名探偵ミツルギ   作:高見一樹

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クロスオーバーという都合上、どうしても人数は多くなる上、事件関係者としてのオリキャラも出す必要がありますので、ある程度、話ごとの登場人数はしぼっていきます。


FILE.5 捜査開始(中)

「それで、御剣検事がやってきた際には既に被害者の方は亡くなられていたと」

 

「はい。差し出がましいとは思いましたが、とりあえず現場にいた人間には立ち去らないように指示を出しておきました」

 

「そうですか……。それで、疑わしいとされるのがあちらの?」

 

「ええ。あちらにいる3人という事になります」

 

 通報を受けて駆けつけてきたのは、捜査一課の目暮十三警部らの班だった。

 御剣からの説明を受け、納得した様子で頷いている。

 

「ねえ高木刑事」

 

 そんな中、コナンは最も親しい刑事ともいえる高木渉巡査部長に話しかける。

 

「なんだい?」

 

「目暮警部ってあの検事さんと知り合いだったの?」

 

「ん? ああ、御剣検事はここ最近、国外の方が中心みたいだけど、デビューしてから2年くらい前までは日本で活動していたからね。事件捜査の関係で何度もあっているはずだよ」

 

「2年くらい前って、確か狩魔検事や厳徒局長の事件があった時の事だよね?」

 

「そうそう、詳しいね」

 

 高木にとっては、もはやコナンには慣れきってしまっている為に小学1年生から出るには不自然すぎる言葉にも何の違和感を持つ事もなく話を続ける。

 

「当時は、色々と大変だったみたいだね。捜一の先輩達から聞いてるよ」

 

 40年間の無敗伝説を誇る天才検事・狩魔豪や、多くの難事件の指揮を執り、解決に導いた厳徒局長の事件は警察や検事局のみならず世間を大きく騒がせた。

 彼らと深い関係にあり、事件でも大きく関わっていた御剣は暫くの間、国内で検事として活動することはなくなった。

 

 彼がこの国に帰国してきたのはここ最近の話だ

 

 御剣検事についての話はいったん、これまでとしていつもの情報漏洩(刑事の仕事)を頼む事にした。

 

「それで、被害者の人はやっぱり撲殺?」

 

「そうだね。死因は、やっぱり撲殺。出血はしているけど量は少ないみたい」

 

 撲殺といっても、程度によって出血量は大きく異なる。

 何せ頭は急所だ。

 大した血を流していなくても脳内出血等で亡くなる事もある。

 

「返り血を浴びるほどでははないって事?」

 

「うん。そうみたいだね」

 

 高木は頷いて話を続ける。

 

「それで、何か凶器になるものは持ってないか身体検査をしたんだけど」

 

「何かおかしいものでもあったの?」

 

「えっと、まずは平井泰六さん。特に不審なものは持っていないね。彼はこのシャーロック・ホームズ展の間はこのホテルに部屋を取っているみたいだけど、犯行があったと思われるメグンダルさんが休憩室に言っている間に、その部屋に戻った様子もなし。さらにいうなら、責任者として多くの人を相手に話しているから、何かを処分したりするような余裕もなかったと思うよ」

 

「そういえば、被害者のメグンダルさんもこのホテルに泊まっているの?」

 

「そうみたいだね。日本での滞在時は、ずっとこのホテルに宿泊する予定だったみたいだね。その部屋も後で調べる予定だよ」

 

 そう言ってから話を戻す。

 

「続いて伊国めぐるさん。彼女も不審な持ち物はなし。財布や化粧品にノートパソコン、それ以外にパスポートくらいかな」

 

「パスポート?」

 

「うん。海外旅行が好きな人らしくてね。被害者のメグンダルさんのいたイギリスだけでなく、アメリカとかに出国した記録があったよ。二週間前までは西鳳民国にいたみたいだし」

 

「そうなんだ」

 

「でも、特殊なものといったらそれくらいで、凶器に使えそうなものの類なんかもなし。それで最後に荒井木さんなんだけど」

 

「何か持っていたの?」

 

 少し意味深な間を置く高木にコナンが訊ねる。

 

「凶器――かはわからないけど、凶器に使えそうな持っていたんだ」

 

「荒井木さんが?」

 

