応答せよッッッ!!
セイア実装願う!!
あああああああ!!
いやあああああ!!
……失礼、取り乱しました。
皆さんもセイア病に侵されないようご注意下さい。
ある日の事。
何時も通りシャーレでその日の当番と共に仕事をしていた先生。
今日も平和な一日だと今日の業務を終え、生徒を帰宅させた後、日も暮れ始めた頃合いで先生はアロナとプラナの三人でベランダで黄昏ていた。
しかし、そんな折に突如百合園セイアにトリニティへと呼び出された先生。彼はそのどこか緊迫した様子に一も二もなく駆けつけるのだった。
「という訳で、私が実装されたらどんな性能になるかを予想しようと思う」
“セイアにしては結構ストレートだね……”
そして、告げられたその内容に戸惑いを隠せないながらも先生はため息をついて席に座った。
いつも礼儀正しく常識を弁えた振る舞いをするセイアが偶にする我儘だ。
先生もセイアの実装を願い、そして彼女自身心待ちにしていることを知っているからこそ先生はこの急な呼び出しに怒ることなく応じる事にした。
「ふむ。まあ先生の意見も後々聞きたいところではあるんだが、取り敢えずはいくつか考えてきた私の案を聞いて欲しい」
“いいよ”
そして、カッ! とどこから出したのかフリップを机の上に勢いよく叩き出すセイア。シマエナガくんはセイアの肩から飛び立ってフリップの上に乗った。
セイアが予想したセイアの性能。
しかし出されたそのフリップにはところどころ白いシールが貼られていて重要な部分が隠されていた。
「まず、前提としてなんだが」
“うん”
「先生は、何故私が第六感なんて代物を手に入れたと思う?」
その奇っ怪な質問に、しかし先生は当然その答えを持っていなかった。
故に予想する。
ある程度は話を聞いていた先生はすぐにその仮説に思いいたりセイアへと話した。
“えっと、確か色彩に夢の仲で間接的に触れて、身体が壊れかけた所をクズノハに助けられて……”
「違う違う、そうでは無い。いや、すまない、私の質問が悪かったかもしれない」
すぐにセイアに遮られ、首を傾げる先生。
「私は元より病弱設定だろう?」
“設定って……”
「そして、私は物語上その神秘の性質、自身を司るアイデンティティそのものを失ってしまった」
そう言って話すセイアは、しかしその表情に憂いた様子は見られなかった。
吹っ切れているのか、新たに手に入れた力に満足しているのか。
その辺は分からなかったが、生徒が悔やんでいないのなら先生は割となんだって良かった。
「つまりだ。仮にも生徒会長という強キャラ設定の筈の私が、まさしく設定状あのままではクソ雑魚キャラになってしまっていたという訳だ」
“ええ……べつにゲーム何だからそれくらい……”
「良いはずがない。それは今までの運営の姿勢を見ればすぐに分かるはずだ。彼らは物語との、キャラクター設定との、そして生徒同士の掛け合いなどのシナジーを考えて性能を考えている。この後の性能予想もその考えに基づいたものだ。故に、身体の弱い私を生徒会長という設定上強キャラとして出す為に、何かしらの特別な能力を残す他無かったというわけだ」
“身も蓋もないね”
未だ成されない実装に饒舌になったセイアはこれでもかと喋る。
先生は、やっぱ結構不満溜まってんだなぁと苦笑いして出された紅茶を啜った。
「第六感。ああ、これなら充分強キャラとして面目も立たれるだろう。何? 弱くてもいい? バカを言え。散々待たされたんだ。設定状強ポジションなんだ。三周年限定ピックアップなんだ。……好きだから回すじゃだめなんだ。性能も含めて先生達にはニッコリして貰いたいんだ」
“何も言ってないけど”
「そしてこれだ」
バッ! と勢いよくフリップの伏せられたシールを捲るセイア。
