【星霊神社に出掛けた前日】
「ん、ここは・・・そうかあの魔導書の中か?それにしてもあの魔導書呪物だと見抜いた時点で呪物として活性化するタイプだったか。咄嗟に封印しようとしたが間に合わなかったし・・・普通のアイテムの中に混じってたから対応が遅れちまったな」
鑑定前に呪物だと事前に分かっていれば余裕で封印が間に合ったはずだ・・・封印の術式構築のスピードをもっと上げられるようにならないといかんな。とはいえちひろネキには報告が必要だろう。今回はガイア連合と俺のみの間だけの話しだが、将来的に他の黒札がガイア連合経由で俺に依頼して来る可能性もあるだろう。
「まぁまずはこの空間からの脱出しないとな。呪物の鑑定じゃなかったから巻き込まれたのが俺だけで良かった・・・のかはこれから分かるか」
普段呪物を鑑定する時は景虎達の誰かが傍に居る場合が多い、そんな大人数で鑑定する訳では無くそこそこの頻度で呪物に悪魔が宿っている場合があり、それを実体化させて倒す為だ。アイテムに悪魔が宿った時代のGP次第で今のGPではあまり出ない高レベルの悪魔が出てきたりするので、レベル上げに丁度いいのだ。あまりレベルが高すぎると流石に弱体化されてしまうが、それはそれで美味しいので問題なし!
特に立場的にあまり遠征できない聖は良く参加している。【獣の眼光】からの自バフや物理攻撃は普通に黒札にも通用するだろう。尼さんだからか回復と破魔も使える・・・衝撃も使えるが絵づらがどう見ても拳の衝撃波を飛ばしているようにしか見えないけどな!
「そういえばifに似たようなのあったな。青銅の箱だったか?あれは遭遇した悪魔限定だったか・・・さて、この魔導書に悪魔が宿ってるのは見て取れた。早く姿を見せてくれると有難いんだが?」
そう言いながら周囲を見渡すと目の前に上から目線でものを言いそうな長髪の女性が現れる。
「へぇ、そこまで見抜いているのなら話は速いわね。私はアドミニストレータ・・・悪魔としてはブラックマリアとも言うけど」
「フランスを中心に信仰されている黒い聖母・・・由来は地母神を始めとした他の神話の女神達と一般的な聖母とは異なる側面を持ってるという。想定以上に大物だな」
「思ったより博識のようね。取り込む前から思っていたけどレベルもこの時代にしては高いし、霊質も最上級。久々に当たりを引けたかしら」
こちらを値踏みするような視線を向けるブラックマリアことアドミニストレータ。やはり俺は何らかの条件に適合していたようだ。
「それで俺に何か用か?魔導書に取り込んだからには相応の理由があるんだろ?」
「ええ、貴方は幾つかの基準を満たしたことでこの魔導書に・・・正確に言えばそれに封じられている力に選ばれたのよ」
「口ぶりからあんたがその力って訳じゃなさそうだな・・・というか本当にお前は悪魔なのか?さっきから【アナライズ】で視ているが、レベルやスキル、ステータスが"無い"なんて初めて視たが」
しかし名称は【地母神 ブラックマリア】だし、【霊眼】で視ると霊格も相当な・・・いや、これは
「まさかお前・・・
「あら、この魔導書の偽装を"視た"だけで見抜いたこともそうだけど本当に良い眼を持っているのね。そうね、私はそういう目的で作られた訳ではないわ」
俺を発言に少し驚いたような顔をし感心したかのようなことを言うアドミニストレータ。作られたということはやはりこいつは・・・。
「やっぱり良いわね貴方。今までの者達とは違うということかしら?いずれにしても期待が持てそうね」
「お前さんが期待する程のものがあればいいがね」
「それは大丈夫よ。無ければそもそも魔導書自体が起動しないでしょうし」
含んだものがあるような微笑みを浮かべ俺を見るその目には俺を面白がる感情が見えると同時に何かを試しているかのような雰囲気が見て取れる。さて、何をされるのか・・・
「貴方"メシア教"をどう思ってるのかしら?」
「・・・そう来たか」
メシア教、ガイア連合の大半が嫌っている集団だ。俺もこの世界がメガテン世界だと知ってたときは警戒しまくってたな。
「そうだな。今でも警戒しているのは変わらんが・・・聞いて居るのはそういうことではないんだろう?」
「話が早いわね。そう、私が効きたいのはメシア教という宗教そのものについてよ」
「ふむ、端的に言えば…"どうとも思っていない"が正直なところだ」
確かにメシア教には過激な信者や傍迷惑な天使共も数多い。しかし、どの宗教だろうと過激な信者や信奉者なんて大概ヤバいし、そんな奴らに協力している悪魔も同様なことが言えるだろう。
