親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第五十七話になります!ペルソナ5Xで初めてペルソナのゲームに触れたのですが、おもしろいっすねやっぱり!メガテンもD2だけじゃなくて原作と同じシステムで新作出て欲しいですね。

あと前にデータだけ出したボティスの耐性が盛大に間違えていたので修正しました。ジャヒーのデータをコピペしてから弄っていたのですが、スキル以外の耐性を書き換え忘れてましたね。キャラが出る前に気付けたのが不幸中の幸いでした。


救済の種

「・・・こんなものか」

 

最初の3人を撃退し終えて数分後、実槻は天音父を残し他の敵を戦闘不能にしていた。集団で掛かろうともまるで未来が見えているかのような予測による立ち回りがそれを可能にした。きちんとした集団戦闘の訓練を積んだ者達と違い、彼らは連携一つ一つに隙が多い、その隙と合わせて攻撃、回避、防御を行えば苦も無く勝てる程度の者達だった。

 

「君は・・・いったい!」

「驚いている所悪いが俺より強い奴なんてこの世には多くいる。ただきちんとした訓練も積んでいない集団程度でやられるほど弱くは無いというだけだ」

 

これが集団の究極とも言える警察の特殊部隊や自衛隊、軍隊・・・所謂軍団と呼ばれる者達であればこうも上手く無力化は出来なかっただろう。統率、組織力、厳格な規則、訓練などただの集団では持ちえないものを持っているのが軍団だ。集団と軍団が戦えば、例え数の差があった所で集団が軍団に勝てる道理はない、ならばそんな軍団を相手にしたこともあった実槻が遅れを取る道理もまたない。

 

それでも教祖故のカリスマ性から統率は少なくともこの場にいる信者達には行き渡っているので、素人の集まりでも集団と呼称出来ただけマシなのだが。

 

「とはいえ、個人の強さも集団の強さも一中一夜で如何にかなるものでもない。そもそも幾らあんたの計画の支持者と言っても元は一般人。訓練するにしても時間以前にモチベがもつかどうかも分からん。それにいずれ事情を知らない信者や外部の人間も取り込む必要が出て来るが、神の試練を乗り越える可能性を示さなければ誰も乗って来ない・・・だから自分の娘を旗印にする必要があった。教祖と言うトップなら兎も角象徴という役割ならあんたより天音の方が適任だと俺も思うよ」

 

天音父の行動に多少の理解示す実槻。しかし、理解はしても彼に向ける冷たい視線は変わらない。

 

「まぁ天音の意見を聞かずに儀式をしようとした時点で論外ではあるが、他にお前に手が無かった以上ある程度情状酌量の余地はある。天音だってちゃんと事情を説明され、誰かの命を犠牲にするものでは無かったのなら儀式に同意していただろう」

 

「・・・私とて彼女を生贄とするのは本意ではないよ。実際時間を掛けていいのなら生贄無しで儀式を行うことも可能なのだ。しかし私達にはそんな時間が無かったのだよ!」

 

「銃!?」

「お父様、そんなものまで!?」

天音父はそう言うと同時に懐からリボルバーを取り出す。しかし、実槻は近くで見守っている藤乃達と違いまるで分っていたかのように動揺する素振りすら見せない。

 

「予想はしていたが持っていたか。人類救済を謳っている奴が子供に拳銃を突きつけるとは」

 

「説教でもするのかね?」

「・・・まぁあんたがここの教義通り神の試練を乗り越えることのみを目指す奴だったら特に何か言うことも無く藤乃と天音を助けるだけで終わらせていたさ。その場合ただあんたと俺との利害が一致せずに争ったというだけだからな。どちらが正しいかなど議論するだけ馬鹿馬鹿しい」

 

だがと言葉を区切ると実槻の声のトーンが一段低くなる。

 

「お前が謳ったのは神の試練を乗り越えるだけではなく、人類救済という大偉業。流石にニ三口を挟みたくもなる・・・そもそもの主張である『汚いことをしてでも人類救済を成し遂げる』なんてこと自体間違っているのだからなおさらだ」

 

「何?まさか犠牲を出さずに成し遂げろというのか?」

「ああ、そうだ」

 

実槻の言葉に少し驚くがすぐに嘲笑を返す。

 

「くく、はは!!何を言い出すかと思えば!君はもう少し利口だと思っていたのだがまさか天音よりも現実が見えていないとは!そんなことで人類を救えるのならもうとっくに誰かが達成している!どうやら君を少々買い被り過ぎていたようだね。君の言葉を借りるなら片腹痛いよ!」

どれだけ強かろうと所詮は子供。しかも自分の娘よりも現実が見えていないとあざ笑う天音の父。それでも実槻は一ミリも表情を変えずに口を開く。

 

「現実が見えていないのは貴様だ愚か者」

 

その瞬間実槻からの圧がより強くなる。あざ笑っていた天音父もその圧に口を閉ざしてしまう。

 

