親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

56 / 77
第五十六話になります!ライドウはsteam版で買いました。次に当選しても来るのは九月って長いよswitch2!


見た目は子供、頭脳は爺

「おう、呆けてどうした?ムスカ大佐似の天音のパパさん」

 

「・・・はは、昔からよく言われるよ。それにしても派手にやってくれたね少年。二人の反応からして君が実槻君かな?」

「ああ、大宙実槻だ。身内を取り返しに来たぜ」

 

天音父の圧が籠った言葉にもなんてことも無いように接する実槻。この程度の圧など前世で嫌と言うほど経験済みだ。

 

「取り返しにか、まぁこの場を見られた以上言い訳のしようもない。しかし恐らく外の信者達は慌てて通報でもしているだろうが大丈夫かい?」

「それをお前達に言われたくないが、問題ないさ。さっき言った通りこのトラックは偶々この建物近くの坂道からサイドブレーキを掛け忘れたせいで下ってきただけだ。それが偶々この翔門会のものだったのは不運だとは思うがな」

 

「それを信じろと?」

「そう言われても捏造でもしない限り警察が調べてもやっていない以上証拠が出ることもないし、証拠が無ければそんな事実はないと結論付けるしかないだろ?誘拐犯であるお前達の証言なんぞ信憑性などない・・・ましてやまだ年齢一桁の子供が運転や細工をしたからだという荒唐無稽な証言ならなおのことだ」

 

実槻は前世で何度も警察の仕事を手伝う過程で、警察の刑事や鑑識の捜査や調査の仕方や事件を起こした犯人の手口などは熟知している。その為車に多少の細工をし、それを警察がまず見つけられないように隠蔽することなど容易い、それに今世ではまだ年齢一桁の幼子であることも考慮すれば誘拐犯のムスカ達の証言など鼻で笑われ一蹴されることまで計算に入れている。無論監視カメラに映るなどという愚も犯してはいない。

 

「なるほど、まぁ確かに私が同じ立場でも『何言っているんだこいつら』と思うだけだろうね。しかしよく藤乃君が誘拐されたと気づき、場所まで特定出来ましたね?」

「別にそう難しいことでもない。藤乃がヒントもくれたからな」

 

実槻と天音父が話している間にまだ動ける信者達が実槻を徐々には包囲していくが、彼は気づきながら問題なしとばかりに無視しながら話を続ける。

 

「ヒントか、確かに電話の会話の中でここに言及していたね。場所の宛はそこからかな?」

「正確には場所を特定するピースの一つだな。そもそも最初に異常が起こっていると判断したのは電話した直後だ」

 

「直後、ですか?」

「そうだ。あのとき藤乃は"いつもの道"を通って公園に向かったと言っていたがそのいつもの道は現在工事中でな、わざわざ嘘を付いた時点で何かあったのは直ぐに分かった」

 

「あ!」

「お兄様なら気づいてくださると思っていました」

実槻の話を聞いた天音はそのようなことを言っていたのを今更ながら思い出した。ここに来るまで色々な意味でいっぱいいっぱいだった為すっかり忘れて居たのだ。藤乃も実槻なら気づくという確信があったが、それでも安堵から胸を撫でおろしている。

 

「そして浅上の爺さんは凄い過保護でな。友達の家に遊びに行かすなんて基本許可しない、それをよく知ってる藤乃が無断で天音の家に遊びに行くなんて明らかにおかしい。それに声にもわずかに恐怖から来る震えが認められたしな」

 

「そういうことか。これは一歩取られたね、電話を許すべきじゃなかったか」

「まぁ許さなかったら許さなかったでもっと怪しんだろうけどな。この時点で何かの厄介ごとに巻き込まれたのは分かったから急いで公園に向かってみたら二人の足跡を囲むように複数の大人の男性と見られる足跡があった。争った形跡は無かったから誘拐の線が濃厚だと判断した」

 

「ではどこに連れていかれたを考えるとあの電話で変な横やりが入らなかった以上既にある程度絞れている。まずいつもの道、浅上家から公園までの最短ルートが使えないことを知らない時点で、浅上家の近所や同じ地区に住む人間の犯行の線は薄い。そして天音の家に遊びに行くという発言だ。前者を通しただけではこの町の外の人達という俺達と全く関係がなかった集団という可能性もあったが、その場合後者を通すことはまずない。知人・友人の家なんて電話一本で嘘が露見してしまうからな。つまりその発言を通したということそっちの方が都合がいい或いは確認しても誤魔化すことが可能であることを意味する」

 

前世で警察との捜査で培った推理力を存分に披露する実槻。天音父も時間稼ぎの為に推理を話させたが内心本当に天音達の一個上なのかと驚愕を隠せない。その二人も歳に比べて大人びていると思っていたが、大人びてるどころではない実槻に冷や汗が出る。

 