「うん。殺されたメグンダルさんの頭の痕からして、凶器になってもおかしくないと思われるサイズのものなんだ」

 

 でも、と続ける。

 

「血がついた後はなかったし、一応、拭き取ったりしてないかも調べてもらってはいるんだけど、もし彼が犯人だとしてもいまだにそんなものを持ち歩いているっていうのもおかしな話だし」

 

「それが凶器の可能性は少ないってこと?」

 

「そうなるね」

 

「それで、その凶器かもしれないものって何だったの?」

 

「置物だよ」

 

「置物? 何でそんなものを?」

 

 高木の答えにコナンは怪訝そうに返す。

 

「何でも、今日のホームズ展で使う予定だったものらしいよ。何でも、この後に予定されていたっていうメグンダルさんの講演でも使う予定だったみたいだし」

 

「その置物を? もしかして、何か大事なものだったの?」

 

「いや、詳しい事はまだ聞いてないけど、1時からのメグンダルさんがやる予定だったっていう講演での説明用に用意してもらっていたものらしいね」

 

「その置物ってどんなのなの?」

 

「和服姿の男の人の置物だったよ」

 

「ふーん……。それで、他には?」

 

「いや、特に不審なものはなしだよ」

 

 とりあえず、凶器と思しきものを持っている者はいない。

 もっとも、よほどの間抜けでもない限りそんなものをいまだに持ち続けているわけがないし、それは当然といえば当然。

 これ以上は、捜査が進んでくれないとわからない事かもしれない。

 

 

 

 

 

 休憩室室内。

 一通りの事情説明を終えた後、犯行現場と思しきその場所に、御剣と糸鋸は入っていた。

 

「うわ、ホントに中は暗いッス」

 

 今は昼間だというのにまったく、光が当たらないため真っ暗だ。

 

「これじゃあ、確かに被害者が寝てるたのか亡くなっていたのかの区別もつかないッスね」

 

「そうだな」

 

 御剣は頷く。

 室内の様子は朧気にしか見えない。

 

「イトノコギリ刑事。とりあえず、明かりを」

 

「わかったッス!」

 

 明かりがつき、室内の様子がわかるようになる。

 休憩室というだけあって、ベッドがいくつか。それに机や椅子がいくつかというシンプルなつくりだ。

 そのうちの一つのシーツが乱れている。

 

「被害者が眠っていたというのはここか」

 

「そうみたいッスね」

 

 御剣が確かめると、かすかに温もりを感じる。

 

「ここで眠っている間にガツン! となったッスかね」

 

「あるいは、起きて話しているところをやられたのかもしれんな。 ……ム、何だこれは」

 

 ベッドの上に投げ出されるように、置物が一つある。

 

「どうやら、置物みたいッスね」

 

 少女の姿をした置物だ。

 少女の服装は、どこか古めかしく異国風――それこそ、100年ほど前の大英帝国のイメージにピッタリのものだ。

 

「今日の出し物で使うか何かだったッスかね」

 

「確かに、シャーロック・ホームズ展と呼ぶくらいだ。外見からして、その何かかもしれんな。だが、重要なのはそこではない。 ……イトノコギリ刑事」

 

 指紋がつかないように、その置物を掴みながら、御剣は命じる。

 

「何スか?」

 

「これの指紋と血液の検査を」

 

「あ! 確かに、コレは凶器に近い代物ッス!」

 

 糸鋸が慌てて、その置物を指紋がつかないように掴む。

 部屋にいた警察官に命じると、その警察官が駆けていく。

 それを見て、二人は捜査に戻った。

 

「あ、アレを見るッスよ、御剣検事!」

 

「……ム」

 

 糸鋸が机の上を指さす。

 その指さした先には、ついさきほど回収した置物と似たような置物がある。

 

「こちらは、英国人風の中年の男性のものだな」

 

 似たような服装をしているものの、明らかに外見が違う。

 

「もしかしたら、ワトソンを模しているものなのかもしれないな」

 

「ワトソンって、いわゆるあのシャーロック・ホームズの相方のアレッスか」

 

「そうだ。そのアレだ」

 

 おそらく、世界一有名な探偵の相方といっていいだろう。

 その一般的なイメージにそっくりの置物だった。

 

「ワトソンといえば、御剣検事にとっての、自分みたいなものッスね!」

 

