なまくら娘。   作:にゃあたいぷ。

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7話.決着と別れと出会い。

 オルガン諸島、オレンジの町近郊。

 (なまくら)で邪魔な木々を伐採しながら森の外に出ると、そこでは既に麦わらの男と道化の男が戦闘を始めていた。また戦いは佳境に入っている。

 バラバラフェスティバルと叫んだ道化の男の肉体は、恐らく本人が制御できる限界まで分解する。しかし麦わらの男は、バラバラになった無数の部品を掻い潜り、的確に相手の急所へ打撃を与えていた。頭部は勿論、腹部と股間にも蹴りを入れており、四方八方から襲い来る道化の攻撃の手を止めている。睾丸が潰れたかと思う一撃を入れて、悶え苦しむ道化の男を前に麦わらの男は、ゴムの伸縮を利用した素振りを始めた。繰り返される両腕でのパンチ、徐々に加速をし始めた。麦わらの男が叫ぶに技名は、ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)。腕が複数に見える程の速度を以て、道化の男の部品のひとつひとつに拳を叩き入れた。

 再び森の中へと吹き飛んだ道化の男を目で追いかけながら、どうしたものかと思考に耽る。

 道化の男は賞金首である。千万超えの大物であり、捕まえて海軍に引き渡してやりたいのだが、あのバラバラの能力を使われては下手な拘束具は意味を為さない。実は朝方、海賊の頭を潰した、と海軍に連絡を入れておいたのだが、何時、来るかも分からない海軍の為に捕まえておくのも面倒だ。かといって、殺すのも骨が折れる。彼には、刃物が通らないし、無抵抗な相手を死ぬまで殴り続けるのは心が痛んだ。

 悩んでいると、麦わらの男がすぐ隣まで歩み寄って来た。

 

「よお。あいつを森からぶっ飛ばしたのは、お前の仕業だったのか」

 

 こくり、と頷き返す。森の中に吹っ飛んだ道化の男の気配を探る、気絶はしていないようだ。

 

「まだ元気そうだけど、どうする?」

「そうなのか?」

「うん、逃げようとしているよ」

「ゾロ達の方に行かれるのは困るな」

 

 よし、と麦わらの男は片腕を回しながら森の中へと歩いて行った。

 その背中を眺めながら、ああ、そうだ。と良い事を思い付いたので彼の後を追いかける。

 意地でも殺したい訳じゃないけども、このまま放置するのも嫌だった。

 

「アイツの能力には範囲があるみたいだよ」

 

 吹き飛ばされた先に転々と転がる道化の男の部品達、今はピクリとも動いていなかった。

 不思議な事に生きている感じはある。気持ち悪いので触れないでおく、麦わらの男は頷き道化の男を追いかけて森の中へと入り込んだ。程なくして、青空に見事な放物線を画きながら水平線の先へ消える道化の男の姿が見えた。随分と小柄になったようだ。父親も同然の国王が言っていたのだが、偉大なる航路にはトンタッタ族という小人の民族が居るらしい。きっと、それぐらいのサイズ感である。

 決着が付いたのを見届けた私は、町の避難所へ足を進めた。

 海賊というのは身勝手で、船長が居なくなれば空中分解するものだ。散った雑魚共を丁寧に潰すのは面倒だし、ただただ徒労なだけなので、後始末は海軍に任せるに限る。

 

 その日は危機を脱した町は、宴を行う事になった。

 町の皆が準備を進める中、何も言わずに町を出ようとする三人組を横目に見つけた。

 その視線に気付いた麦わらの男が私に向けて手を振る。

 

