ。
会いも変わらず部屋から出てこない引きこもりのお嬢様に、若干のいらだちを込めて私は怒鳴りつけた。
出てこい意気地無し! なんて、我ながら、ほんとに、あれには反省してる。だいぶ冷静じゃ無かったと思う。
そして、出てくるや否やつまみ出しなさい、何ていうナギサに思いっきり飛びかかってやった。そしてこちょこちょの刑。辛いから、笑わない。笑わないから、辛い。その悪循環を断ち切るために、私は無理やり笑わせようとした。
当然付き人に引き剥がすよう命令するナギサ。しかし付き人は動かない。
裏切られたような顔を見せるナギサに、私は真実を伝えた。
ナギサ様を助けてください。その付き人の願いが、セイア越しに私へと届いた。
だから、わたしは、ここに来た。
やらなきゃ行けないって思って。
それで、ようやく出て来たナギサをわたしはとっ捕まえて、それで付き人の前に羽交い締めにしたまま差し出した。
それで、付き人と無理やり話させた。心配してる、とかもう少しご飯を食べて欲しい、とか。
全部、全部優しいお願い。
ナギサは次第に泣き始めて、私も彼女を抱きしめて泣いた。
私は、何をしていたんだろう。
立ち止まってる時間なんて、どこにも無いのに。
2024.2.7
心機一転。今日はどうしようかと考えてたら、アカネとカリンに出会った。
凄く久しぶりに顔を見た気がして、元気かと聞いたら元気は無いと言われた。……返答に困る。
それで、最近どうしていたのか聞いた。
アスナが死んで、C&Cの上司の様な存在でもあるセミナーが全然機能してなくて、空中分解のような感じで解散したC&C。
今は2人は、ただの生徒に戻ったの事。全部忘れて、普通の人生を謳歌しよう……と思ったものの、そう上手くは言っていないらしい。ちょっと常識は抜けてそうなカリンはともかく、アカネもそうだと聞くと少し意外だった。
だから、言ってみた。私の元で、ネルも含めてC&Cをもう一度やらないかと。
2人は驚いたような顔をして、そんな事、今更ネルが許さないと言った。
私はその言葉に言質を取って、じゃあネルがOK出したら復活ね!と言った。
2人は小さく、けどちゃんと笑ってくれた。それだけで大きな進歩だと思う。
2024.2.8
今日は、何と驚きの人から声が掛かった、
まさかのナギサだった。
ようやく心を開いてくれたかと思ったら、少し違った。
会うなり罵倒された。一体何を考えているんだと。
早口でわたしの悪口をスラスラと言い続けるナギサに、ポカンとしながらこれは進歩なのか退化なのかと罵声を浴びせられながら考えた。
けれど、用事があるからこれで……と去ろうとすると、まだ言い足りないからまた来いと言われた。
私は抱きしめてあげようとして、当然拒否された。
だから、私に向かって伸ばしたその手を握ってやった。
おどろいた顔をして解こうとしたが、暖かいね、っていったら黙り込んでしまった。
俯いて、顔を見せようとしないナギサの頭をそっと撫でた。
ぽたぽた落ちるそれは、見ないふりしてあげた。
2024.2.9
今日は、ノアのお墓参りに行った。
私を置いていった親友。私を助けてくれた親友。
言いたいことがいっぱいあって、話したいこと、聞いて欲しい事が沢山あって、そんなこんなしているといつの間にか夜になってしまった。
ねぇ、ノア。今貴方はどうしているのかしら。
今も、私を見守ってくれてる?
