名探偵ミツルギ   作:高見一樹

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少なくとも最初の事件に関しては、ある程度完成の目途がつきましたので通常連載に切り替えました。
今後も応援してくださいましたら、幸いです。

なお補足説明としまして、作中の時代は逆転裁判3や逆転検事2の作中時間である2019年相当とさせてください。
基本的に法律・技術等も(序審法廷制度などは含まれますが)そちらに準ずるものとさせていただきます。


FILE.4 捜査開始(前)

「まず、荒井木警備員。話を聞かせてもらいたい」

 

 御剣はそう言って、荒井木に視線をうつす。

 

「11時から、12時30分の間に被害者がいた休憩室に入ったのは、そこの二人で間違いないのか?」

 

「ああ」

 

 荒井木が頷くのを見て、御剣が続ける。

 

「キミはどうだ」

 

「俺がどうかしたのか?」

 

「キミは被害者のいる休憩室の中に入ったのか?」

 

「何だよ、俺を疑ってんのか!」

 

 苛立った様子で言い返す荒井木を御剣は諫める。

 

「気を悪くしないで欲しい。形式的なものだ」

 

 ちっ、と小さく舌打ちしつつ荒井木は話した。

 

「何度か中をのぞいてる。けどよ、寝てるってわかってすぐに出てるよ。どれもせいぜいが数十秒、いや十数秒ってとこだぜ」

 

 その時間では犯行は難しい。

 そう言いたいのだろう。

 

「わかった。それでは、平井さん次は貴方に話を聞きたいのだが」

 

「わかりました、はい」

 

 続いて主催者の平井に視線を向ける。

 

「あなたが被害者のいる部屋に入ったのはいつの事だろうか?」

 

「11時半を、少し過ぎたころだろうと思います。はい」

 

「それはまた、何の用で?」

 

「午後の1時からの挨拶についてです、はい」

 

 その話は先ほどもしていたのを思い出しつつ、御剣は先を促す。

 

「急用だったのですか?」

 

「いえいえ、挨拶の内容に関してのちょっとした打ち合わせでした、はい。ですが気持ちよさそうに寝ていらしたので。起きたのでしたら、すぐにでもと思ったのですが、気持ちよさそうに寝ていたままでしたので、はい」

 

「被害者はその時、寝ていた。間違いありませんか?」

 

 大事なところだ。

 念を押すように、御剣は訊ねる。

 

「それはもう、はい。近づいてみましたが、寝息も聞こえてきましたので、はい」

 

(……ふむ)

 

 すると、その時点では被害者は間違いなく生きていた事になる。

 無論、彼が真実を言っているならばという話になるが。

 

「では続いて、伊国さん。話を聞かせてもらってもよろしいか?」

 

「はぁい」

 

 ほんのりとした口調のまま、伊国が答える。

 

「まずは、被害者との関係について聞きたい。被害者とは親しかったのだろうか?」

 

「いいえぇ」

 

「それではなぜ被害者と会っていたのだ」

 

「あのぉ、わたし、これでもシャーロキアンなんですよぉ。だから、こんな素敵なものを主催してくれたという方に会ってみたいと思いましてぇ」

 

「ふむ。だが、ここの主催は平井氏で、メグンダル氏は支援した立場だと聞いている。なぜ、平井氏ではなく被害者に?」

 

「そうなんですかぁ?」

 

 御剣の指摘にのんびりとした口調のまま、伊国は返す。

 

「わたしはぁ、責任者の方がこちらにいるってきいてぇ、挨拶しておこうと思っただけですぅ」

 

 そのどこかほんのりとした表情からは、それは嘘か本当かは読み取れない。

 

「それで、被害者はどのような様子だった?」

 

「んっ、特に何も」

 

「何も、とは?」

 

「中は暗かったですしぃ寝ている様子でしたから、起こしたら悪いと思ってそのまましばらくは近くで起きるのを待ってましたぁ」

 

「寝息などは?」

 

「あのぉ、えっとぉ、覚えていません。わたしぃ、初対面の相手からそんなの確かめるようなはしたない女じゃないですしぃ」

 

