親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第二十七話になります!イタコの里編も今回が最後です。後書きに詳しく書きますがバッパラ様にはすっかり世話になっちゃったな!


死者と生者

イタコの里の御昼過ぎ、鑑定ニキこと実槻が金庫の解錠完了の報告を受け大屋敷に関係者が集まることとなった。

 

「あ、長老もいらっしゃったんですね」

「まぁ挨拶自体は昨日の歓迎の宴でしたのじゃがな。あの金庫妙に気になるんじゃよ」

「長老はイタコの生き字引だからな。昔見たことがあるのかも知れないな」

「元の持ち主も気になるけど問題は中身ね。実槻の連絡的に緊急性は無さそうだけど」

四人が話をしているとイタコネキと共に実槻が部屋の戸を開けて現れる。

 

「全員揃ったかって長老までいるのか・・・」

 

「・・・」

「む、何か不都合があるのか?個人的には命子が珍しく大人しくして黙っているのが、堪らなく不気味なのじゃが?」

長老も来ていることに実槻は気まずそうな様子を見せ、イタコネキも不自然に口を噤んでいるので余計不気味に映る。

 

「不都合というか何というか・・・本当に金庫のことは知らないのか?」

 

「ふむ、やはりわしに関係ある何かか?金庫自体には見覚えがあったのじゃが・・・」

「忘れて居るのか?・・・まぁ取り合えずこれが中身だ」

 

「本、ですか?」

風呂敷に包んで持ってきていた金庫の中身、それは一冊の本だった。

 

 

「ん?」

 

「どうした長老?」

「あ、いやなんでもないのじゃ・・・なぜあやつの顔が?」

本を見た瞬間長老の脳裏に一瞬古い友人の姿が思い浮かんだが、そのことに首を捻っている間も実槻の説明は続く。

 

「中身を確認したんだが、その・・・とあるイタコの個人的なことを書き綴ったものだったんだ。本というより手帳に近い」

 

「ほう・・・なんぞわしへの愚痴でも書いてあったのか?昔のことじゃ今更気にせんよ」

チラっと長老を見る実槻に気づくと苦笑しながらも気にする必要はないと寛容さを見せる長老。

 

「愚痴とかじゃないんだがな」

 

「なら問題ないのでは?良ければ見せていただけませんか?」

「見せるのは良いけど使われている文字が古すぎて、イタコの修行をしているイタコネキでも読めんかったから多分俺以外でここだと長老、長老衆くらいしか分からんぞ?」

 

「あー確か金庫自体が明治後期くらいに作られたんだっけか?それと同じくらいだとしたら普通の現代人じゃ読めない可能性もあるか」

自身で読むことは諦めるが、中身は気になるのでどうしたものかと考える霊視ニキ。すると結標がとある提案をする。

 

「普通に読める実槻か長老が筆写するか朗読すればいいでしょ?流石に多数に見せるのは持ち主に酷でしょう」

「まぁそれが一番手っ取り早いか。鑑定ニキはもう中身見たんだろ?筆写は面倒だから朗読でいいぞ」

「え゛」

 

霊視ニキと結標の提案に「マジか」という顔をする実槻。再び長老の方を見ると彼女も頷いて朗読を促す。

 

「はぁ・・・分かったよ。ただこの中身は文字も古ければ文章の内容自体も古いから現代文に直訳するだけじゃ意味わからんだろうし、こっちが勝手に意訳させてもらうぞ?分かりやすさ重視だから普通に横文字というか外来語も入れるからそのつもりで」

 

実槻の言葉に各自が頷く。この中で長老が不安要素だがTVなどで現代文化の勉強もしている為案外それらの言葉にも付いて行けるのだ。各自の了解を得たと判断した実槻はごほんと咳ばらいをすると手帳を開き、朗読を始めた。

 

「やっぱ私の伴侶には霊能力が私より高くて強くて背も高い、ある程度の収入もあるのが最低条件!理想はそれらも兼ね備えた上でイケメンで、包容力もあって私のわがままを二つ返事で聞いてくれる人がいい!!歳は・・・うーん、若者は勿論のことそれなりに年を取った壮年の男性も捨てがたい!若者の場合はやっぱり情熱的で私を好きなのを周囲に隠そうとしない子か?「お前は俺が守る!」とか「俺の女に手を出すな!」とか言われてみたい!!壮年の方は逆に年相応の落ち着きがあってダンディな大人の男性だといい!あ、でも私がピンチの時にだけ感情を表に出して起ってくれるというのも熱くて最高!!!」

 

