ACⅥを教えるスネイプ先生   作:10秒チェイサー

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良いお年を


グリッド086侵入学を教えるスネイプ先生

 

「ああ、左様。ハリー・ポッター。我らがお馴染みの――無謀な客人だ」

 

 

 

 薄暗がりのようにじっとりとした声がハリーの名を呼んだ。まるで返すつもりもない借金を重ね企業の最新パーツを買い漁ってACを組み上げたのはいいが、借金取りに追われて逃げ回るうちに全ての人間が自分を追い詰める借金取りに見えているかのようだった。

 

 

 

「このクラスでは、グリッド086侵入に際しての大まかな流れと、基本的な注意点を学ぶ。先に言っておくが、上下移動が多くボス戦との相性が悪いここでは、ガチタンのようなアセンはオススメできん。これでも自由な機体構成を売りにするゲームかと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと数え切れんほど沸くMT部隊、ゆらゆらと立ち昇るやけに高誘導なミサイル、トイボックスの繊細な変形機構、心を惑わせ、感覚を狂わせる溶鉱炉……」

 

 

 

 他はともかく、溶鉱炉の何がスネイプを惹きつけるのか分からない。ハリーとロンはハーマイオニーにちらりと目をやった。ハーマイオニーはガチタンだろうと問題なくクリアできるだろうが、バグかチートかと言わんばかりの変態を基準に難易度を語っても意味はないのだ。

 

 

 

「諸君がこのクソ広いマップの構造を真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、何はともあれミッションをクリアし、可能なら隠しパーツを集め、ついでに戦闘ログを回収する方法である。――ただし、このグリッドが誰の縄張りなのかも理解せず乗り込んだ挙句に、溶鉱炉へとぶちこまれたウスノロより諸君らがまだましであればの話だが」

 

 

 

 大演説のあとはクラス中が一層静まり返った。RaDは頭目のカーラからしてさも気風のいい姐御みたいな言動をしているが、トイボックスに背後から奇襲させたり吊るした爆弾を落としてきたり、降参すると言ってスマートクリーナーをけしかけたりとやりたい放題なのだ。オペレーター役のエアが事ある毎に「何を企んでいるのか知りませんが」と不信感丸出しで警戒するのも当然の所業である。

 

 

 

「ポッター! コーラル摂取の酩酊感に、中毒者特有の無根拠な誇大妄想と自信過剰を加えると何になるか?」

 

 

 

 脳みそがぱちぱち弾けて幸せな所に、自分を最強と思い込むだって?

 

 ハリーはロンにちらりと目をやったが、ハリーと同じように「お、俺のマッドスタンプがぁーっ!」という顔をしていた。ハーマイオニーはホグワーツサーバー内ランク9位という実績があるので、空中に高々と手を挙げた。

 

 

 

「わかりません」

 

 

 

 スネイプは口元でせせら笑った。唇をめくりあげたりはしなかった。

 

 

 

「何度撃墜されても生きて帰れる不死身ぶりだけではどうにもならんらしい。ポッター、もう一つ訊こう。高額の賞金首を探してこいと言われたら、どこを探すかね?」

 

 

 

 ハーマイオニーが思いっきり高く、椅子に座ったままで挙げられる限界まで高く手を伸ばした。ハリーには借金王ノーザークに一体何故賞金が掛けられているのか見当もつかない。

 侮られたら終わりという商売をしていないので、殺してしまったら貸した金が返って来なくなるだけでは? としか思えないのだ。……まあ、ノーザークの言動から鑑みるに生きて捕らえた所で金を返すとは思えないが。

 

 

 

 マルフォイ、クラッブ、ゴイルが身をよじって笑っているのを、ハリーはなるべく見ないようにした。逆転時計によるもしも(呪いの子)の世界では、偉ぶりたいだけで政治的ビジョンを何ひとつ持っていない頭ドーザー野郎(ヴォルデモート)をフォローするのに忙しくなるだろうマルフォイにとっては黒歴史になる振る舞いだし、クラッブはバトルログ回収を目論んでBAWS四脚MTに挑んだせいで二機に挟撃されて死ぬ。

 

 

 

「わかりません」

 

「クラスに来る前にコーラルを生でキメようとは思わなかったわけだな、ポッター?」

 

 

 

 ハリーは頑張って、冷たい目をまっすぐに見つめ続けた。ダーズリーの家にいたころ、ダドリーと深夜にバーノンおじさんの秘蔵のスコッチに手を出そうとして怒られた事ならある。スネイプはハリーが品行方正で清楚な思い出の中のヒロインだとでも思っているのだろうか。

