親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

39 / 77
第三十九話になります!天使の壮大な悪足掻きが今始まる!


天使の讃美歌

異界化の直前、舞台裏での騒動など知る由もない満員のアリーナではライブの開始を今か今かと待ちわびていた。

 

「あれ、開始時間過ぎても誰も出てこないぞ?」

「トラブルかな?」

「おいおい、折角高い席のチケット買ったのにトラブルは困るよ」

徐々にファン達が騒ぎ出す中突如コンサート内のが暗転、ステージの中央にスポットライトが集まっていく。そこには一体の天使が佇んでいた。

 

『皆様お待たせして申し訳ありません。察して下さっている方もおりますでしょうが少々トラブルがあり、ワルキューレの面々がステージに立つのにもうしばらくお時間を頂きたい』

「え、マジかよ!」

 

「トラブルって何かあったのか?」

 

「というかあいつ誰だ?変な恰好しているが」

『トラブルの詳細は後日改めて発表致します・・・さて、このままお待たせするのも折角来てくださったファンの皆様に失礼というもの。多少でありますが余興をご用意させていただきました』

天使がそういうと懐からとあるスタンプを取り出す。

 

『皆様、このスタンプはご存知でありましょう。このアリーナに入る際にスタッフが右手の甲に押したものです。これは今までこのツアーで回った全会場で行われたことで皆様からもご好評頂きました。暗がりで光ることもありペンライトの代わりに使って下さる方もおりましたね』

このツアーの各会場で行われた光るスタンプ、実槻の前世でも一時期流行ったもので会場のスタッフやファン達も違和感なく受け入れられたが、天使の策略は其処にも及んでいた。

 

『このスタンプと連動し、ちょっとした仕掛けをご用意いたしました。本来はライブ中に行う予定でありましたので余興という名の本番前の練習的なものとお考え下さい。・・・ごほん、さぁ皆様右腕を掲げて下さいませ!今生中継を見ている今までのツアーライブを見に来られた皆様もお掲げ下さい!!』

大仰に右手を掲げる天使に釣られ次々と掲げられていく右手の甲には蛍光色に光る三角形の記号をしたマーク。ほぼ全ての来場者が右手を掲げたのを確認すると天使は高らかに宣言する。

 

『ご協力ありがとうございます。それでは歌いましょう・・・主の讃美歌を』

天使の言葉と共に三角形のマークが光り輝く、それはアリーナにいる者達だけではなく、生中継を視聴しているこのツアーの他のライブに参加した者達も同様だった。

 

『~~~~♪』

ファン達の身体が高揚し、自然に主を称える讃美歌を歌う。讃美歌を知らないはずの者達までも頭に歌詞が浮かびそれに合わせて歌い始める。それに呼応してか彼等の生体MAGが活性化されそれがステージの天使に流れて行く。

 

「ふむ・・・やはり主への信仰が無い者達が歌っても生体MAGの活性化の効果は薄いですね。無論中には信仰者もいるでしょうが覚醒者ではない以上さほど違いはありませんね。まぁ元々仔細を知らない一般人のスタッフでもスタンプ一つで施せる術式なので覚醒者ならば意識せずともレジスト出来るほど強度は低い代物ですが・・・塵も積もれば山となるという言葉があるように数が集まれば話は変わります」

会場が異界化されているのにも関わらず問題なく動く中継カメラを通して視聴しているこのツアーに参加したファン達もアリーナのファン達と同じ現象が起こり活性化した生体MAGがテレビに映る天使・・・云わば偶像に注がれていく。

 

「・・・来ましたね!はは!!流石に万や億の単位になると違いますね!力が漲るとはまさにこのこと!」

中継カメラに施した術式の一つの効果によりテレビに映る偶像の天使と会場のステージに立つ本物の天使が共鳴し、偶像に流れた膨大な生体MAGが天使に流れ込んで行く。しかし、天使は流れて来た生体MAGのほとんどを会場地下に施した巨大な魔法陣に注ぎ込む。

 

「これで私本来の姿に至れる!!劣化分霊に至る程度のことは他の方法でも出来ましょうが、高位分霊まで力を付けるのは今のGPではこれくらいしなければ無理ですからね!・・・問題は邪魔されたせいで、今までのテストの様にワルキューレのライブ中にこっそり行うことができず大分派手になってしまいましたが・・・まぁ事後処理などはおいおい考えましょう。捕らぬ狸の皮算用にはなりたくないですし、今は儀式に集中です」

この後の事後処理や隠蔽作業の大変さを一旦横に置いて儀式を遂行する天使。中継を見ていた各地の霊能組織(メシア教含む)の胃は色んな意味で死んだ。

 

【控室】

 

「だってさ!!あいつばっかじゃねーの!?(アリーナを霊視中)」

 

「幾ら高位分霊になるためとはいえ日本全国巻き込んでこんなことしますか!?いえ、普通に外国にも中継されてますし、海外からツアーライブに参加しに来た観光客もいるでしょうし海外にも飛び火しますねこれ」

秘密裏にやるのは諦めてたからどんなものかと思ったが想像より十数倍派手だったんですけど!?というか何で異界の中で中継機材が動いてんだよ!アリーナの観客達はアリーナに結界が張ってあったから一般人でも悪影響受けてないで説明出来るけどさぁ!!覚醒者はレジスト出来るみたいだからアリーナにいる千束は大丈夫なのがせめてもの救いか。

 

「えっとつまりどういうことお兄ちゃん?」

「観客の皆の手に押したスタンプに仕掛けあり!

