親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

47 / 77
第四十七話になります!久々に長文を掛けたぜ。やっぱ好きな分野だと筆が進む進む、まぁ実際はタイピングなんですけど。


メシア穏健世俗派

王留美とその一派は中華系メシアンに分類される集団だ。彼女曰くルーツはメシア教側に付いた中国の名家らしい。しかし世俗というか実益重視の方針故他のメシアンからの印象は悪く、表向きは同郷の文化が根ずく横浜の中華街を取り込む日本の拠点の一つとする為の派遣なのだが、実態は体のいい島流しに近いだろう。

 

「そんな我々に突然黒札である実槻様が訪ねて来てくださったときは、何事かと思いましたわ」

「まぁガイア連合はメシア教から距離を取っている・・・いや嫌ってるってレベルだからな。といってもメシア教の規模がデカすぎて全く関わらないってのが出来ないから中途半端な所はあるが」

 

そう言うがガイア連合という組織の性質的に全体的な方針が時折ぶれるのは仕方ない所はあると内心で思いつつ留美が入れてくれた高級葡萄ジュースを飲む。ワイングラスで飲むならワインが様になるのだろうが、如何せんこの身体は未成年の身だ。それにこれは下手なワインより価値がある。

 

「美味いな。色や香り、更に柑橘系のさわやかな風味でありながらこの甘い口当たり・・・使われているのはトレッビアーノ種とマルヴァジーア種か。炭酸と合わせてあるスパークリングジュースだからトレッビアーノ種特有の柑橘系の爽やかさがより際立って飲みやすいな。ストレート果汁製法なのもあって二種の葡萄の味が良く感じられる」

「一口で看破するとは流石ですわ。ご満足されたようで私共としてもご用意した甲斐があると言うものです」

「この手のものはストックしてある癖に・・・まぁ終末になったら手に入らないだろうから正解ちゃ正解だな」

 

「実槻様達の様に終末を意識していた訳ではありませんがそれでも世界がより荒れるとは思って居りましたわ。もっとも実槻様から提供して下さった情報から見てもその認識では甘すぎた訳ですが」

苦笑する留美。彼女の一派はあまり戦闘に長けていない、それこそ商売や内政に秀でていると言っても良い。故に秘密裏とはいえガイア連合の黒札の保護を受けられるのは願ってもないことだった。

 

「しかし、よく盟主様から承認を貰えましたわね。黙認よりとはいえ盟主様もメシア教嫌いだったはずでは?」

「だから説き伏せたんだ。一対一で論理的にな」

 

この先終末に近づくに連れてどうやってもメシア教と接触する機会は増える。今の日本のメシア教の代表とも言える輿水幸子は過激な天使や信徒をそれとなく海外に誘導するなどよくやっているが流石に全国に目を光らせるのは現実的ではない。というかあの年であれほど上手く立ち回ってるだけ大したものなのだ。あれ以上を求めるのは酷だろう。それは黒札とて同じ、一時的に特定の地域から排除することは出来てもいずれ入り込まれイタチごっこになるだけだろう。

 

例えガイア連合と全国の名家が一致団結し、裏で国内のメシア教を排除するにしても絶対取りこぼしは出るし、恨みも買う。終末で大変な状況なのに内紛とか勘弁して欲しい。宗教というのは弾圧する程底力を見せるものだ・・・それに何より

 

「うちとのマンパワーの差は圧倒的だ。正直言って終末になってもメシア教と付き合っていく以外日本で文明を残しながら生活するのは無理だろうな。ガイア連合単独では本部周りが精々だ」

 

「そうですわね、質は兎も角純粋に数が足りません。実槻様も遠征で向かった場所の名家と縁故を結んで居られますがそれでもなお足りないでしょう」

俺が頻繁に県外へ遠征に行くのはいざという時のマンパワーの確保というのもある。見込みのある名家を支援し、更に他の名家や物資補給が叶いそうな事情を知る商家との繫がりを作る。命蓮寺にも終末に備えて物資を備蓄させているし、終末でも機能するように霊的に補強した補給路などの確保も進めている。留美達の存在を知ったのもそういった繫がりからの情報提供のお陰だ。

 

