親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第五十三話になります!今日から過去回想ですが、メガテン成分が著しく減ることをご容赦ください。まぁ出るメンツがメンツなのでメガテン要素が消えるわけではないですが。


過ぎ去ったとある夏の日

【約10年前】

 

8月の初旬。世間一般的には夏休みに入って少し経ち観光地へ旅行に行く人達も多く、実際小学校のクラスメイト達も家族旅行に行く予定の子が大多数です。しかし残念ながら今年は私にそんな予定はありません。勿論私以外にもそういう子はいますが、友達の家に遊びに行ったり、お泊りしたりと別のイベントごとがある子達ばかり。

 

ですが私の祖父が昔ながらの考えの持ち主で、身内以外あまり信用していないらしくそれらを許してくれません。流石に学校や公園などで遊ぶ分には何も言ってきませんし、所謂虐待を受けているとかでも無いのですが少々息苦しかったりします。

 

「~♪」

っとここまでではつまらない夏休みの様に聞こえるかもしれませんが、今年は少し違います。親戚のお兄様が遊びに来てくれるのです!・・・正確には夏休みというより長期休みに入ると不定期に来るイベントですし、共働きの親御さんのお仕事のご都合で長期休みに出払ってしまうことが偶にあり、家で一人になってしまうお兄様が寂しくないように我が家で預かるという形になっているだけなのですが、昔からお世話になっているお兄様が遊びに来てくれるのは思わず鼻歌をしてしまうほど嬉しいことで大きいイベントです。

 

「あともう少しでしょうか?」

お家は古い日本家屋で敷地や家の規模は一般的に広く、場所によってはお兄様が来たか分からない為出迎えも兼て到着時間より前から正面の門の前で待っているのです。

 

「・・・あ、来ましたね」

門と町の中心地を繋ぐ一本道から現れた私よりも頭一つ背の高い男の子。大宙実槻、実の兄妹ではないけれど兄と慕う人物です。

 

「実槻お兄様、お久し振りです」

「ああ、久しぶり・・・まさかずっと待ってたのか?この糞熱い時期に?」

 

「はい、折角なのでお出迎えしようかと」

「・・・取り合えず中に入って冷たい麦茶でも飲もうぜ」

 

若干呆れ顔をされて少し恥ずかしくなりました。

 

お兄様は私の家に来るときは基本的に八月の終わり頃までいることが多い。家は祖父の影響を受けて余所者にあまりいい顔をしない閉鎖的な所があるものの、お兄様は血の繋がった親戚の子供で完全に身内の間柄。当然邪険に扱われることなど無く寧ろその祖父から出来の良い子供として可愛がられています。

 

ではどのくらい出来が良いかいうと私が女子校の小学校に入学する際、同年代の男の子の基準がお兄様である私と同じクラスの子達とで話す同年代の男の子の話題がほとんど嚙み合わないほどでした。

 

お兄様は私がまだ未熟であることを差し引いてもなんでも出来る方です。

 

そもそも小学生、いえ幼稚園生の頃から一人で新潟県から東京都の我が家まで新幹線で来れること自体凄いことですし。

 

お料理も出来ます。お兄様曰く「自分の料理の腕はそこそこ。せいぜい親戚、友人、知人を家に招いたときに出せるレベルで、祭りの屋台以外では売り物になるようなもんじゃない」らしいのですがとてもそうは思えず、何か隠し味でも入れているのかと思っていました。

 

実際は同じ料理でもそれぞれ食べる人に合わせて調整していると小鍋を複数並べカレーを作りながら説明されましたけど。カレーの種類は変えてる訳でもないのにこんな繊細な調整が出来ることに驚きました。それに好みの味など私達はお兄様に伝えていないのですが、それを多少の観察で把握するなど私には出来そうにありません。

 

勉強は出来るどころか人に教えることが出来るレベルで、一緒に夏休みの宿題を進めているときに色々教えて下さります。特に歴史などの分野は打てば響くように疑問に答えてくれます。

 

夜は私の部屋で一緒に就寝するのですが、私が眠るまでの間色々なお話をして下さります。私の要望で些かホラー系によってはいますがまるで自身が体験したようにお話しするので、思わず聞き入ってしまいます。謎の密室の閉じ込められアルビノの少女と謎を解いて脱出する夢を見た男性がその子と現実で再会するお話、相棒の刑事と様々な難事件に挑む若者のお話、とあるカップルの悲恋などホラー含め色々お話をお聞きしました。

 

それに両親や祖父には相談しずらいことでも話すことができ、ご助言を下さるのです。

 

「クラスメイト同士の喧嘩か」

 

