親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第七十一話になります!エンドフィールドにハマり書くペースがまた遅くなってしまった。


戦いの刻

『・・・来たか』

 

監視をしていた一団がついにこの部屋の扉の向こう側にたどり着いた。この研究所の第一研究室、ここにいる人間は我が直接操っている女以外にはいない。無論必要とあらば呼び寄せるが、我がさせている研究の大半はこの女が進めている。他の研究員はその女の負担軽減要員でしかないが、いるのといないとではやはり研究の進捗に影響は出るし、研究成果の起動作業にも必要なのである程度気を払う必要がある。

 

つまり研究員達から研究の成果の起動に必要な膨大な生体MAGを徴収することは出来ない。研究に関わっていない職員も何人かいるが、十人にも満たない非覚醒者の生体MAGを全て吸い上げた所で到底足りはしない。あの者達を呼び込んだので撃破出来れば問題ない生体MAGを確保できるが・・・無論それにはリスクがあるのは理解している。しかし、ある種の偶然の事故により不完全な形でこの世界に召喚されこの研究所に縛られ仕方なく異界を作って五年。いい加減存在を保つのも限界になって来た。

 

これがただの木っ端の、元の我の名すら冠せないような分霊であれば諦めも付くが、この我は元の名を冠する程強い分霊、というか普通にその中でもそこそこ強い個体である。ただ無為に消えるだけでは大損も良い所だ。故にここまで足掻いて来た。

 

研究所外の人間達に気取られぬよう隠蔽工作をし、作業の遅れや不信を抱かれないよう精神操作や思考誘導は常に絶妙な調整を施した。MAG徴収も研究所の中だけ且つ研究活動に支障が出ない程度に止めてやり繰りをした。この町中から徴収する案もあり、実際元の予定では起動作業に必要な膨大な生体MAGは作業を行うこの研究所の人間を除く、この町中の人間の生体MAGを徴収するつもりだった。

 

しかし、最後の最後である研究成果の起動作業時にやるなら兎も角それまでに継続して徴収した場合異界を極小規模にして補足を躱していたが、帝都結界に確実に異界を補足されてしまう。いや、起動作業時のときにも補足はされるのだがそこまでいけば帝都結界を用いたとしても遠隔の異界封印なんぞ抵抗できる上討伐の為派遣されて来る人間どもも問題なく蹴散らすことも可能であり、そもそももうこの異界にいる必要性も強制力もないので、異界を捨てて逃亡し地方に潜伏する選択肢もある。

 

だが当然それまでにこの手を使ってしまえば研究途中で討伐されるリスクが跳ね上がり、それ以前に普通に帝都結界で異界自体を遠隔封印されてしまえばどうしようもない。最悪唯一この研究所で我の憑依に耐えられる霊的才能を持つこの女に憑りついて逃亡するしかないが・・・その場合研究の進捗が大幅に遅れるのは目に見えている。

 

単純に他に研究員がいない、研究施設が無いなどはこの際些事である。問題はこの女の研究者としての天才性が失われることが問題なのだ。憑依すれば彼女の膨大な知識や研究の記憶は読み取れるだろう。しかし天才とは感性、発想なども含めてのこと。我がこの女の身体を乗ってもそれらは得られない以上研究者としてのスペックは激減すると言っていい。その為この手段は他にどうしようも無くなったときの消滅よりマシな最終手段だ。

 

まぁそれでも覚醒者が居ない町の人間達の生体MAGを限界まで徴収しても足りるかは賭けだったのだがそんなときに今回の一団が現れた。覚醒者が4人、非覚醒者だが霊能の才能がありそうな者が8人。覚醒者は一人を除けば明らかに実戦慣れしているのが見て取れ人の姿だが悪魔も連れていた。見た所男の覚醒者の仲魔であろう。

 

正直言って迷った。異界を帝都結界に補足されないごく短時間の一瞬だけ広げ取り込むことは可能だが、今の我では非覚醒者だけを選んで、ということは出来ない。どうしても一定の範囲の人間達を取り込むのが精々だ。正確には今の我でも時間を掛ければ可能だが、それほど長く異界を広げれば絶対に帝都結界に補足されてしまい元もこうも無い。

 

加えてこちらの戦力も問題だ。我自身不完全な状態なので全力が出せない上我が呼び出した直下の配下の悪魔達のレベルの質も正直言って悪い。これは我自身が不完全なのと不要に人間に危害を加えないよう我の命令を聞ける悪魔達を厳選する必要があったからだ。まぁそうは言っても異界なのでガキなども勝手に湧いて来るのだがそれらを抑え込む直下の配下達はそれらで固めないと不味い。

 

ほぼ確実に前段階まで行けるが、生体MAGが足りず起動作業が失敗する可能性が高いスルーする道か撃破出来れば確実に起動作業を行えるが、その前段階に行くのが不確実になる取り込む道。この選択肢に我ですら少しの間迷ってしまった。

 

そのすぐ後この研究所が目的地と分かり取り込む道しか無くなってしまったのだが。愚者なら異界と現実の境界を操作し、異界に入らせず応対する選択肢があったが、一定レベルの覚醒者が直接訪れてしまえば普通に異界化してるとバレる。援軍など呼ばれたら最悪だし、先程の最終手段もこの異界を外からあ奴等に援軍が来るまで監視されてしまえばそれを実行してもほぼ意味が無い。