かくして明かされたその性能を、先生は上から順に目でなぞって行く。
百合園セイア
special
back
サポーター
神秘
特殊装甲
HG
EXスキル コスト3
円形範囲内の味方4人を指定した位置に移動した後、確定回避を付与(5秒)、神秘特攻を80%加算(30秒)
ノーマルスキル
30秒毎に、味方一人に対して治癒力の250%回復/命中値を20.2%、回避値を20.2%、会心値を20.2%増加(23秒)
パッシブスキル
治癒力を26.6%増加
サブスキル
EXスキルを使用した時、範囲内の味方を確定会心に変更(5秒)
”これは……“
「これくらいは許されるだろう」
フンスと鼻息荒くフリップを掲げるセイアは、どこか満足気にそう言った。
「まずspecial枠。これは、もしミカとナギサ二人共がspecialだったなら私はstrikerだった。なぜなら一緒に編成したいからだ。しかしそうでないとなると、病弱設定からやはりspecialが妥当だろう」
”設定、っていうの辞めない?“
「そしてサポーター。ミカは単体超火力。ナギサは範囲高火力。故にその2つは私はありえない。火力面で貢献出来ないとなると、ヒーラーかサポーターかの二択だろう。それならサポーターが軍を抜いた」
ペラペラと上から解説してくれるセイア。
今日これ朝までコースかな、と考えて先生はちょっと後悔した。
しかし時すでに遅し。暴走セイアは止まらない。
未だに実装されない現実に貯めきったフラストレーションが今先生へと襲いかかる。
「そして神秘。これは迷ったんだが……まあ、神秘特攻を付与する為の神秘タイプと見てくれていい。これはミカとのシナジーを生むためだ。元より超火力のミカ。特殊装甲への貫通攻撃はnormalだ。私の神秘特攻が合わされば性能は充分。私とミカを同時編成する機会はあると言っていいと思う。素直に貫通特攻でも良かったんだが、これ以上ミカの貫通を強化したところで、それでしか勝てない敵が出てくるとインフレが激しくなってしまうのでね」
“へー”
「それに、ミカが貫通、ナギサが爆発だからね。エデン条約事件の時は振動はまだ実装されていなかった筈だし、順当に来れば私は神秘だろう」
そしてセイアは紅茶を飲んで喉を潤わせた。
まだまだ話し足りない。そしてまだまだ止まらない。
故に潤滑油を注入した。
「そしてこのスキル軍。これはね、実はミカに対抗したものなんだ」
“ミカに?”
「言ってしまえばミカは圧倒的な“個”だ。下手な育成をすれば普通に爆発や神秘編成に割り込んでくる。BOSS戦なら尚更だ。故に、私はそれに対抗し圧倒的な汎用性を目指す事にした」
“ヒマリみたいな?”
「ヒマリみたいなだ」
しかし先生は思う。汎用性、そして強キャラと聞いて思い浮かぶのはやはりコスト回復だった。
「コスト回復はどうした──そう言いたげな顔だね」
“なんで分かるの!?”
「私も本当はコスト回復したかった。しかしそれは難しい」
“え? 何で?”
先生は普通に疑問だった。
生徒は、自分がなりたいものを自分で選んでいいんだよと言ってあげたかった。
別にそういう話ではないとセイアに目で制された。
「先程話が出た──ヒマリの存在に寄るところが大きい」
“ヒマリが?”
「彼女は最強と言っていいほど名高い性能を持っている。誰もが欲しがる性能。この小説が投稿されるであろう次期にはピックアップもされていて、しかも恒常だ。彼女をもつか持たざるか。それは置いておくとしても、他の生徒よりも手に入れようとする意思は強い筈だ。そしてその意思は所持率と比例する」
“理解はできるよ”
「故に、被る。ヒマリ持ってるなら別にいいかなってなる。私を好いてくれる人だけが回す。限定でそれはダメだ。恒常に負けたくない」
“一緒に編成したら強くない?”
