親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第五十五話になります!そろそろライドウが発売されますが自分、switch2まだ当たっていないんですよね…第4次抽選で当たると良いんですが。


人類に救済を

「神の試練、それは翔門会の教義にある試練のことですか?」

「その通り。そう遠くない未来に次の神の試練が訪れる・・・しかし今の時代の人類では残念ながらそれを乗り越えることはできないだろう。無論私も含めてだが」

「そうとは思いませんが一旦それらは置いて置きましょう。それで何故私が必要なのでしょう?」

「先程も言ったように神の試練を乗り越える為の礎になって貰うのだ。詳しくはっとこれ以上の長話は人目に付くな。傍から見えれば大人が複数人で子供を囲んでいるのだから仕方がない、我が家にご足労願おうか?」

これ以上この場での会話は人目に付くと考えたお父様は藤乃さんを連れ去ろうとしました。

 

「お父様!藤乃さんをどうするつもりなのですか!」

藤乃さんをかばうように立ちふさがりますが、足の震えている人間など何の障害にもなりません。

 

「心配しなくてもきちんと話すとも。それから天音、お前も部外者という訳では無い。寧ろ要と言っていい」

「要?私がですか?」

「ああ。さて、それではそろそろ行こうか。言うまでもないが抵抗しない方がいい、私とてこれ以上強引な手を使いたくは無いのだ」

「天音さんここは従いましょう。残念ですが今歯向かってもどちらかを逃がすことも出来ません」

「で、ですが!?」

子供の身で複数人の大人には勝てないというのは当時の私も理解していました。ですが感情面では納得できるはずもありません。それにお父様の言う礎という言葉に背筋が冷たくなるほどの悪寒を感じたからです。

 

「ふむ、我が娘も随分反抗的になったものだ。天音彼女を思うなら抵抗をしない方が良い、少々痛い目を見てもらうことになる・・・お前ではなく藤乃君がだ」

「な!?」

お前にはこっちの方が効くだろう?と暗にお父様に言われたような気がしました。藤乃さんを必要としている以上命をどうこうするつもりは無くても多少怪我をさせる程度なら問題ないらしく信者の一人がスタンガンを取り出したのを見て私は顔を強張らせました。

 

「どうするかね?」

「わ・・・分かりました」

当時の私には道を開ける以外の選択肢はありませんでした。

 

そうして私も含めお父様が乗って来た車に乗らされそうになったときに藤乃さんの携帯から着信音が鳴り響いたのです。

 

「・・・」

無言でお父様を見る藤乃さん。お父様は少し考えるようなそぶりを見せてから口を開きます。

 

「出るといい、ただし言動には注意するように」

「分かりました」

電話に出ると傍にいる私達にも会話の内容が聞こえてきました。

 

「もしもし、藤乃です」

『おう、急に電話して悪いな。天音とは会えたか?』

 

「はい、いつもの道を通って公園で合流しました。お兄様が来ていることを知ったら是非会いたいそうなので、近日中に会われては如何ですか?」

『・・・そうだな。特に予定がある訳でもないし、いいぞ。これから来るのか?』

 

「いえ、本日は私が天音さんのご自宅に遊びに行く予定です」

『了解、頃合いになったら迎えに行こう』

 

「・・・はい、御待ちしていますお兄様」

『ああ、良い子にして待っていろ。うちの夕食には間に合わせる』

 

「今日のお夕食はお兄様の手料理でしたね。楽しみです。本当に」

それではと電話を切るとき藤乃さんの手は震え、目尻に涙を見せていました。実槻さんと会話をしたことで押し殺していた恐怖心が漏れ出てしまったのでしょう。

 

「お待たせしました」

「気にしないでくれたまえ、"最後"になるであろう家族との会話だ。言動も特に問題は無いのに途中で遮る程無粋ではない」

「「っ!!」」

 

予想はしていたとはいえ、礎とは所謂人柱のような意味合いであることが分かり私達は顔を強張らせました。

 

そうして私達は自宅兼翔門会本部にある儀式場に向かいました。自宅の周りは翔門会関係の建物ばかりで信者もそれなり以上に多く、警備員も複数人いるのですがお父様は藤乃さんを車に隠して応対していたので、やはり外部の方は勿論大多数の信者の方々はお父様の計画について知らないようでした。

 

それに心から安堵しつつも現状が好転する訳でもないので恐怖は消えぬ中儀式場に入るとすでに何かの儀式の準備は完了しているようで数人の信者が待機していました。完全防音の部屋なので独特な静けさがあり、普段なら好ましいものなのですがその時ばかりは恐怖をより増中させていました。

 

「では二人とも配置について貰おうか。心配せずとも儀式を始める前に君たちの知りたいことには答えるとも」

信者に促され私は儀式場の中心、藤乃さんは祭壇と思われる場所に立ちます。

 