 

否が応でもあ奴等を撃破する必要が出て来たが、戦力が乏しい以上貴重な直下の配下を雑に強敵と思われる存在に当てるわけには行かないので、我と女の守りの為この第一研究室に集め、勝手に湧いて出た配下よりも更に低位の悪魔達を一階、二階でぶつけて戦力を確かめて見たが・・・予想はしていたが軽く殲滅された。

 

まず敵の槍や刀を使う前衛の女の覚醒者はシンプルに強い前衛だ。アガシオンも使役しており補助をさせて自身はただひたすらに敵を屠る。しかも監視していたところ普通に戦術なども考えるタイプでただの猪ではない。

それに高位の悪魔の加護も感じ取れる。その悪魔の特定は今の我では無理だがその悪魔に由来の何かがあるはずだ。

 

そして件のサマナーの男はなんと二体同時使役を行う超一流クラスの術師だった。本人もジオ系の魔法やデバフを使うだけでは無く新たに召喚した仲魔とのシナジーは厄介だ。最初の一体は前衛型で一見回復役が居ない様に見えるが超一級クラスのサマナーが契約している仲魔が二体だけということはまずあるまい。単に数が居るだけの雑魚共では回復などする必要が無く、手早く殲滅出来る仲魔を選んだだけであろう。他の仲魔次第で自在に戦術が組み立てられ事前情報が無ければその対応が難しいのがサマナーの大きな強みである。

 

 

サマナー自体は純後衛タイプの様なのでサマナー狙いをするなら如何に前衛を躱して配下達を接近させるかだが、仲魔達との話を聞く限り自衛レベルではあるが剣も使えるようだ。実際に抜く機会はここまで無かったので詳細な力量までは分らんが・・・レベルの高さもあって少なくとも効率を考えなければ宛がった低位の悪魔程度は余裕をもって倒せるぐらいはあるであろう。撃破に時間を掛ければ他の人間や仲魔のフォローが間に合ってしまうので接敵させる配下は2体以上、複数体を当てる必要があると見るべきである。苦手な接近戦の対応策もあるのは若いとはいえ超一流のサマナーの腕を持つだけはあるということか。

 

あとの覚醒者二人だが、一人は明らかに戦場に慣れておらずレベルも低すぎる。まだ覚醒したばかりで碌に自身の異能を扱えていないのだろう。愚者よりはちょっと頑丈程度なら他の非覚醒者達と同じ非戦闘員に分類していいであろう。

 

もう一人は先の二人よりもレベルは低いが戦闘能力はそこそこの代わりに素早く、また斥候能力があるのが厄介だ。道中も敵の情報収集や罠などの看破などで活躍していた。まぁ罠に関してはそんなものに使うMAGはない、完全な支配状態ではないので研究者が掛かってしまうリスクがあるなどの理由でこの異界には存在していないのであるが。低レベルでも一芸があるだけで仕事が出来き、戦力になるのが集団戦の肝の一つと言えよう。戦闘中隠れて何かをするのは難しいか。ただメインの攻撃手段である攻撃魔法はフブ系の魔法以外使わない所を見るとそれに特化していると見え、同じように攻撃魔法はジオ系の魔法に特化しているサマナーの男のように耐性貫通系の力も感じず、補助魔法も男ほど出来る訳ではないようなので、純粋な戦闘に置いての対処は容易だ。

 

ここまで色々分析して見たが、正直言って真正面から時間無制限で直下の配下と戦力である覚醒者達+仲魔達が当たれば勝つのは人間側だ。それほどまでに戦力差があるがこちらが付け入る隙もある。あ奴等は必ず護衛対象である未熟な覚醒者と非覚醒者達を守る様に立ち回るはずなので戦場での動きが限定される。加えて非覚醒者を首尾よく襲い犠牲者が出ればサマナーの男の親族であったこともあり士気低下も狙え・・・いや、それよりも人質にした方が確実か。余裕の無くなった人間は大半が絶望して気力を失うが、稀に吹っ切れることもある。人間の中では強者が混じっているだけに用心の為ギリギリまで追い詰め過ぎない方が良いであろう。

 

あとはその状況にどう持って行くかだが・・・直下の配下の戦力、我の今の不完全故の特殊な状況、この第一研究室に施した防衛用の仕掛け、そして奥の手。これらの手札と収集した相手の情報を持って勝負をしなければならない。相手も1階、2階で宛がったのが雑魚共であったこともあり、我に見せていない手札は当然あるはず。

 

『全く、厳しい状況だ』

 

そう言葉を零してから間もなくロックしていた扉が破壊される。ただ単に物理的に破壊されたとしても大した時間稼ぎにはならなかったことは織り込み済み。迎え撃つ為の各種の最終調整や確認が出来る時間を作れただけで十分である。中に入った者達は大半は一人で大型コンピューターで作業中の女に視線を向けるが、戦力となりえる者達は油断なく周囲を警戒している・・・あわよくば奇襲出来ないかとも考えたが、これではダメだな。

 

ならば魔王として堂々と敵に宣告を与えるのみよ。

 

『よく来たな人間共よ。待って居ったぞ』

 

これより先、戦いの刻とならん。




読了ありがとうございます!今回のボス視点のお話でした。ボスにも積み重ねたものはあるものです。
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