「「「「・・・」」」」

 

 

内容を知る実槻とイタコネキ以外が絶句し、場の空気が凍り付くが実槻はページを捲り朗読を続ける。

 

「いや、私は曲りなりにもこの恐山を管理しイタコを統べる長老!別に伴侶が二人いてもいいのではないか?先程言った二人を侍らせて・・・私を取り合う独占力を見せてくれるのもギュッと来て滾る!デュフフフ!!」

 

「「「「・・・」」」」

 

絶句した者達の視線が表情そのままで長老に集まるが、彼女の方は完全に目が死んでいるのでそれどころではないのだろう。

 

「他にも持ち主の性癖や出会いのシチュエーション、何か凄い甘いポエムなどが多数・・・もう一度言うけどこれを全部朗読しろと?よりによって持ち主(・・・)の目の前で?」

 

突然だが記憶操作というものをご存知だろうか?使用者が対象者の記憶を一部書き換えたり、忘れさせたりなど使えると割と便利なものだがふとしたきっかけや操作した記憶に関係した衝撃度が高いことが起こったりすると案外簡単に解けてしまうのだ。これを完璧に無くそうとするとメシア教過激派がやるような洗脳の方が、容易で確実というレベルにまで難易度が激増する・・・まぁつまる所

 

「あああああああああああーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」

本人自身が掛けた術であろうとこれ系統のものは、関係する衝撃的なこと一つでこのように容易に破れてしまうものなのだ。

 

 

 

「燃やせ!燃やしてくれ!!!!!それかわしを今ここで殺せ!!!!」

「お、落ち着いてください長老!!」

「ギャハハハ!!!」

発狂している長老を巴が諫めようとするが、全く効果が無い。イタコネキは最初から笑うのを我慢していたようだが、長老の発狂を見て我慢が出来なくなったのか腹を抑えて畳の上を笑い転げている。

 

「どうすんだこれ・・・?」

「・・・いっそ燃やしてやったら?」

霊視ニキと結標はまだ衝撃から復帰出来ていないが、比較的長老に同情的である。割と場が混沌としている中喚いている長老に近づく実槻。

 

「そんなにこの手帳を燃やしたいか?全て無くしてしまいたいか?」

 

「当たり前じゃ!!これこそまさしくわしの人生の黒歴史!紙片も残さず処分して「本当に?」・・・え」

「本当にいいのか?これには本当にあんたの黒歴史しかなかったのか?」

 

 

「何を言って・・・またか!」

再び古き友人の顔が浮かび、長老は頭を抑えながらなぜこの手帳とその友人が繋がるのかを思い出そうとする。

 

「(・・・あ)」

そうして思い出した。嘗て己が黒歴史を封じることになった経緯も含めて。

 

『相変わらず、絶妙な強さ弱さね!』

 

『それじゃぁ、残りは頼んだわよ!!』

 

『ん、何か落ちたわよ?何かしらこの本・・・というか手帳?』

 

『くく・・・あはははははーーー!何よこれ!結婚出来ないこと拗らせるにも程があるわよ!これじゃますます嫁の貰い手が無いわね!』

 

『余計なお世話?はいはい悪かったって・・・はぁ久々に腹の底から笑えたわ。うん、やっぱあんたがここに残って頭張ってくれてて良かったわね!』

 

「(ああ、そうかわしは、(・・)は彼女に笑われたのが恥ずかしくてあんな手の込んだ真似までして隠して、忘れようとしたのか)」

『ありがとうね!美羽(・・)

もう呼ぶ者が居なくなった自身の本名を呼ぶ古き友人の最後に見せた顔を思い出す。彼女と最後に出会った時、彼女の娘と孫を預けに来た際、いつも見せていた彼女の笑顔はなかった。いや、笑ってはいたが心から、腹の底から笑った顔を見せなかった・・・と長老と呼ばれた元少女は思っていた。

 

「忘れて居っただけだったのか・・・あいつが私に向けた・・・下手をすれば人生で最後の・・・腹の底から笑った顔を」

嫌な予感はあった。だが心のどこかであいつなら大丈夫と思っていた。また娘や孫を引き取りに来た時に同じ顔を見れると根拠も無く思っていたのだと今なら分かる。

 

「長老・・・?」

「恥ずかしさが一周回って落ち着いた?」

「・・・まぁその様なものじゃ」

長老の独り言に巴と笑いが治まったイタコネキが首を傾げる。その言葉で我に返り実槻をジト目で見る。

 

