名探偵ミツルギ   作:高見一樹

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続けてみました。
もう少し構想が固まれば、通常連載に切り替えるかもしれません。
今回はコナンサイドになります。


FILE.2 事件発生(中)

 江戸川コナンは、シャーロキアンである。

 これは、彼の事をよく知る人物であれば誰もが知る事実である。

 

 そんな彼がこの米花町にできたホテル・バンドー・ベイカでシャーロック・ホームズ展の開催が決まった際、それに行きたがったのは必然といえた。

 

 そのコナンがこのホテルを訪れ、シャーロック・ホームズ展の会場に向かう途上、出会った人物。

 その片方の人物の事を少し思い出していた。

 

(それにしても、さっきの人……)

 

 あの時代錯誤ともいえる貴族のようなド派手な、ヒラヒラの恰好の男。

 名前は聞いた事がある。

 御剣怜侍――検事局の誇る天才検事だ。

 

 特に、ここ1年でも優木検事や日下部検事などといった現職検察官の逮捕などが相次いでいる今、検事局にとっても希望の星ともいえる存在。

 

 といっても、何かの事件の捜査といった風でもない。

 傍らの刑事との様子などからしても、ただのプライベートだろう。

 

(まあ、今はいっか)

 

 とにかく今は、シャーロック・ホームズ展だ。

 この会場には、ホームズ関連の小道具が所せましと並んでいる。

 いずれも、シャーロキアン垂涎ものばかりだ。

 

 無論、自他ともに認めるシャーロキアンのコナンにとって、シャーロック・ホームズ展は聖域ともいえるところだ。

 いるだけでも無論、楽しいがやはり同行者が不在というのは少しばかりもの寂しさを覚えてしまう。

 

(つってもおっちゃんはあのザマだし……)

 

 名目上の保護者となっている毛利小五郎。

 だが、このホテルに来るなり酒を飲み始めてダウンしてしまった。

 もっとも、推理小説の類には微塵も興味を持たず、いつぞやのシャーロックホームズ・フリーク歓迎ツアーではコナン・ドイルの好きな作品を聞かれたというのに『そして誰もいらなくなった』などと答えて大恥をかいたこともある。

 

 そんな小五郎だけにホームズの事に特に興味などないだろうし、このホテルに送ってくれただけでも感謝すべきかもしれない。

 そんな風にコナンが考えていた時だった。

 

(……ん?)

 

 ホームズ展の会場の中を厳つい顔をした警備員が、男性の身体を抱えながら歩いているのが見えた。

 

「ねえ、その人どうしたの?」

 

 その様子を見て何か妙な気がして、コナンはその警備員に話しかけた。

 

「あん? 何だよ」

 

 どうやら、柄の悪い警備員のようであり、いきなりすごまれる。

 だが、気にする事なくコナンは追求した。

 

「その人、様子が変だよ」

 

「はあ? この人はなあ、昼寝してんだよ」

 

「いや、でも何かおかしいよ」

 

 ただ寝ているにしては、違和感のある様子に、コナンはさらに食い下がる。

 

「ちっ。しゃーねえなあ」

 

 苛立った様子ながらも、コナンの言葉を聞き入れた様子で、男の身体を休息用に用意されてあるらしいソファの上に寝かせるようにのせる。

 

「……見せて!」

 

「あ、おいコラ!」

 

 その男の身体にコナンは近づく。

 

(この人、やっぱり……)

 

 既に息をしていない。

 もう亡くなっているようだ。

 

「おい、何やってんだよ」

 

 注意してくる警備員に、コナンは告げた。

 

「この人、死んでるよ」

 

「はあ、何言ってんだ。悪ふざけもほどほどに……」

 

 そう言いかけた警備員だが、ぐったりした様子の死体を見て表情を変える。

 

「い、いや。まさか……」

 

 そして、男の脈を改めて確認する。

 

「う、嘘だろ……」

 

 亡くなっているというのが真実らしいという事に気づいたらしく、急にオロオロとしだした。

 

「警備員さん」

 

「あ、えっと、こういう時はどうすりゃいいんだよ……」

 

 先ほどの横柄な態度から一変し、焦ったような様子を見せる警備員。

 

「ちょっと、何があったの!?」

 

 そんな中、異常を察したのか、客の一人がかけよってくる。

 

「あ、いや。その」

 

「その人はどうしたの?」

 

 やがて、一人だった客が二人、三人と増えていく。

 そんな複数人集まった客のうち、一人が死体となった男に目を向ける。

 

「おい、その人はどうしたんだよ」

 

「それは、その……死んでるみたいで」

 

「はあ!?」

 

 その言葉に、訊ねた男性客は驚く。

 

「え、嘘……」

 

 女性客の一人が確かめようと思ったのか、死体に近づこうとする。

 

「あ、待てよ。死体に勝手に触ったら……」

 

「死体!? やっぱり死んでるの?」

 

 止めようとした警備員の言葉だが、それが良くなかったようだ。

 

 

「きゃー!! だ、誰か……っ!」

 

 

 不意に、その女性客が大声で叫ぶ。

 悲鳴に近い絶叫だ。

 

「大変だ、人が……」

 

「し、死んでるのか?」

 

「だ、誰か警察呼んで!」

 

 ざわざわと、他の客たちも騒ぎ出した。

 たちまち、シャーロック・ホームズ展の会場は混乱状態に陥ってしまう。

 一応、死体のあるソファに近づくような真似はしないが、それでも相当にまずい状態だ。

 

(ああ、クッソ! こういう時に限っておっちゃんは寝てるし)

 

 実際問題として、こういう事態で名探偵『毛利小五郎』の名は大きい。

 こういう状況でも、ある程度の立場ある大人が一喝する事で騒ぎを納める事ができる。だが、残念ながらその『立場ある大人』である小五郎はバーで酒をかっ食らったままだ。

 

「えっと。アンタら落ち着いてくれよな。そ、そのうち責任者がくるから」

 

「いったい何を落ち着けっていうの!」

 

「そもそも、救急車呼んだの?」

 

「いや、死んでるなら警察だろ」

 

「ま、待ってくれ。そんな風に急に言われても」

 

 そんな風に先ほどの警備員に客たちが詰め寄る。

 頼りにならない様子の警備員に、不満を募らせた客たちがさらに騒ぎだし、それが大きくなろうとした時。

 

 

「ちょっと待ったッス! こちらは検事に刑事ッス! アンタら、殺人事件とは本当ッスか!?」

 

 

 先ほどの刑事が、入ってくるのが見えた。

 

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