 このツアーの来場者全員の生命エネルギーみたいなのをギガドレイン!

 日本、海外巻き込んで儀式して永続メガシンカ!!」

 

「三行で纏めた!でも分かりやすい!・・・ってそれヤバくない?」

「「ヤバいですね」」

 

儀式もヤバいがこの後の事後処理や隠蔽作業とかどうやるんだこれ。メシア教のお偉いさんも今頃テレビの前で口開けて唖然としてるって!

 

「スタンプって美九ちゃん達は大丈夫なの!?」

「俺は覚醒者だから術式自体弾けるし、どうも精神に影響を与えて洗脳とまではいかないけど高揚させる効果があるみたいだからそもそも強度云々関係なくアイテムから俺そういう効果受けない体質だから問題ない、美九なら効果あったんだろうが・・・多分アリーナの入り口辺りで押してたんだろうなぁ」

 

「あ、私のお陰でアリーナに向かわずこっちに来れたから押されてない!何気にファインプレー?」

「まぁ俺がスタンプを一目見ればそれが簡易的な魔道具の類なのはすぐ見破れただろうな・・・問題はその場合ワルキューレの皆さんの救出する時間が無かっただろうけど。各潜伏地点が襲撃受けたのも多少タイムラグがあれどあの天使も気づくだろうし」

 

だから真っ先にワルキューレの皆を救出するためにこっちに来たわけだしな。

 

「どちらにしても不味い状況にはなって居たのね・・・でも本当にあんなスタンプでそんな大それたことを起こせるの?」

「勿論他にも色々組み合わせているんだろうけど・・・術式が一方的じゃなくて相互承知の上での契約という形、しかも実質非覚醒者のみとか条件付きの場合色々出来るからなぁ」

 

「あ、そういえば企画の段階で『最近のご時世もありますし、スタンプを押すときは事前確認をきちんと取りましょう』って徹底させていたような。その時は成り代わったことに気付いてなかったから違和感なかったけどもしかして!」

「ああ、恐らくその事前確認が契約という形になったんだろうな。全くメシア教はこういう技術やコミュ力はうちより高いな相変らず」

 

それに三角形の記号自体も元々ワルキューレのライブとかで使われたとはいえ一神教で特別な意味を持つものでもある。野郎ここまで計算に入れてワルキューレを利用することを考えてやがったか!高位分霊に成れる可能性がある辺り高位の天使、大天使クラスがあいつの本霊か。

 

「そんな!?皆を既に巻き込んでいたなんて・・・」

「・・・ここまで天使や信者を独自に動員出来る格と統率力、スタンプが押されているのは全員右手の甲、しかもあいつは他のパワー達と違い右手に剣を持っていた・・・ということはあいつの本霊で一番可能性が高いのは、やはり・・・しかし今儀式を無理やり止めたら集まった膨大な生体MAGのエネルギーが暴走を起こしかねん・・・!」

 

「どうしますかマスター?」

「美九ちゃんのお兄さん・・・なんとかなるのかな?」

「・・・はぁーー」

 

ジャヒーとフレイアさんの問いに思考を一旦止め深く息を吐くと色々ふっきって顔を上げる。

 

「いいだろう。元々裏で活動しているときなら裏で始末を付けられたが、ここまで表で派手に動かれればこちらも腹を括って表に出るしかない」

 

「やるのですね」

「ああ、向こうが派手にことを起こすなら"それより"派手なことを起こして飲み込むまでだ!皆、協力して貰うぞ!」

 

俺や仲魔達だけでは無理だ。使える駒は全部使わせて貰う!

 

 

 

ワルキューレ事変、のちの世で当時の全霊能組織のトップ陣の胃に穴を開けたという事件はこれから行われる実槻の無茶苦茶な作戦により更にその被害を広げていく・・・無論その中でもっとも被害を受けたのは彼が所属するガイア連合と今回実は天使が勝手に色々やっただけで本部とか支部は特に関わっていなかったメシア教(協力した信者は実は末端の一部程度)だったのは言うまでもない。




読了ありがとうございます!壮大な悪足掻き(全国規模)を起こす天使を実槻達は倒せるのか!まぁ倒せないとこの時間軸に高位分霊の天使が誕生するので意地でも倒して貰わないと困るんですけどねゲッヘヘ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。