「こう言ってはあれだが、今はメシア教が宗教界で天下を取っているから一番やばいってだけで多かれ少なかれどの宗教が天下を取ってもその手のやばい奴は現れるもんだ。だから"今は"メシア教を一番警戒しているが、メシア教という教義や宗派自体に特に好感も嫌悪もない…第一宗教っての天下を取って云々するように出来ちゃいねぇよ。だからそういう方面に走るとやがてどこかしらで歪みを持ってしまう」
まぁ中にはそういうのを狙って教えを広めた神様もいるんだろうが、正直最初期の信者と其処ら辺上手く話し合えず調整出来なかったんじゃねーかと個人的には思っている。
「人間にとって宗教とは人の心を癒すものであり、支えるものであり、立ち上がる切っ掛けを与えるもの…人々の生活に根ずく影や縁の下の力持ちが本来の役割だ。あからさまに教義に悪意のある邪教でもない限り尊重されるべきだと思うし、戒律や教義自体が時代に比べ古くなったら新たに改定する動きが大なり小なり起こり時代に合うように変わるようにも出来ている・・・それらが機能しなくなるのは大概後世の人間が馬鹿やるからだ」
はぁと溜息を付くとアドミニストレータが俺に近づき更に俺の内心を図ろうとする。
「つまり貴方はメシア教と他の宗教を本質的には同列に視ているのね…貴方の同胞達と違って」
同胞…ね。別に俺は無条件で黒札=同胞と思っている訳じゃないが、本題とは違うし別に訂正させる必要もないか。
「そもそも宗教の信者の大半が普通に教義を守っている一般人だ…それはメシア教も例外ではない。幾ら裏でやばいことをやっている連中がいるからと言ってそいつらを排斥していい理由にはすげ替わらないだろ?」
宗教は生活に根差している。家族と聖書を読み、教えを学び、食前の祈りを捧げ、時には同門で集まり真面目に話し合うこともあれば生活や仕事での失敗談や成功談で笑ったり、共感を得たりもする…信者達にとってはそれはそこに合って当たり前の"日常"なのだ。
「でも裏を知っている者達なら棄教させようとするのが普通じゃないかしら?排斥は個人差があるにしても」
「確かに黒札の中にはメシア教信者を棄教させようとする奴らがそこそこいる。別にそれ自体が悪いとは思わん。棄教も宗教に取って選択肢の一つだし、過激なことしてあからさまに教義を曲解している狂信者なんて信者でも何でもないというのもその通りだと思う。お前が言うように裏側がヤバいからメシア教と距離を置いて欲しいと相手を思って棄教を勧める優しい奴もいる」
「だが」と言うと一度口を閉じ掲示板でこの手の話題になると見かける馬鹿共のレスを思い出す。
「棄教とは生活に根差す宗教を捨てさせるもの。それは今までの生活、人生を捨てさせることに等しい…勿論その方が幸せになる奴もいる…いるがな!」
心底嫌悪するように声を荒げる。
「それでもその大半の一般人にとっては愛する日常に必要不可欠なものなんだよ!…だから表だろうが裏だろうが真面目に、真っ当に信仰している人間にそれらの生活を、日常を踏みにじる覚悟も無く、相手を思いやってもいないクズが棄教だなんだとほざくのを俺は許さない。例えそれがお前の言う同胞…黒札であろうともな!」
『教えそのものが変わる訳ではない。それを解釈する人間が変わるだけだ』そう言っていた前世で友人だった神父を思い出す。その友人だけでは無く、前世で友誼を結んだ宗教に関わる者達の尊厳に掛けて例えメシア教徒に向けたものであったとしても"棄教"などという言葉を軽く扱うクズ共を俺は許す訳には行かないのだ。
「・・・そういう訳で俺はメシア教はそれ自体と外道な部分もある裏を別個に考えていてな。だからメシア教そのものには嫌悪もしないが好意もない…"どうとも思っていない"ってことになるわけだ。悪いなメシア教どころか俺の宗教観の話まで縺れちまった」
「謝る必要は無いわ…外道に容赦はしないが、メシア教に警戒はしててもそれ自体には偏見は無い。想像以上に有望そうね」
「有望?」
俺が首を傾げると彼女が俺の手を握り微笑み言葉を紡ぐ。
「貴方、"ダークネス・メシア"になるつもりは無い?」
「いや、LawかChaosかはっきりしろや!」
Neutralの俺が言えた義理じゃないけどな!というか誰だその名称考えた奴!!
読了ありがとうございます!そういう感じで実槻のメシア教というか宗教観のお話でした。今回AAは少なめでしたが自分のイメージに合うのがアドミニストレータしかなかったので…まさかAAが一枚しかないとは思わなかったなぁ。それはそうと最近カオ転三次の新作が次々出ているので自分も盛り立てて行きたいですね!