「問題は内部に同門の私達から見ても過激すぎる天使様や信徒達が多いということですわ。無論全体的に見れば穏健な者達が多いのですが、そういう方々に限ってレベルが高いのも相まって無視できませんわ」

「安心しろ。遠からずメシア教は二つに割れる」

 

元々過激な面を見てメシア教から離脱する者達は今までにもいた。これからメシア教全体が終末に向けて大きく動き出して行くことだろう。すると当然その過激な部分も大きく動き出すはずだし、それに反感を持つものも多くなり今までの個人規模では無く、もっと大きい集団単位での話になっていくのは容易に想像出来るからな。

 

「日本は代表の幸子の性格上穏健な陣営になるだろう。というかそれを見越して過激な連中を海外に誘導している様に見て取れる」

 

「そうしなければ国内で過激な者達と穏健な者達との間で板挟みになるのが容易に想像出来ますわね」

「そしてその場合過激な連中と戦争がおっぱじまるのは海外だ。海外で活動する穏健な陣営と海外の霊能者達と派手にドンパチするだろうが、その間はメシア教も大軍をこっちに差し向ける余裕はないだろう・・・海外の連中には悪いが日本の壁になってもらう。どの道そいつらがメシア教とぶつかるのは確実だしな、支援があるのとないとじゃ戦果や生存率も雨天の差だろうからそれで勘弁して欲しいな。恨むなとまでは言わんが」

 

「そこで我々が直江津港から他国の戦地に物資輸送を行い、穏健陣営の兵站担当として確固たる地位を築くと・・・支援が無ければ先に干上がるのは彼らの方ですわ」

「悪い、気を使わせたな。さて、俺達の関係は当分表沙汰に出来ない以上俺とは別ルートでガイア連合と協力関係を築く必要があるからその為の実績作りにもある。戦闘力を示すよりもお前らに打って付けだ。まぁ当然『死ねという命令以外絶対服従』契約を結ぶことを求められるだろうが、それくらいは我慢してくれ・・・最悪認められない命令をされたときは俺が出張る」

 

「・・・やはりあの条項はそういうことでしたか」

『死ねという命令以外絶対服従』契約は俺とも結んでいるが、ガイア連合で用いられる一般的なそれ以外にも俺から幾つかの条項を追加している。その一つが『この契約は他のあらゆる命令・契約よりも優先される』というものだ。つまり最悪俺の一声で他の黒札からの命令を拒否することも可能となる。

 

「俺が出張ったら関係はバレるだろうから結ぶ相手は見極めて欲しいが、もしそうなったら遠慮はいらん。全力で泣きつけ」

 

「ですが!」

「ショタオジから承認を貰ったのはこの契約の正当性を示す為でもあるからな。それにお前は小さいとはいえ一派閥のトップになるんだ。まずは自身と自分の派閥の保身を第一にしろ」

 

「・・・了解しましたわ」

渋々とはいえ了承してくれたことに安堵する。ショタオジを説き伏せるのには苦労したからな、まず一対一の状況設定を整えるのが大変だったし、海外の連中を壁に使うことの大切さやメシア教からの干渉を抑える為にこっちから使いやすい派閥を組織する発想、そして彼女達への保護の保証など色々説明しなきゃならなかったからな。

 

「保身ということでこちらからも一つ、功績を作るまでガイア連合の庇護を受けらない以上我々・・・名を付けるとすれば世俗派がそれまでにメシア教自体に粛清される恐れもあります。勿論その為に貢物や将来押し寄せて来る難民達の中から適正のあるかつ本人が了承すれば側仕えとして宛がうことの準備も進めておりますが、実槻様の要望である将来穏健派に所属しそうなまともよりの天使様や信徒に限定して行うとなると完全に防ぎ切るのは難しいかと」

「だろうな。だが人を宛がう以上本人の了承と相手側の最低限の人柄の良さという要素は外せん。ガイア連合からの印象もそうだが、風俗や水商売にもモラルやルールは存在する。それにすら満たない扱いなど俺は認めん」

 

風俗や水商売もそれが真っ当なら立派な商売だ。それを馬鹿にする権利なんて誰にも存在しないし、それに満たない扱いなど商売とは到底言えない。

 

「それにそちらも抜かりはない」

懐から"二本"の封魔管を取り出し、二体の悪魔を召喚する。一体はナーガラジャだが、もう一体は最近契約した堕天使だ。

 