「『そんなことで人類を救えるのならもうとっくに誰かが達成している』?それは貴様の清濁を併せて吞むという主張も該当しているだろうが。そもそも一個人、一集団で種族全体の命運が左右されるのなら所詮その程度の生物だ。そんなものとっとと滅びてしまえばいいし、実際滅びるだろう」

 

個人や集団レベルならいざ知らず種族全体でそのレベルなら神の試練など無くとも自然の競争でいずれ淘汰される程度の存在でしかない。中心が潰れる程度で即瓦解する種族に価値などある訳がないと主張しながら天音父の方に歩いて行く実槻。

 

「だが人類は今日まで生き長らえている。つまり一個人、一集団で種族全体の命運される状態からとっくの昔に脱却していることを意味する。そんな人類の中で自分達が人類救済を成すと謳っても哀れなだけだ」

 

「哀れ、だと!?ならばどうすれば人類が救済されると言うのだ!」

「理屈としては至極簡単だ。汚いことをしようとするとどこかしらに歪みが生まれ、表向き達成出来たように見えてもいずれ崩壊する。ならば汚いことはせず正道を行けばいいだけのこと」

 

「そんなことが今の人類に出来る訳がない!」

世界には今だ悪徳や争いが蔓延っている。この状態で正道だけで目指す人類救済など叶うはずがないと主張する天音父に実槻は

 

「ああ、俺もそう思うよ」

 

同意で返した。そして極めて冷静に言い放つ。

 

「つまりこれまでの、そして現行の人類では人類救済は"不可能"ということだ」

 

「不可能・・・だと?」

子供の口から出るにはあまりに異質な言葉に思わず固まる天音父。それでも実槻は淡々と言葉を紡ぐ。

 

「疑問に思うことでもない。人類救済を成すには正道以外では不可能、しかし現行の人類では正道で人類救済は目指せない以上人類救済を成すことも不可能。実に簡単な理屈だ」

 

「人類救済を成すには人類全体がそれを望み、他者の為に一丸となって行動に移す必要がある。それぐらいで無ければ一種族を救うことなど不可能だ」

 

人類全体が他者を思い、救済に動かなければ人類救済など成しえない。言葉に表してしまえば至極当然の理屈であり論理だ。

 

「しかし、だからと言って俺は過去現在に置いて人類救済の為に動く者達全員を愚か者というつもりはない。種が無ければ実が育つことも無いのだから。未来の為周りから少しずつ救済の動きを広めて行く行動を俺は支持しよう」

 

「人類の救済の種は何でもいい。ここのような心の支えとなる宗教の信仰でもいいし、暮らしを良くするための政治、科学技術の発展、それこそ炊き出しやら町のゴミ拾いなどでもいい。他者を思いやり、誰かを助けようと行動する。その動きを広められればなんでもいいんだ。それで種は蒔かれ、育っていく」

 

実槻に取ってそれらに大きな違いはない。ただ分野が違うだけのことで全てが尊ばれるものであり行動だ。それは現在でも同じこと。唯一神信仰だろうが、天使信仰だろうが一神教以外の宗教であろうと同じ信仰と言う同じカテゴリのものでしかなく、規模の差はあれど上下など無い。彼の中でそこらの石ころへの信仰だろうと唯一神や仏への信仰などと全くの等価なのだ。

 

彼がそれを排除するのはそれがただ人類に、人々の営みに害があるなどの場合だけで、今の時世ではメシア教がその率が高いというだけのこと。ただ真面目に信仰しているだけならメシア教であれ尊重するし、暴走するなら他の宗教であろうとメシア教の狂信者達と同様に排除するだろう。

 

「俺が愚か者というのは種が無い、或いは成長中に実を得ようとするせっかちな奴等だ。過去、現在、未来に跨り種は育つ、それこそ頑張って漸く人類が生物的な寿命に達するまでに成せるかどうか、実を付けられるかどうかというのが人類救済という大偉業なんだよ」

 

人類に絶望している訳でもないが、希望も抱き過ぎない。実槻の視点と精神は明らかに人間のそれらから逸脱している。それは人類そのものを俯瞰して見ることの出来る第三者のものだ。

 

「だから貴方達だけではない。俺と貴方達も含めた現行の人類では誰であろうと人類は救えないんだ。残念なことだがな」

 

そう言って実槻は唖然とこちらを見る天音父の手から拳銃を取り去ったのだった。




読了ありがとうございます!過去回想もこれで終了となります。最後天音父に拳銃を撃たせるかどうかを悩みましたが、まぁ子供が作中みたいなこと言ったらSABN値チェック失敗みたいな感じで唖然となるか思い撃たずに終わりました。撃った場合でも実槻なら撃たれる寸前に射線を読んで、撃つのを中断出来ないタイミングで射線から外れて回避してカウンター仕掛けますけどね。

あ、因みに原作のデビサバでも同様に天音の幼少期に儀式が行われたのですが生贄とかの設定はありません。原作世界ではカオ転世界よりも時間的猶予はあったと設定しています。
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