わたしね、今凄く頑張ってるんだよ。
生徒たちの前では言えないけど、本当は、すごくすごく辛いんだよ。
けどね。今の私は、ノアに貰った命だから。
だからもう、二度と挫けないから。
見ててね、ノア。
私の、世界一の、親友。
そして、1ヶ月
春になった。
─────────────────────
春。3月9日。卒業の季節。
私は今、1人でゆっくりと“準備”を進めていた。
「──ふん♪──ふふん♪」
鼻歌なんか歌いながら、埃を被っていたコップを洗って、後は念の為ティーポットも洗う。それを終えると、丁度オーブンが鳴って私はそちらへ駆け付けた。
うん、いい匂い。焦げも見当たらないし、かんぺき〜。
私はつい笑顔になって、ガラスにうつる自分のニヤケ顔に恥ずかしくなって咳払いをした。
──ここは、少し前までボロボロだったシャーレの執務室。
今や割れたガラスは取り替えて、ガレキは全部撤去して、新しい机やPC等の設備の搬入も全て終えた。
数週間前から始めたこの作業も、ようやく昨日で終わりを迎えて。
そして、今日からまた始まるのだ。
──新生シャーレ。
その響に、私は感慨深くなって思わずぶるりと震えた。
そうだ。それを率いるのは他でもない──
「──お邪魔するよ、ユウカ
「……邪魔をする、
「──あ、いらっしゃい! セイア、アズサ!」
2人が、綺麗になった扉を開けて執務室にやってきた。
集合時間の40分前。前もこの2人が一番乗りで、それもこのくらい早い時間だったなぁと思いだす。
クッキーが沢山乗った受け皿を一度置いて、そうだ、と思ってその中から2つ取り出した。
「すまない、また随分早く来てしまった」
「いいわよ。ゆっくりしていってね。……はい! 口開けてー」
「ん?」
「な、何を……」
戸惑う2人を余所に、その口にクッキーを放り込む。
驚いた顔をして、しかし口に入れてくれた2人は最初モゴモゴとしていたが、次第にその顔が笑顔になって私もそれを見て嬉しくなった。
「どう、美味しい?」
「美味しいが、急にこういう事はやめてくれ……心臓に悪い」
「……おいしかった」
「ふふ、ごめんね? さ、中で座ってて。それと、また好きなの選んでね」
そう言って、新品のテーブルと椅子へと案内する。その上には先んじて、色んな種類の紅茶やコーヒーのスティックが並べてあった。
セイアはトコトコとそれに引き寄せられ、目を輝かせてあれもこれもと手に取っている。
アズサは何処か気まずそうに立っていたので、頭を撫でてあげたら嬉しそうに顔を綻ばせた。
「──失礼します」
「お、お邪魔します……っ」
「正義はこちらですか?」
続いて入ってきたのはナギサと、その後ろに続くコハルとマシロだった。
笑顔で迎えて、けど少し不思議に思った。別に仲が悪い訳でもないのに、どうしてセイアとナギサは別々で来たんだろうか。
「いらっしゃい。ようこそ新生シャーレに」
「──はぁ、まさかあの世迷言を本当にやり遂げるとは、思いもしませんでした」
「ユウカ先生の正義は私も一目置く所ですから」
「もうっ! その訳わかんない事何処でも言わないでよっ!」
ピコピコと動くコハルちゃんの頭の羽が可愛くて、思わず頭を撫でてあげる。
するとすぐに顔を赤くして、えっちなのは駄目っ!と後ずさりしてしまった。
「あら、先生ともあろう方が贔屓ですか?」
「え? 何が?」
「特定個人だけに愛想を振りまくなど、そんな事では先生の風上に──」
「ああ、はいはい」
撫でて欲しいんだな、と思ってユウカはナギサの頭を撫でた。
んなっ!? て顔をしていたけど、決して私の手を振りほどいたりしなかった。ついでに、隣で羨ましそうな顔をしていたマシロちゃんも撫でてあげる。
三人で百合百合した空気をつ切り上げていると、くいくいと後ろから誰かには服を引っ張られた。
「先生、これがいいのだが……」
「ああ、うん。わかったわ。今準備するわね」
「──セイアさん? 今取り込み中というのが分からないのですか?」
「私はこの為に先んじてここへ来たところがある。君の欲望に付き合っていては時間が惜しいというものだ」
「欲っ!? ……そういうセイアさんこそ欲望に忠実なのではっ? 一緒に行こうと誘ったのに抜け駆けして先生に会いに行こうとするなんて……!」
「静かな部屋で先生とお茶を飲めるのはあまりない機会なんだ。人が集まればその分騒がしくなる。故にこれは仕方の無い事なんだ」
「何を!?」
「……なんだい!?」
「あーはいはい、先生は皆の先生だからケンカしないでねー」