「やめろ。同一のサブスキルは重複しないしもし文言を変えて重複するようにしても、また別の問題が発生する」
セイアは指突きつけた。
人を指さしちゃいけないよと先生に怒られた。
セイアはしゅんとした。
セイしゅんの物語ですまない……
「私とヒマリ。何なら水着おじさんやチェリノ。ああ、爆速コスト回復はさぞかし気持ちがいいだろう。しかし、こればダメだ。分かるね? 先生」
“わかんにゃい”
「……まあいい。special枠が二人埋まるんだ。これでは回復キャラが入れられない。ノーマルスキルで回復を入れてはいるが正直それをメインにする程の性能は無い。そして、コハルやココナ等のstriker回復枠が必須となってしまう。限定キャラの為に石を貯めている先生も多いだろう。推しのキャラのピックアップに回さざるを得ない先生たちも居るだろう。そんな先生達にヒマリにコハルにココナと、それだけのものを求めるのは酷だ」
“私達の大人のカードの心配をしてくれているんだね”
ぶっちゃけ助かる。ユウカに怒られるのは嫌なんだ。
そして、確かに回復枠確保は重要だ。幾ら速攻最強! と叫んでも、高難易度にもなるとそうも言っていられない。
しかしそうなると、
“セイアが回復メインキャラになるのは駄目なの?”
「構わない。というかその案は多いにある。本当はそれも持ってきたかったんだが、あまりに案が多くてね……」
“……そっかぁ”
因みにそれ第何案まであるんですか?
先生は怖くて聞けなかった。
「まあ、私としてはspecialはナギサと一緒に入りたいから、回復キャラの線は下手すればナンバーワンかもしれない。しかし、今回のこれはサポーターとしての究極セイアだ」
“気になったんだけど……確定回避って初めてだね”
先生は気になるその文言に突っ込んだ。
「そうだ。確定会心があるのだから確定なんちゃらはもっとあってもいいだろう。三周年の限定だ、これくらいの可能性は見せて然るべきだ」
“その、三周年の限定って確定事項なの?”
「いや? 別に。ただこれだけ引っ張って置いて、いつ出すんだとタイミングを考えればそれが最も適切だと邪推したまでだ。去年はミカだったからね。いい具合だろう」
“ふーん……まぁ、でも確定回避とか会心とか、結構強そうだけど……”
「ああ。しかし過度なインフレは衰退の始まりでもある。性能の強さの代わりに、そこは時間の短さで調整した」
“五秒か……これは、先生の腕が試されるね”
「ああ、正直オートでは役に立たないかもしれない。しかし、敵の強大な攻撃に合わせて攻撃を避ける。そして味方の攻撃スキルの直前には会心を付与する。そんな使い方がベストだ。確定会心付与はミカには意味が無いが、ノーマルスキルによる回復とバフはある。それにあまりミカに寄せすぎると私の“汎用最強”計画が根底から瓦解する」
“うーん、インフレ、インフレかぁ……”
先生はこの性能の使い道を考えた。
いや、充分強すぎる気がする。
扱いは難しい。けれど……ううん、本当に三周年限定と考えれば……でも今後手に入らないと考えると、セイアが居ないとクリア出来ない環境には運営は絶対しないだろうし……
「まあ、こんなところだろうか。あと言うならば、回避・会心・命中は全て私の第六感で説明がつきそうな所だろうか。こう、私の勘で戦況をサポートするんだ。充分にシナジーは取れている気がする」
“この、神秘特攻と回復は?”
「………………」
“え!? なに、どうしたの!?”
「勘の良い先生はあまり好きでは無いよ……」
ともかく。
「これが第1案だ」
“お腹いっぱいだよ?”
「男の子だろう?」
え? だから何? そう先生は言いたかった。
しかしこの程度で止まるセイアではなかった。
先程までのフリップを横に置いて、新しいフリップを用意する。
“あの、何案まであるのかな……?”
「心配するな。色々考えたら百は軽く超えた」
“ ”
「私自身私の可能性に驚いた。だから、取り敢えず二つに絞ってきた」
“よ、良かった……っ!”
