なぎささまご乱心   作:つきらゆ

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後編です。2万字近くありますが気にしないで下さい

薄々気づいてる先生方もいると思うけど、基本的にこの短編集の先生は二頭身先生です。適当に決めました。
しかし真面目な話の時は高身長・イケメン先生です。少なくとも作者はそのつもりで書いてます。
けど、アコの横乳の話って聞いて真面目な話と思う人まず居ないじゃん?
なので、先生達は場面に合わせて適度に伸び縮みさせてあげて下さい。彼もきっと喜びます。

それでは行きましょう。火傷すんじゃねェぞ


最終編:あまねくアコの乳発点(下)

 

 

 

 パチッ、とアコは目を開けた。

 

 暗い、無骨で何も無い部屋。

 どこまでも続く闇。深く包み込み霧。

 それは他でもない、今朝見たものと同じ世界だった。

 

「先生……?」

 

 不安にかられ辺りを見回す。

 一人。

 嫌な感じが体を包んで、アコは思わず腕を抱いて震えた。

 

“おーーい!”

 

「っ! 先生!」

 

 遠くから聞こえてきた先生の声に、思わず走りだす。

 深い霧の様に数メートル先が見えない世界で、しばらくさ迷っていると手を振りながら走って来た先生と出会う事が出来た。

 

「先生、良かった……!」

 

“うん、もう大丈夫だよ。後は、例の神様を見つけるだけだね”

 

 そう言って先生は、行こう、といって手を差し出してくれた。

 その手を恐る恐る握り、アコ達は暗がりを進んで行った。

 

 いつまで歩けばいいのかも分からないまま、歩けば歩くほど段々とアコが先生の手を握る力を強くなっていった。

 

 

 

 

 そして、ついに。

 突如暗闇に一筋の光が舞い降りた。

 

 

 

 

「なっ……!?」

 

“あれは……!?”

 

 

 

 

 天から舞い降りる、後光纏いし乳の神。

 2人の前に現れたそれは、異質な空気をまといながら口もないのに口を開いた。

 

 

 

 

(l l:l l)

『ようこそここまでたどり着いた。天雨アコ。そして……箱の主よ』

 

 ビリビリと肌がひりつく緊張感。

 神だ。

 見た目こそふざけてはいるものの、確かに神たる存在だと先生は無意識のうちに認識した。

 その存在感に、思わず先生も身構える。

 しかし、

 

『何をする気だ、箱の主よ? 貴様は今、その自身を守る術である箱を所持していないだろう?』

 

“くっ……!”

 

「え?い、一体……?」

 

 突然会話を初めた横乳と先生の話にいまいちついていけない様子のアコ。

 先生の額には汗が伝っていて、何となくまずい状況である事は察せられた。

 

『落ち着くがいい。我に争う意思は無い』

 

“え?”

 

『私は今、現実世界で天雨アコの横乳に宿っている。天雨アコは元より、天雨アコが慕う貴様に死なれて自死でもされては適わんのだ』

 

「慕っ!? な、何を言い出すんですかあなたは!?」

 

 横乳は語る。

 その身を弾ませながら。

 その姿に先生は目のやり場に困るが、今は真剣な話なのでそうも言っていられず目の前に浮く巨大なアコの乳を凝視する。

 

“アコの身体から出ていって欲しいんだけど……?”

 

『それは叶わぬ願いだ』

『何故ならこれは契約だからだ』

『これは大人や子供といった概念は関係なく』

『ただ人と神が契約を交わした結果によるものだ』

『今更覆す事など不可能』

 

“その、契約の内容を教えて貰えるかな……?”

 

 横乳は、争う気は無いと言った。

 少なくともまだ話は通じるようで、先生はそこに勝算を見出した。

 契約ときたか。成程、ならばそれは自分の得意分野だ。

 

 先生はアコの前に立って彼女を背中に隠し、横乳神へと鋭い視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

『良いだろう。これはもとより、天雨アコが望んだ事だ』

 

 

 

 

 

 

 

“え?”

 

 その言葉に、耳を疑った。

 

「は、はい? ……そんなはずは……」

 

 思わず先生は振り返って、しかしアコはそんな事は知らないと言う。

 当然だろう。先生は経緯を聞いていて、そしてアコの事を知っていて。

 アコが、自分が大好きな風紀委員会の皆を傷つけるような事を望むはずがなかった。

 しかし、

 

『我は嘘をつかぬ』

『何故ならば、その必要が無いからだ』

『天雨アコが望み、我が条件を提示し、それを天雨アコが達成し』

 

『私が天雨アコの横乳に宿った』

 

 

 

「そんなの嘘ですっ!!」

 

 アコは慟哭した。

 そんな意味のわからない、記憶にも無いことを言われて納得が行くはずがなかった。

 この状況が、私が望んだこと?

 そんな事はあるはずがない。

 そんな事──

 

『記憶に無いのも無理は無い』

『何故なら、それが我が提示した条件によるものだからだ』

 

“それは一体?”

 

『我の出した条件、それは』

『私の神秘を宿らせるため、日常生活において横乳を出す事』

『そして、この契約の記憶を失う事だ』

 

「そんな……」

 

“……そう来たか”

 

 何故横乳を? と思ったが、推察するに横乳の神である自身をアコへと宿す為に必要な事だったのだろう。

 

 そして、先生は改めて理解した。

 目の前にいる存在は、恐らく色彩に似たようなものなのかもしれないと。

 

 当然、脅威度からすればそれは比べようも無いものなのかもしれない。

 しかし色彩は今のところ意思は無いと思われた。

 反して、目の前の存在には明確な意思がある。

 それだけでも充分に、違うベクトルで厄介な事だと思う。

 

 それに、先生にとってはキヴォトスを滅ぼす存在も、生徒一人の人生を滅ぼす存在も、どちらも等しくうち滅ぼさなければならない存在だった。

 

“アコが望んだって言うのは本当……?”

 

『事実だ』

 

「それは、何故、ですか……?」

 

『それを言う必要は無い』

 

「なっ!?」

 

『帰りたまえ。箱の主と天雨アコ。ここにいて、貴様らに出来ることはもう何も無い』

 

 ふよふよと、横乳は浮かぶ。

 本当に、何も出来ないのだろうか。

 

 アコは語られた衝撃の事実に、膝に力が入らなくなってその場にへたり混んだ。

 ただ、俯くことしか出来なかった。

 

“ダメだ。納得がいかない”

 

『貴様の納得が必要か? 箱の主。いや──部外者よ』

 

“アコは私の生徒だよ。他人事になんて出来ない”

 

『天雨アコが個人的に交わした契約にまで首を突っ込むつもりか?』

『貴様がキヴォトスに来る前に交わしていた契約だというのに?』

『驕るな』

『少なくとも今ここで貴様は箱の主の本領を発揮できない』

『大人しく帰れ』

『帰れッ!』

 

 大気が揺れて、先生とアコは思わず手で顔をおおった。

 衝撃波。ヒナを襲ったものよりは遥かに弱く威嚇程度のそれは、本当に先生とアコを傷つける意思は無いからか。

 

 しかし、アコの脳裏にはあの光景が呼び起こされた。

 この衝撃波が生み出した、大好きな人達が傷付く姿。

 

 

 

 

「──もう、いいです」

 

 

 

“……………………え?”

