親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第三十二話になります!キバ戦は今回で終わりです。いやー長く書いてしまった!もうちょっとで元の時間軸に戻れるぜ!


真の剣と偽りの身体

「我は…俺はーーー!!!」

叫び声を上げて立ち上がりこちらに突貫してくるキバに実槻達も受け止める構えを取る。

 

「まだ立ち上がって来る根性は認めてやるよ。行くぞナーガラジャ」

 

「無論だとも。本来なら盟友には下がって貰うのがよいのだが…」

「お前じゃあいつの剣を捌き切れない、とはいえ俺も一人だけじゃ攻撃まで手が回らないからな。二人で行くぞ!」

 

「あの二人に嫉妬されてしまいそうだが、緊急時故仕方ないと思って頂こう!」

再びキバと刃を合わせる実槻達だが、実槻が攻撃を捌きナーガラジャが剣撃や魔法で攻撃する戦法を取ることでじりじりとキバを追い詰めて行った。

 

「うおおおお!!!」

「おっとさせるかよ!そんでもってナーガラジャ!」

 

「分かっているとも!【火炎プロレマ】【アギラオ】!!」

「ぐうう!!・・・こうなれば仕方あるまい!」

 

「まぁまだ手はあるよな!」

 

強烈な火炎に数歩たじろぐキバ。物理だけでは無く火炎にも耐性はあるがこのままではジリ貧は確実…よって彼は出来るだけしたくなかった手を使わざる負えなくなる。そしてその予兆を【霊眼】でのMAGを動きから見抜き範囲外からの回避姿勢を取る実槻。

 

「新たな肉体に使うと不都合が多いがもうなりふり構っては居られん!【ソウルドレイン】!」

「【ソウルドレイン】!?クルルの【エナジードレイン】の上位互換スキルか!」

 

エナジードレインの上位スキルであり、HPMPだけでは無く魂すらも吸い尽くす強力なドレイン能力を持つ【ソウルドレイン】。そうでなくても一定以上喰らえばLvの低下を引き起こすなど厄介極まるスキルを仕掛ける。

 

「いや、このMAGの流れ…賭けて見るか!【マカジャマ】!!」

 

「っ!?待て盟友!【ソウルドレイン】を潰すには遅い!!」

実槻は回避すると見ていたナーガラジャが慌てて俺の盾になる為に駆け寄るが、間に合わない。キバも実槻の判断ミスと思われる行動に内心笑みを浮かべていた…のだが

 

「「・・・ん?」」

 

確かに【ソウルドレイン】は発動した…が、その魔法は実槻に何の影響も与えなかった。

 

「ば、馬鹿な!?なぜ【ソウルドレイン】が効果を発揮しない!?明らかに【マカジャマ】が掛けられるより発動は速かったはずだ!!」

 

「ふぅ、やはりそういうことか」

 

「盟友…これは」

狼狽するキバ。【ソウルドレイン】は使用すれば新たに手に入れる肉体に不都合やLv減少が起きる可能性が出てしまうので出し渋っていた切り札だった。しかし発動を潰されたのなら兎も角真正面から受けても何の影響も受けていないのだ。ドレイン系は耐性が存在しない万能属性であることからナーガラジャも実槻を見ながら困惑している。

 

「MAGの流れだ」

 

「MAGの流れ?」

「ああ、通常スキルを発動すると体内のMAGの循環が早くなったり、手から魔法を放つとかならその手を起点にMAGが収束されたりとMAGの流れの変化があるんだ。それと同じようにさっきあいつが【ソウルドレイン】を発動したときあいつのMAGの流れも変わったんだが…流れたMAGは鎧そのものに吸収されていたんだ。そして収束の起点も鎧だった」

 

「鎧にMAGが?…なるほど!あの【ソウルドレイン】は暗黒騎士殿自身のスキルでは無く鎧が持つスキルということか!」

ナーガラジャの言う通り先程の【ソウルドレイン】は先代の装着者自身では無く鎧の力によるもの。無論ただでさえ鎧のお陰で戦闘能力が上がっている上で固有スキルを除けばドレイン系の最上位クラスのスキルを使えるのだから破格であり、また本人のデータを参照する性質上【アナライズ】では見抜けないなどの利点も合わせれば十分切り札になりえるはずなのだ。しかし・・・

 

「俺にアイテムによる魂・精神に干渉する効果は効かないんだよ!!」

 

例外は常にある。スキルを発動する為に使われるMP、MAGは装着者のものだがスキル自体は鎧が発動させているので実槻には効果が無かったのだ。

 

「これが肉体のエネルギーだけを吸い取る下位互換スキルの【エナジードレイン】だったら普通に効いたんだろうが・・・まぁ【マカジャマ】が決まった以上魔法も物理攻撃スキルも使えんがな」

 

「な、なんだと・・・!」

 

「これで大幅な有利になったと言った所かな?」

【マカジャマ】が決まったことでこちら側有利に傾いたとナーガラジャは思っていたが、実槻の考えは違う。

 

「いや、これであいつは詰みだ。あいつに【ソウルドレイン】以外の切り札は無い」

 

「ぐ!?」

 

「ほう、なぜそう思うのかな?」

「大技自体は他にもあったんだろうさ。だが切り札みたく"それが通れば勝負がほぼ決まる"手札を持っていない、そんなのが他にあればこの長丁場の戦いでとっくに何枚か切っているはずだ。しかし幾ら理由があって切れなかったとはいえジリ貧確実の状態で漸く出して来たのが【ソウルドレイン】・・・自身の力じゃなく鎧の力だった」

 

鎧の力である【ソウルドレイン】を切り札の一つにするのはいい、実槻とて同じ立場なら切り札の一つにしていたはずだ。しかし

 

