王権の光   作:ウェストフォード

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始まりの日の回顧:4

 

 

リリーの静止を振り切り、私たちは無邪気で冒険心に満ちた心で車を飛び出したがいいが、進んでゆくにつれて、多くの木々によって光が遮られ、その上夕方になりつつあることも重なって、道は暗く、そして不気味になっていた。

 

「な、なんか暗いね…」

 

まるで、ヘンゼルとグレーテルが迷い込んだ、魔女がいる森のように不気味な雰囲気の森の様子に、美空は少し怖がっている様子であった。

 

「こんなに暗くて不気味なら、ゆ、幽霊とか…」

 

「確かに、なんか出そーて、感じだよね」

 

私とアリスちゃんは、それぞれイタズラ口調と少し怖がっている口調で、幽霊が出るかもとそう言った。

 

すると

 

「や、やめて!!ほほほ本当にででででたら、どどどどうするののの…」

 

私の横にいた美空は、顔を真っ青にし、涙目になりながら心の底からビビっている様子で、私の腕に抱きついて来た。

 

「美空…もしかして幽霊とか…」

 

「き、嫌いだよ!!嫌いに決まってるよ!!昔、呪怨て言うホラー映画を見てから、暗い場所とか幽霊とか本当にむ、無理なの!!」

 

「へー」

 

私がそう聞くと、ビビりながらも開き直るような口調で、そう言う美空に、私は少しニヤニヤとしながらそう言った。

 

(美空、幽霊が嫌いなんだ)

 

「ぎゃ、逆に聞くけど、ルーナと、あ、有栖は、だ、大丈夫なの!?」

 

私がそう心中で思っていると、唐突に美空はそう私とアリスちゃん聞いて来た。

 

「…大丈夫ではないけど、常に強い心を持っていれば、邪気は来ないって、前にテレビでやってたから」

 

アリスちゃんも少し怖がっている様子でそう答えた。

 

一方の私であるが

 

「まぁ、イギリスには幽霊が出る事を名物にしているホテルもあるし。それに死んだ人が出てくるなら、私が住んでいる家なんて、数百年前から、うちの血族や長年尽くしてくれた使用人…誰かしら死んでるんだから、いちいち人の生き死にで怖いとか思ってられないよ」

 

正直、幽霊とかそう言う非科学的な存在は信じていないし、それにただ佇んで居るだけのイメージが先行する幽霊の何処が怖いのか、分からなかった。

 

「それとこれとは幽霊の性質が違う!!こう言う場所にいる幽霊はさ、さぁ、人に取り憑いて、この呪い殺したりする、そんな幽霊なんだ!…」

 

顔をさらに真っ青にし、美空が私にそう言ったその時だった。

 

「うぅ…」

 

突然私達の後ろから、子供の啜り泣く声が聞こえた。

 

「美空、もしかして泣いちゃった?」

 

ついに我慢できなくて泣いちゃったのかと思った私は、そう美空に聞いた。

 

だが

 

「泣いて無い…けど」

 

「え…あの、私の声でも…」

 

その瞬間美空とアリスちゃんは顔を真っ青にしながら、声のする方へと顔を向けた。

 

するとそこには、ちょうど岩陰になって居る所でうずくまり泣いて居る一人の少女の姿があった。

 

「え、え…う、嘘…」

 

「わわわわわ…ゆ、ゆ、ゆ…」

 

その少女の姿を見たアリスちゃんと美空は、顔面蒼白になりそして。

 

「「幽霊ーーーー!!!!!!」」

 

二人の、恐怖から発せられる叫び声が、森に木霊した。

 

「お父様ーー!!!」

 

「おおおおお願い、呪い殺すのだけは勘弁して!!」

 

その時の光景は、今でも思い出したら笑ってしまうほどであった。

 

二人は、まるでこの世の終わりの様な顔をしながら、理性を無くした様にそう言っていた。

 

だが一方で私はと言うと

 

「す…すごい!本物の幽霊だ!!」

 