先生は涙した。朝までコースどころか一週間コースに下手すれば突入していた。
あの日、ミカに言われた事を思い出す。
「先生は、騙されたんだよ」と。
いくら生徒と言えど無闇に全てを信用していい訳では無い。
ああ、ミカ。君はこの未来を示唆して、伝えていてくれたんだね……。
「第2案はこれだっ!」
カッ! と新たなフリップを出すセイア。今回のものには勿体ぶった文字を隠すシールは貼られていなかった。
百合園セイア
スペシャル
back
テクニカルサポート
貫通
弾力装甲
HG
EXスキルコスト3→6→9
一度目のスキル使用で歩兵を召喚(3コスト)。歩兵はセイアの攻撃力の200%の値の攻撃力を持つ(50秒)。歩兵は15秒事に円形範囲内の敵に600%分のダメージを与える。
一度目のスキル発動中に再度スキルを発動すると戦車兵を召喚(6コスト)。戦車兵はセイアの攻撃力の400%の値の攻撃力を持つ(50秒)。戦車兵は20秒事に円形範囲内の敵に800%分のダメージを与える。
二度目のスキル発動中に再度スキルを発動すると武装ヘリを召喚(9コスト)。武装ヘリはセイアの攻撃力の500%の値の攻撃力を持つ(50秒)。武装ヘリは20秒事に円形範囲内の敵に1200%分のダメージを与える。
三度目のスキル発動中、セイアのEXスキルはドローされない。
ノーマルスキル
20秒毎に、敵一人に対して攻撃力の800%分のダメージ。
(この攻撃は敵の防御力を30%無視する)
パッシブスキル
回避値を10.2%、会心値を10.2%、命中値を10.2%増加
サブスキル
EXスキルが持続する間、コスト回復力を460/572/684増加
“色々と言いたいことがあるよ!?”
「すまない。欲張りセイアですまない」
先生は頭を抱えた。
セイアは申し訳なさそうに、しかしこの衝動を抑えられなかった。
いざ実装されてしまえばこの話は全て黒歴史となる事を知っているのに、それでも抑えが効かなかった。
得てして黒歴史とはそういうものである。
“まず、さっき言ってた回復はどこに行ったの……?”
「それは充分に有り得る。しかしどうしても思いついてしまったこれを優先せざるを得なかった。時間が許すならその案も話そう」
“……結局コスト回復してるじゃない”
「……抗えなかった、この欲望に……。コスト回復はやはり、一つの崇高と言える……」
セイアはテーブルを叩いた。己の弱さに。内に潜む欲望に。
先生はビクッとなって、急にやめてね、って優しく怒った。
セイアはしゅんとした。
セイしゅんの……(ry
“それで、このEXスキルなんだけど……”
「ああ、これはもう思いついてしまったお遊びだと思ってくれていい。今までにあまりない試みがしたかった。トキのような2段階スキルを真似た、3段階のスロースターターだ。倍率が高いように見えるかもしれないが、それは病弱設定故の攻撃力の低さを補うものと見てくれていい」
“この世界で病弱設定はいい事なの?”
先生は訝しんだ。いやそんなわけないだろと。
実際セイアはその病弱さ故に一度死にかけているのだ。
ヒマリもそうだが、なにを嬉しそうに病弱病弱言っているのだろうか。
世の病弱に謝れ! この卑しい狐め!(豹変)
「私としても、何とか前線に立てないか考えてみたんだ。しかし普通に考えて無理だ。この貧弱な肉体、一度もない戦闘描写、太ももに銃を忍ばせてはいるが、それで演出出来るのは卑しさだけで戦闘力は甚だ皆無だ」
“太ももに武器ってえっちだよね”
このままではセイアはコハルのエ駄死! で永遠の眠りにつく事だろう。
というか、太ももに忍ばせている時点でいざ戦うときにはスカートの中に手を入れてまさぐる事となる。
緊迫感あるシーンでスカートの中に手を入れるセイア。
是非戦闘の際は先生を呼んで欲しい。
サポートするから。
い、いや!? 太ももから銃を取り出す作業をサポートするんじゃないヨ!?
や、やめてよ! 風評被害だよ!!
尚、先程自分が発したばかりのセリフは無かったものとする。
「という訳で、部下を呼ぶことにした。結果的にテクニカルとなった」
“成程”
「貫通タイプは、もう普通にミカとのシナジーだ。サポーターで無い私に汎用性は求められないから、いっそそっち側に極振りした」
“ならナギサと一緒で爆発でも良かったんじゃ?”
