先生は光の戦士   作:暗黒騎士はいいぞおじさん

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ふと思ったんですが、機工士やガンブレイカーの方が相性良さそうですよね。
Q,じゃあ何で暗黒騎士なの?
A,かっこいいじゃん……


第2話

「す、すごい……!」

 

ユウカ達はたった今終わった戦いに、驚愕の声を上げていた。

 

「……ふう、肩慣らしにはあんまりならなかったな」

 

『先生』はそう呟きながら、カオスブリンガーを背中に仕舞った。

そこに、ユウカ達が駆け寄った。

 

「せ、先生!大丈夫ですか!?」

「?大丈夫だよ。怪我もあんまりさせてないし」

「いや、先生の事を聞いたんですけど……」

 

ユウカが心配の声をかけるも、『先生』は斜め上の回答をする。でも多分斬ったら死ぬし……とも考えながら。

 

『先生』は斬り払いやその風圧で不良達と戦っていた。暗黒騎士である『彼女』は身体に当たろうがのけぞりもせずずんずんと近づいてくるため、気絶した不良達はトラウマになっていた。

 

「とりあえず、進もうか。確かもう少しで着くよね?」

「はい、もう目の前です!」

 

そうして全員が歩きだそうとすると、渡された通信機からリンの声が飛んできた。

その内容は、今回の騒動を巻き起こした犯人……生徒が判明したというものだった。

 

『ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です』

「……えーっと、つまり犯罪者が脱走して暴れてる、ってことでいいんだね?」

「ええ、しかもワカモは悪名高い生徒として有名です。……先生の戦闘力なら、きっと大丈夫でしょうが、それでもどうかお気を付けて」

 

ハスミの言葉に『先生』は頷きで返答し、シャーレの部室があるであろう方へ耳を傾けた。

 

「……いち、にー……うん、沢山来てるね。さっきと同じように私が囮になるから、後ろから撃ってくれる?」

「分かりました、先生を援護します!」

 

よし、と薄く微笑み、カオスブリンガーを引き抜いて『先生』は走り出した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数分後、立っているのは『先生』と愉快な仲間達だけだった。

 

不良達は頭を働かせ、散らばっていた仲間を集め一斉に襲いながらも『先生』の肉体には傷一つ付かず、()()いなされてしまった。

それを遠くから見ていたワカモは流石に自分一人であれに勝つのは無理だと悟り、本来の目的へと向かった(逃げた)

 

それならと巡航戦車のクルセイダー1型を出すも、砲撃はカオスブリンガーで弾かれ、ならばとクルセイダーの巨体で轢こうとすると片手で受け止められ、その隙でぶつ切りにされてしまった。

 

「いや強すぎじゃない!?」

 

という言葉と可哀想と思ってしまう心が、ユウカ達に溢れ出してしまうほどに、ほぼ一方的な戦いだった。

逃げようとした者は狙撃されて阻止されていたため、自分の役割を忘れてはいなかったようだ。

 

「……暗黒騎士の力、使わずに制圧出来ちゃったな」

 

『先生』は持ち前の身体能力と愛剣だけで終わらせてしまったことに、何とも言えない感情になっていた。

ダメージが無いのはもちろん暗黒騎士の力とはいえ、攻撃には一切使っておらず、クルセイダーにもカオスブリンガーの切れ味だけで片付けてしまったのだ。

 

もちろん相手は学生で、子ども。しかも喧嘩感覚で銃をあちこちへぶっ放す……

 

「うん。やっぱりおかしいな、ここ」

 

そこまで考えて、『先生』は改めて今いる場所の異常さを感じ取っていた。

数多くの戦い、争いを経験した『先生』にとって、試合とも違う命を懸けない命のやり取りは、気分が悪くなるものだった。

 

それはともかく、一同はシャーレの部室奪還に成功した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

通信でリンがもうすぐ到着するという連絡を受けた『先生』は、一足先に建物の地下へと向かった。護衛が必要ではないかという話にはなったが、『先生』には必要ないだろうとして単独で向かっていた。

 