「そして誘拐現場の公園に残された足跡。藤乃、天音の足跡を見る限り動揺しているのが見て取れた。まぁ誘拐される直前なんだからそれは当たり前なんだが、問題は明らかにその度合いに差があり過ぎることだ。明らかに天音の動揺の度合いの方が足跡の乱れを見れば分かる。二人は同年代、片方が怖がりって訳でもないことを考えるとこの動揺は恐怖というより困惑によるもの・・・例えば誘拐を行った集団或いはその中にいる人が見知った人物だったとかな?」

 

あとはもう分かるだろ?と暗に言いながらも言葉を続ける。

 

「ここまでくれば後は其処らの子供でも解ける。同じ町に住むが、同じ地区にはいない、天音の家に行ったという情報が不利にならない、大人の男性を複数人誘拐に動員出来て天音が一際動揺する集団・・・最後のダメ押しは電話で僅かに聞こえた車のエンジン音」

 

「エンジン音だって?」

「恐らく電話はその車に乗らされる直前だったんだろう。エンジン音の重なり具合から2台止まってたな、そしてそのエンジン音を鳴らすエンジンを積んでいる車を複数台所有している集団を俺はこの町で一つしかいない」

 

絶対音感、実槻が前世の時から身に着けていた能力と彼の膨大な脳内物品データを持ってすればこの程度の音による識別など造作もない。もっとも実槻は先天性的に絶対音感を持っていたわけでも専門の訓練をして後天性的に身に着けた訳では無いのだが。

 

「それがここ翔門会か」

儀式場をピンポイントで狙ったのは首謀者の可能性が高い天音父の同行を事情を知らなさそうな信者達に聞いただけだ。流石に幾ら目的を伏せているとはいえ皆も使う儀式場を一時的に貸切る以上人払いも兼て事情を知らない信者達にも貸切ることを伝達する必要がある。そういう事情もあり天音の友人でもあったのと特に秘匿されている情報でも無かったのであっさり聞けたのだ。

 

「うん、見事な推理だ。私がムスカなら君は某小学生探偵かな?」

「俺そいつほどサッカー上手くねぇよ。不得意って訳でもないけどな」

 

「はは、サッカーも普通にトップクラス狙えるレベルだからね彼は・・・だから残念だ。君ほど有望な子を殺すしかないなんて」

「実槻さん!?」

「お兄様!?」

周囲の信者達の包囲は既に完了している。中には鈍器やバールなんてものまで持ってる者達もいる。ここまでやるとは藤乃達も思っていなかったのだ。

 

「知られた以上仕方ないって奴か」

 

「そういうことだ。君の身内を助けたいという思いは立派だ・・・だが残念ながらこの世の中は綺麗ごとだけでは何大きなことを成すことは出来ないのだよ。それに伴う力が無ければ無意味なのだ。だからこそ私は人類救済の為に清濁併せ吞む覚悟を決めたのだ!!」

その言葉と共に比較的近場にいた信者の三人が実槻に襲い掛かる。一人は棍棒を容赦なく頭に振り下ろしてきて藤乃達は思わず目を逸らしそうになるが・・・当人はそのなってなさに呆れていた。

 

「遅い、これで力だと?」

攻防は一瞬だった。真っ先に振り下ろされた棍棒は紙一重で躱され、棍棒を踏み付け振れないようにすると左右から来る無謀身に身長差から前かがみになって迫ってくる二人を迎撃する。先に右から来た一人の両腕をその場で躱し顎に向かってアッパーカットの要領で掌打を打ち、棍棒を軸に回転し左からもう一人の腹に蹴りを入れる。それを間近で見て動揺している棍棒使いは踏んでいた棍棒を伝い駆けあがり相手の両腕を掴むみぞおちに膝打ちを放ち、その衝撃で相手から離れ着地していた。どれも相手の動きを完璧に見切った動きだった。

 

「な!?」

天音父や周りの信者達は驚きを隠せないが実槻は出来て当然とばかりに床で伸びている三人を尻目に彼らに向き直る。

 

「碌に武術のイロハもない。もしもあの三人がきっちり訓練を積んでいた奴等ならこうもあっさり無力化なんてできん。まだギャングやマフィアの下っ端共の方が良い動きをする」

 

落胆している実槻だが、これは相手の準備不足というよりも寧ろ準備に入る為に色々段取りを組んでいる時に突撃しているからだ。天音父とてことを起こす段階には十分な武力を用意している算段は付けていた。RPGに例えると大目標の魔王とその軍勢を攻略する為にレベル上げと装備更新の金策を始めようと初期位置の村を出て最初の敵のエンカウントでそこの幹部クラスのボスと戦う羽目になったと言えば分かりやすいだろう。

 

「人類救済を目指すのはいい、だがそんな過去の英雄英傑ですら達成出来なかった大偉業をたかが『清濁併せ吞む』程度の覚悟で行おうとするなど片腹痛いわ!」

 

実槻の見せる珍しくキレた表情に信者達は委縮する。そこには今世を生きる少年では無く、嘗て見鬼の翁と敬われ恐れられた男がいたのだった。




読了ありがとうございます!鑑定ニキは第一話の時点でガキ相手に魔法使わなくても立ち回れるくらい素で強かったりします。次は人類救済について鑑定ニキなりの考えを出す予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。