 

 

 

 アコの心は、折れた。

 

 

 

 

 

「私が……間違ってました」

 

“そんな……アコ”

 

 俯いて、座り込んで、先生の顔も直視できないままアコはその感情を吐露した。

 子供のように蹲って、この現実に蓋をして。

 そうすると、周囲の霧が少し深くなった気がした。

 

 

 

「私が……、全部、私が望んだ結果だったんです」

 

「今まで恥を晒しながら練り歩いていた事も……」

 

「イオリやチナツ、ヒナ委員長を傷つけた事も」

 

「あんなに優しくしてくれた人達に」

 

「大好きな人達に」

 

「牙を向いたのは……他でもない私の意思」

 

「全部……ぜん、ぶ……」

 

“アコ……”

 

 

 知らない内に、取り返しのつかない所まで来てしまっていたから。

 嫌だけど、苦しいけど……もう、これしか方法が無いから。

 

 アコは、胸の内を全て語った。

 もう、これで最後だと思ったから。

 

 

 

「それで……今は、先生にまで牙を向こうとしています」

 

「私が望んだ結果が……」

 

「怖い、怖いんです。先生まで傷付けやしないか」

 

「お願いです。先生」

 

「もう、終わりにしましょう」

 

「私は、風紀委員会を離れて、シャーレも離れて、それで──」

 

 

 それで、

 それで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしても、その先が言えなかった。

 ボロボロと溢れる涙が、止まらない嗚咽が、その先をどうしても語らせてはくれなかった。

 

 一人には、なりたくないと。

 イオリと、チナツと、ヒナ委員長と、先生と、

 離れたくないと。

 どうしても──一緒にいたいと。

 

 

 

「ぁぁぁあああ…っっ!!」

 

 

 

“アコ”

 

 

 

 泣け叫ぶ。

 みっともなく。

 行政官何て立場も忘れて、外で見守るヒマリ達も忘れて。

 先生の前であることも忘れて、私はただみっともなく泣いた。

 

 

 

“アコ”

 

 

 

 どうして私がこんな目に会わないといけないのか。

 どうして私なんかのせいで大好きな人達が傷つかなければならないのか。

 こんな、こんな世界に生まれて。

 風紀委員会の、先生の温かさを知って。

 けどそれが、大切な物を失う寒さを知るための布石でしか無かったのなら。

 

 いっそ、この世界に産まれなかった方が──

 

 

 

 

“──アコ!!”

 

「!?」

 

  

 

 

 先生の、綺麗な目がアコの目の前に広がっていた。

 先生は、ただ俯いて泣き叫んでいた私の肩を掴んで、私の目を真っ直ぐと見つめていた。

 其の顔は、今日ヒナ委員長が見せてくれたあの優しい顔を思わせて。

 

 

 私の大好きな人達は、2人ともそっくりだった。

 

 

“アコは、どうしたい?”

 

「……ひぐ……、……………ぐす、…どう、……じたい、………?」

 

“そうだよ”

 

 先生は、肩に置いていた手を下ろして、私の手を優しく掴んだ。

 

“契約なんてどうってことないよ”

 

“そんなのは、先生が軽く何とかしちゃうからね”

 

“だから、今大事なのは、アコがどうしたいか”

 

「………………ひぐっ……」

 

 

 

 

“最初はアコが望んだのかもしれない”

 

“その結果、アコが言うようにヒナが傷ついてしまったのかもしれない”

 

“そのせいで、今アコの心は深く傷ついてしまっているんだよね”

 

 先生の手が、強く、強く握ってくる。

 それが、どうしようもないくらいに暖かくて。

 

“先生だって、後悔することくらいあるよ”

 

“軽い気持ちで買ったものが後で経費で落ちなかったり”

 

“良かれと思った事がふとした時に生徒を傷つけていたり”

 

“プレナパテスの時だって、本当にあれで良かったのか、今でもたまに夢に見る”

 

 先生の言葉が、やけに耳に残った。

 先生が紡ぐ言葉が、この場限りの作られたものでは無いと不思議と分かった。

 

“だけどね”

 

“アコは、まだやり直せるんだよ”

 

「やり、なおせる……?」

 

“そうだよ”

 

“アコが望んだことでも、今のアコは望んでいないんだから、白紙にしちゃおう”

 

“大人の世界じゃ本当はダメな事だけど……アコはまだ子供だから”

 

“その責任は、先生が負うからね”

 

“アコは、好きなようにしていいんだよ”

 

「でも……!」

 

“ヒナ達にも謝ろう”

 

“大丈夫。絶対に許してくれる”

 

“もしダメだったとしても、仲直りできるように先生は何だって力を貸すから”

 

“──だから、前を見て。アコ”

 

 

 

 

“全部自分のせいだなんて思わないで”

 

“今起きていることを抱え込んで絶望なんてしないで”

 

“その責任は、大人が、私たちが背負うべきものだから”

 

“私は、先生は、アコが笑顔になる為ならなんだって出来るんだよ”

 

 

「……せん……せい゛………っ!!」

 

 

 その言葉が、笑顔が、包み込む温かさが。

 その一つ一つが私の心を絆ていく。

 

 

“まだ、不安はある?”

 

 

 その問いかけに。先生の言葉に、私は答えなければならなかった。

 だけど、嗚咽と涙で詰まってしまって中々言い出せなくて。

 けれど、伝えなくちゃいけない。

 いや、違う。伝えたい。

 これは、私でなきゃできない事たから。

 だから──

 

 

 

 

「先生゛っ!!!」

 

 

 

 

 

“うん”

 

 

 

 

 

「わだじをッ!……ぐすっ、助けて、ぐださい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“任せて”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“大人のカードを取り出す”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『茶番だァァァァァァ!!!!』

 

 ゴウッと空気が渦巻いて、先生を、アコを吹き飛ばそうとする。

 しかし、それを先生の生んだ奇跡が阻んだ。

 

 大人のカード。先生の今まで築き上げてきた時間そのものを代償に、数多の“奇跡”を生み出す媒介。

 

 シッテムの箱は、この世界に来る時に阻まれ持ち込む事が出来なかった。

 それは、先生がキヴォトスに来た際に手にした物で、どうしたって先生の一部とはいえなかったから。

 しかし、このカードは違った。

 これは、先生の経験、時間、命それそのもの。故に、この精神世界にすら持ち込めた。

 まるで、奇跡を起こせと言わんばかりに。

 

 

『ふざけるなッ!!』

『天雨アコは我と契約したのだ!!』

『話を聞いていなかったのか!?』

『箱の主!! いや箱の主ですら無い者よ!!』

『驕るな!!』

『出しゃばるな!!』

『貴様に介入する余地などないのだ!!!』

 

 

“本当はダメなことだろうけど……”

 

 

 大人のカードをより強く、掲げる先生。

 その顔に宿るのは──自信と、どんな代償を払おうとも生徒を守るという、強い意志。

 

 

“君をここで倒しちゃえば、”

 

“全部無かったことにはならないかい?”

