親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第二十四話になります!実槻は当初前世は中年で死んでた設定でしたが、数話書いた後老人の方がそれっぽいなと考え設定を変更し、台詞や描写、地の文などを修正していたりしています。鑑定士としてのキャリアも五十年から七十年に延びたりしていますのでご注意ください。


役割を知る者

ペレと正式に契約をし、多少の話し合いの後終わった定例会議。その後約束通りベルベットと実槻は命蓮寺の修練場を訪れ組み手を行っていた。

 

「はぁ!!」

「っと」

ベルベットの拳は近接戦闘を得意とするだけあり、スキルなどを使用しなくても余裕で其処らの人間を吹き飛ばす力を持っている。当然本来後衛の実槻が喰らえば大ダメージ間違い無しなので実槻は基本的に今のように受け流しや回避で対処する。

 

「本当後衛なのに防御だけは一丁前ね!」

「そいつはどうも。前世で自衛手段に身に着けた技術を今世で問題児の相手をしてて磨いたことはあるだろ?」

 

「え、その問題児って私のことです?」

昔本格的過ぎて剣道部を退部させられて以来鍛錬の相手として時折襲ってくる今回審判役の景虎のことを無視して、ベルベットの一方的な攻勢が続く。

 

前世は鑑定士だった実槻だが、歴史の長い鑑定士の家系であったが故に様々な美術品などを筆頭とした市場、古物商のネットワークなどに顔が広く、良く警察などからそれらを悪用した犯罪や裏市場などの捜査に協力を依頼されていたりしていたが…当然そんなことをしていれば裏社会の反感を買うこともある。警察の繋がりや長く地元に根を張っている地盤やネームバリューである程度抑制はされていたが、それでも直接害を加える馬鹿は出て来る。

 

警察も常に護衛を付ける訳にも行かないので、必然的に『自分自身が強くなる』という答えにたどり着くのだ。

幸い友人になった者に刑事が居たため習うことは容易だったのも一因であり、実槻の近接戦闘技能は警察が主に使う逮捕術、剣道などがベースになっている。もっとも逮捕術は総合格闘技と同様に元になる武術が多い為実槻が扱うのは指導してくれた友人と同様に空手と柔道が大本だったりする。

 

「まぁ剣道は一般的にはスポーツだし、逮捕術も殺傷ではなく制圧が目的だから対人は兎も角対悪魔だと微妙なんだけどな。実際殺傷する技術を覚えたのは今世でだし」

 

しゃべりながらもベルベットの拳と時折繰り出される蹴りを両手で受け流したり、回避で躱していく。

ここまで彼が彼女の攻撃を防御出来ているのは、行っているのがスキルを使わない組手ということもあるが、彼の最大の武器である観察眼と集中力を高い状態で長時間維持できる精神的タフさによる所が大きい。

 

「いつも絶妙な場面で両手が受け流されるか、紙一重で回避されるんだけど…漫画とかでよく見る呼吸や筋肉の収縮とかで動きを読んでるってことかしら?」

「それにプラスお前の今までの攻撃動作を元に予測を立ててる感じだな。反射神経じゃどうあがいても勝てんし」

 

実槻の受け流しや回避は複数の要素から導き出された予測によって行われる。相手の攻撃動作に対応する動作を察知され、逆に対応されないように常にギリギリのタイミングで行う必要があるが、攻撃が撃ち込まれる身体の部位を予想し、当たるときには既に実槻の手を先に置いていたり、既に身体を動かし躱していたりしているのだ。

 

「とは言ってもここまで正確に予測できるのは対人くらいなものだけどな。悪魔は一見人間と変わらない奴らも構造は別ものだし、魔法とかも使って来る。それに物理攻撃スキルでも範囲攻撃とか回避は兎も角受け流すのが無理ゲーなものも多い上スピードの速い奴だと認識が間に合わなかったり、認識して予測出来ても身体が付いていかないこともある。それも時間を掛けていいならそれなりに対処できるだろうけど…」

 

「それまでに死んでる確率が高い上、そんな手間を掛けるくらいならデバフやジオ系ぶっぱした方が安全で確実でしょ貴方の場合は」

「そういうことだっとそろそろ一時間経つか。まだ続けるか?」

 

「貴方相手だといつも長期戦になるわね、はぁもう良いわ。これ以上やっても他の奴らと同じ結果になりそうだし」

 

当然他の命蓮寺メンバーと組手をすることもある実槻だが、聖以外とは大体やっていて結果は凡そ"攻撃一辺倒な相手のスタミナ切れor集中力が乱れるタイミングで一気に関節技を仕掛ける粘り勝ち"だったりする。偶に関節技が完全に決まる前に踏ん張って耐えるときもあったが、元々それほど力を使わずに激痛を与える技を使っているので、持久戦なら望むところ。相手が我慢できなくなるまで付き合えばいいのだ。