「お主どこまで視えて居った?」

「それほどではないさ。俺の【霊視】そのものの力は平均(黒札基準)よりは高いが、霊視ニキ程じゃないしな・・・ただ貴女と楽しそうに騒いでいる女性は視えたぜ?」

 

「左様か・・・礼は言って置こう」

 

「礼は要らんよ。これが俺の仕事だからな・・・それでこの手帳はどうする?」

 

「・・・」

長老の答えは既に決まっていた。

 

 

 

それから数時間経ち、予想よりも色が付いた報酬と色々お土産も貰った実槻と結標は霊視ニキ達に見送られながらイタコの里を後にした。と言っても即【トラポート】は里の結界で阻害されるので結界外に出るまで歩きになるのだが。

 

「黒歴史が死者との思い出か・・・やっぱこういうことも前世であったの?」

「あったか無かったかで言ったらあったけど凄い低確率だぞ?ある人は亡くなった父親の鍵の付いたタンスを持ち込んで、解錠して見たら父親が書いてた少女漫画を発見して少女漫画ファンだと言うことが判明したりと亡くなっているから好感度が下がるとまでは行かなかったけど最低限ドン引きはするのが殆どだ」

 

「うわぁ、やっぱり隠し事って無理に暴いても良いことないわね」

「それでも暴かないといけない人達もいるけどな。警察官とか」

 

警察官と口に出すと刑事だった前世の友人がふと思い起こされる。一時は彼と共に色々な事件に首を突っ込んだものだと実槻は懐かしむ・・・もっともほぼ同年代であったその友人は三十代後半頃に実槻が仕事で海外に行っている間に"殉職"しているので彼の人生の中では黒雪に次いで若くして死別しているのだが。

 

「全く俺に連絡せずに一人でやりやがって・・・それでも人質救って犯人はとっ捕まえてからくたばる辺り死ぬまで糞真面目だったな。ありゃ死んでも変らんだろ」

 

「実槻?」

実槻の独り言に結標が首を傾げる。彼はセツニキ程では無いが長く前世を行き、セツニキ以上に人と縁を持った。

 

その為彼は多くの者達を見送って来た。年上、同い年、年下は勿論、良い奴もいた。悪い奴もいた。どっち付かずな奴、基本良い奴だが悪い部分もある奴、基本悪い奴だが完全に善性を捨てきれない奴。本当に沢山の人間を見送ってきたのだ・・・自身も見送られる側になるまで幾人もの死に顔や別れを経験し、葬式にも行き慣れた。

 

「ん、別に何でもないさ・・・ただ」

 

それでも彼は・・・

 

【同時刻山梨支部】

 

「今日の依頼はこれか」

 

ある男が今日も本社で悪魔討伐の依頼を受けている。腰には彼の刀型専用武器式神を下げていて立ち居振る舞いからも強者だと分かる。

 

「うぃーっす、今日も悪魔討伐の依頼受けてるの?相変わらずだね」

 

「棍棒ニキか、悪いか?」

 

「うんや、全然!無理しない範囲なら自由にしていいんじゃない?ただ偶には息抜きも必要なんじゃと思っただけ」

 

『お前糞真面目なんだから偶には息抜きも必要だぞ?ちょっと来い!』

 

「!・・・息抜きか」

 

前世と違い今世では家庭を持った為かあまり思い起こさなかった顔を思い出す。一見善人のように見えて割とやらかしていた前世の友人である。

 

「(転生当初は混乱と周囲に適応しようとして必死だったし、妻と息子の一件があった後しばらくは只管悪魔を狩っていたから思い出すことも無かったな。思い起こせるようになったのはガイア連合に所属して落ち着いて来たからか?・・・いや)」

 

男はガイア連合に所属していた当初、悪魔への憎しみに染まり切っていた自分を思い出す。そんなことだから当然周囲から浮いていたし、今から思い返すと我ながら良く他の黒札や神社の式神、仲魔達に襲い掛からなかったなと思う。

 

「(今までは前世今世共に就いた刑事のプライドからだと思っていたが・・・)」

 

彼が所属した当初は他の黒札の仲魔と式神は彼を見ると逃げ出す者がほとんどだった。彼も最初はそのことに疑問を持ちつつも流そうとしていた。しかしその時脳裏にある声が響いた。

 

『おいおい、犯罪者が憎いのは分かるがまだこいつは数ある容疑者の一人って段階だろ?お前の顔怖いんだから睨んでやるなよ。怯えてるぞ?』

 

その声でハッとし自分が無意識に憎しみの籠った目で睨んでいたのが原因だと気づけたのだ。

 