 

 

 

『キッ、さまァァァァァァ!!!』

 

 

 横乳の付喪神は、本気で衝撃波を放った。

 右乳と左乳を高速で叩き合わせることにより生み出すショックウェーブ。

 それが、横乳神の所持する神秘だった。

 唯一の手札にして、それは人一人の身が所持するには至高の代物。

 

 あのゲヘナ風紀委員長ですら、一撃で膝を付かせ血を流させたのだ。

 本気で生み出したそれは、キヴォトスの外から来た大人どころか、下手すればアコすら吹き飛ばされ一撃で絶命していただろう。

 

 しかし、先生がそれをさせない。

 

 いくらシッテムの箱がなかろうと。

 

 いくら状況が敵に味方して、孤立無援の状況だろうと。

 

 先生は、生徒の前では先生であり続けるために。

 

 

 

 その腕を、振るった───

 

 

 

 

 

 

 

“──皆、御願いっ!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「任せてッ!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 先生の周りに現れた六つの光。

 それは、付喪神にさす後光を簡単に塗り替えて、この暗闇を水平線の先まで照らした。

 

 そして、暗がりで見えなかった闇の中には。

 本来はアコの精神世界であったはずのここには。

 

 暗いキリが晴れて──

 

 

 

 

 

 

 

 ──その先には、アコの思い出が、溢れかえっていた。

 

 

「あ……」

 

 アコはそれを見て、無意識に声を出していた。

 

 

 今まで、なんで忘れていたんだろう。

 目の前に広がる光が、思い出が、次々と移り変わりアコの視界を過ぎ去っていく。

 眩しいくらいの光に、しかしアコは瞬きすら出来なかった。

 視界いっぱいに広がる、気付かない内に記憶から抜け落ちていた光景。

 それらは全部、他でもない私だけの宝物だったから。

 

 

 

 ちっちゃい頃、よくおままごとをしていたぬいぐるみ。

 あれ、今はどこにいったんだっけ。確か、お母さんが作ってくれたはずだった。

 

 あれは、よく遊びに行っていた公園。

 今はもう、大型モールが建ってなくなってしまったけれど……あのブランコ、よく遊んでたなぁ。これも、大切な思い出のひとつだ。

 

 …お母さんと、大喧嘩した時の……あの時の私は、本当に馬鹿だったと思う……。

 けど、結局仲直りして、晩御飯は好きな物作ってもらったんだっけ……。

 

 あれは、中学校の頃に書いたポエム……!

 やばい、先生にだけは絶対に見られたくない。

 ……けれど、懐かしい。何だかんだ中学校では首席なんかとっちゃって、ヒナ委員長に会う前は随分調子に乗ってたっけ。

 

 

 

 そして、中でも最も強く光っていた映像。

 

 

 

 

 それはやっぱり、ゲヘナ風紀委員会の皆との思い出だった。

 

 

 

 

「う──うぅ………っ!!!」

 

 

 イオリが。

 チナツが。

 ヒナ委員長が。

 そしてわたしが、風紀委員会で笑っている。そんな一幕。

 何にも変え難い、他の何を犠牲にしたって絶対に失いたくない光景。

 

 ──私は、一度あれを諦めかけていたのだろうか。

 そんな事、できるはずもないのに。

 

 

 

 

『小癪なァァァ!!』

『箱の主!!』

『箱すら持ちえない貴様が!!』

『関係の無い貴様が!!!』

『反則を使ってまで、何故我の邪魔をする!!!』

 

 

 

 

“答えはもう、言ったはずだよ”

 

 

 

 カードを掲げる先生。

 チャキ、と銃を構える六人の仲間たち。

 それは、先生がこの場に呼ぶに相応しいと思った……最も頼れる生徒たち。

 

「うへぇ〜、こんな所に呼び出して、しかもアレは一体何なのさぁー」

 この場には少し似合わない、水着を来た小鳥遊ホシノが。

 

「な、何アレ!? え、エッチなのは駄目なんだから!!!」

 顔を赤くして自身のアイデンティティを叫ぶ下江コハルが。

 

「全く、先生は私がいないとホントどうしようもないんですからっ」

 ツンとそっぽを向きながらも、頬を赤く染めて先生を横目で見る体操服姿の早瀬ユウカが。

 

「あら、もしやこの状況はあの時の? ふふ、ええ、力を貸しましょう先生。このキヴォトスに咲く一輪の花明星ヒマリが!」

 車椅子に乗る、この場の誰にも劣らない“自信”を持った明星ヒマリが。

 

 

 そして、

 

 

「──いつまでくよくよしているんですかっ!!」

「わひゃあああ!!」

 

 

 アコは背後からかけられた叱責の声に思わず身体を飛びあがらせた。

 そして、聞き覚えがあるのに何故か違和感を感じる、なんとも言えないその声に恐る恐ると振り返る。

 そして、そこに居たのはまさかの人物で──

 

 

「早く立ち上がりなさいっ! 貴方のために集まってきた人たちの前で、どれだけ恥を晒すつもりですか!?」

 

「わ、私!?」

 

 

 そこにいたのは、紛れもなく天雨アコ本人だった。

 同じ人物が、2人。

 

 この時間軸のアコはもうひとりのアコに手を捕まれて無理やり立たされた。

 

「ほら、ちゃんとする! 涙はふく! はい、鼻かんで!!」

 

「チーーン!……じゃないです!? これは一体なんですか!?」

 

 

 

 戸惑うアコ。そんなアコを介護するアコ。

 訳の分からない状況に、アコは呆然とするしか無かった。

 

「──皆、あなたの為に駆けつけた」

 

「──」

 

 アコはその声に、しかし振り返れなかった。

 誰かはすぐにわかった。

 その声を、誰よりも聞いてきた自負があったから。

 

 

 背後から歩いてくるその足音が、アコの横を通り過ぎて前へ行き──

 

 

 

 

 

「後は任せて」

 

 

 

 

 

「──ヒナ、委員長……」

 

 

 その背中は、その声は、私が知っているそのものだった。

 だというのに、今やその姿は完全に先生と重なって。

 その小さな背中は、今まで見たことないくらいに大きく見えた。

 

 

 

 

 

“皆、行くよ!”