「……………………うム」

 

「何で間があったッスか?」

 

 確かに、糸鋸の事は信頼しているが、それはそれとして、即答しかねる問いではあった。

 

「一応、こちらも調査しておいてくれ」

 

 糸鋸の問いを無視しつつ指紋がつかないよう気をつけながら、そちらも近くにいた警察官に渡した。

 

「さて、他のものも見てみるか」

 

「了解ッス!」

 

 改めて周囲を見渡す。

 

 置物が置かれていた机の上に他に何かないかと見てみると、そこには緑茶の注がれた湯呑が置いてある。

 当然ながら、すでに中身は冷めている。

 そしてその近くには、小皿が置かれてあった。

 

「湯呑は二人ぶん、か」

 

「やっぱり、誰かを招き入れていたんスかね」

 

「その可能性は高いな」

 

 続いて、小皿の方に注目する。

 

「ここには、茶請けに何か置いてあったのか?」

 

「んー、そうかもしれないッスね。く、想像するとお腹が減って来たッス……」

 

 そういえば、元はこのホテルには昼食を摂りに来た事を思い出す。

 

「……まあ、その何だ。事件が早く片付けばどこかで食事をして帰るとしよう」

 

「ホントッスか! 頑張るッスよ!」

 

 途端にやる気を出す糸鋸をよそに、小皿を詳しく見てみる。

 

「御剣検事、自分にも見せて欲しいッス!」

 

 糸鋸がその小皿を見てから、呟くように言う。

 

「うーん、何も乗っていないッスね。あ、もしかして、お皿だけ出してお茶菓子の気分を味わっていたかもしれないッス!」

 

「キミではあるまいし、そのような事はあるまい」

 

 皿だけ出すなど、ただの嫌がらせのような事をする必要はない。

 自然に考えるのならば、すでに食べてしまって残っていないのか。

 

「……ム、これは」

 

「どうしたッスか?」

 

「これを見たまえ」

 

 御剣は、机の下から破れた包装紙と箱を取り出す。

 

「これは、トノサマンジュウだ。二個ほど空きスペースがある。おそらく、これを出していたのだろう」

 

「じゃあ、マンジュウを出してもてなしていたって事ッスか?」

 

「そういう事になる。そしてだ。そこを見てみたまえ、刑事」

 

 御剣がそういって、指さした先。

 皿のすぐ下だ。そこに白い塊が見える。

 

「あ、トノサマンジュウッス! ここに落ちてたッスか」

 

「そうだ。さらにだ、よくコレを見たまえ」

 

「んー、どうしたッスか?」

 

 先ほどのトノサマンジュウの包装紙を、糸鋸へと突きつける。

 

「えーと、『トノサマンジュウ 仮面ヤイバーコラボver.』と書かれているッスね」

 

「そうだ。これは以前に、同じ特撮番組である仮面ヤイバーとコラボした際にわずかに売り出された限定品だ」

 

「そッスか。それで、もしかして味が違ったりするんスか?」

 

「……フ。やはり、シロウトだなキミは。味など変わらなくとも、あのトノサマン。そのコラボ限定品とくればプレミア感が来るだろう。ネットで買うとすれば、通常のトノサマンジュウの最低5倍の価値があるのだぞ」

 

「は、はあ。そうッスか」

 

 熱を入れて話す御剣に糸鋸は少しばかり引き気味だった。

 一見、趣味など持たない男に見える御剣だが、トノサマン関連となるとつい饒舌となってしまう。

 

「まあ、いずれにせよ、これはメグンダル氏が犯人を『客』として招いていたと考えるべきだろう」

 

「じゃあ、被害者が眠っているところじゃなくて起きていてトノサマンジュウを出してもてなしたところで殴り殺されたって事ッスか?」

 

「その可能性が高いな。ただ、殴られた痕は、被害者の後頭部にあった。おそらく、後ろを向いていたところをやられたのだろう」

 

「じゃあ、隙を見てやったのなら、おジイさんの平井さんや女のヒトの伊国さんにも十分犯行は可能ッスね」

 

「そうだな」

 

 もう暫く現場を見てから、御剣が言った。

 

「ここで手にした情報も踏まえ、関係者からもう少し話を聞いてみる事にしよう」

 

 

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