初めて見る、幽霊という存在に対して恐怖心は無く、むしろ強い興味を惹かれていた。

 

私は、由緒正しきイギリス貴族である我が家の影響で、英国国教会の教えに則り、神様は敬虔的に信じて居るが、それ以外の眉唾物のオカルト…

 

特に幽霊などはあまり信じてはいなかったが、まさかこの様な怪奇現象に遭遇する事は無いと思っていたけど、まさかこんな場所でお目にかかれるとは思わず、私は好奇心に心惹かれていた。

 

「ちょっとルーナ!相手幽霊だよ!お化けだよ!貞子だよ!!なのに何なのこんな楽しそうに!?」

 

「だってすごいじゃん!本当に幽霊が出たんだよ!なんか面白くない!?」

 

「面白くも何とも無いわぁあああーー!!アンタは、一体どんな神経をしてるんだ!!」

 

「心の底から込み上げてくるのはただの恐怖以外何も無いですよ!!」

 

「ねぇ…ちょっと…」

 

「とりあえず帰りましょうよルーナさん!今ならまだ間に合うかもしれませんよ!」

 

「でも、せっかく幽霊と出会ったんだよ、もう少し観察してでも…あっそうだ、日本の幽霊に十字架と聖書朗読が効くか、実験してみよう」

 

信じられないとでも言いたそうな様子で、美空とアリスちゃんはそう言って来た。

 

するとその時…

 

「あんたら…さっきから私の事を幽霊で話を進めるんじゃなあああーーーい!!!」

 

幽霊だと思って居た女の子の、明らかに怒った様子の叫び声が木霊した。

 

そして場が追い付いたところで

 

「じゃあ、幽霊じゃなかったんだ…」

 

「当たり前でしょ、だいたい見りゃわかるでしょ見りゃ」

 

「良かったー」

 

幽霊だと思って居た女の子が、幽霊では無かった、それを確認したアリスちゃんと美空は、安心した様子で胸を撫で下ろしそう言って居た

 

だけど

 

「何だ、幽霊じゃなかったのかーつまんない」

 

私は大いに不満だった。

 

幽霊だったら面白かったのに…

 

「ルーナ…あんた、結構図太い神経してんだね」

 

がっかりして居る私をみて、美空は少し呆れて居る様子でそう言って居た。

 

「えーと、幽霊じゃないなら…だれ?」

 

だけど私はそれより、さっきまで幽霊だと思っていた女の子が誰なのか気になった。

 

「私?私は…」

 

その子が、自分の名前を名乗ろうとしたその時であった。

 

「あっ、有馬かな!」

 

この子が自分から名前を名乗る前に、アリスちゃんがそう言った。

 

「誰?」

 

「二人とも知らないの、ほら今テレビで話題の確か…ほら今テレビで話題の…」

 

だが、美空はテレビを見るより外で遊ぶ方が好きなタイプであり、私に至ってはそもそも住んでいるのがイギリスのロンドン郊外の屋敷である為、その子こと有馬かなを知っているはずもなく、きょとんとした顔をしてそう聞くと、アリスちゃんは頭を捻り、そしてこう言った

 

「…重曹を舐める天才子役」

 

「…それの何処がすごいの?」

 

「と言うか、何でよりによって重曹、普通アイスとかせめて砂糖を舐めた方が…」

 

それの何処がすごいんだ、と言うか何でよりにもよって重曹なんだと思いながら、私と美空はそう言った。

 

「10秒で泣ける天才子役!!と言うかあんたらもかー!!」

 

すると当の本人である、有馬ちゃんは、そう私達に向かって抗議する様叫んだ。

 

「と言うか、あんたら何で私を知らないの、もしかしてモグリ?」

 

そして、少し呆れた様子で彼女はそう聞いたが、美空と私はこう言った。

 

「私、テレビを見るより、外で遊んだ方が好きだから」

 

「アンタそっち派なんだ…」

 

「私は、イギリスのロンドン郊外生まれのロンドン郊外育ちのイギリス人だもん」

 

「ロンドン!?」

 