「丁度先の事件でナーガラジャことコカベルから同僚を紹介される予定だったからな。それが丁度良い人材だったからお前たちの表向きの庇護者になってもらう」

 

「まあ!実槻様の仲魔を派遣して下さるとは光栄ですわ!」

「悪魔を人材と呼べるのかは分からないがね。彼、いや彼女はエグレゴロイまたの名をグレゴリでの同僚だ。対価さえ払えばきちんと仕事はするとも」

「堕天使 カスピエルよ。嗜好品や女性を都合してくれるなら貴方達を守護するわ・・・勿論優先は正式な契約者でご主人様の実槻だけど」

 

【堕天使 カスピエル Lv32】

 

「弁えておりますわ。そしてカスピエル様となると」

「ああ、こいつなら堕天使と天使両方の側面を併せ持つ」

 

それにこいつは本霊のカスピエルがメシア教主流派と距離を取っていることを利用し、作成を依頼した特殊な分霊だ。本霊もこの企みで利益を得るので快く請け負ってくれたが、この分霊は堕天使と天使の側面を併せ持つ特性を最大限に用いていて、分霊が天使として振る舞っているときは天使に、堕天使として振る舞っているときは堕天使にと種族が変わる特殊性を持つ。偽装などとは違うので【アナライズ】の類でも看破は不可能だ。

 

「メンタルは堕天使寄りに調整されているから対価され払ってくれれば、グチグチ文句は言わないけど一応守護だけじゃなくて貴方達の監視役でもあるから下手なこと考えるんじゃないわよ?」

「レベル30代の監視役など我々にどうしろと?」

「特にお前達戦闘方面が残念だからな。カスピエルはこの町に紐付かせる契約に更新するから俺の召喚枠や生体MAGを消費しないから其処ら辺は安心してくれ。寧ろこの地のMAGで身体を維持する分ずっと活動出来るだろう」

 

「その代わり上越市の外には出れないけどね。私のご主人様はアンタなんだから定期的に顔を出しなさいよ?」

「分かってる。いざとなったら通常の契約に直ぐに戻せるようにしているし、終末になって俺達の関係を明かす頃にはガイア連合としても切り離せないくらい影響力を持ってもらう予定だからその時に契約を戻すから」

 

「そうなるよう精進致しますわ」

秘密はいずれバレるもの。なら適切なタイミングで公開するほうがいい、それまでにガイア連合で確かな実績を築く必要はあるがそれさえあれば、ショタオジの承認も込みで幾らでも援護でき、批判も最小限に止められるだろう。

 

その後幾つかの話し合いを済ませるとすっかり夜の帳は降りていた。

 

「長居してしまったな。そろそろ「実槻様」なんだ?」

 

「もう夜ですし、良ければ止まって行かれるのはどうでしょうか?ご夕食もご用意してありますわ・・・お望みでしたらお泊りになるお部屋までお供もさせて頂きますわ」

そう提案する彼女は微笑んでいるが、それは仮面だ。その裏では打算と保身が渦巻いているし俺への忠誠心など今のところはせいぜい他の黒札に向けるものより多少高いくらいだろう・・・そしてそれを俺に見破られていることも承知のはず。そして俺の嫁二人の存在を知っていても自身や率いる派閥の為に保身を図る。俺が保身を第一にと言った以上拒否はされても叱責はされないと踏んでいる辺り実に頭が回る・・・だが恐らく本来の彼女は・・・。

 

「夕食は頂こう・・・それからまどろっこしい言い方はいい。要は"終末前に関係がバレてしまったときの保険が欲しいから私を抱いて"だろ?お前を抱いていれば終末前にバレても愛人扱いで保護を保証できるからな。まぁ俺の名声は落ちるだろうが」

 

「っ!!御慧眼恐れ入りますわ。しかし・・・」

「気にするな想定の範囲の要望だし、すでに嫁さん二人の許可も取ってある」

 

「え?」

「俺の嫁二人の情報もお前達ならある程度押さえているだろうが、完全ではない。あいつらとて良家の令嬢、それに景虎は戦国時代の大名の転生体だし、覚醒前からその影響を受けていた。黒雪も前世では今の時代よりも更に昔の人間だ。その手の話には理解もある。計画性の無い女遊びや自身と対等に並び立てる女には怒るだろうが、お前みたいに分を弁えて、後ろから一歩引いてついて来る女なら懐に入れる度量はあるよ。流石に新しい女にかまけて自身が構われないと嫉妬くらいはするだろうけど」