「これで準備は整った。それでは先程の質問に答えよう。私は今の人類は脆弱故に次の神の試練は乗り越えられないと言ったが、私とてむざむざ人類滅亡を受け入れるつもりはない。ではどのように乗り越えるか?簡単だ人間以上の存在の力を借りればいい。我らが主上のお力でね」

「主上のお力でですか!?」

主上、我らが翔門会の信仰対象であるお方でした。

 

「宗教組織である我々が信仰対象である存在のお力に縋り人類救済を望む。おかしなことではあるまい?」

「それで私を生贄にしてその力を借りようと?」

「はは、そんな単純なことだったら良かったのだがね。主上のお力は強すぎてね、お借りするには段階を踏まなければならない。年単位になるほど時間が掛かるだろうが、今から始めればギリギリ次なる神の試練、終末には間に合う計算だ」

「つまりその準備段階での生贄ですか」

「そういうことだ。君は中々に聡いじゃないか、そんな将来有望な子供を贄とするのは私とて不本意だがこれも人類の為だ」

「人類の為…だからと言ってこんなことが許される訳がありません!」

堪らず私は声を荒げました。ですがお父様には届きませんでした。

 

「そうだろうね、私も何事も犠牲無しで行うことは出来ないとまでは言うつもりはない。だが人類救済という大事業、過去の英雄英傑が達成できなかったことを成功させるためには、主上のお力を借りたとて少数の犠牲はやむを得ない。まさか犠牲無しで成功させられるなど天音だって思っていないはずだ」

「そ、それは…」

声が震える。私自身当時はまだまだ幼く、未熟であるということは自認していましたがそれでも人類救済を犠牲無しで行えると思う程無知では無くなっていたのです。

 

「天音、確かに幼馴染であり友人の彼女を失うことはつらいだろう。だが安心するといい、それと引き換えにお前は人を救うことの出来る強大な力を得る。贄となる彼女に報いる為にその力でより多くの者を救うことが出来るのだよ」

「力を?」

「そうだ力だ。この儀式は準備段階とはいえ重要なものでね、詳しく話すと」

藤乃さんを生贄にする儀式。少なくとも真っ当なものではないというのは容易に分かりました。そんなものの詳細など聞きたくもありませんでした。

 

 

 

しかし、私達がそれ以上の内容を聞くことはありませんでした。

 

 

 

お父様が儀式の詳細を告げようとしたその瞬間儀式場の壁が凄まじい音共に突如として吹き飛んだのです。

「「え!?」」

 

「な、なんだ!?」

お父様に従っていた信者も何人かそれに巻き込まれており、死んではいないものの皆重傷を負い床で呻いていました。よく見れば壁を吹き飛ばしたのは翔門会が所有している大型トラックでした。しばし全員が固まっていると壁とトラックの隙間から一人の子供の手が出てきました。

「よいしょっと。子供でも流石に狭いな」

 

その子供にはひどく見覚えがある人でした。

 

「いやーにしてもびっくりびっくり、急にここの向かいの坂道の上にある建物からトラックが出て来たと思ったら坂道を駆け降りて行くんだぜ?人が乗ってないし、見た所AT車か?だとしたらクリープ現象か、おいおいダメだぜサイドブレーキ掛けてから降りなきゃ、ちゃんと教育してる?」

 

ははと笑いながら儀式場に入って来た子供、いえ少年はお父様を窘めるように言うと藤乃さんと私に向き直ります。

 

「それはそうと迎えに来たぞ藤乃、天音ちゃんも久し振り」

 

「「実槻(さん)お兄様!!」」

 

このような状況でもいつも会う度に私に向けてくれる笑顔を絶やさない、私の尊敬する人がそこにいました。

 

 

 

 

 

【おまけ:キャラに聞いた本編Q&A】

 

Q:鑑定ニキこと大宙実槻ってどんな人?

 

A:普段は天秤の様に公正だが気遣いも出来る。しかし譲れない一線を越えた奴には、その天秤で撲殺することに躊躇いのない男。しかも撲殺したのを追求されないように準備や後処理の算段も立ててからやるから余計に厄介だよ。まだ幼女ネキの方が感情や衝動のままに暴れるから可愛げがある。

 

by前世からの恋人兼専用シキガミ




読了ありがとうございます!回想編もそろそろ終わりですね。偶然、偶然!大型トラックが本部にぶつかったお陰で警備をガン無視して入って来れた実槻。実槻は無事に二人を救えるのか、次回をお楽しみに。あ、そうそう特に含みとかはないんですけど本編で出たクリープ現象って人為的にも起こせるらしいですよ。怖いですよね、えぇ。
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