 仮に平井氏が犯人として。

 すでに殺害していたのならば、当然、寝息などは聞こえてこないはずだ。

 

「それでは荒井木警備員。再び質問をさせてもらうが、キミが何度か部屋を覗いたというのはどのタイミングでの事なのだろうか。大事なことだ。正確に答えてもらいたい」

 

 再び視線を荒井木翔に戻して、御剣は訊ねる。

 

「最初に見たのが、平井さんが入る前。二回目がその平井さんが出た後。そんで三回目が、そっちの女が出た後だよ」

 

「合計三回、か。それでその三回目の時に被害者を運び出そうとしたのか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 荒井木が頷く。

 

「疑うんなら、カメラで確認してみろよ」

 

「カメラ?」

 

「あちらについている監視カメラです、はい」

 

 そういって、平井が荒井木に代わって発言した。

 

「休憩室の入り口の映像は、監視カメラがありましたのでわかります、はい」

 

「休憩室の中は?」

 

「いえ、そちらはプライベートな空間ですので、ありません、はい」

 

「そうですか……」

 

 さすがにそう都合よくはないか。

 だが、少なくとも今の3人の証言のウラは取れる。

 

 そうなれば入った時間や、退室までの時間に関しては少なくとも嘘か真実かはわかる。

 

「では荒井木警備員。もう一ついいか?」

 

「なんだよ?」

 

「何か物音のようなものはなかったのかね? キミはすぐ近くにいたのだろう」

 

 彼が犯人でないのであれば、休憩室のすぐ近くで警備していたという荒井木が何か聞いていたとしてもおかしくはない。

 

「ああ、そりゃ無理だ」

 

「ム? どうしてだろうか」

 

「ここは、仮眠をとったりする事も想定しての作りになっているらしいからな。外の音が聞こえてこないよう、防音がしっかりしてんだよ」

 

「そうなっております、はい」

 

 平井が補足するように言う。

 

「では、物音だけでなく、室内からの話声なども?」

 

「まず聞こえないかと、はい」

 

「……そうですか」

 

 つまり音から犯行時間の特定も難しい。

 

(……ふむ)

 

 これまでの情報を整理して御剣は考える。

 

 まず、最初に荒井木翔が部屋の中を確認。

 続いて、平井泰六が部屋に入ったが寝ているのを確認して退室。

 そして、荒井木が再び部屋の中を確認。

 今度は伊国めぐるが部屋の中に入る。彼女は本当に寝ていたかどうかの確認はとれず。そのまま退室。

 最後に、荒井木が入り、被害者を抱えて部屋を出て――コナン少年に話しかけられ、事件が露呈した。

 

 これが一連の流れになる。

 

 確かに被害者の生存を確認しているのは、最初に入った平井泰六のみ。

 もっとも彼が犯人だった場合、これも嘘だという事になり、後から入った二人はすでに被害者が亡くなっているとしらないまま入ってきたことになる。

 

 伊国めぐるが犯人の場合、その後に入って殺害。

 そして、その後に入った荒井木が被害者は昼寝をしたままだと思って入ってくる。

 知らずに運び出したことになる。

 

 荒井木が犯人だとしたら、殺せるタイミングは三回あった。

 最初に休憩室に入った時は平井泰六がその後に生存を確認しているのでないとして、二回目か三回目。

 ならば可能性が高いのは三回目か。その場合、そのまま素知らぬ顔で死体を抱えて出てきて慌てた振りをした事になる。

 

 いずれにせよ、それぞれの証言の信憑性については確認をする必要があるが監視カメラがある以上、部屋に入った入らないの問題や時間に関しては嘘をついている事はないだろう。

 

(とりあえず、おおまかな事態は把握できたか)

 

 三人の証言を整理した時、糸鋸に話しかけられる。

 

「御剣検事。応援が到着したみたいッス」

 

「そうか」

 

 一応、事件のおおまかな流れは理解できた。

 これ以上は、具体的な捜査がはじまってからだ。

 そう考え、この部屋に近づいてくる足音の方に視線を動かした。

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