キャットファイトを始める2人をよそに、ユウカはポットに水を入れて沸かす。
──2人を止めなくていいのか? 問題ない。二人とも体力も力もクソ雑魚なので10秒もしない内に勝手に収まる。
「はぁ、はぁ、今日の所はこれくらいに……」
「ふぅ、はぁ、全く、子供の相手は疲れるというものだ……」
何をっ!? とまたポカポカと殴り合う二人。そんな姿を見て、けどコハルもマシロもアズサも、みんな笑ってた。
勿論、私も。
「──私が来たわよっ!」
「うふふ、お久しぶりです、ユウカ先生?」
「ちょっと、ハルナ!? いい加減下ろしてよ! 何で縛る必要があるのよ!?」
「ゲヘナ……」
次いで、扉を開けたのはアル、ハルナ、そしてハルナに縛られて運ばれているフウカだった。
アズサは何処か思うところがあるものの、動き迄はしなかった。
2週間くらい前だろうか。何とか仲を取り持とうと私はそれはもうめちゃくちゃ頑張ったのだ。
それはまた別の話だが、結果仲直りとは行かなくとも私の前では私の顔を立ててくれるようにはなった。これで暴れられたらさすがに私は泣く自信があった。
「あら、ごめんなさいフウカさん。つい癖で」
「癖で誘拐しないでっ!? おーろーしーてー! こんな姿先生に見られたくないっ!」
ハルナはフウカを解放して、するとフウカは泣きながら私に抱きついてきた。ヨシヨシしてあげるが、 正直この光景もいつも通りと言えばいつも通りだ。
一度、ハルナはその“いつも通り”を失ってしまったけれど。今はもう、元気にあちこち飛び回って食事をしたり爆破したりしているらしい。
いや爆破はダメだ。流石に先生は許さない。
「全知が来ましたよ! ユウカ! 全知が来ましたよ!」
「何で2回言ったの部長」
「すげぇメンツだな……見てるだけで腕が疼きやがる」
ヒマリ、エイミと続いて一緒に入ってきたのはネル。
今日は、ヒマリとエイミも呼んだ。大事な日だから、この2人にもぜひ一緒にいて欲しかった。
そして、
「ふふ、賑やかですね」
「ああ……悪くない」
アカネとカリン。ネルの後ろに、ネルと同じC&Cの礼装を来た二人が、照れたように笑いながら立っていた。
あの後、アスナは居ないものの、C&Cは再結成した。
そして、私の直属として色々と動いてくれている。本当に頼りになる子達だ。自責の念からか無茶しがちだが、そこにセーブをかけるのは他でもない私の仕事。
「先生! 来たよ!」
「外に出たのっていつぶりだろ」
「…………」
「こらコタマ、今ポケットから出したの何だ。見せろ、よこせ」
次に入って来たのは、正直一番心配だったかもしれないヴェリタスの面々。来てそうそう何かを仕掛けようとしたコタマにステイをかけてくれたチヒロには感謝しか無かった。
そして上がり込んでそうそうエナドリは無いの? とか言い出すマキとハレに、私はデコピンしてその中から選んでと言いつけた。
まだまだ、どんどんくる。
「ラビット小隊、要請により駆けつけました」
「ぅぇ、せ、先生〜、私なんかがここに来て良かったんでしょうか……」
「いつまで言っているんだお前は。シャキっとしろ!」
「うへへ、美味しそうなクッキ〜! たべていい? たべていい?」
「意地汚い真似をするな、まずは手を洗え……壮健そうでなによりです、先生」
ラビット小隊。それと、一緒に来たのはヴァルキューレ局長のカンナ。
まさか一緒に来るほど仲が良くなったのかと思えば、単にカンナは監視しているらしかった。
仕方がない、やっていた事は普通に犯罪だったから、今はヴァルキューレのお手伝いをすることで執行猶予の罪の清算中らしい。
「先生!シズコですよ〜!」
「ぼくさま、参上!」
「えり〜とユカリ、馳せ参じましたわ!」
シズコ、サヤ、ユカリの百鬼夜行組。色々あったにも関わらず、この3人はいつも明るくて本当にすごいと思う。
そうそうにハグをかましてきたユカリを抱きとめて、そのままクルクル回って椅子にストンと座らせる。
それで、頭を撫でてあげたらものすごい笑顔を浮かべた。下手すればこの中でも一番子供っぽいかもしれない。
そして。
「うへ〜、いっぱいだ〜」
「うふふ、これはこれは……」
「──え?」
「う、うそ……」
私が誘ったのは、今最後に来た2人で全員だった。その2人、ホシノと、そしてもう1人の人物を見て一部の──トリニティの面々が驚きの顔と声を上げた。
「は、ハナコっ!?」
「なんで!? どうして!?」
「──うふふ、皆さん、お久しぶりです♡」
そう平然と言ってのけるハナコに、アズサ、コハル、ナギサ、セイアは空いた口が塞がらないといった感じだった。