 

「でも後衛に近接戦闘、特に一番得意な格闘術で実質負けとか物凄く悔しいのだけど!」

「いや、これ組手だから勝てただけでスキルやら何やらがある実戦だと多分俺は普通に負けるぞ?なぁ景虎?」

 

「ぶっちゃけ実槻を近接戦闘で倒すなら肉体反応より早く攻撃するか、認識外からの奇襲すればいいだけですからねぇ」

「こっちも魔法やスキルを使うからある程度抵抗の幅は増えるけど基本不利だよな」

 

特に認識外の奇襲をされると実槻も状況を認識するまでまともに動けないので最大限警戒している攻撃の一つだ。

 

「認識している人物からの奇襲はいいの?」

「認識してれば奇襲の予兆が見て取れるから予測して先手撃てば良いだけだし、むしろカモ」

 

「実際長い付き合いの私も戦うなら認識外からの奇襲一択ですから」

「お前もお前で予測を直感で回避して来るじゃないか。女の勘もそうだが事前の予兆とかない事柄になると観察眼とかほぼ意味なくなるから勘弁してくれ」

 

なお女の勘と戦闘中の直感による予測の回避の場合マシなのは後者で、身体の動きで予測が外れたことが事前に分かるなど観察眼が完全に無意味にはならないからだ。前者の場合は実槻曰く「糞ほどの役にも立たない」らしいが。

 

「で、少しは話しやすくなったかベルベット?」

 

「・・・まぁね」

「はて、なんのことでしょうか?」

恥ずかし気に頷くベルベット、景虎は首を傾げるが彼女にも関係がある事柄だ。

 

「あーえっとうん…私達と初めて顔合わせしたときに私が言ったこと覚えている?」

「流石にまだ半年と少ししか経っていませんから覚えていますが…え?貴女まだあのこと気にしているんですか!?」

「『貴方達を見極めさせて貰うわ』(キリ」

 

「がはぁ!?」

 

実槻が決め顔で放った一言にベルベットが思わず身体を仰け反らせる。その言葉は嘗て彼女自身が実槻達に言ったことだった。

 

「実槻それを言うのやめなさい!他人に言われると滅茶苦茶恥ずかしいのよ!」

「いやーでも見極めるとか言われて何を見られるのかと思えば一週間後くらいにはプライベートで景虎と雑談してたじゃん、他の幹部と一緒に」

 

「私もすっかり忘れていましたね、というかベルベットも忘れていたのでは?」

景虎の言ったことは当たっている。いつの間にか仲良くなっていてベルベットも自身が見極める側だというのを忘れていたのだが、天香山命が実槻達と命蓮寺を認め新潟県中に触れ回ったときに「あ、私も見極める側だった」と思い出してしまった。

 

ベルベットとて最初から認めないつもりだった訳では無い。もしちゃんと信頼を置けると判断したら「仕方ないわね、認めて上げるわ」とか言うつもりだったのが、思い出したときは仕事外でも普通に話したり、実槻達がガイア連合から取り寄せたゲーム機などで遊んでいたり、肝心の仕事も様々な支援を貰っている状態という色々手遅れでここ数日どうしようと挙動不審になっていたのだ。

 

「この状況でどの面下げて『認めて上げるわ』なんて上から目線で言えるのよ!」

「そんなこと気にしないでいいのに…真面目だなぁ」

 

「恰好は不良みたいですけど根が真面目ですよね。この寺全体にも言えることですけど」

 

この短期間で二人が命蓮寺とここまで融和出来ているのは、彼女らが真面目で二人の功績や人柄を素直に認めたことと景虎の異常性を環境も相まってあまり気にしなかったのでコミュ力のある実槻がこれ幸いと色々誘導したことなどが合わさった結果である。逆に自分が一番という考えの黒札だった場合は上手くいかなかった可能性が高いが、前世で骨董屋として地元や業界と深い繋がりを持ち、爺まで生きた実槻が他人との関わり合いの大切さを知らないはずがないので命蓮寺としては幸運なことだろう。

 

「はぁ、もうここ数日悩んでたのがバカみたいよ」

「挙動不審だったからなお前。そりゃ気づくよ…これですっきりしたか?」

 

「・・・まぁ少しイラッとは来たけどつっかえは取れたわ」

「そりゃ何より」

 

「・・・」

 

その後修練場に新たに備え付けれらたシャワールームで汗を流すとベルベットと別れた。こうして実槻は彼女の悩みの種を文字通り種の内に摘み取ったのだが…。

 