 

 

「「「「「「はい、先生!」」」」」」

 

 

 

 

 

 何度も経験して来た先生の号令とともに、全員が一斉に駆け出した。

 

 

 

 

『──失せろッ!!』

 

 横乳が両乳を叩き合わせ、衝撃波が産まれる。

 本気で人を殺す為の、手加減一切無しの波状攻撃。

 横乳は、もう迷わなかった。

 この時間軸の天雨アコ以外は全て消す。

 明確なその意志の元に放ったその攻撃は、アコ以外のこの世界の思い出事全てを消し去るはずだった。

 しかし、

 

 

「っ、シールド!!」

 

 ユウカのシールドによって阻まれる。

 結果、横乳が放った攻撃は誰一人として傷つける事は無かった。

 

「支援を開始します!」

「超天才清楚系病弱美少女の真骨頂を見せる時が来ましたね」

 

 別の時間軸のアコとヒマリが援護し、その圧倒的なバフが仲間へと降り注ぎ

 

「──隙だらけ」

『なッ!?』

 

 一瞬で横乳へと肉薄したヒナは、その巨大な「終幕:デストロイヤー」を一瞬でリロードし

 

「──リロードアンドデストロイ」

 

 弾幕が横乳を襲った。

 

『ぐああああ!!』

 

 横乳は明確なダメージを受け後ずさる。

 致命傷にはまだ至らない。そして厄介なのは、横乳は宙に浮けるという事だった。

 この空間は縦にも横に無限に続いており、上空へと逃げられれば一方的に攻撃されるだけ。

 それを互いがわかっているからこそ──

 

『小癪なァ!』

 

 横乳は戦略的撤退とばかりに上へと飛び上がり、

 

「水上襲撃〜ってね」

 

 狙ったように、上から降ってきた水の塊に叩き落とされた。

 

『ぐあっ!? ──なんだこれは!?』

 

 叩き落とされた横乳は地面へと墜落し、その隙を見逃さず動き出す面々。

 ヒナは一瞬で詰め寄り横乳の上に乗り、デストロイヤーを突きつける。

 コハルが手榴弾の準備をし、ユウカもヒナには遅ればせながら前線へと合流する。

 そして、ホシノはいつの間にかヒナと共にその愛銃「Eye of Horus」を突きつけていた。

 

「おわり」

「あっけなかったね〜」

「全然出番がなかった!?こ、これでも頑張ってるのに!」

 

 余力を残した精鋭達にあっという間に制圧され、横乳は歯噛みする。

 こんな計画では無かった。

 今まで全て上手くいっていたのに。

 

 全ては、箱の主。

 あの箱の主と天雨アコが接触してから狂い始めた。

 あの者さえ居なければ──!

 

 

 

 ふと。

 そして横乳は思い至る。

 ──一体何故我は苦戦しているのかと。

 

『くっくっく』

「何がおかしいの」

『おかしいに決まっているだろう』

 

 その不遜な笑みに、ヒナは決着を急いだ。

 

「終幕:イシュ──」

 

「──ダメっ!!」

 

 

 ホシノの叫びも一足遅く、横乳はヒナを押しのけ呟いた。

 

 

『終幕:イシュ・ボシェテ──』

 

「──は?」

 

 

 雨のような銃弾が、全員に等しく降り注いだ。

 

 全ての命を、残らず刈り取るように。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 アコは、皆の戦いただぼぅっ、と眺めることしか出来なかった。

 自分の為に来てくれた、先生が呼んだ精鋭達。

 その中には、何と自分まで含まれていて。

 驚いた。

 別の世界線とはいえ、自分自身を頼もしく思う日が来るとは思わなくて。

 

 きっと、この人達なら何とかなるだろうって、他人事のように高を括っていた。

 だから、

 

「うへぇ〜」

「いっ……たぁ……」

「うぅ、ぐすっ、私、エリートなのにぃっ」

「あ、あらあら、これは……」

 

 横乳の反撃に、手痛くやられた先生の「頼りになる人達」を見て。

 そして、

 

「う……」

「……くっ……やられた」

 

 倒れ伏すもうひとりの私と、この中で唯一立っているものの既に瀕死の重症を負ったヒナ委員長を見て、アコは再び絶望へと叩き落とされた。

 

『フハハハハ、そうだ、そうだったのだ!』

 

“くっ、一体何が……!?”

 

「先生!?」

 

 倒れ伏せる先生へと駆け寄る。

 急いで体を見るが、血痕や傷は見当たらなかった。

 あれだけの範囲攻撃、全ての銃弾が外れるとは流石に思えなかった。

 だから、きっと弾は例の奇跡の力でどうにかしたんだと思った。

 

 なら、今倒れているこれは、奇跡の代償とでも言うのか。

 

『ここは、“私”の世界だッ! 思うがまま、私が今まで天雨アコの中で見てきた力は全て実現するッ!』

 

「んな……!」

「はんそくぅ〜〜」

「そ、そんなのどうやって勝てって言うのよ!!」

 

『勝てる筈など無いっ! 言わば私はこの“世界”を味方にしたのだァ!!』

 

 横乳の周りにゴウッと空気が流動し、それらは姿を現した。

 ヒナの「終幕:デストロイヤー」が。

 イオリの「クラックショット」が。

 チナツの「サポートポインター」が。

 そして、アコの「ホットショット」が。

 

 他にも、今現在の記憶も有効なのか

 コハルの「ジャスティス・ブラック」

 ホシノの「Eye of Horus」

 ヒマリの「高嶺の花」

 ユウカの「ロジック&リーズン」

 

 並びに、

 他にも、他にも、他にも……。

 

 アコが今まで見てきた神秘が、横乳に渡り牙を向いていた。

 

『負けを認めるなら、今なら許してやる』

『最後だ』

『決めろ、先生?』

 

“やなこった”

 

『即答か』

 

 横乳は先生へと銃を向けた。

 先生さえ倒せば他の6人も終わるだろうと。

 その思考は正しく、だからこそ凶悪で──

 

「先生!!」

 

 アコは、ただ叫ぶことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パラパラと、身体に当たった銃弾が弾かれて落ちる。

 銃弾はキヴォトス人の体を貫通することはほとんどないからだ。

 

 しかし、だから見た目は意外と重症のようには見えなくても

 

 その攻撃は、確かに“彼女”の神秘を削っていた。

 

「ゴフッ──」

 

“──ヒナ!!” 

 

「委員長ッ!?」

 

 

 先生の前に立ち塞がり、全ての銃弾を防ぎきったヒナ。

 その膝は今度こそ崩れ落ち、先生の前に倒れ伏した。

 

“ヒナ!……ヒナ!!”

 

「はは……センセ。今度は、ちゃんと守れた……」

 

 そういうヒナは今にも死んでしまいそうで、先生はその自身が呼び出した虚像の存在を抱きしめた。

 ──しかし、それを阻む者がいた。

 

 

 他でもない、ヒナ本人だった。

 

「まだ、やれる……ゴボッ」

 

“無茶だヒナ!”

