親友が英雄の転生者だった件について   作:電脳図書館

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第八十一話になります!この異界のラスボス戦となります。あ、真3TRPGの復刻が届きました。昔一回だけPLルルブなし体験卓でやったんですけどまたやりたいですねぇ。


宙の視座

目の前に迫る強大な攻撃魔法。回避、防御は間に合わない。迎撃も一撃が限度だろう。しかも普通の一撃では無理だ・・・故に、封を解く。

 

禁の一:自身の生命を守る為以外に私利私欲で解いてはならない。

禁の二:封を解く以外の打開の方法がない事態で無ければ解いてはならない。

禁の三:自身が心から解くべきだと決意しない限り解いてはならない。

 

・・・三つの禁の条件に今回の事態は該当。俺が本来の"俺"に戻るときだ。封を解くのは一瞬で済む。視界とその他の感覚が一瞬のうちに人間のものから一気に拡張される。それは無理に抑え込んでいたものを開放した感覚に近い。

 

今まで自身の感覚は本来のものと比べれば、慣れているとはいえ視界は曇りガラスに等しく、全身の感覚も麻酔を打たれたかのように鈍いものだった。それらが一気に晴れていく。

 

視界はクリアになり、先程までとは比較にもならない大量の情報が押し寄せる。全身の感覚は眠りから覚めたように鋭敏になり、感覚からの情報は勿論身体の動きをミクロ単位以上の精度で動かせる。

 

ここまで劇的な変化をしても動揺はない。まぁ急激に進化したとかなら兎も角、元に戻っただけなのだから当たり前のことではあるのだが。

 

 

 

「なに!?」

「実槻・・・貴方は」

「ああ、この視界、この感覚。実に12年ぶりだな・・・毎回のことだが靄が晴れ、眠りから覚めた気分だ」

 

【ビックバン】を剣で斬り払った彼はその目をルキフグスに向ける。その視界は先程のまでとは比較にならないほどに様々なものが視えていた。

 

『な、なに、これ!?こんなの・・・情報の濁流なん、てレベルじゃ!あ、あああーーーー!!!』

「やはりアドミニストレータでも耐えられないか。まぁ聖女クラスの覚醒者の人格が複数融合してる分情報処理速度は高いから即発狂しないだけいいが・・・この状態では俺の感覚器官とリンクするキバの鎧は使えないな。しばらく休んでろ」

 

アドミニストレータを発狂から守るためキバの鎧を解除する。そしてルキフグスと景虎は実槻の両眼を見て一瞬息を飲む。

 

 

「宇宙だと・・・?」

「初めて見たときは訳も分からず恐怖を感じるだけでしたが、覚醒したことではるかに増した霊的な感性で見るとこう見えるんですね」

二人には実槻の両目に宇宙を見ていた。目のすべてが黒く染まるがその中では星々が輝いている。

 

「ふむ、そう見えるみたいだな。別に眼自体に力がある訳じゃないんだが、俺の視界を霊的な感性で見るとそう感じられるってことか」

 

「視界か・・・お主、【ビックバン】をどうやって斬り払った?」

先程まで動揺していたが、流石は地獄の宰相。動揺する心を立て直し、相手の能力の分析に入る。しかし

 

「別にそう難しい理屈じゃない。"視えたから斬れた"というだけの話だ」

 

「・・・何を見た?術式を見て脆弱な部分を斬ったとでも言うのか?その程度で瓦解するほどの魔法ではないぞ!」

「【ビックバン】という魔法の術式、理論、魔力の結合、構築精神、未来、過去などの全てだ」

 

「全てだと!?」

ルキフグスの脆弱な部分を斬ったという考察自体は当たっている。だが、実槻が斬ったのは術式だけではない。魔法の術式、理論、魔力の結合、構築精神、未来、過去など全て視認したあと一度の斬撃で複数の脆弱な部分を斬ったのだ。

 

彼は現在しか視れないが、過去の情報をデータのダウンロードの要領で視ることはでき、それらの情報を総括して構築される未来予測は下手な未来予知の異能よりもはるかに精度が高い。