「でもこれ本来は聖の役割ですよね?今回に限ったことじゃないですけど」

「まぁ本来というか将来的にはそうだな」

 

命蓮寺の廊下で周囲に誰を居ないことを確認した景虎が切り出した。今回に限らず実槻は命蓮寺メンバーに気を配り悩みや不満があるとそれを極力解消するように動いている。しかし、これは本来トップに立つ聖の仕事だ。

 

「だが聖にはこういった経験が足りていない…正確には外部との繫がりで出来た悩みや不満を解決する手段を知らないんだ。それにこの手のことは傍から見て分からないことも多いから。そして分かりやすい外部とのトラブルにどうしても目を向けてしまうから余計分からなくなる」

 

「かと言ってトラブルを放置する訳も行きませんからね」

勿論身内同士でのことは解決して来ただろうが、今まで外部との交流をほぼ絶っていた命蓮寺では外部と関わることで溜まる悩みや不満を効率よく解消する術を持たない。その上最近外部からの依頼が急増している関係でそれが加速して来ているのだ。更に身内に迷惑を掛けないようにと隠されてしまえば分かりやすいトラブルに目を奪われて気が付けない。

 

「そしていつか臨界点を迎えて爆発する…ここの連中なら反乱とかは考えないだろうが碌でもない結果になるだろうな。一番の解決策は聖にその手の教育を施すことなんだが」

 

「私から見てもめちゃくちゃ忙しそうですからね、これ以上負担掛けたら潰れそうなのは分かります」

「ああ、あいつはここの柱だ。潰させる訳にはいかない、だから将来的に負担軽減、対応幅の拡大、処理の効率化を図るために命蓮寺の地力を上げるよりも組織化を優先したんだ。あとは外部との関りで生まれる不安や不満を出来るだけ少なくさせる目的もあるけど」

 

「県外の依頼とかは全部私達が担当してますからね。不安や不満も問題ですけど頻繁に構成員や幹部が県外に行ってるのに組織化やら改革とか出来る訳無いですよね」

表向きレベル上げと仲魔集め、依頼処理の効率を考えて県内は命蓮寺、県外は実槻達新潟支部で分けていたが二人が話している通り、組織化を進めるという裏の意図もあった。お陰で急増する依頼を処理しながらたった一ヵ月で組織化&改革を終えるという普通の霊能組織では考えられないことも行えたのだ。

 

外部との関りで生まれる不安や不満を出来るだけ減らすことについては物凄い力技だが、どの道県外の依頼を実槻達で裁くのはいずれ限界が来るのであくまで一時的な処置だ。

 

「まぁ何人かは裏の意図にも気づいているだろうが、命蓮寺にプラスになることだから黙っていてくれているからありがたい」

 

「正直に話したらこっちに気を使って今までやってたことが出来なくなりますもんね。特に悩みや不満の解決とか実槻以上の適任は今いませんし」

「聖も身内同士でのことは解決出来てたから適正自体はあるが、外部と身内は勝手が違うからな。余裕が出来て来たら俺が色々教えてやらんといかん。こういうのは前世で無駄に長生きした奴の仕事だ」

 

「・・・地味で分かりにくい仕事を率先してやりますよね昔から」

「必要なことだからな。それに鑑定士は元来地味な職種だぞ?一部テレビで目立ってる奴等もいて叩かれたりもするがアレはアレで業界を活気づかせる為には必要な人材だ。腕が伴っているなら叩くのは筋違いというもの…要は役割の違いだ。俺は地味にやる方が合ってるだけなんだよ表も裏でもな…付き合わせて悪いな」

 

「いえいえ、私も黒雪も実槻がしたいことならどこまででも付き合いますよ。いつもは私達に付き合ってくれてますしね」

どんな地味なことでも必要なことなら苦も無く積み上げていける。彼の観察眼や鑑定眼の技量や集中力の高さも元はこの才能から起因することなのかも知れないと景虎を笑いながら思うのだった。

 

 

 

「まぁでも黒雪からは割と派手なことになったこともあると伺っていますよ?大規模芸術品密輸組織の摘発とか」

「いや、何か地味なことだと思ってやってたら偶にそれがクリティカルヒットしたり、積み上げ過ぎて気が付いたら規模がでっかくなって大事になったことがあるだけだし…そこそこな頻度で」

「そう言うなら目を逸らさないで下さい☆というかそこそこな頻度の時点でアウトだと思いますよ?」

因みに前世の刑事の友人からは割とやらかす奴扱いされていたらしい。




読了ありがとうございます!実槻は普段は大人しく、気遣いも出来ますが、気が付いたら本人も意図せずにやらかす人間です。
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