王権の光   作:ウェストフォード

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スカウト

(正気かルビー、その提案は火のついた爆弾を抱えるようなもんだぞ)

 

アクアは、ルーナと美空という二人のスペックを誰よりも高く見積もっていた。

 

世界最大のIT企業と歴史的財閥の血を引き、そして先ほど話していた、中学バスケで全国を蹂躙したと言う、高い身体能力と精神力。

 

そして何より、あのアイの仮面を剥ぎ取った、人の深層を見極められるほどの生まれついての選民眼。

 

(ルビーのやつは、無邪気に一緒になんて言ってるが、コイツらが、ルビーの…いや、それ以前に誰かの引き立て役で終わる人間なわけがない…)

 

最初に出会った時に感じていた、12年前から感じ取っていたルーナの、異常なほどに人を惹きつけるカリスマ…アイの様にみんなから愛されるのではなく、自分と自分が認めた人間以外の他者全てをその気になれば平伏させる事もできそうな、ルーナの異様なカリスマ性をアクアは実は感じ取っており、それゆえに彼女と、その親友であり一番の腹心である美空を、B小町に引き込むのは危険だと、アクアはかんじとっていた。

 

(特に天月…あいつをルビーのアイドルチームに引きずり込めば、ルビーの夢も何もかもが、コイツの光に飲み込まれて書き換えられるぞ……!)

 

アクアはそう心の中で思いながら不機嫌そうに眉根を寄せ、ルーナ達を観察する様に見つめながら、冷めたコーヒーを一口啜ると、ため息をつき、諭すようにルビーに言った。

 

「……ルビー、お前、相手の事情も考えずに無茶なことを言うな。芸能界は綺麗事でやっていけるほど、優しい世界じゃないことくらいお前だって分かっているだろ。そんな世界に、一般人を気軽に巻き込むな」

 

アクアはそう言った。

 

その言葉は確かに正論だがらその声は微かに震えていた。

 

その理由は、今まさにルビーから勧誘を受けたルーナ本人の目、まるで深海にて輝くサファイアのような瞳が、ルビーの言葉を受けて"獲物を定めた猛獣"のように輝き出したのを見てしまったからだ。

 

(……俺が本当に恐れているのは、あいつがルビーの誘いに乗って、芸能界に巻き込まれる事じゃない……あいつが"本気"になることだ)

 

アクアは、12年前のあの日、アイがルーナにだ一瞬見せた、"本当の笑顔"

を思い出し、そしてそのエガを引き出した時のルーナの幼い体から湧き出る、覇王のカリスマ。

 

もしルーナが本当にステージに立てば、自分が守ろうとしているルビーすらも、彼女の圧倒的な光に焼かれてしまうのではないか、そんな懸念があった。

 

「……天月、朝比奈、言っておくがこんなルビーの戯言を真に受けて、アイドルになんて必要はないからな」

 

「あー!お兄ちゃんひどっ!アタシ、戯言なんて言ってないもん!」

 

ルビーは頬をふらませて可愛く怒ったが、アクアの目は全く笑っておらず真剣な眼差しだった。

 

 

ルーナが、彼女が笑いながら、自分のその言葉を聞き、それもそうだねと言って、笑い飛ばしてルビーの話をあしらってくれることを、心のどこかで願いながら、アクアは、あえて挑発するような口調でそうルーナに言ったのだ。

 

 

だが、ルビーに手を握られたままルーナは数秒間、何も言わずにルビーの瞳を見つめ返しました。

 

そのサファイアの瞳は、ルビーの熱意を分析し、同時に12年前のアイとの約束の重さを秤にかけているようだった。

 

「……ルビーちゃん」

 

ルーナの声は、先ほどまでのフランクなものから、少しだけ低く、少し冷たい響きを帯びたものに変わった。

 

そしてその時

 

「ルーナちゃん」

 

幻聴だろうか、ルーナにとって忘れられない、そして懐かしい声が聞こえた。

 

その声を聞いたルーナが、目の前を見ると、そこにはある光景が見えた。

 

「約束の10年…もうとっくに過ぎちゃったよ。さぁ!君はどうする?」

 

太陽に微笑み、夜空に輝く一等星のように輝く一人の女の子

 

「アイ…さん…」

 