『先生』は暗く、しかし安全のためか薄く光るライトを道しるべとして進んでいくと、そこには

 

「うーん……これが一体何なのか、まったく分かりませんね。これでは壊そうにも……」

 

狐の面を付けた、和風の少女がいた。

 

「やあ」

 

『先生』はあれがワカモだろうと考え、なんてことないように挨拶をしてみた。

普段なら、敵対しているだろう者に対しては敵意を向けて言葉を放つが、相手が子どもであり、雰囲気もその通りであると感じたため、攻撃態勢になっているならまだしも、流石に今向けるのはなぁと思いそのような行動を起こした。

 

「……あら、ら?」

 

狐面の少女は、声の方へ向くと同時に固まってしまった。

『先生』は首を傾げ不思議に思いながらも、いつでも攻撃されてもいいように、悟られないように静かに体制を整える。

 

「あ、ああ……」

 

少女からは掠れ出たような声しか聞こえない。

見つめ合う、その状態が数秒続き――

 

「し、し……」

「し……?」

 

 

 

「失礼しましたああああ「待て」ああああああ!!!???」

 

――少女は走り去ろうとし、『先生』は自身を横切りかけた少女を遮るように剣を抜いた。

少女はなんとか抜け出そうと別の方向へ駆け出そうとするも全て遮られ、ついに壁に背を付けることになった。

 

少女の顔の横には、『先生』の手が置かれていた。

いわゆる、壁ドン状態だった。

ちなみに『先生』の方が身長が低いため、精一杯背伸びをしている。

 

「聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「ひゃ、ひゃい……」

「お前がワカモでいいな?」

「そ、そうです……」

「そうか。……色々聞きたいが、時間もない。手短に終わらせるか。なぜ暴れた?」

「れ、連邦生徒会が気に入らなくて、嫌がらせをしようと……」

「……そうか」

 

『先生』は目を伏せ、悲しそうな顔を浮かべた。今のところ詳しい理由は分からないが、それでも嫌がらせをしたいという理由で暴れたことに、とてつもない苦しみを感じていた。

 

「……ああ、あのっ、きょっ距離が、そのっ!」

 

目の前から聞こえた声に反応して顔を上げると、目と鼻の先に少女……ワカモの顔があった。

 

「あっ、ごめん!」

 

『先生』は咄嗟に距離を取った。いつの間にかそれぐらいまで近づいていたことに気付かないほど、思考に気を取られていた。

 

「ごめん、気を悪くしたよね?」

「いっ、いえっ、その、役得といいますかっ、ええっと、その……!」

 

ワカモはもじもじしながら、逃げるそぶりを一切見せずに『先生』の前に立っていた。

それを見て『先生』は思った。

 

分からない。

 

話によれば、悪名高く、前科も多い犯罪者。しかし目の前に立つ少女は仮面によって顔は分からないが、いたって普通の女の子にしか見えない。じゃあなおさらなぜこの子は……

 

そこまで考えて、一つの足音が近づいてくるのが聞こえた。

 

『先生』は伝えるべき言葉を考え、即座に伝えた。

 

「……私には、あなたがなぜこんなことをしたのか、皆目見当がつかない。でも、ワカモ。私はあなたがただただ、悪い子には見えない。だから、お願い。また私と、お話してほしい」

 

見て、聞いて、感じて、考えて。それで思いついたのが、それだった。

『先生』は、自分の目で、耳で、心で、目の前の少女のことを判断したかった。

 

「……ま、また、お会いしていただけるのですか……!?」

「うん。むしろこちらからお願いしたいくらい」

「ああ……ああ……!あなた様からそのようなお言葉をいただけるとは……!はい、またお会いできるのを楽しみにしております!」

 

ワカモはそう言い、駆けてこの場を離れたのだった。

その後ろ姿を見届け、『先生』の心に一つ疑問が思い浮かんだ。

 

「なんであんなに私に対して好感的な反応なんだ……?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

ワカモが走り去ってから数秒後、リンが現れた。どうやってか鉢合わせに済んだらしい。

リンが何かありましたか?と聞くが、『先生』は首を振って返した。

 

「……そうですか。ここに、連邦生徒会長の残した物が保管されています。……幸い、傷一つ無く無事ですね」

 

受け取ってくださいと手渡されたのは、タブレット端末だった。

 

「……これは」

「これが、連邦生徒会長が先生に残した物。『シッテムの箱』です」

 

『先生』は、その名に聞き覚えがなかった(聞き覚えがあった)

 

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが謎」

 

おー、えす?全てが謎?自分がどうにかできる代物ではないように感じるが?ヤ・シュトラや、シドとかを呼んだ方がいい気がするんだが?