 麦わらの男が道化の男と戦っている時に残る二人が何をしていたのか、なんとなくだが分かっている。

 道化の海賊団の宝を奪いに行ったのだ。海賊から宝を奪うのは私もしている事なので、強く言えなくて、一先ず、三人組が町を抜け出すのは見なかった事にする。

 きっと次に会う時は矛を交える事になるんだろうな、と遠くない未来を想いながらギターを町長から受け取る。

 弦を弾いた、旋律を奏でる。父親も同然の国王が言っていた。昔の海賊は皆、この歌を歌って航海をしたと言われているんだよ。ビンクスの酒は、あの子も好きな歌だった。私が楽器を奏でて、彼女が歌う、そんな毎日を送っていた。私は故郷を滅ぼされて、あの子は父親に捨てられた。だからなのか気が合って、何時も一緒で仲良く暮らしていた。何時の日か、一緒に海を出て、赤髪の海賊に会いに行くのだと復讐心を燃やし合った仲でもある。

 だけど、あの子は私を裏切った。

 殺してやりたいほどに憎かったから、私は一人で島を出た。

 

 

 東の海の何処か。小舟で東の海を航海している最中、私は頭上で渡り鳥が鳴いていたので見上げた。

 照り付ける太陽と潮風に肌荒れを心配する中、何者かが飛来してくる。それは小人のような小柄な体をしていたが、妖精と呼ぶには顔が濃過ぎた。頭上を飛んでいた渡り鳥を蹴散らし、そのまま私の小舟の上に墜落する。大きく揺れる小舟、海に投げ出されないように、必死に船体にしがみ付いた。真っ赤なでかっ鼻に道化の化粧を施した人のような何か、人と断言する事が出来なかったのは、小人には胴体がなかった。手首と足首、それと顔があるだけだ。

 そんな珍獣めいた不思議生物に驚くのも束の間、コイツが落ちた衝撃で船に穴が開いてしまったのに気付いた。

 

「くそぉ~、麦わらめぇ~~……」

「ああああああああああ、穴! 穴ァーッ!!」

「あぁん? うっせえ……どわーっ!!」

 

 だから私は咄嗟に元凶の顔面を掴んで、船底の穴に押し付けたのだ。

 

「がぽぽっ! がぱッ、クラァッ! 貴様、何を……がぱぱっ!!」

「穴! 穴、穴ァーッ!!」

「がはっ! おい、落ち着け! 穴がなん……ぐわーっ!」

「わーッ! ワァーッ!!?」

「がぼぼぼぼ…………っ!」

 

 しかし必死に抵抗をしてくるので、私も必死になって小人の顔を穴に押し込んだ。

 我も忘れる程、焦るには理由がある。何を隠そう私は悪魔の実の能力者なのだ。小舟が沈没してしまっては、万にひとつも生き残れない。私にはやるべき事がある、他人を犠牲にしてでも生きなきゃいけない理由があった。こんな事で死んでいられないのだ。

 兎にも角にも穴を塞ぐことに必死だった。

 

 気を落ち着ける事が出来たのは、道化の小人がピクリとも動かなくなった時だ。つい思わず、勢い余って人(?)一人を殺してしまった私は、さあっと血の気を引くのを感じた。

 

「あああああああ!? 殺しちゃったああああ!?!?」

 

 我に返った私は顔を穴に突っ込んだままピクリとも動かなくなった小人を、思いっきり引き抜いた。

 

「……げふっ、ごほっ……おまえ、よくも……」

 

 当然、船底の穴から海水が噴き出した。

 

「あああ穴ッ! あなァーッ!!」

「がぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!!」

 

 ので、再び小人の顔を穴に突っ込んだ。

 そしてピクリとも動かなくなってからまた引き抜くのだ。こんなことを何回も繰り返した結果、顔を上にした状態で船底の穴に突っ込まれた道化の小人は「い、いっそ殺せ……」と呟くまでに至ってしまった。とても悪い事をしてしまった気がする。だけど、仕方ないのだ。私だって、こんな事をしたくてした訳じゃない。小舟に穴が開いたのだって、コイツのせいである。だから私の気が動転してしまっても仕方ないのだ。

 兎に角、船を修理する必要がある。

 地図を開いて、近くに町か村か、最悪でも島がないか探し始める。

 

 生き別れた弟分と家出した妹分を探しに海に出たばかりだというのに幸先が悪いったらありゃしない。

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