「もちろんいいとも。先程も言ったようにこれはただの一案だ」
セイアはおかわりの紅茶を注いで、ロールケーキにフォークを刺した。
先生はおかわりに注がれた紅茶を頭から被って、フォークを自分の頭に突き刺した。
「ノーマルスキルの防御無視単体攻撃はスロースターターを補う代物だ。……その奇行には何も突っ込まないからな」
“そうして貰えると助かるよ”
「…………。パッシブの第六感スキルはやはり外せなかった。その為の第六感だと私は思っているからね。そして、サブスキルのコスト回復は私のロマンだ。以上」
“お、終わったの? お疲れ様……”
先生は狂い始めた脳みそをシャカシャカ振って気を取り直した。
まあ、なんだかんだ言って楽しい一時だったかもしれない。
セイアは割と自分を押さえ込んでまで周りの面倒を見るタイプだ。こうして甘えてくれるのは先生としてはありがたかった。
「続いて、私の別衣装バージョンについてだが」
“うへぁ”
先生は椅子から崩れ落ちた。
セイアは慌てて先生に駆け寄り、白目を向いた先生に慌てて自身の飲みかけの紅茶をかけた。
先生は起き上がった。
その顔には強い意志と覚悟と信念が宿っていた。
“続き、やろうか”
「急に元気にならないでくれ……私がおかしなものを飲んでいると思われるだろう」
そんな事は無いと、先生は言ってあげたかった。
ただ、先生にとって生徒の■■が万病に効くクスリだっただけだ。
しかし、それを言う訳にはいかなかった。
言ってしまえば、先生はまたカンナに迷惑をかけてしまうことになるから。
「それで私の別衣装だが」
“聞かせて”
「…………、まずはこれだ」
そうして、カッ! とフリップを掲げるセイア。
再びシマエナガくんはフリップの上に乗る。
そこに映し出されていたのは、振袖姿のセイアだった。
“え? お正月? いつの?”
「無論、今目前に迫っている2023年の年末、そして2024年の正月だ」
“セイアは三周年限定じゃなかったの!?”
「ノーマルセイアの前に、正月セイアが実装したっていいじゃないか……」
いいじゃないか…
いいじゃないか……
いいじゃないか…………
セイアの魂の叫びはこだました。
なんたって、これだけ待たされたんだから。
その願いはセイアから冷静さを奪い取っていた。
“いやいや! そんなの前代未聞だよ!? みんなもびっくりするって!振袖の前にノーマルセイアを実装しろって皆怒るって!”
「それも踏まえてだ、先生。ここらで一度、運営の意思と言うものを見せつけるんだ。私たちは何をしでかすか分からないぞと、その可能性と視野をこじ開けて広げるんだ」
“暴論だよ! 感情がついていけないよ!!”
「むぅ、いささか思っていた反応と違うな。……私はすぐにでも先生と正月を共にしたかったのだが、どうやらそう思っていたのは私だけらしい……」
“え? いや、え?”
先生は急に自分の心臓の鼓動が止まったことに驚いた。
何だ、今私は何を言われた……?
それは、自身を死に至らしめるほどの衝撃。
先生は死んだ。
しかし今はまだ動いている。
それはひとえに生徒への愛故に、だった。
“セイア。結婚しよう”
「なっ!? な、何を言い出すんだ君は!? 時と場合を考えたまえ!!」
“それは、時と場合さえ考えればOK、って、事かな?”
「…………」
セイアは真っ赤になって黙った。
先生は決意した。
何を、とか、そんな無粋な事はもう言わなくても良いだろう。
ご馳走様。けどセイア。この先生は結構キモイと思うぞ。
「気を、取り直して……行こう。次だ」
“うん”
「これだっ!」
カッ! とフリップを置くセイア。
そこに写し出されていたのはボンキュッボンの大人になったセイアだった。
「セイア(大人)だ」
“Marvelous。けど、正直あるんじゃないかと思ってた”
「私の体は貧相だからね……。この世界には平行世界があると知れたんだ。なら、このままちっちゃいセイアも入れば、ご飯をいっぱい食べて元気に育ったナイスなバディのセイアもいるだろう。その可能性の産物だこれは」
“え? じゃあこのセイアは世界を渡ってくるってこと?”
「それでもいいし、あの山海経の薬師に頼んでもいい」
セイアは期待に胸が膨らんだ。文字通り、とかそんな下劣な事を考えた先生は今ここにいる先生だけだよね?