 

「そ、そうですか。ご配慮感謝致しますわ・・・知識はあれど経験はない身でご満足されるかは保証出来かねますが精一杯務めさせて頂きますわ」

お、顔が少し赤くなってる。漸く年相応の仮面を外せた顔が見れたな。

 

「安心しろ。俺とて前世今世で100年以上童貞で今だ"人間"の経験人数は嫁の二人だけだ。留美と大して変わらないさ」

 

それに打算と保身の為とはいえ、前世の様な縛りも無い身である以上勇気を出した女性からの誘いを断るのは、男が廃るし女性側に恥をかかせて失礼ってものだ。悪意があるなら当然別だがな。

 

「手を抜くのはダメだが、必要以上に張り詰める必要は無い。裏切りなら兎も角失敗した程度で見捨てることはしないし、いざというときはしっかりケツを持ってやる。責も上に立つ俺が負おう。それで名声が下がったとしても気にするものか、それが上に立つ人間の責任だ。汚れ仕事もさせるならなおのことだ」

 

失敗しても穏健とはいえメシア教に毒された馬鹿な黒札と言われる男が一人増えるだけなのだから。

 

こうして後に『メシア穏健世俗派』として台頭する組織が立ち上がるのだった。

 

 

 

【おまけ:夕食】

 

「そういえばカスピエル様は見た所女性の様に思えますが?」

「元は天使だから本来は両性具有よ?この分霊の私はがっつり女性だけど実槻への配慮が主ね。別に股のアレが無くても女体は楽しめるし」

「なるほど。確かに実槻様の周りには恋愛感情があるなしに関わらず女性が多いですものね。そういうことでしたら男性の方も都合致しましょうか?」

「ああ、それはいいわよ。本霊も含めて男性にはそういう興味は無いから」

「そうなの「あ、でもご主人様が私を求めて来たら別だけどね」え?」

「まぁこれだけ好条件の待遇だしね。本霊含めそれくらい配慮もするし、サービスもするわよ。というかコカベル、ナーガラジャ達も抱かれてるのに私だけ除け者ってのも嫌だから」

「・・・そういえば先程の経験人数も人間と仰っていましたわ」

「因みにちゃんとあの二人の了承は取っているよ。というか寧ろ霊的な繋がりが強化されるなどのメリットもあるからと二人の方から提案されたときは余も驚いたものだ。我が盟友の嫁というだけあってかなり肝が据わっているよあの二人は」

 

 

 

「あ、そうそう。俺抱いた責任は取るタイプだから関係がバレるか、終末に公表した後はちゃんと仲魔達含めて留美も嫁に取るから安心してくれ」

 

「な、ええ!?」

その後留美は終始顔を赤くしながら夕食を食べていた。せめて俺といる間くらいは本来の彼女が安らげるようになればいいな。

 

なおベッドではカスピエルが途中で乱入して来た。てっきり留美目的だと思ったらご主人様の将来のお嫁に手を付けるほど分別が無い訳ではないとのことだったので纒て頂いたのは余談である。




読了ありがとうございます!という訳で王留美との関係性とカスピエルの登場でした!名無しのレイ様の方で天使カスピエルがバックに付いていると書かれていたときは「はっ!!自分が適当に新仲魔のフラグで書いた特殊召喚でのコカベルの同僚紹介と繋げられるやんけ!」という閃きが王留美をこちらで出そうと思った時に起こったのでバックに付いている天使(堕天使)も実はこちらが用立ていた。なんなら普通に鑑定ニキの仲魔だったとさせていただきました。それら含め鑑定ニキのNeutral-Neutralらしさが表現できていれば幸いです。

あちらで静ちゃんに渡した宝石も表向き彼女が予想していたように偶然入手したというのを理由に装って鑑定ニキが宝石を鑑定して報酬や贈答品用に事前に渡していた感じです。勿論留美が用意した物も中にはあるでしょうが。
こう物語や設定が連鎖的に繋がるのもシェアワールドの醍醐味ですよね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。