よろしくお願いします。
六月下旬…鬱陶しいジメジメとした梅雨が終わり、夏の暑い日差しが目覚め始めた今日此頃
トンッ!スパン! トッ
体育館に、気持ちの良い音が響き渡る。
そんな気持ちの良い音を出しているのは、十数人の男子高校生たち…
彼らは…烏野高校、排球部
少し前までは、特別強くもなく弱くもない…至って普通と言う言葉がよく似合う高校だ。
しかし…今年は、期待の新人が入ったこともあり、活気が溢れていた。
先のインターハイ宮城県予選で三回戦、烏野は青葉城西に惜敗し、全国大会への道が途絶えた。
しかし、そんな悔しさをバネに高校生たちは、次の全国大会...通称、春高を目指して日々努力をする
そんな中、金髪の男が体育館の扉を開く。
「集合!!」
「「「「「「「はい!!!!」」」」」」」
いかにもスポーツマンな返事である。一斉に金髪の男の周りに集まった。
金髪の…いかにも昔は不良だったであろう男は烏野高校のコーチであり、選手たちに話始めた。
「俺達は優劣を決める試合で負けた。
青城は強かった。
俺達はそれに劣った。
それは現時点の結果で事実だ。
で、今日のIH予選決勝...優勝は白鳥沢。準優勝は青城だ。」
皆の顔に驚きの表情が浮かび上がるが、コーチは言葉を続ける
「県内でさえ、あの青城より上が居る。
強くなるしか無ぇ!
次の目標はもう分かってると思うが…春高だ。
高校バレーの大会ではIHと並んでデカイ大会だ。
春高が1月開催になって3年も出られるようになってからは出場する3年にとっては文字通り『最後の大会』だな。
じゃあ、取り合えずここは、主将に一発気合入れてもらおうか」
そう言われて、スッと立ち上がり、口を開く。
この主将と呼ばれた人は、三年でこの部の大黒柱…澤村大地
「昔、烏野が一度だけ行った舞台だ。
東京。
オレンジコートだ。
もう一度あそこへ行く。」
主将の熱い言葉に…
「「「「「「「「「しゃああ!!」」」」」」」」」
皆はそれに応えるように叫ぶ。
そこへ、一人のいかにも教師って感じの人が勢いよく現れ、盛大にこけた
「大丈夫ですか⁉」
「たけちゃん!?」
そんな生徒の心配を無視し、武ちゃんと呼ばれた中年の男は握り締めた紙を開き、皆に聞く。
「行きますよね!?」
「行くってどこに?」
「鼻血でてます!」
「東京!!」
「東京!?」
武ちゃんと呼ばれた教師の言葉に一早く反応したのは、
オレンジ色の髪で身長が163㎝とバレー部では小柄な身長だが、それでも持ち前の身体能力とコンビプレーで見事レギュラーを勝ち取った...日向翔陽である。
「東京ってもしかして…音駒ですか⁉」
「練習試合っスか?」
それに続いたのは、圧倒的なバレーセンスで一年ながらにセッターの座を勝ち取った…影山飛雄
「でも今回は音駒だけじゃないんだ。
梟谷学園グループ、音駒を含む関東の数校でできているグループで普段から練習試合などを盛んに行っているそうなのですが、今回、猫又監督の計らいでその合同練習試合に烏野も参加させて貰えることになりました!!」
「うぉおおお!!」
「この数年で県内で、昔懇意にしていた学校とも疎遠になってしまった。当時の烏養監督と親しかった指導者が変わってしまった学校も少なくないです。このチャンス活かさない手は無いです!!」
武ちゃん先生の言葉を聞き、口々に騒ぎ出す。
「取り合えず、みんなの意志は…」
「「「「「「「行きます!!!!」」」」」」
大きくハキハキとした声で返事をした。
「忙しくなるなぁ」
「だな!」
と、言いながらもその表情はやる気に満ち溢れている。この二人は三年のエース…東峰旭と同じく三年セッター...菅原孝支
「清水もな、初遠征だもんな!」
菅原が尋ねた人物は、三年のこの部のマネージャーであり、女神…清水清子
「…うん、私も頑張る」
と、気合を入れるその姿に…目が離せない
翌日
教員室
バレー部の顧問は自分の机で絶望していた。
それもそのはず、昨日あれだけやる気に満ち溢れていた生徒を見て、自分まで嬉しくなった。
ようやく、何度も繰り返した土下座が実を結んだのだ。
しかし、今...その全てが崩れかかっていようとしていた…
理由は単純であり、来週の期末テストだ。
そこで、赤点を取れば夏休みに補習がある。
それはつまり、遠征には行けない…という事である。
(これは現実だ。まず受け止めて冷静に。大丈夫ガッツあるあの子達ならできる。やればできる。やればーー)
そう心の声が全て顔にかいてある状態で、生徒の成績表を覗く。
だが…それは決して開けてはならない見てはダメなものだった。
正にパンドラの箱。
武ちゃんはまたも絶望することになった。
(ん………??うん?んっ………!?)