「おかしいんだよ。こいつが最初からあの鎧の正式装着者として育成されていたのなら兎も角剣術の練度からして偶然にせよ意図的にせよ俺の様に既にある程度の実戦経験と戦闘スタイルを確立したあとに魔導書と巡り合ったはずだ・・・だったら最低でも一つはあるはずなんだあいつ自身の切り札が」

 

「鎧を得てから鍛えた可能性もあるのではないか?」

「…魔導書には資格者が触れない限りそれと分からない偽装が施されていた。アドミニストレータも幾つかの基準があると言っていたし、あいつも暗黒騎士に成れた以上その基準を満たしたことになる。ではその基準は何か」

 

こちらを睨むキバを視線をものともせず彼の全てを見通すように実槻は言葉を紡ぐ。

 

「今までは何らかの形でメシア教に関わっていた奴等が選ばれたようだが、今回俺が選ばれた以上信仰などはあまり関係が無い、恐らくダークネス・メシア云々の話的に現状のメシア教に不満や反感を持つ者ってくらいだろう。あとはあいつと俺の共通点として一定以上の剣の腕とそれを実戦で使えるある程度鍛えている肉体…そして最低限度覚醒している程度の霊能の才があること。恐らく基準は"それだけ"だ」

 

「それだけ?…条件が大分緩いのではないか?」

「あの女が俺をレベルや霊質を見て久々の当たりと言っていた。それはつまり各時代の暗黒騎士達の能力にかなりのバラつきがあることを示している・・・そして久々と称している以上俺はここしばらくの暗黒騎士達よりも優れた能力であると受け取れる」

 

「・・・なるほど。つまりその推測通りなら先代であるあの男がLv50などという高レベルに到達できるはずが無いと言うことだね?」

「ああ、あそこまでレベルが上がっているのは鎧の力の方が装着者よりも遥かに強い鎧に喰われ取り込まれた結果だろう。種族が魔人となっていたのも頷ける…恐らく【物理ギガプロレマ】【モータルジハート】と言った単純な物理火力スキルやパッシブスキルは取り込まれてから習得したんだろうな」

 

「ち、違う!我は自らの意思で鎧と一つになっただけだ!」

 

キバが慌てて否定するが実槻には鎧を通して彼の人生を透けて見えていた…その最期まで。

 

「いいや、お前は喰われたんだよ。さっきキレてたときにベラベラ話していたことも合わせて考えるに同門であった奴らに裏切られお前の家族、仲間達を殺され、守れなかった力の無さを嘆き魔導書に手を出したが、鎧の力を制御できず次第に暴走した挙句取り込まれ最終的に誰かしらに討伐されたと言った所か…違うなら言っていいぞ?」

 

「・・・!!」

 

否定しようと言葉を発しようとするキバ、だが声が出ない。実槻の目を見て、この男相手にどれだけ取り繕った所で意味が無いことを否が応にも悟ってしまうからだ。

 

「お前の失敗はな…安易に力を求め碌に制御出来ない鎧の力に頼りっきりになったことだ!だから鎧の力が決定打にならないと俺みたいな奴とタイマンしても長期戦になるし、封じられたとたん詰むしかなくなる!強さの厚みが薄っぺらいんだお前は!!」

 

実槻が言っているのは何ら難しい話ではない。メガテンの実機で【物理反射】に対処できない物理攻撃オンリーのPTがギリメカラと遭遇したら逃走しなければ詰むのと同じで、一枚の手札を頼りにしてはそれを無効化されればどうしようも無くなると言っているだけなのだ。

 

実槻とて攻撃魔法はジオ系しか使えず貫通なども無いため【雷無効】相手にはダメージを通せないが豊富なデバフスキルと仲魔という手札があり、デバフの中には【マハシバブー】、【マカジャマ】の様な切り札の様な手札も対応されることも考え複数持っている。

 

「ま、まだだ!魔封状態でもパッシブスキルは有効だ!【物理ギガプレロマ】もある以上通常攻撃火力ではこちらが上…!悪魔は無視して何度捌かれようと一撃でも斬撃が通れば防御を崩せる!」

「ずっと捌かれてたのに何言ってんだ…それに言っただろお前はもう詰んだと」

実槻がそういうと自身の剣にMAGを収束し、【ジオダイン】を纏わせる。

 

「そ、それは!?」

 

「おお、これは美しい」

「お前がやった黒炎を剣に纏わせる技を盗ませて貰った。見た所黒炎はその鎧の影響だとしても元々アギ系を使えるのとこの剣に炎纏わせる技術は自前だろ…剣術も含めたそれらを時間を掛けてでももっと伸ばせばもう少し上に行けただろうに」

 

【霊眼】で視たMAGを剣に纏わり付く様子からそれをジオ系で行う技術を目の前で見せられ唖然とするキバと見惚れたように見るナーガラジャ。それを視て自前の技術自体は多少はあったのにそれを伸ばさなかったことを勿体ないと実槻は思うのだった。

 

「さて、この雷を纏った刃に捌く間だけとはいえお前の刃が触れれば雷属性の魔法ダメージを受けるのは想像出来るな?そしてそちらに【雷耐性】などが無いのは【アナライズ】や今までの攻防で分かっている・・・この状況下で俺に何度も捌かれつつナーガラジャの攻撃を喰らってお前のHPが尽きるか、俺の体力が尽きてお前の一撃を受けるか…どちらが早く訪れるかは言うまでもないだろう?」

 

「あ、ああ…!!」

 

「ここで終われ、暗黒騎士よ」

 

直後に再開した剣撃音は今までと違い数分と響くことは無かった。




読了ありがとうございます!やっぱ戦闘シーンは書くのにカロリー使うぜ。鎧やメシアプロジェクトについては次回触れますね。
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