親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第三十四話になります!そして明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!・・・他の作者の皆様は続々と完結させているのにその気配が一切ないですが今年中に完結・・・出来るかな?


堕天

「聖女達の集合体?」

「ああ、俺の眼にはあいつのMAGが複数種類の別人のものが混じり合っているものに視えている」

 

「裏切られたことと鎧に生きたまま喰われたことのショックで全員発狂・・・とはならなかったのよ。まぁそのお陰で鎧の制御をするように悪魔として合体されて調整されたけどまだ各自の個別意識は残っていたわ」

 

「・・・そいつはまたタフなことで」

 

裏切られたことと生きたまま喰われたショックや恐怖、悪魔として合体されたことも含めてそれぞれでも想像絶するものだったはずだ。それでもなお正気を保つとはとんだメンタルだ。因みに当初の予定は大天使を鎧に宿す予定だったが、聖女達よりも大天使を上に見ていたらしく「大天使様に窮屈な思いをさせなくて済む」と喜んで調整していたらしい・・・あまり言いたくないが鎧を聖母の子宮に見立てるなら大天使より人間の聖女達を使う方がより近しいものになったのだろう。

 

「だが今のお前がいるということは、碌でもないことがあったんだろうな」

 

「・・・この鎧、『キバの鎧』の最初の装着者は聡明で有能なテンプルナイト、『神ノ牙』と称えられるほどの青年だったそうよ。でも聖女達は狂信者共に調整されてその青年に真実は語れなかったし、彼もこの鎧がプロトタイプだとは聞かさせれていたけど、来るメシアを守護する騎士が纏うものだったり、聖女達は鎧と同化した天使達と説明されたみたいね。それ以降彼は『メシアの牙』となり鎧の完成の為メシア教に仇をなす悪魔を斬っていったわ。それが彼自身を少しずつ作り変えていることに気づかずにね」

 

『神ノ牙』『メシアの牙』原作の牙狼で聞き覚えのある単語だ。世界の根本的な設定が異なる以上原作通りの意味ではないのだろう・・・この世界に合わせて変遷した結果か、もしかするとこの世界でのキバという名は二つの牙の二つ名から取られたかも知れないな。

 

「聖女達と青年は互いに励まし合いながら戦ったわ。真実を告げられない聖女達もせめて青年を助けることで人々を守り、自らの信仰を貫こうとした・・・まぁ私から言わせれば現実逃避にしか見えないけど」

 

「先程から聞いて居て気づいていたがお前にとって元になった聖女達の記憶はもはやただの記録なのか」

 

「ええ、丁度絵本を見ている感覚に近いわね。まぁ内容は酷いものだけど・・・そして運命の日が訪れた。その青年はメシア教系列の孤児院育ちでね。家族同然に育った孤児院の子達は当然テンプルナイトとして輝かしい功績を立てていた青年に憧れて、鍛錬に励んでいたわ。だからこそ『君達も彼の様な騎士になって見ないか』という誘いに乗ってしまったのでしょうね」

 

常に笑っていたアドミニストレータだが、この部分は思う所かあるのか笑みが消える。

 

「その子達までデータを取る為に使ったのか、その青年から得たデータを反映させた後継機を使わせて」

 

「後継機というより『キバの鎧』の鎧の量産型と言った所かしら。もっともこっちが産むのはメシアじゃなくてデモノイドに近いわ」

 

「量産型・・・デモノイドとはいえ改造するには手間と費用が掛かる。だがそれらを戦いながら勝手にやってくれるならそれらを削減出来ると考えたか」

 

えぐいことをする。自分達の家族にして憧れの存在と同じになれるなんてのはまだ道理の分からない子供には特攻だろう。

 

「結果的にはそれらの試みは成功、彼の身内は彼が知らぬ間に次々と鎧によりデモノイドにされ操り人形にされていったわ。身内の変化に気が付いて逃亡したたった一人を除いてね、その子は追っ手から致命傷を負いながらも青年の元に辿り着き事の次第を伝えた後息を引き取ったわ・・・彼はどうしたと思う?」

 

「そりゃ勿論孤児院に駆けつけるわな」

 

「そう、孤児院に駆けつけたときには他の子達の改造が既に済んでいて・・・彼含め孤児院の子達の面倒を見ていたシスターと神父が計画を主導していた司祭と大天使の非道に気づき、問いただした結果殺された場面だったわ」

 

「よりによって殺されるところまで見たのか」

 

兄妹のように育った身内を操り人形にされた挙句親代わりだった二人を殺された。普通に考えて平静を保てないだろうな。

 

「そこで普段は温厚だった青年も当然と言えば当然だけど怒り狂い司祭と大天使に戦いを挑んだわ。でも彼らもそうなった場合の対抗策は用意していたの」

 