放課後
体育館
武ちゃんは生徒たちに遠征の日程を説明している。
長々と説明をし、今日最も伝えなければならないことを伝える。
「で、来月になったら、期末テストあるの分かるよね?」
みんなの表情が一気に強張る。
ここにいる全員が馬鹿と言うわけではない。
成績上位の者もいる。
しかし、皆が心配しているのは4人の馬鹿である。
「分かるよね?」
武ちゃんは、大事なことは2回言う人だ。
「で…予想ついているかもしれないけど、赤点で補習になる教科がある場合...遠征には行けないから」
その言葉に、四人の馬鹿は喚き散らした。
四人の馬鹿の二人は、日向と影山
そして、もう二人は2年の二人だ
一人はスーパーリベロ...西谷夕
もう一人は丸坊主で強メンタル...田中龍之介
2年二人はどこかへ逃げ出し
日向に至っては
「あ…赤点って何点ですか?」
影山も影山で
「影山が息していません!!」
「きょ……教頭先生に一生懸命頼めばきっと……!」
「まずは一生懸命赤点をさけなよ」
日向が慌てているのを見て、面白そうにしているのは1年で190㎝の煽り職人...月島蛍
「コーチ!」
日向は金髪のコーチを捕まえる
「根性だ!!気持ちが大事だ!」
「精神論!!」
と、日向は望みを砕かれた。
体育館の中は、まさに阿鼻叫喚であった。
そんな中、武ちゃんは静かに歩く。
そして、目的の人物に近付くき、生徒の肩に手を置く。
「君はもう少し、真面目にやりなさい」
とだけ言って、去っていった。
それを皆は見て、一瞬静まりかえる。
日向は何かを勘違いしたようで
「綾隆~!!お前頭良いのか?頼む!教えてくれ~!!!!」
と、半べそをかきながら頼み込む
「残念だがオレは、全て平均点だ。
教えられるほど頭は良くない」
そう拒否をした人物は1年の雑用担当...清田綾隆。
この作品の主人公である。
「そ……そんなぁ~」
振られた日向はさらに喚きだす。
「狼狽えるな!!!!」
「テストまでまだ時間はあるんだ……この馬鹿4人抜きで烏野のMAXが発揮できるか⁉いや!できない!!やってやる…全員で…東京行ってやる…!」
主将が締めくくり、部活が終了した
▽▽▽
部室
オレは部室で着替えていた。
その傍らで、四人の馬鹿は並べられていた。
「いいか、お前ら。
まず、お前らがこれから絶対に守ることは…授業中に寝ないこと!!」
オレは着替え終わり、部室を出ようとしたとき呼び止められた。
「おい…綾隆!お前もテスト見せて見なさいよ!」
「え…オレは別に赤点を取るほど低くはないですよ?」
「だが、今日武ちゃんに注意されていただろう?
ほら...怒らないから見せて見ろ」
その言葉に
「母ちゃんかよ!」
と、菅さんが突っ込む。
オレは先輩にここまで言われれば見せないわけにはいかにので、見せることにした。
渡したあと...一歩下がる。
主将はオレのテストに目を通すと、固まった。
「どうしたんすか?大地さん?このスカした後輩君はオレらと同類でしたか??」
「なに?あやぽんもオレらと同類だったか⁉ようこそ地獄の教室へ!」
と二年の先輩方は盛大に勘違いをして、オレのテストを覗く
「お前…これ…」
「「なに~!!全教科!!50点!!?」」
二人が騒いだことにより、この場にいる全員が驚愕していた
「なんでこんな事したんだ?」
さっきは怒らないと言っていたくせに...顔がマジだ。
「いや…偶然ですよ偶然」
「なわけないだろ!ここの難しい問題を正解してるのに、この簡単なとこは間違えてるし…めちゃくちゃだろ!?」
「いや~偶然ってこわいですね」
それでもシラを切る。
「はぁ~お前…バレーでも手を抜いているだろ?」
「いやいや...まさか手を抜いたりしませんよ」
「綾隆~やっぱお前は救世主だったんだな⁉教えてくれ~」
「だから…偶然だって言ってるだろう」
「頼むよぉ~!東京がかかってるんだ!!」
そんな目で見ないでくれ...
「...少しだけだからな…後は月島に教えてもらえ」
「は⁉なんで、僕が⁉」
「それじゃ...オレは帰る。お先です」
オレは月島に擦り付けて、帰ることにした。
オレは高校に来て平穏な暮らしを求めていた。
バレー部に入ったのも、特別弱くもなく強くもない普通の部活に入ってみたいと思ったからだ。
しかし、超絶コンビの二人が入り、部員全員がやる気に満ち溢れていた。
その結果オレの平穏な高校生活が崩れさって行った。
そして、今日を境にまた、一段と平穏な暮らしから、離れていくのだった。