 

「そうですっ!もう、これ以上ヒナ委員長が傷ついてまで私は……!」

 

 アコは頭を抱えて吠えた。

 先生も、これ以上自分の生徒の無茶は許容できなかった。

 

 いつ倒れて動かなくなってもおかしくないヒナの姿に、小さいはずのその背中に、先生は、アコは──

 

 

 

「──何を、勝手に諦めているの……?」

 

 その、大きなヒナの背中に目を見開いた。

 

 

「先生。この世界の貴方は“私の世界の私”を知らない。それは、似て非なる存在……舐めないで。限界は、自分で決める」

 

 デストロイヤーを杖にして、何とかといった風に立ち上がるヒナ。

 誰がどうみたって、満身創痍だった。

 もう、1発の銃弾すら避けられないだろう。

 だというのに、

 

「うへぇ〜、手伝うよ委員長ちゃぁん……」

「小鳥遊ホシノ……、あれだけの攻撃を受けて立つなんて、流石ね」

「いやいや、そんな姿を見せられちゃ〜……それはもう嫌味だよ?」

 

 二人が、先生の前に並んだ。

 2人ともが、小さい背中。

 なのに、その2人が背負ってきたものはあまりに大きくて。

 

「前は私に任せて」

「行こう。未来を掴むために」

 

 ホシノは駆け出した。

 その後に続こうとして、ヒナは立ち止まってこの世界のアコへと振り返る。

 

「アコ」

「は、はい!」

 

「あの変態神はこの世界の思い出を自在に操る。……下手すれば回復までされる。正直言って勝ち目は無い」

「や、やっぱり……!」

「だから、この戦いはきっとあなたが鍵になる」

「え……?」

 

“それは……っ、成程、そうか!”

 

「わかったみたい。じゃあ私は行く」

 

“ごめん、ヒナ!”

 

「ふ、そこはありがとうと言って、先生」

 

 そうして今度こそ駆けていくヒナの姿を見て、アコは何が何だかとただ呆然とその姿を見つめていた。

 

“アコ!”

 

「きゃっ!」

 

 先生に勢いよく肩を捕まれ、我に返る。

 そして、眼前に迫った先生の顔にまた冷静さをかく。

 

“アコ! 思い出だ! この世界の主導権だ!!”

 

「ちょ、ち、近い! 近いです先生!!」

 

“あの神様はこの世界の主だから、この世界を操れるんだ! ならそれはアコも同じはずだ!!”

 

「……あ」

 

 成程、確かにそれはそうかもしれない。

 ヒナ委員長が言った、私が鍵となる、という言葉。

 

 自分の物語なのに、守られてばかりではダメだろうと。

 お前も役目を果たせと、世界が言っている気がした。

 

「わ、分かりました、やってみます!」

 

“お願い! その為の時間は稼ぐから!!”

 

 そう言って、再び大人のカードへと力を灯す先生。

 輝いた奇跡が、力となって瀕死の6人へと流れ込む。

 

「いたた……あれ、傷が……」

「はっ!? あれ、どうなったの!? あ! あのエッチなのまだいる!!」

「……まったく、不甲斐ないところを見せてしまいました」

「くっ、ヒナ委員長……! 今行きます!」

 

 一度は倒れた仲間たちが、再び立ち上がる。そして

 

「ホシノ、合わせて」

「まっかせて〜!」

 

 二人の最強が、乳の神へと牙を剥く。

 

『何度でも屠ってやろう!! その心が折れるまでな!!』

 

「うへ」

「──やってみろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衝撃波が、遠くにいるアコにまで伝わってくる。

 私を助けようとしくれる人達が、傷つき、回復し、また傷つく。

 ただ、私の時間を稼ぐために。

 その焦りが、集中を余計掻き乱してくる。

 

“アコ! 頑張れ! アコ! 頑張れ!”

 

「〜〜! ちょっと静かにしてください!!」

 

 

“ごめん……”

 

 先生は大人しく時間を稼ぐ事に集中した。

 対してアコは、いまいちどうすればいいのか掴みかねていた。

 

「くっ、世界を、掌握……、そんなの一体どうすれば……!」

 

 悩んでいる暇などない。

 回復だって無限じゃない。あれはきっと先生の“何か”が代償となっている。

 時間が過ぎれば過ぎるほど失っていく。不利になっていく。

 

 しかし、だからといって簡単に出来る話でもなかった。

 アコは、涙が出るくらい強く願った。

 

「お願い! お願いします!! みんなを、先生を守れるのは私だけなんです!!」

 

 しかし、その願いは届かない。

 伸ばした手は何も掴まない。

 

 世界の掌握なんてやった事も聞いたこともないのに。

 そんな急に言われて、出来るはずもなかった。

 

 そうだ、所詮私はこんなものなんだ。

 そう、何も守れない──あの時のように。

 

「あ……」

 

 そして、私の思い出の世界の中に佇む、ひとつの世界が目に入った。

 

 病院で眠るイオリ。そしてその横でうずくまる私。

 

 そうだ、あの時だ。

 あの時が、全ての始まりだった──。

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 雨の音が、嫌なくらい耳に残った。

 

「………………………………」

 

 電気すら着いていない、なんの音もしない──病室。

 そこに眠るのは銀髪の少女。

 明るくて、可愛くて、偶に弄りたくなるような、そんな後輩。

 

 安らかな顔で、眠っていた。

 死んでない。死んでない……。死んでない、だけ。

 

 窓にポツポツと当たるそれらが、まるで自分の罪を批難する悪口のオーケストラのように聞こえた。

 出来損ない。

 役立たず。

 生きる価値のないゴミクズ……と。

 

 そんな自嘲気味な思考で、死んだような目で病室に眠るイオリを見つめた。

 これは、私の責任だった。

 

 天雨アコという、ちっぽけな役立たずが生み出した結果だった。

 

「──イオリッ、アコッ!」

 

 珍しく緊迫した表情のヒナ委員長が病室に飛び込んできて、額にうかべた汗をそのままに病室へと上がり込んできた。

 その姿を見ていると、アコは無性に泣けてきた。

 

 ヒナ委員長は、息を整えて地べたに座り込む私へと近づき、私の頬へと触れた。

 

「──ごめん、間に合わなかった」

 

「………………………………いえ」

 

 全ては、私の責任ですから。

 

 そう言おうとして、ずっと水すら口にしていなかったせいで喉が涸れて何も言えなかった。

 そんな、色々と限界な私を見て、ヒナ委員長は……ただ、私を抱きしめてくれた。

 

「話は、チナツから聞いた」

「…………………………はい」

「…………アコも、ゆっくり休んで」

 

「……………………………はい」

 

 ヒナは、泣きそうな顔を浮かべてアコを見つめた。

 同級生の、自分をいつも慕ってくれているアコ。

 出会ったばかりの頃は色々と突っかかってきたけれど、話す内に、切磋琢磨するうちに関係性は少しづつ変わってきた。

 

 けど、今のようなアコをヒナは1度も見たことがなかった。

 まるで、この世の全てに絶望でもしているかのような、今にも死を選んでしまいそうな目。

 その目をみて、ヒナは……

 

 しかし、かける言葉が見つからなかった。

 

「イオリは、無事。……すぐに良くなる」

「…………………………」

「貴方にも、時間が必要だから…………、それじゃあ、私は仕事があるから」

 

 ヒナは立ち上がって、アコに背を向けた。

 何が、仕事だ。

 それは仲間の安否よりも大切なことなのか?