 

 

 

 スネイプはハーマイオニーの手がぷるぷる震えているのをまだ無視していた。

 WRECKER腕の反動制御数値は随一だが、あの震えは止められないのだろうか。

 

 

 

「ポッター、スマートクリーナーの破砕アームを用いた攻撃は様々なモーションがある。片腕での薙ぎ払いに限っても2種類のモーションが存在するが、その違いは何だね?」

 

 

 

 この質問でとうとう“無敵の”ハーマイオニーは椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばした。

 

 

 

「わかりません。ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

 

 

 

 生徒が数人笑い声をあげた。ハリーとシェーマスの目が合い、シェーマスがウィンクした。グリッド内部の天井から落とされた燃料爆弾に『歓迎』されて「コイツらイカれてるぜ!」と歓声を上げながら爆死した男だ。

 

 

 

 しかし、スネイプは不快そうだった。

 

 

 

「座りなさい。……教えてやろう、ポッター。

 インビンシブル・ラミーはアリーナランク30位という順位とその言動から何ひとつ考えていない無謀なバカだと思われがちだが、世界観から言ってAC乗りはランキング外の者も存在している。実例は【密航】ミッションでライセンスが拾えるモンキー・ゴードだ。そう考えればランクインしているだけでも彼が上澄みなのだと分かる。

 そもそも、真に何も考えていないのなら衛星砲狙撃にチャレンジしてとうに死んでいる。

 借金王ノーザークが溶鉱炉のパイプを通った先の部屋にいるのは有名な話だが、このミッションは他にも隠しパーツや戦闘ログを回収できるポイントが多い。wikiを見ながら探索するのも良いが、移動時間がかさみ戦闘回数も増えることから、こちらの機体や武装が整う二周目以降の方がスムーズだろう。

 具体的な箇所は多すぎるため今回の授業では直接扱わない。知りたい者はそれこそwikiを確認するなり、後ほど我輩の研究室に来るなりするように。

 スマートクリーナーが片腕で薙ぎ払う際には、床にアームを引きずるかそうでないかの違いがある。薙ぎ払いの軌道が低いか高いかの違いであり、基本的にこちらが地上にいるときは低い薙ぎ払い、浮いている時は高めの薙ぎ払いが飛んでくる。低空で浮遊しつつ、薙ぎ払いをギリギリの高さで浮いて回避しようとした時に当たらないはずの高さで当たってしまうのは2種類の薙ぎ払いを見分けていないからだ。

 なお、スマートクリーナの弱点が口の中か頭上の穴だというのは当然諸君も承知しているだろうが、それ以外の場所は単に固いだけだ。ジャガーノートのようにシールド判定されたりはしないので、突進や薙ぎ払いを回避した後に背後から攻撃する事を繰り返して倒すことも非現実的というほどではない。無論、弾薬消費に対する効率は劣悪極まりないのでEN属性の近接武器でもない限りは推奨せん。

 どうだ? 諸君、なぜ今のを全部ノートに書き取らんのだ?」

 

 

 

 一斉に羽根ペンと羊皮紙を取り出す音がした。その音に被せるように、スネイプが言った。

 

 

 

「ポッター、前回授業で取り上げたからと言って垂直ミサイルをそのまま採用したな? 今回はグリッド内部の戦闘だ、垂直ミサイルが天井に引っ掛かる可能性くらい考えたまえ。グリフィンドールは1点減点」

 

 

 

 たまらずロンが叫んだ。

 

 

 

「でも先生! スマートクリーナーの頭上の弱点は垂直ミサイルで狙えと言わんばかりです!」

 

「ウィーズリー、君が思うほどに垂直ミサイルの狙いは正確とは言えんぞ。

 スマートクリーナー相手に弱点を狙うなら素直に上空から通常ミサイルを使った方が良い。敵はEN属性への耐性が低いのでこのタイミングでショップに入荷する3連プラズマミサイルも悪くないが、我輩個人の意見としてはあまりオススメできんな。汎用性が高すぎて右肩が固定されてしまいかねん。

 とは言え、クリアすることが第一だ。苦戦するようなら試してみるのも良かろう」

 

 




3連プラミサくんは軽い上に持って行く相手を選ばないのが偉いですね
ラスボスエアちゃん戦くらいだったかな、他の装備に乗り換えたの
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