「鎧に何か仕込んだのか?」

 

「ある意味ではね。装着者の身体を神の子に産み直すのが鎧の目的なのだけど丁度中途の存在だった青年は人を辞め始め悪魔である天使に近い存在になると事前に分かっていたのよ・・・つまり天使の適応されるシステムの影響を受けることを意味するわ」

 

「ふむ、天使の階級制度の利用か。主のシステムを悪用するとは余のように堕天しないのが不思議なくらいだよ」

天使は基本上位の階級にある天使の命令には逆らえない。同じ天使の括りでもメシア教以外の天使だった場合やガイア連合のシキガミと同化するなりしていれば必ずしもその限りではないがメシア教の技術で天使に近しい存在になっている以上メシア教の天使とシステムに判断されたか。

 

「へぇ貴女元は堕天使だったのね、興味が湧いたけど今は説明が先ね。そうして青年は大天使の命令に逆らえなくなったのだけどまだ人間の部分がある分完全には効いて居ないこともあって反逆の芽を摘むために司祭は青年の心を折に掛かったわ。魔戒騎士計画や量産型の鎧のことについて語って聞かせたそうよ・・・聖女達は正体は教えても騙されていたという部分は意図的に伏せてね」

 

「・・・互いに支え合っていた彼からすれば天使達、正確には聖女達が司祭達に協力し自身を騙していた。真実を語れないように調整されていたことも合わさればそう判断してもおかしくはないか。そして自分の行いが結果的に身内の改造、親代わりの二人の殺害に繋がったと知れば・・・普通平静どころか正気すら保てないだろうな」

 

「ご推察の通り彼は発狂したけど・・・司祭達の思惑と裏腹に彼は騎士という名の戦人、狂気の中に合っても心は折れず司祭と大天使を殺すと決意していたわ。そしてその方法として鎧の時間制限超過による暴走と自身の捕食に踏み切ったのよ」

 

 

「自身は天使に近い故命令には逆らえないが、その体を鎧に喰わせると共に暴走中は鎧が主導権を握る為階級システムには縛られない。自爆前提だが上手い手を考え付いたもんだ」

 

そして何故鎧が暗黒騎士に落ちたのかも凡そ理解出来た。

 

「司祭達は慌ててデモノイド達に命じて対処させたけどまぁ鎧袖一触ね。ものの数分も掛けずに全滅させ司祭と大天使に襲い掛かり、激戦の末喰い殺すことに成功したわ・・・でも階級システムは無視できても上位の天使、聖職者の殺害や捕食によって別のシステムが発動してしまった」

 

「堕天、か」

 

「皮肉なものだ・・・騎士殿の怒りは正当なものだろうにその大天使と違って余達と同じように堕天するとは」

「お前が堕ちた理由に比べればより酷さが増すな。そして反転した結果暗黒騎士となったのか」

 

「もっともその青年自体は鎧が暗黒騎士のそれに代わる直後に魂ごと鎧に喰われていたから本当の意味で暗黒騎士キバとなったのは二代目からなのだけどね。それでただでさえ青年の発狂で精神的ダメージを受けていた聖女達が鎧も引っ張られる程の堕天の影響を受けて無事で済む訳も無いでしょう?」

 

「人格同士が混ざり合い新たな人格であるお前が生まれ、正式に悪魔になったと。マリア系の悪魔になったのは聖女の素養と鎧に引っ張られた結果か」

 

その後の顛末はそう複雑なものでは無く事態に気が付いたメシア教側が調査の結果孤児院で装着者を失った鎧を発見し、魔導書に封印。厳重に保管することとなり、魔戒騎士計画も廃案となったわけだが・・・

 

「元々廃案となったメシアプロジェクトの全記録は機密保持と隠蔽の為抹消すると決まっていたわ。しかし当時有名だった司祭と大天使が殺害されたこともあり情報を完全に処分し切れなかった結果『強力な闇の力を宿した鎧が魔導書に封印されている』という部分だけが後世まで語り継がれていったのよ。魔導書自体もその力に魅せられた二代目がメシア教から持ち去り、それ以降世界中を回って現代に置いて貴方の手に渡ったと言ったところね」

 

「はぁ世界中を回っていた呪物が回りに回って手元に来ることはよくあることとはいえ、またけったいな物が来たもんだぜ」

 

「普通の人間では一生に一度あるかどうかの確率だとは思うがね」

思わず溜息を付く俺にナーガラジャからジト目で見られるが、前世から割と良く合ったことなので来る奴には来るとしか言いようがない。

さて、経緯は聞いた・・・あとはこの鎧をどうするかだな。




読了ありがとうございます!シリアスが続くとしっくりこないことが多くなる作者ですが。まぁ次回から元の時系列に戻るのでまた馬鹿出来るぜ!
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