 ヒナは、それでも……自身に重くのしかかった責任が、それを放棄することを許さなかった。

 

 そして、病室を出ようとして、

 

「…………………………ヒナ、いいんちょ」

「────」

 

 

「ごめ……なさ……い。私……せいです……」

 

 無表情で、涙を流すアコの姿を見て……

 

 ヒナは、ただその場から逃げ出す事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 外の雨が強まる。

 まるで、今までの思い出を沈めて、全て攫っていくかのように。

 

 アコは、雨が嫌いになった。

 もう、きっと戻れない日常に、すべてがどうでも良くなっていった。

 

「死…………終わり…………いいんちょう…………イオリ…………」

 

 なんで、こうなったんだっけ。

 

 たしか、最初はいつものパトロール。

 ヒナ委員長が出張で、私たち3人で回していて。

 

 そして、そこにヒナ委員長の不在を聞き付けたテロリスト共が襲撃に来た。

 私達は、多勢無勢にボコボコにされて。

 戦闘力の低い私達を守るように、イオリだけが血反吐を吐きながら戦い続けた。

 あの状況で、後輩が戦う中で、私はヒナ委員長が助けに来るのを待つばかりで何も出来なかった。

 ……何が、行政官だ。

 

「ごめん……さい……ごめ……なさい……ご……なさ、い……」

 

 イオリは、深く傷ついた。

 あれから一度も目覚めていない。

 私の傷は、イオリと比べて酷く浅くて。

 

 それが、何より許せなかった。

 

「私が……わたしのせいで…………」

 

 私は恨んだ。

 私の弱さを。

 私は願った。

 ヒナ委員長のような強さを。

 

 その為なら、もう何だって差し出そう。

 なんなら、この命だって惜しくは無かった。

 それで許されるのなら、私以外の風紀委員会が幸せになれるのなら、

 

 私は、悪魔にだって魂を売ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『其の願いを聞き入れた』

 

 

「だ、れ……?」

 

 

『我は汝』

『汝は我』

『汝は神秘であり』

『我は恐怖である』

『其の願い聞き入れた』

『その絶望見届けた』

『故に耳を貸せ』

『素晴らしい提案をしてやろう』

 

 

 

「な、に?」

 

 アコのヘイローは点滅した。

 まるで、反転でもするかのように。

 まるで、色彩にでも飲み込まれたかのように。

 

 

『我と契約を結べ』

『さすれば力を差し出そう』

『契約はこうだ』

『汝の精神を少しづつすり減らす』

『そのために、貴様が許容できる“恥”を日常的に行う』

『でなければ今日、汝の魂は壊れる』

『故に、少しづつ慣らす』

『そして、汝はそれに気がつけない』

『汝はこの会話、そして契約の記憶を失う』

『そして少しずつ、少しずつ神秘を恐怖へと上書きし……』

『全てが手遅れになった、その時貴様は恐怖を手に入れる』

 

 

「なに、そ、れ……」

 

 

 アコは、願った。

 仲間を今度こそ守れる力を。

 仲間を傷つけさせない力を。

 

「そんなの、で、いいんです、か……?」

 

 アコは、一も二もなく飛びついた。

 もとより、この身に価値なんてないのだから──

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

「そう、だった……」

 

“アコ?”

 

 アコは、全ての記憶を取り戻した。

 自分の罪。

 後悔。

 そして、恐怖を。

 

 アコは、直近の自分のヘイローを思い出す。

 それは生来のもので、反転なんてしていなかった筈。

 何故?

 私はあの日、恐怖に殆ど呑まれかけていた。

 それが元に戻っている。

 どうやって?

 ……あの、恐怖に呑まれた原因の、記憶を失って。

 

 そして、契約が完了すれば完全に恐怖へと変わるはずだったのに。

 ただ、胸に黒く染ったヘイローが浮かんだだけ。

 

 まさか──

 

 

 

「……………………止めないと」

 

 アコは、右手を掲げた。

 

 願うのは、最強の自分。

 それは簡単。何せ、目標が、尊敬する人が、私の最も近くにいる人だから。

 

 

「デストロイヤー」

 

 

 ぽんっ、と音を立てて、しかしちゃんと出現したヒナ委員長のデストロイヤー。

 アコは、やっと掴んだこの感覚を。

 忘れないように、離さないように、抱きしめて包み込んだ。

 

“アコ、行ける?”

 

「……はい。お待たせして申し訳ありませんでした」

 

 

 

 

 ──アコは、一本、進んだ。

 

 そして、さらにもう一歩。

 

 さらに、さらに、さらに──

 

 さらにさらにさらにさらにさらに──────

 

 

 

 

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──もう一人の、私ぃっ!!」

 

 

 

 ゴウッ、と風が舞って、アコの周りへ纏わりついた。

 

『──!』

「はいっ!? 何ですか!?」

 

「──アコ?」

「うへぇっ、よそ見は、ダメだよッ!」

 

 アコの叫びは、この世界全体にこだました。

 風を纏い。

 意志を乗せて。

 

 その声は、先生に、ユウカに、コハルに、ヒマリに、ホシノに、もう一人の私に、

 ヒナ委員長に。

 そして、──3人目の自分に。

 

「──貴方を、止めます!!!」

 

『…………やってみろ』

 

「え?え? どういう事ですか?」

「……恐らく、貴方の事を言っているのではないと思いますよ」

 

 

 

 

 

 

「──お願いッ!」

 

 そして、私は願った。

 この世界の全てを。

 この世界を構成する、全ての記憶を。

 

「終幕:デストロイヤー」

「クラックショット」

「サポートポインター」

「ホットショット」

「ジャスティス・ブラック」

「Eye of Horus」

「高嶺の花」

「ロジック&リーズン」

「コモンセス」

「デモンズロア」

「第3号ヴァルキューレ制式拳銃」

「ダイナーズアウトロー」

「救急用突入キット」

「インペイルメント」

「給食部の護身用銃typeA」

 

 

 

 

 もっと

 

 

 

 

 

「ビナー」

「ケセド」

「シロ&クロ」

「ヒエロニムス」

「ホド」

「ペロロジラ」

「回転ロボ」

 

 

 

 

 

 

“たまげたなぁ……”

 

「うへ〜、やば〜」

「こ、これは……み、味方なんですよね、先生!?」

 

 今まで私が出会ってきた、私の記憶を構成する、私の一部。

 ズラリと、それらがまだまだ、さらに、どんどん生まれていく。

 

 

「まだ! まだ!! まだッ!!! もっと来なさいッ!!!!」

 

 

「虚妄のサンクトゥム」

「ウトナピシュテムの元船」

「アトラ・ハシースの箱舟」

 

 

 

 際限等無い。限界などない。

 ここは心の中の世界。

 私が望めば、世界は、未来はいくらでも広がった。

 

 

「────まだッ!!!!」

 

 

 そして、

 

 

 

“そ、それ……!?”

