騒然たる歓声と悲鳴の中、男が一人観覧車から見下ろしていた。
その黒いスーツと無表情な顔は、遊園地にはあまりにも不釣り合いだった。
男はおもむろに携帯を取り出した。
「シュナプスだ。」
「了解しやした。シュナプス。」電話越しにウォッカがほくそえんだ。
「今回の取引場所はあそこらしいですぜ、兄貴。」
「そうか。」ジンがほくそえんだ。
「まあいい、ジェットコースターにでも乗りながら眺めてやるか。やつの怯えた顔を拝めるアミューズメントパークをな。」
「...。」
「次のお客様8名様どうぞー。」
「行こうぜ、蘭。」
「うん。」
2人の若いカップルが乗り込む。
その後を黒服の男が2人のりこむ。
異様な雰囲気を残してジェットコースターは出発した。
シュナプスは観覧車を降りた。暇なのでもう一回乗った。
買っていたコーヒーの蓋を開けた。ゆっくりとのぼる観覧車の中で息を吐く。
キャーーーーー。
シュナプスは目を見開いた。突如響き渡った甲高い悲鳴と飛び散る鮮血。
コーヒーを思わず噴き出した。さすがの彼でも動揺していた。
「つまり、そういうことですな。」
太っ腹の刑事が言った。
「しかし、わからん。どういうことだね工藤くん。」
この刑事は頭が悪いと見える。しかしまた面倒な状況になってしまった、
「アニキ、どうしやすか。」
「どうせ奴とはシュナプスが手を打つだろうよ。とにかく目立たないようにすることだな。俺のこの上下黒の服装はちょうどいい。」
シュナプスは携帯を取り出した。コーヒーでよごれた黒いスーツをきた男が一人観覧車の中で電話をかけている姿は滑稽であった。
「私だ。取引場所と時間を変更したい。また追って連絡する。」上ずった声で言った。
「なにがあった?まさかまた金を増やすなどとは言うまいな。」
「違う。また追って連絡する。」あせっていることは明らかだった。
「ありがとうございましたー。」
笑いをこらえている受付をにらみつけてトイレに直行した。
「というわけで、犯人はあなたです。」生意気そうなカップルのガキが言った。
「まさか、信じられんぞ、工藤君。」太っ腹な刑事が言った。
そしてなんとガキの指さした女が自白した。
このガキ、無能な警察とは違い頭がいい。ウォッカはおもった。
とにかく、このガキのおかげで無能な警察からの束縛から解放されたのだ。
「よし、取引に行くぞ。」ジンが言った。
「シュナプスに電話を掛けろ。」
トイレの中でシュナプスは焦っていた。
コーヒーのシミがなかなか落ちない。
鞄を見たが生憎替えのスーツを忘れていた。
シャツにもしみている。これでは一緒に取引もいけない。
どうしたものか、事件が長引いているうちに買ってくるか。いっそ取引を来週にしてしまおう。
電話が鳴った。
「事件解決しやした。」
呆然とした。
「予定通り実行しやすか。」
「計画変更だ、来週にする。」
「なんでやすか。」
「いいから延期だ。」
「え、でも、今からでもできやすぜ。」
「いいから...」
「どうした。」
ジンが言った。
「代われ。」
「取引はこのまま実行する。いいな。」
「フン、私は予定通り合流できなくなった。何かあったら別の場所から指示を出す。」
「勝手にしろ。予定通り実行する。」
ジンとウォッカは取引現場に予定の時間に言った。
その頃シュナプスは服屋に猛ダッシュで言っていた。
取引現場
シナプスが現場に到着したころには、ジンとウォッカは取引はすでに終わっており工藤新一がジンに殴られ気絶していた。
「ジェットコースターの探偵じゃないか。なぜこんなところにいる。」
「俺たちの後をこそこそつけていたみたいでな。取引を見られちまったから、放っておくわけにもいかねえだろ。」
「ったく。組織随一の腕利きともいわれたお前が何をやってんだか。まあいい。消すなら早くしろ。警察にかぎつけられると厄介だ。」
「フン、お前に指図される筋合いはねえ。ちょっとシェリーの新薬を使うだけだ。」
「アポトキシン4869か。あれはむやみに使うなとあいつから言われていただろう。」
「うるさい。死亡後に毒物反応が出ないこの薬はこいつをバラすにはうってつけだろう。それに、もし何かあったとて責任を負うのはシェリーの監視役のお前だしな。」
言うが早いか、ジンは工藤新一の口に薬を押し込んだ。
「ずらかるぞ。」
三人は闇夜に消えた。
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