ルーナにとって、人生で初めて憧れて、人生で初めて超えたいと思った、ルーナの永遠のライバル、アイが笑って、自分に向かって手を差し伸べていた。

 

ルーナは思わずその手を取ろうと手を伸ばしたが、その時。

 

「ルーナ!?」

 

「えっ、あっ、どうしたの美空?」

 

ルーナにとっての1番大切な親友である美空の声で我に帰った。

 

「いや、どうしたのはこっちのセリフよ。大丈夫アンタ?」

 

「あっ…うん、大丈夫だよ」

 

心配そうにそう聞く美空に、ルーナはそう言った。

 

すると、ルーナのその様子を見た美空がルーナの迷いと、芸能界の現実、その二つを考慮して、ある提案をした。

 

「ルーナ、これは私たちの人生だけじゃなくて、ルビーさんの人生も変えちゃう大きな決断だよ。だからルーナ、ここで勢いで決めるのは、アイさんに対しても失礼じゃない?」

 

美空の冷静な言葉に、ルーナはふっと憑き物が落ちたように微笑みました。

 

「そうだね、美空……ルビーちゃん、アクア君、ミヤコさん。この話、一週間だけ、考えさせてくれない?」

 

「一週間……?」

 

その言葉を聞いたルビーは、少し残念そうであり不安そうであり、同時にどこか希望的な様子で首を傾げる。

 

「うん、このアルバイトの期間が終わるまで考えさせて欲しいんだ。どうするべきか、私達がどうしたかを」

 

ルーナは優しく微笑みながら、そう静かに言った。

 

「一週間か…まぁ、妥当な判断だな」

 

アクアは努めて冷静に答えた。

 

「わかった、待ってるよ! その代わり、明日からのバイト、もっと、

もーっと頑張ってね!」

 

「あはは…うん、勿論だよ」

 

そうして、星野兄妹とルーナと美空による、嵐のような夜の会食を終え、二人は迎えに来たリリーの車へと乗り込んだ。

 

「それじゃあ、またねルビーちゃん、アクア君」

 

「いい返事、待ってるねルーナちゃん、美空ちゃん!」

 

バイトが終わり、帰宅するルーナと美空に、ルビーは手を振りながらそう言い見送った。

 

「おい、本当にあの二人を誘うつもりか?」

 

二人を見送った後ルビーに、アクアはそう聞いた。

 

「うん、だってさ二人ともあんなに可愛いし。それに…」

 

「うん…?」

 

「この前ミヤコさんからやっとアイドルになる事を認めてもらってからすぐに、ママに向かって初めて超えるって言って来たあの二人と再開するなんて、これって、運命だと思うんだ〜!」

 

あの二人が、入ってくれるなら百人力だよとでも言いたそうな様子で、ルビーはそう言った。

 

「それに、長年のアイドルヲタとしての私の経験が語ってるんだ!あの二人を率いれたら、普段アイドルに興味がないそうや女の子層の心をガッポリと掴んで引っ張ってくる事ができるって!!」

 

「なんともヤラシイ推測だな…」

 

続いて笑顔で、それでもって情熱的にそう語ったルビーのその言葉に、アクアはジト目で、呆れた様子でそう呟いた。

 

だがため息をつき、心を落ち着かせると、冷静な様子でこう言った。

 

「そうか…まぁ、お前の推測はともかく…相手が嫌だと言ったら無理強いはすんなよ。相手は、一般人なんだからな」

 

その言葉を聞いたアクアは、そう一言言うと、徐にソファーに座った。

 

(天月ルーナ…朝日奈美空…)

 

あの二人、そしてもう一人、有栖とは、ルビーとアクアは2回しか会っていない、だがそれでも、二人にとっては忘れられる事が出来ない名前だった。

 

特に天月ルーナ

 

なぜなら彼女は、完璧で無敵の伝説のアイドル、アイの孤独を理解し、そして唯一そんなアイに対して清々しい程の、ライバル心と対抗心を持って、正々堂々と宣戦布告をした少女…

 

そしてあの日アイが死んだ時に、唯一アクアとルビー以外に、今際の際でつぶやいた唯一の他人の名前だからだ。

天才で金持ちの家出身の恵まれた環境と才能を持ったアイドルって、皆様は推せますか? (今後の作品制作の参考にしたいので理由があればぜひコメント欄で教えてください)

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