 

 

 

 

 そして、いつの間にか私の手に握られていたもの。

 それは、3つの銃痕が着いた、シッテムの箱だった。

 

 

“…………プレナパテス……そっか、力を貸してくれるんだね”

 

 先生は、優しい顔で微笑んだ。

 アコの記憶。どちらかと言うと、アコはこの世界の先生のシッテムの箱を見た回数の方が多いはずだった。

 だと言うのに、この場に現れたのはプレナパテスのシッテムの箱。

 その、理由までは分からない。

 

 けど……先生は、都合のいい様に勝手に解釈する事にした。

 それが、彼からの贈り物だとしたら、とても素敵な気がして。

 信じれば、それは水着だって下着に変わるのだから。

 

「先生、これは……」

 

“うん、使い方を教えるよ”

 

 先生は、私の手を取った。

 そして、私の手を支えて、一緒にシッテムの箱に……触れた。

 

“続けて”

 

「は、はい!」

 

“……我々は望む、七つの嘆きを。”

 

「……我々は望む、七つの嘆きを。」

 

“……我々は覚えている、ジェリコの古則を。”

 

「……我々は覚えている、ジェリコの古則を。」

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──アコ先生の生体認証を確認』

 

 

 

 

 

 

 

“……ありがとう、プレナパテス”

 

 

 

 

 

 

『この「シッテムの箱」に常駐しているシステム管理者であり、メインOS──』

 

 

 

 

 

 

 

 

『──A.R.O.N.A。アコ先生に力を貸しましょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アコの世界で、アコの記憶によって生み出されたシッテムの箱。

 アコを先生と認識し、今この場ではアコの命令を聞くメインOSとしてここに誕生していた。

 

 アコの願いが。

 積み上げてきた経験が。

 重ねてきた絆が。

 

 次々と、奇跡を産んでいく。

 

 

『その程度ッ、だからなんだ!! 私も同じものを用意すればいいだけだ!!!』

 

 そう言って、向こう側にも同じ存在が生まれていく。

 数多の武器。

 虚妄のサンクトゥムの主達。

 世界を滅亡に追いやった数々の脅威。

 そして……シッテムの箱。

 

 横乳もこの世界で自在にものを生み出せる。

 それはアコの身に宿っているから? 自身をアコとして認識出来ているから?

 違う。そして、その答えをアコは既に知っている。

 だから、止めなければならない。

 

“受けて立つよ”

 

「今度は……私たちの番です!!」

 

「お願いします、A.R.O.N.Aさん!!!」

 

『──了解しました、先生。』

 

 

 

 

 

 

 

『この世界を認識、分析、仮定、所持、構築……』

 

『この世界に存在する全てを支配下に起きます』

 

 

 アコの生み出した数多の銃が。

 デカグラマトンのパスが。

 ミメシスの秘儀が。

 聖徒の交わりが。

 ライブラリー・オブ・ロアが。

 名もなき神の力が。

 無名の守護者の能力が。

 キヴォトスを破滅に追いやった反転の塔が。

 古の遺産が。

 この世界を滅ぼす為に産まれた船が。

 

 シッテムの箱の号令により、一斉に横乳へと牙を向いた。

 

 

 

『邪魔するなァ─────ッッ!!』

「止まれ────────ッッ!!」

 

 

 

 数多の銃が、レーザーが、神秘が崇高が次第に拮抗し、そしてアコと横乳はそれぞれがシッテムの箱により守られていた。

 同じ性能。そして、同じ経験。

 先生が使っていれば別だったろうが、素人同士ではその力は完全に拮抗した。

 

「うへ〜、こりゃもうおじさん達出番ないかもね〜」

「ホシノ。まだ仕事は残ってる」

「ありゃ、そう? じゃ〜もうひと頑張りしますか〜」

「……頼りにしてる」

「うへ、嬉しい事言ってくれるねぇ」

 

「ほら、急いで! このままだとまた置いていかれるわよ!!」

「わ、私だってエリートなんだから!!」

「ふぅ。少し本気を出しましょうか」

「まったく……! もう1人の自分にだけいい顔はさせられませんからね……!」

 

 かくして切り札達は動き出す。

 この完全に拮抗した世界を、終わらせるために。

 

 

 

『巫山戯るなァァ──────!!』

「巫山戯ているのは…………っ!!」

 

 

 アコは、思い出した。

 自身の記憶を。

 自身の過ち。

 ここに至った軌跡を。

 

 

「巫山戯ているのは……確かに、私ですっ!」

 

「貴方との契約を反故にし、牙を向いている……確かに私は大馬鹿者です」

 

「ですが! 先生が、私は前を向いて良いと仰って下さったので!!」

 

「やり直しても、良いと……! やり直せると、仰ってくれたので……っ!!」

 

「だから、申し訳ありませんが!!!」

 

「この契約は、無かったことにして下さい!!」

 

 

 

 

 

『それを、巫山戯ていると───ッ!!』

「──それと、ありがとうございました」

 

『──!?』

 

 

 

 

「私の心が壊れないよう、記憶を消してくれて……」

 

「私の願いを叶えるために、恐怖に染まろうとしていた私を少しでもゆっくりと、慣らそうとしてくれて……」

 

「貴方がいなければ、きっと私はとっくに終わっていました」

 

「──だから、ありがとうございました──もう1人の、私」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「R.S.G!」

「セイなる手榴弾っ!」

「実力をお見せしましょう」

「偵察データを共有します!!」

 

「うへ〜、水上支援〜ってね。──行って、ヒナちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──終幕:イシュ・ボシェテ」

 

 

 

 

 

 

 

 銃弾の雨が、横乳を貫いた────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 終わった。

 全部、全部終わった。

 

 朽ちていく横乳の肉体を、アコは皆に見守られながら見送っていた。

 皆が満身創痍の中、ほぼ無傷なのは自分だけ。

 その事に少し申し訳なく思った。

 けれど、アコは謝罪の言葉も感謝の言葉も一先ず後にさせてもらった。

 

 何故なら今、目の前にいる存在はもう消えようとしていたから。

 

 ボロボロと、空へと登っていく横乳の神。

 それはなんと言うか──結構、綺麗だった。

 

 光となって、どこかへと散っていく魂の様なもの。

 ……それに、アコは散々迷惑をかけられた。

 コレのせいで大事な人を傷つけてしまった。

 そんな、憎くて嫌いでどうしようもない存在の最期。

 それを見て、アコは

 

『何故だ……』

「……何がでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故、貴様が泣いている……?』

 

 泣いていた。

 自分でも、正直分からなかった。

 

 この神がいるせいで、今日、私はヒナ委員長を傷つけて。

 この神がいるせいで、今日、先生は私の為に代償を支払うこととなった。

 

 けれど、この神のおかげで私は、あの日壊れずに済んで。

 この神の……、いや。

 

 まず、前提から間違っていた。

 ──何故なら、この“人”は神なんかじゃないから。

 

 

「貴方は、私だからです」

 

 

『……やはり、気がつきましたか』

「ええ。あなたはどこかから舞い降りた神でもなく、色彩でもなく、ただ私が反転した私……それそのものなのか、導く存在なのかは知りませんが」

『……そんなものは、私にだって分かりません』

 