「(あの時は気が付けなかったが、あれは確か前世であいつに言われた・・・その言葉を思い出してからか、俺が周囲と話す様になったのは)」

 

自身が無意識に前世の友人に助けられていたことを悟り、なぜ今まで自分がその友人を思い起こせなかったのかを自問自答する。忘れて居た訳では断じてない、それは言い切れる。だが答えが出せず悩むが・・・

 

「・・・!・・・ニキ!」

 

「っ!!すまん、考え事をしていた」

 

「あ、戻って来た。突然黙るからびっくりしたぜ・・・息抜きに飯にでも行こうぜって話聞いてたか?」

 

「済まない聞いて居なかった。飯か、分かった」

 

「お、いいの!?そんじゃちょっとお高い「ただ依頼を受けているからそれを済ませて戻って来てからだ。なにそう時間は掛からん」って依頼が先かい!その糞真面目さも相変わらずだな!」

 

「ああ、どうやらこればかりは死んでも変らなかったらしい」

 

彼は苦笑しながら依頼を果たす為に本社を後にしようとする。しかしその前に棍棒ニキに再び声を掛けられる。

 

「そう言えば何について考えてたんだ?壬生狼(・・・)ニキにしては珍しい」

 

「珍しいとは何だ珍しいとは。俺だって考え事くらいするしその名では無く本名の藤田と呼べと言っているだろ」

「えーでもそっちは呼んでるじゃん?で、何考えてたの?」

 

「それは俺なりの譲歩だ・・・別に何でもない、ただ」

結局前世の友人を思い起こせなかった理由は思い付けなかった。仕方がない、今度ゆっくり考えようと頭を仕事モードに変えながら棍棒ニキからの質問にその友人にも似ていると言われたことのあるとあるキャラに自分でもそっくりになったと思わざる負えない程、更に似てしまった今世の顔で小さな笑みを作りながら答える。

 

「「(前世)の馬鹿な友人を思い出しただけだ」」

 

それでも彼は・・・いや彼らは前世での人生を後悔せず、今世で生き方を曲げることもしないのだろう。

 

運命は時に残酷で、大切なものを奪うこともあるのと同時に己が道を見失わない者に何も与えない程無慈悲でも無いのだ。




読了ありがとうございます!いやー実槻の前世でるろうに剣心の斎藤一似のキャラを出したらまさかバッパラ様の所で転生者で出てたとは・・・出した後に知りました。まぁ本霊被りに比べれば些細な問題だったので、いっそのこと前世の刑事の友人が壬生狼ニキだったことにして話を練り直しました!棍棒ニキも追加でお借りしましたし、バッパラ様には感謝しまくりですわ!ありがとうございます!え、ジャヒーと魔人ネキの姿が被ってるって?・・・いずれ合体するからええねん!

壬生狼ニキ
他人の子によりによって今世ではなく、前世の設定生やしたのもしかして俺がカオ転三次史上初めてなんじゃないか?と作者は思っている(常識が無いとも言う)。因みに意味深に書いた実槻の前世を思い起こさなかった理由はいずれ彼と邂逅したときに書くつもりだが、ぶっちゃけ彼が分かっていないのは家族の死後思い起こさなかった話で、それ以前の話は彼自身の考えが当たって居たりする。なお理由が判明して実槻にそれを言ってしまった場合とある理由で河川敷の殴り合いが発生する模様。あと子供の性別は言及が無かったので息子にしました。

イタコネキ改めカス子ネキ
実槻が去ったあとカス子ネキと言われ出したり、本社で修行に行ったりして帰ってきたら長老や先輩達だけではなく長老衆や年配のイタコも若返っていたんだろうなと勝手に作者は妄想している。

多分彼女が共通の知り合いとして意図せず二人を引き合わせそう。実槻は本社勤めじゃないのに加え、壬生狼ニキも修行場異界に潜ったり、悪魔討伐の依頼などを頻繁に受けている気がするので誰かが意図的にせよそうじゃ無いにせよ、引き合わせないとすれ違いし続ける気がする。掲示板とかも壬生狼ニキは情報収集以外だとあんまり使わなさそうだし。

長老
長生き繫がりでネタにしたのと本名が言及されていなかったので、本家で出たAAの元ネタからお借りしました。感想で黒歴史とか書かれていたのを見て内心ほくそ笑んでました!
彼女が例の手帳をどうしたかは本編で言及しませんでしたが、これ以降長老が度を越えてやらかそうとすると巴さんの指示で長老衆の誰かがイタコの里中に意訳した手帳の内容を放送したりする刑が出来たそうです。
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