『先生』は言葉に出さず、心の中で焦りに焦っていた。

そんな『先生』をよそに、リンは話を続ける。

 

「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復できるはずだ、と言っていました。私達には起動すら出来ませんでしたが、先生ならできるのでしょうか、それとも……」

 

『先生』は黒く染められたタブレットの画面を見つめ――

 

「っ!」

 

 

 

 

 

……私のミスでした。

 

 

 

今更図々しいですが、お願いします。

 

 

 

きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。

 

 

 

だから先生、どうか……

 

 

 

 

 

――頭痛を、感じた。

 

「先生?大丈夫ですか?」

 

突然頭を抱えた『先生』を見たリンが声をかけるも、『先生』は微笑んで大丈夫だと答えた。

 

「そうですか。……では、私はここまでです。ここから先は、全て先生のかかっています」

 

私は邪魔にならないように離れています、と言ってリンが離れた位置に立った。『先生』はリンを一瞥した後、『シッテムの箱』を起動させた。

『シッテムの箱』は光り、様々な文字が浮かび上がった後、パスワードを要求してきた。

 

『先生』は知らないはずのパスワードを打ち込み、承認させた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『先生』がふと周りを見回すと、椅子と机が置かれ、壁が破壊された部屋のような場所に立っていることに気付いた。

そして、そこには一人の少女が机に突っ伏して寝ていた。

 

「くううぅぅ……くうぅぅ……」

「……」

「むにゃ……カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクの方がぁ……」

 

『先生』は苦笑いを浮かべながら、少女の肩を揺らした。

 

「んぅ……?なんですかぁ……?」

「起、き、て」

「えぇ……?なんでですかぁ……?…………ありゃ?」

 

眠たげに開いていた少女の瞼は、『先生』を眼に入れた途端突然大きく開き、体も跳ねるように跳び起きた。

 

「ええ!?先生!?こ、ここに入ってきたということは、ま、ままま、まさかアゼム先生!?」

「……多分、そうだよ」

 

アゼムと呼ばれたことに複雑な心になりながらも、今は訂正する時間は無いと考え、『先生』は頷きながら答えた。

 

「うわあああ!?そうですね、もうこんな時間!?うわああ、お、落ち着いて、落ち着いて……」

 

少女はそれを見て、慌てふためくが、努めて冷静になろうとした。

落ち着いた(?)少女は、『先生』の手を握りしめてから、喋り始めた。

 

「まずは自己紹介からですね!私はアロナ!この『シッテムの箱』の常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

アロナと名乗った少女に、『先生』はなぜか懐かしさを感じていた。

 

「やっと会うことが出来ました!私はここでずっと、ずーっと先生を待っていました!」

「……寝てたように見えたけど?」

「あ、あうう、確かに居眠りすることもありますけど……」

 

顔を赤く染めるアロナに微笑ましく感じ、『先生』はアロナの頭を撫でた。

そして、よろしくと声をかけた。

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

アロナは元気よく挨拶を返した。

 

「それではまず、形式上ではありますが、生体認証を行います!……うう、少し恥ずかしいですが、手続きだからしょうがないんです。先生、人差し指を出してください」

 

アロナに言われた通りに、『先生』は人差し指をアロナの方へ向けた。

では、失礼しますと言ってアロナは、自分の人差し指を『先生』の指と合わせた。

 

「うふふ、まるで指切りして約束してるみたいでしょう?」

「これは何をしてるの?」

「実は、これで生体情報の指紋を確認するんです!」

「……なるほど、アロナは頭いいことをしてるんだね」

 