 二人の別れは、存外穏やかなものだった。

 もっと、憎しみ合うかと思っていた。

 もっと、罵り会うかと思っていた。

 もっと、悪いヤツなら良かったのに。

 自分を苦しめた相手が自分を守っていてくれたなんて、そんなのアコは望んじゃいなかった。

 

『あの日、私は急に目覚めたんです』

「……」

『恐らく、貴方のヘイローが反転した事が要因。しかし、起きたら宿主が恐怖に呑まれて既に瀕死だった。……あの時の気持ちが貴方に分かりますか……?』

「……ふふ、すみません」

『……それに、せっかく力を手に入れる機会だったのですよ?』

「あの時は、確かに欲しました。けど今は、みんなが居てくれるって知ってますから」

 

 

「……いくら少しずつ無意識に心をすり減らすからって言って、横乳は無いでしょう」

『うるさいですね。私だってそのせいでこんな身体になったんですよ』

「そもそも、何故横乳に?」

『……貴方の肉体の中で最も崇高な箇所がそこだったんです』

「……横乳が、ですか?」

『誇るといいでしょう』

「ええ……」

 

 

『全く、とんだ茶番は私でしたね』

「そんな事はありません」

『フン、下手な慰めはいりません』

「ところで、ひとつ聞いていいですか?」

『……なんでしょう』

「私の中で見ていたこの世界は、どうでしたか?」

『…………』

 

『ヒナ委員長、最高……とかですか?』

「ふふ、やはり貴方は私ですね」

『……ふふっ』

 

「こういう時、私はどんな顔をすればいいの?ホシノ」

「うへっ、私に聞かないでよぉ、センセ〜」

 

“先生は皆の笑顔が好き!”

 

 

 

 

 

 

『もう、行きます』

「そうですか……」

『ええ』

「お元気で……は、おかしいですね」

『当たり前です。私は消えますので』

「では……また会いましょう」

『ふふっ、バカを言わないで下さい……』

 

『幸せになりなさい。天雨アコ』

 

『もう1人の、私……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい゛っっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 

 

「ただいま戻りました!!  天雨アコ、完全復活です!!!」

 

 

 

 

「おかえりアコちゃん!」

「おかえりなさい、アコ行政官」

「おかえり、アコ」

 

 アコは風紀委員会へと帰ってきた。

 彼女の帰るべき場所に。

 彼女が最も安心する場所に。

 

 イオリが快活な笑みで迎えて。

 チナツが優しく微笑んで。

 ヒナ委員長が、包み込むような慈愛をくれる。

 

 私の、私だけの居場所。

 誰にも譲れない居場所。

 

 アコは満面の笑みを浮かべて、“宝物”の中へと足を踏み出した。

 

 

「──聞いてください、ヒナ委員長! 私、すごい冒険をしてきたんです!!」

「……どうしたの?」

 

 優しく微笑んでくれる、ヒナ委員長。

 先生と出会ってから委員長はよく笑う様になって、今やどっちに嫉妬していいのか分からなくなってきたけど。

 そのよく似た雰囲気の2人の笑顔は、そんな事を忘れさせてくれるくらいにはいつも眩しくて。

 あの“思い出”の世界でも強く輝いていた事をよく覚えている。

 

 

 そして、アコは皆に話した。

 昨日の事。

 自分の身に起きたこと。

 ミレニアムの技術だけは全て伏せて。

 

 後悔や罪の意識を抱いていた事。

 実は、あの胸のヘイローは私を守っていてくれたこと。

 一度、皆を捨てて消えようと思ってしまった事。

 

 全部、全部包み隠さず話す。それは、何よりも輝く信頼の証だから。

 

 それと、皆に、傷つけてごめんなさい、と。

 

「言ったはず、気にしなくていい」

「まー、私達は委員長に守られただけだから、元より怒る筋合いもないし」

「むしろ、アコ行政官はあの時触れられたくないと仰っていたので……申し訳なさを感じるというか……」

 

 それにアコは満面の笑みを浮かべた。

 こんなにも、簡単に仲直りが出来た。

 先生の言う通り、私はやり直す事が出来た。

 

「けど、アコちゃんあの時の事そんなに悔やんでたんだ」

「……ごめん、アコ」

「え!? なんで委員長が謝るんですか!?」

「あの時、私は自責の念でアコに構ってあげられる余裕が無かった。……だから、放置してしまった。上の立場としてあれは、駄目だった。……アコの絶望には、気づいていたのに……」

「そ、そんな事無いです!! 委員長はいつも私たちの事を考えてくれていて、誇りで、尊敬で……」

「……ふふ、じゃあ、もうお互い謝るのはなしにしようか」

「……はい! そうしましょう!」

 

 そうして平穏は戻ってくる。

 今日からまた、あの忙しい日々が始まるのだ。

 

 テロリスト共を相手にして。

 降って湧いた書類達を切って弾いて捌くのだ。

 

「──ていうか、その横ち、ちの神? はもう居なくなったんだよな?」

「言うなればアコ*テラーです。恥ずかしいなら横乳言わないでください」

「……じゃあ、なんでまだ横ち、ち……出してるの?」

「……」

「……」

 

 

「よく聞いてくれました!!」

 

 バッ! と勢いよく立ち上がったアコに、三者三様に言葉を浴びせる。

 

「機能性じゃないの?」

「いつもの服すぎて間違えて来ちゃったとか?」

「あはは……実はまだ治っていないとか、ですか?」

 

 その言葉に、アコは憤慨した。

 この人たちは私の今までの話をちゃんと聞いていなかったのだろうか。

 コホン、と咳払いして、みんなを見つめる。

 

 やっぱり、大好きな人達だ。一度手放しかけて……けど今はちゃんといる。

 

 私の胸に宿っていたもう1人の私は、本当に消えてしまったけれど。

 彼女との思い出は、まだこの胸に確かに宿っていたから。

 

 

 

「それは────好きだからです!!」

 

 

 

 この出で立ちが。

 彼女との思い出が。

 彼女がくれた物を、少しでも残しておきたかったから。

 

「…………」

「…………」

「…………それって痴女じゃない?」

 

「あっ」

「あっ」

 

 

 

「……イ〜オ〜リ〜!!」

「や、やばっ!?」

 

 アコはイオリを追いかけた。

 イオリは室内を逃げ回った。

 

「ちょ、アコちゃん!? 委員長達も思ってたって!!」

「私だって薄々気付いてましたーっ! でも言わぬが花なんですーっ!」

「ひぃっ、ごめんってアコちゃん!!」

「でもしょうがないじゃないですか!! 私の体の中でこの横乳が最も崇高なんですから!!!」

「い、意味がわからないっ!? あ、いやごめ、許して!?」

「ダメです!! 罰として今日のパトロールはこの首輪をイオリにつけて行いますッ!!」

「何か変態性増してない!? ちょ、うそ、嘘だよね!? アコちゃん!!!」

 

 

 アコの胸は踊る。

 今日も半分モロだしながら。

 

 それは、アコが好きだから。

 自分を守ってくれた友達を、いつまでも、いつまでも忘れない為に──。

 

 

 

 




(l l:l l) く 幸せになになりなさい
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