美空の回答を聞いた時は、納得しつつ冷静であったのに、私の回答を聞いた時、有馬ちゃんは驚いた様子でそう言った。

 

「と言うかなんで、イギリス生まれがこんな所にいるのよ?」

 

ここら辺には、ろくな観光スポットが無い。

 

その為、こんな所に態々イギリスからなんで来たのかと、彼女は不思議に思った。

 

「それは…」

 

「それは?」

 

「ふっ、トップシークレットだよ、ワトソン君」

 

「「「はあ?」」」

 

だがそれに対して私は胸を張ると、少し笑顔を浮かべそう言った。

 

もっともこれは、半分ふざけているが、一方でもう半分はお父さんが大事な会議をしており、その事を外部の人間に漏らしてはいけない事だと、子供ながらに思った故の事であった。

 

だが、当然有馬かなちゃんはもちろん、美空やアリスちゃんも、側から見れば意味不明な、私のこの答えに、思わずそう同時に言った。

 

「そう言うそっちこそ、なんでそんな大女優さんが、こんな所で幽霊ごっこやってるの?」

 

そんな茫然としている有馬ちゃんに、私はすかさずさっきから気になっていたその事を聞いた。

 

「別に幽霊ごっこじゃ…」

 

すると有馬ちゃんはそこまで言うと

 

「うぅ…」

 

何故か泣いてしまった…

 

「えっ…ど、どうしたの?」

 

「ルーナ、何やったの?」

 

余りに突然の事で、流石の私もこの時は困惑し、そしてその後ろからジトーと見つめる美空とアリスちゃんの二人の痛い視線が刺さった。

 

何故泣いたのか、この時は分からなかったが、後から考えてこの時有馬ちゃんが流した涙は、悔し涙…当時の私にとって、無縁な感情からくる涙だった。

 

だからこそ、なぜ泣いたのか、そもそも理由すらも知らなかった為、もちろん理由なんぞ知る由もなかった。

 

(うーん…どうしよう…そうだ!)

 

その時、私の脳裏に妙案が、突然思いつき、私はすぐさま持ってきていたヴァイオリンを取り出した。

 

♪〜

 

「…うぁ」

 

私はこの時、先週ママの妹で、今は、ウェストフォードグループ系列の、広告代理店で頑張っているオリヴィアお姉さんに見せてもらった映画、タイタニックの作中で演奏隊が、浸水し、少しずつタイタニックが沈没へと向かって行く中、避難しようとする乗客達を落ち着かせようと弾いていた曲である、ウェディングダンスを演奏した。

 

「すごい…」

 

後で美空から聞いたけど、音色を聞いた有馬かなちゃんは泣き止み、そしてその横で演奏を聴いていた美空とアリスちゃんも、思わず、演奏に引き込まれ、息を呑んで聴いていたとのことだった。

 

そして、ここにいるさんにん役2分30秒ほどの曲を演奏し終えた。

 

「どう、泣き止んだ?」

 

「…うん」

 

「そっか、良かった」

 

そしてその時には、有馬かなちゃんも、すっかり泣んでいる様子であり、わたも少しほっとした。

 

すると

 

「あんた…何者…?」

 

有馬かなちゃんは、徐にそう私達に聞いてきた。

 

それに対して、私は先程のヴァイオリンを弾いていた時の、柔らかな笑みではなく、満面の笑みを浮かべ、自己紹介、そして美空とアリスちゃんの紹介をした。

 

「天月ルーナ、それとこっちの二人は、美空とアリスちゃん」

 

「朝日奈美空、よろしく」

 

「高見沢有栖です、初めまして」

 

「と言う事で、よろしくね重曹ちゃん」

 

「よろしく…てちょっと!!だから私は重曹じゃない!!」

 

私と美空、アリスちゃんを紹介した後、少し冗談で重曹ちゃんと、有馬かなちゃんを呼んだ時、彼女先ほど泣いていたのが嘘のように、元気な様子でツッこんできた。

 

この時より、運命の歯車は動き出していたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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