私は当然彼女が来る事を知っていたけれど、どうしてもハナコ本人が黙っていて欲しいという事だったので、今まで一度もハナコのことは誰にも伝えていなかった。
「──何でっ! 今まで、どこで何してたのよ!!」
「ハナコ……心配した」
「ハナコさん……」
「…………」
皆それぞれにハナコへの思いをぶつける、ハナコを知るトリニティの子達。
それを正面から受けて、ハナコは一度、目を瞑った。
「ごめんなさい。………私は、皆さんから逃げてしまいました」
「ハナコ……」
セイアは、元々彼女が抱えるものを知っていた。
1度は持ち直したものの、それでも再びその心を閉ざすには十分すぎることが起きてしまったから。
シスターフッドの壊滅。救護騎士団の空中分解。
ミカが死んで、ナギサが心に蓋をして。
そんな中をセイア一人でどうにも出来るはずがなく、残された人は、当然ハナコを頼ろうとした。
そして、そんな中ハナコの考えた任務でヒフミが死んだ。
結果、ハナコの心は跡形もなく砕け散った。
そう、思っていたのに。
「私は、どうしても自分が許せませんでした。どうしても、あそこにいると後悔でどうにかなってしまいそうでした」
「……あれは、ハナコのせいじゃない」
「そうよ! 何っ、勝手に一人で背負おうとしてんのよ! っ、私たち、補習授業部の仲間じゃなかったの!?」
コハルは、目に涙を溜めながらそう叫んだ。
今まで溜めた思いが、今爆発している。ユウカは、これはきっと吐き出した方がいいと思って、今は黙って見守った。
「はい。そうですね。……私は、皆のその優しさが怖くて……逃げてしまいました」
「うぅ……! 何よ! 今更ここで顔を見せて……! 私達が、どんな思いで……ぅぅ……っ!」
「──ごめんなさい!」
そして、ハナコは頭を下げた。最上級の社交界でも通用しそうな、完璧で綺麗な謝罪。
けど、謝罪というのは形では無いのだ。その、心によるところが大きい。
だから、ちゃんと伝わるだろうとユウカは思った。彼女の心を、ユウカはもう知っているから。
「逃げてごめんなさい。皆を残して勝手に去って、ごめんなさい」
「ハナコ……」
「身勝手な事をしたと思います。今更どんな顔をして戻って来るんだと思われても仕方がありません」
「…………」
「でも、それでも……もう一度、もう一度だけ……」
ハナコは、頭を上げた。
「私に、やり直す機会を与えて頂けませんか……?」
その顔は、大粒の涙で濡れていた。
「…………っ!バカ! ばかばがばか!!」
コハルがハナコにつかみかかって、ユウカは慌てて止めようと思った。けど、すぐに必要無いと思って足を止める。
「そんなのっ、良いに決まってるじゃないっ! 何で、何でもっと早く言ってくれなかったの……っ!」
「コハルちゃん……」
「ハナコ。おかえり」
「ハナコさん。無事で何よりです。──おかえりなさい」
「……ハナコ。大丈夫だ。君を否定する様な人は、もうこのトリニティには居ない。それと、君が抱えているものを今度こそ私達に分けてくれ。……それと、私も言うべきかな? ……おかえり、ハナコ」
「──皆さん……っ、ただいま、もどりまじた゛……っ!」
……やっぱり、大丈夫だった。ケンカしたら、やり直せる。そんな当たり前の事だけど何処か忘れがちな事を、ちゃんと私たちはあの人に教わったから。
「ぐすん、いい話ですわ……!」
「うへ〜、なんか色々思い出しちゃうね〜……」
部屋中に暖かい雰囲気が流れて、皆の心が今一つになっている気がした。
トリニティ。
ゲヘナ。
アビドス。
ミレニアム。
百鬼夜行。
SRT。
ヴァルキューレ。
それらの代表達が、いま、ここに集まっている。
ユウカはいよいよだと、気を引き締めて大声で叫んだ。
「──よし! みんな集まったわね! それじゃあ、ここに新生シャーレの発足を宣言するわ!!」
その声に、皆の視線が集まる。
期待。信頼。希望。
それらがひとつの塊となって、私の身体を叩きつける。
──トンっ、と、誰かに背中を押された気がした。
私の後ろには、誰も居ないはずだった。
……けど、私は振り返らない。
私を押したその手が、前に進めと伝えていたから。
だから、私は涙をこらえて、前に、一歩、踏み出した。
(ありがとう、ノア──)
「──それでは、第2回!! 全自治区統合先生捜索会議を始めます!!!」
私は、高らかにそう宣言して。
──ポケットから、黒い背景に白い亀裂の走った封筒を取り出した。
次回、最終回!
ぜってぇ見てくれよな!