『先生』はそこまで聞いて考えるのを止めた。結局分からないだろうなと半ば諦めの境地だった。

その横でアロナが雑に対応していることには気付かなかった。

 

「……はい!確認終わりました!」

「凄いね。しもん?っていうのだけで分かるんだ」

「そ、そうですか?えへへ~、アロナは最強OSですから!これくらいは当たり前です!」

 

大して機械に詳しくない『先生』にとって、アロナは高性能なおーえすだった。

『先生』はそういえばと本題のことを思い出し、アロナにそのことを伝えた。

 

「……なるほど、先生の事情は大体分かりました」

「それで、聞きたいことがある。連邦生徒会長について知ってる?」

「私はキヴォトスの情報は多く知っていますが……連邦生徒会長については分かりません。何者なのか、どうして行方不明になったのかも……」

「……そっか」

「お役に立てず、すいません」

「ううん、大丈夫だよ」

 

多くの情報を持っているはずのアロナでさえ全く分からないと言った。なおさら存在が分からなくなってきた。もしかしたら、古代人かとも思ったが、それは違うような気がする。

『先生』は未だ正体が分からない連邦生徒会長にそう思った。

 

「ですが、サンクトゥムタワーの問題は何とか解決できそうです」

「本当?じゃあ、お願い」

「はい、分かりました!それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します。少々お待ちください……」

 

アロナはそう言って数秒後、

 

「サンクトゥムタワーのadmin権限取得完了……先生、サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収出来ました」

 

と終わったことを『先生』に報告した。

『先生』はこの手の事には詳しくないものの、それでも凄いことだとは理解していた。

 

「今サンクトゥムタワーは、私、アロナの統制下にあります。つまり……今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」

「そうなんだ。連邦生徒会に渡してあげて」

 

『先生』はノータイムでそう言った。

 

「先生が仰るなら、そうしますが……いいんですか?制御権を渡して……」

「元々そういう依頼だから。大丈夫」

「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

アロナがサンクトゥムタワーをの制御権を移管した数分後、シャーレの部室で『先生』とリンが向かいあっていた。

 

「改めまして、キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」

「また、何か困ったことがあったら言って。手伝うよ」

「ありがとうございます。……これから先生は、お好きなように活動が出来ます。シャーレには権限だけはあっても、目標のない組織ですので。キヴォトスのどんな学園の自治区でも自由に出入りでき、所属に関係なく生徒達を部員として加入させることも可能です」

「つまり、何でも屋……みたいな?」

「先生がそのように活動されるのであれば。……シャーレを設立した連邦生徒会長は行方不明のまま。なぜこんな部活を作ったのか聞くことも出来ない。我々はその生徒会長を探すことに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません」

 

なるほど、つまり今までの生活の通りに過ごしていいわけだ、と『先生』は心の中でそう呟いた。

 

「……その辺りに関する書類は、先生の机の上に沢山置いておきました。気が向いたらお読みください」

「……え?」

「全ては、先生の自由ですので」

「ちょ、ちょっと待って」

「それではごゆっくり。必要な時はまたご連絡いたします」

 

『先生』の制止する声も聴かずに、リンは足早に去っていった。

伸ばした腕が、何をつかみ取るわけでもなく、力なく落ちていった。

 

 

 

 

 

つまり、このようにして『彼女』は『先生』となって大の苦手な書類を見ることになったのだった。

 

なぜか来てしまったキヴォトス。

困惑や謎に頭を悩ませるも、まだ自分が知らぬ土地で冒険が出来ることに、『彼女』は心を躍らせていた。

 

「……これは、嫌だけど」

 

何度目か分からないため息を、『先生』は空へはいた。




『先生』
種族アウラ・レン(女)
肩まで伸ばした紫色の髪が特徴。前髪や後ろの方が白い部分があり、これはストレスで色が抜けた部分。暗黒騎士になる前にこの色になった。

基本柔らかい口調だが戦闘中やキレてる時は口調が変わる。
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