 

「そんな大したことじゃないさ、斬り払ったとは言ってもそれら全ての脆弱性を斬った訳じゃない。一度に斬れる数にも限度はあるし、特に未来と過去なんて包含する要素が多すぎるだろう?だから視た中で特に斬り払うのに重要そうな部分、俺達の地点に向けて放たれた過去と着弾し、爆発する未来の部分を斬っただけにすぎん。仮に本当に一度の斬撃で全ての脆弱性を斬れたなら斬り払うどころか、着弾する前に【ビックバン】そのものが消滅している」

 

実際実槻と景虎がいる地点を除いた周囲にはクレーターが出来ており、【ビックバン】の威力を物語っている。彼に全知に至れても万能ではない。人間である以上肉体的な限界があるのだ・・・少なくとも今のところは。

 

「という訳で景虎。力を貸せ」

 

「それはいいですけど…私も結構自分勝手な性格ですが、実槻も大概ですよね。普段は私達の意見を聞くのに自分が封印を解くと判断したら躊躇いなく解くんですから。まぁ解いてしまったのなら早く終わらせないといけませんね」

「別に元に戻ってるだけだから長時間封印を解いていても"デメリット"自体はないんだがな」

 

談笑しつつも二人ともルキフグスから目を離すことはしない。そしてルキフグスもこの程度で心折れるほど弱くはなかった。

 

「全て見切れたとしても人間故の限界があるのなら物理的に対応できない数で押すまでのこと!」

「景虎!馬!」

 

「放生月毛!」

ルキフグスが視界内にいる以上、実槻はルキフグスの思考すら視通せる。すぐに景虎に放生月毛を召喚させると共に乗馬する。

 

「MAGの消費が激しくやりたくはなかったが、仕方がない!【ビックバン】!!」

「同じ魔法・・・いえこれは!?」

「景虎!走らせろ!【ビックバン】の連続爆撃だ!」

そう実槻が指示した直後、複数の【ビックバン】が炸裂する。先程放った力を溜めた状態で放ったものより一つ一つの攻撃範囲、威力は低下というより通常のものに戻っているが、文字通り数が違うのでそれぞれの爆撃に多少のタイムラグがあれど全てを総合すれば攻撃範囲は先程の一撃より遥かに広い。

 

「俺の言うとおりに走らせろ!迎撃は俺がやる!」

 

「分かってますよ!振り落とされないで下さいね!」

実槻の指示通りのルートで愛馬を走らせる景虎。【ビックバン】の爆撃の間を縫うように駆けていく。当然そんな隙間が無い時もあるが、その時は

 

「道を開けて貰おう!」

実槻のジオ系の魔法が先読みにより【ビックバン】そのものを迎撃したり、爆発を文字通り割って行く。強力な魔法の連続爆撃で物理的にも、霊的にも視界は効かないが、実槻の視界には何ら影響を及ぼさない。

 

「まずは接敵だ。遠距離戦じゃお前が戦闘に絡めないからな」

 

「遠距離攻撃は飛ぶ斬撃かハマ系くらいしか手段ないですからね私。銃とか弓はなんか性に合わなかったですし」

「これでも止め切れぬか!爆撃同士の僅かなタイムラグでここまで・・・!」

急速にルキフグスとの距離を詰めていく二人。そしてそれに対応する為の策を即座に立案していくルキフグス。思考そのものが視られていることにはすでに勘づいているので、それでも通用する策で無ければならない。

 

・・・この分霊が人界に迷い込んで、初の戦闘がこれとは。迷い込んだ経緯も含めて本当に運が悪いなぁ。




読了ありがとうございます!え、このままあっさり勝ちそうだって?いやいや、レベル70以上の魔王を舐めて貰っては困りますよ。あ、鑑定ニキが本来の視界に戻ったときの両目は覚醒者や悪魔には血界戦線の目を取られたレオナルドの妹みたいな感じ(星々の輝きはちょっと強いかも)に見えています。
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