「(幼女)が実装されたんだ。その時点で可能性は無限大に広がった。別にクリスマスとか正月とか、それら一大イベントにこだわる必要も無い」
“それはそうだね”
「故に、大人だ。甘美な響だね。私が先生を手玉に取る日もそう遠くないのかもしれない」
“今取ってくれても構わないよ?”
「さっきから嫌に気持ち悪いな。少し頭を冷やせ」
先生は口から血を吐いた。
仕方ない。ショックだもんね。
しかし血が抜けたことで少し冷静になった先生。
その勢いで血流が巡り、その流れが心臓を動かして先生は蘇生した。
「その他にも……これだっ!」
カカカッと連投するセイア。
これにはシマエナガ君も目が回った。
出されたものは多種多様なラインナップ。
セイア(水着)
セイア(クリスマス)
セイア(バニー)
セイア(メイド)
セイア(正義実現委員会)
セイア(看護師)
セイア(シスター)
セイア(シマエナガフォルム)
セイア(ミカ&ナギサ)
セイア(寝巻き)
“色々言い出すとキリが無いんだけれども”
「上4つはブルアカと言えばみたいなところあるだろう。その下の3つは、トリニティの部活動に顔を出した私だ」
“……なに?シマエナガフォルムって”
「着ぐるみを着るのもたまには悪くないだろう」
“それで戦場にいかないで!? シュールだから!? そしてミカ&ナギサってなに!?”
「周年を重ねたソシャゲによくあるだろう。二人合わせて一キャラで登場したりするアレだ。お得感があっていい。友情パワーが重なれば性能も段違いだ」
“あるけど! 確かにあるけど!”
先生は先生であり、同時に指揮官でもあり、ドクターでもあり、マスターであり、艦長であり、旅人でもあるからよく知っていた。
しかし、今更だけど色々と駄目な発言だった。
「全く、文句ばっかりだな君は」
“文句とかでは無いけれど……っ! 何か、ノーマルセイアもまだなのにこれは話が広がりすぎというか……!”
「何だ? ありえないとでも言うつもりかい?」
“ううーん……現実的ではないかなぁ、正直……”
先生はセイアが悲しむ姿は見たくなかったが、だからこそ無闇に賛同することは出来なかった。
未だに実装されていない悔しさ、納得の行かない感情はとてもよく分かる。
とはいえだからと言って、はい実装という権限は先生にはなかった。
散々言っていたがそもそも三周年限定である保証だって無いのだ。
先生に出来ることは、窘め、導き、寄り添うことだけだった。
「ふむ、またそんな事を言って……良いのかい? 君は今大きなチャンスを逃そうとしているんだ」
“チャンス?”
「…………今夜、セイア(寝巻き)が先生の元だけに実装される、という──」
“あびゃびゃびゃ!”
先生はセイアの胸に飛び込んだ。
しかしフリップで脳天を割られ、シマエナガ君に頭の上にフンを落とされて先生は崩れ落ちた。
そんな先生を見ながら、セイアはため息をついた。
まあ、なんだかんだフラストレーションは解放できたし、いい一日だったと思う事にした。
そうして、セイアは気絶した先生をシマエナガ君と二人で寝室へと運び、抱きしめながら夜を明かすのだった。
先生諸君、元気にしているだろうか
実装がまだですまない。セクシーセイアだ。セクシーですまない……
ところで先生。三周年限定。いい響きだとは思わないだろうか
ふむ、期待を煽るような事を言ってすまない
残念ながら責任をとることは出来ないのでね
三周年アニバの後にセイア未実装で転がる死体は一人でも少ない方が良い
それでも、私の事を心待ちにしてくれている事は素直に喜ばしく思うよ
だから今日は、その感謝を伝えにここに来たんだ
……こうして面と向かって言うのは恥ずかしいが、しかしいくら仲のいい友達だとしても話さない事には伝わらないと私達はあの時学んだからね
あれも全て、先生達のおかげだ
いつか実装された時、先生のシャーレでティーパーティーパーティを組める日を楽しみにしているよ
まあ、あまり長くなってもあれだから、今日の所はこれくらいにしておこうか
では、また会おう。さらばだ先生。元気でね
後書きセイアですまなかったね……
自分の事をセイアだと思い込んでいる作者より