「はい、先生に注意されたあともお二人はギクシャクしているようでして」

「・・・なるほど。さてはその教師二人の話をあまり聞かず注意しただけだな。そりゃ頭ごなしに目上が注意して押さえつけるだけでは納得するはずがない」

 

「ではどうすればよかったのでしょうか?」

「先生や他の生徒など第三者が介入するということ自体は間違っていない。当人同士では怒りで視野が狭くなっていて話が平行線になる場合が多いからな」

 

お兄様はそう言うと私に向き直り、少し腰を落として視線を合わせました。

 

「大事なのは物事を客観的に見ることと当事者達の目線に立って考えること。そして当事者達に根気よく話を聞く忍耐だ」

 

「忍耐は兎も角前者二つは矛盾しているような?」

「いやいや、客観的な視点というのは物事を公平に冷静に見る上で必須事項だ。喧嘩はなぜ起こったのか、誰が悪いのか、当事者達の発言に食い違いは無いか、その怒りに正当性はあるのかなどなど俯瞰して見なければ見えてこないことが多いからな。当事者達が分からなかっただけで勘違いだったりするパターンもある」

 

「だがそれで出来上がる公平な意見を押し付けるだけでは解決しないことも多い。だから当事者達の視点に立って喧嘩が起こったとき何を思ったのか、どう意見を纏めれば双方を納得させられるのか・・・相手の思いを理解しないで提示する意見など所詮は張りぼてに過ぎない」

 

「客観的な視点だけでも当事者達の視点だけでも不十分だ。それらを複合的に見ることができ、更に例え拒絶されても根気よく当事者達と話をすることが大切だ」

 

「難しいのですね」

喧嘩の仲裁だけでここまでやることが多いと正直私が上手くやれるか自信が持てない。

 

「ああ、難しいだろうな。人を助けるってことはそれだけの苦労をするから尊ばれるんだ・・・だから別に藤乃が介入する必要は無い」

 

「え?しなくてよいのですか?」

「そんな手間を誰彼構わずやる必要なんてない。拒絶されて傷つくこともあるだろうし、普段から無理をする必要はない。だけど」

 

そう言うとお兄様は私の手を握る。

「もし、それが藤乃の大切な人だったら。例えどれだけ傷ついても助けたいと思える人だったのなら手を伸ばすことを迷わず恐れるな。何もせず失った後で後悔してももう遅いんだ」

 

「誰でも助けるヒーローにならなくてもいい、でも自分の大切な人を助ける勇気を持つ強い人にはなってくれ。それが結果的にお前自身を助けることにも繋がるはずだ」

 

「強い人に・・・」

「まぁ今回は藤乃は多少両者の背を押すだけで解決できるだろうけど」

 

「そうなのですか?」

意外な言葉に驚く。

 

「だって本当に嫌いならコミュニケーションは最低限な事務的なものだけにすればいい。だがギクシャクしているということはそれ以上のコミュニケーションを両者とも行おうとしているからだろ?」

 

「た、確かに事務的なコミュニケーションだけならギクシャクもしないでしょうが、互いに嫌い合った結果だとしたら…いえ、それなら普通にまた喧嘩になるだけですね」

「そう、ギクシャクしているのは相手を一方的に悪いと思っていない、そして完全に嫌っていないことの証だ。自分も間違っていることがあった、相手の良い所も知っている。しかしそれを言葉に出しずらい状況だ。なら第三者がやることは?」

 

「お二人と話をして、お相手とも素直に話す様に誘導することでしょうか?」

「分かってるじゃないか。あ、最初は二人に別々に話に行けよ?多分言いたいことはあるけどその言い方を纏めることが出来ていないはずだからそれを纏めさせてから二人で話をさせろ。無論纏めること自体も手伝ってやれ」

 

「はい、分かりましたお兄様!」

「頑張れよ?」

お兄様に頭を撫でられると家族にされる以上に嬉しいのは私だけの秘密です。

 

後日それぞれに電話で話をし、公園で二人を対面させ無事にお二人は仲直りすることが出来ました。私もその二人と更に仲良くなり、めでたしめでたしとなるのですが・・・お二人には失礼ですがこのような喧嘩が些事に思えるような困りごとを私の幼馴染が抱えていたことに当時の私は気づいていなかったのです。




読了ありがとうございます!来月にはswitch2とライドウがいよいよ出ますね金を貯めねば。まぁファンタジーライフiを買ってしまったのですが。無印、LINK!、オンラインと歴代シリーズをやって来た者として買わないという選択肢は無かったんだよ!本作の更新はどうにか頑張ってやって行きたいです。
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