ようこそ青春の排球部へ   作:もと将軍

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さてさて…皆様、ポテチとジュースの準備は出来ましたでしょうか?

それではどうぞ!!


青葉城西!!

 

 烏野の陣地に戻ったオレ達は、青葉城西と伊達工の試合を観戦している。

 三年も戻って来ており、主将も元気ピンピンだ。

 

「あれ、何かお前ら静かだな」

 

 菅さんが、オレ達にそう言った。

 

「う、うす…おれ、ぜったいにもう負けないっす」

 

「ん?そうだな」

 

 日向、影山、ひとかも顔つきが変わっていることに首を傾げていた。

 

「綾隆は変われよ」

 

 いつも無表情だからだろうか…少しきつめに言われた。

 

「ええ…表情が出にくいだけなんですが…」

 

「綾隆はたまに表情でるときがありますよ!!」

 

 ひとかがテンション高めに入って来た。

 

「え?どんな時だ?」

 

「前にアイス食べたときとか、たこ焼きパーティーしたときです!」

 

「え?そんな事いつしたんだ?」

 

「たこ焼きパーティー?え~いいなぁ!!おれもしたい!!」

 

 皆はたこ焼きパーティーに反応し、こちらを見て来た。

 いや…これは、女子とそう言ったことをしていることに反応したな。

 日向影山は純粋に羨ましそうにしていた。

 

「うん!また今度しようね!前にしたときは、いつだったか...私が入って間もない時に~」

 

 おい、よせ...なぜ、その話をいまする…こいつ敵なのか?

 

「でも清水先輩と三人でやりました!」

 

 やはり敵か!

 こいつは敵だ。

 皆は試合を見ずにこっちを見てくる。

 

「それってさ、俺達が自主練している時にか?」

 

「休みの日だった気が…でも皆自主練してたかな...?」

 

「「「「「ほほう」」」」」」

 

「お前その為に練習サボってマネの仕事を手伝っていたのか?」

 

 主将の顔が怖いな…

 

「そんなわけがありません」

 

「いいや、そんな事があるんだよ」

 

 なんでそっちに決められるんだ…

 

「誘ったのは私だけどね」

 

 それを聞いていた清水先輩が、フォローしてくれた。

 

「「清子さん!そんな!なぜ~!」」

 

「綾隆の笑うところ見れるかなって…」

 

「それだけ?」

 

「うん…綾隆ってミステリアスじゃない?

何か知りたいなって思ったんだよね」

 

「まぁそれは同意するけどな」

 

「綾隆の顔を変えるためには旨いもん食わないといけないんだな…

 よし!この大会終わったら、コーチと先生の奢りでバーベキューだ!」

 

 主将が勝手にコーチと先生を巻き込んだ。

 横で試合を観戦していた二人は、肩をびくつかせロボットのように主将の方を見る。

 

「え…澤村君...何…」

 

「おい、澤村…」

 

「うぉおおおおおおおおお!!!!!」

 

「B」

 

「B]

 

「Q」

 

「やったーーーーーーー!!!!!」

 

 選手のごり押しに先生たちの声は搔き消される。

 

「「「「「先生!!コーチ!!この恩は一生忘れません!!」」」」

 

「せめて優勝しろよ…」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

 これで、次の試合へのやる気が一段と高まった。

 

 試合はストレートで青城が取り、終了した。

 

 オレ達の相手は青城か…

 

 

 

 

 

「なんだか皆さんピリピリしてます…?」

 

「前回青葉城西には全力出し切ってそれでも負けたから…」

 

 ひとかが皆の雰囲気に疑問を抱き、清水先輩が説明する。

 

「や…谷地さん…胃薬ってあるかな…?」

 

「山口君大丈夫?」

 

 ひとかはバックの中を探しながら言った。

 

「ゴメンちょっと緊張しちゃって…」

 

 その言葉にひとかは反応し、笑顔になった。

 そして、自信満々に言う。

 

「私!!緊張にはけっこう自身あるんだ!!」

 

「えっ!?自信??緊張に?」

 

「緊張はね、口に出した方が良いんだよ!我慢するより[緊張する~どうしよう~~!]って素直に言っちゃった方がほぐれるんだよ!」

 

 いつものひとからしくないな…いつも自信とか無さそうなのに…

 

「私よく緊張による命の危険を感じるから色々調べたんだ!」

 

 そう言われた山口は話しだす。

 

「お…俺…IH予選の青城戦…チームがピンチの時初めてピンサーで試合出たんだ…追いつけない点差じゃなかった。俺が決めていたら勝てたかもしれない...なのに、俺はミスって…!!!だからまた、そうなったらって思うと…!」

 

 山口の話が終わると、謎の間ができた。

 ひとかの方を見ると…

 

「そ…そんなチームのピンチを任されたと…!?うっぷ...緊張してきた…」

 

 なんだ…いつものひとかか...

 

「谷地さん!?」

 

「心臓出る…!口から出る…!!」

 

「飲み込んで!胃薬いる?AED!?」

 

「どうした?」

 

「谷地さんの心臓があああ」

 

「落ち着け山口!!」

 

「110番か?」

 

「119番ですよ」

 

 と、いつもの烏野の雰囲気になった。

 

「風邪みたいに緊張も他人に感染したら、治るのかな…」

 

 清水先輩は真面目に分析していた。

 

「それにしても綾隆は緊張とかしないの?」

 

「する必要ありますか?」

 

 オレは素直に答えてしまった。

 

「「「「……」」」」

 

 何か、皆に人じゃない目で見られた。

 

 

 

「おれ達の新速攻でリベンジだ!!」

 

春高宮城県代表決定戦 準決勝

 

烏野高校 VS 青葉城西高校

 

 コートに入り、アップを取る。

 コートの真ん中で、二人の男がボールを取り合っていた。

 

「これはこれは…前回俺にこてんぱんにやられた、飛雄ちゃんじゃないですか」

 

「今回は勝ちに来ました…!」

 

「お前は完膚なきまでに凹ましたからな!残すは牛若野郎ただ一人!!今回も退いて貰うぜ飛雄!」

 

 と、言ってボールを離すと影山は後ろにコケタ。

 

「わはははは」

 

 こいつが3年なのか…

 

 

『ピーーーー』

 

「「「「お願いします!!」」」」

 

 相手と挨拶をし、自分たちのベンチに戻る。

 

「さっきも言ったが、1セット目は綾隆で行くからな。

頼んだぞ」

 

「はい」

 

 主将は念のため様子見で...第二セットから入るらしい。

 オレの役目は1セットまでだ。

 

「あの敗北を超えてこい!!」

 

「「「「うおっしゃあああああ」」」」

 

Starting order

 

 

ネットーーーーーーーーーーーーネット

 

日向   田中   影山

 

綾隆   東峰   月島(西谷)

 

 

「及川さーん!ナイッサー」

 

「醤油!」

 

「とんこーつ」

 

「たんたんめーん!」

 

 何の掛け声だ?

 

「決めてほしいの!?ミスってほしいの!?」

 

 

 

『ピーーーーーーーー』

 

 初っ端から弾丸サーブがオレの所へ飛んでくる。

 オレは普通にレシーブをし、影山にパス。

 

「うお!?及川のサーブ1発目から上げた!!」

 

「しかも結構余裕があったような...」

 

 と、後ろの観客席の所から聞こえてきた。

 田中先輩にトスが上がり、スパイク。

 だが、ブロックに阻まれこちらのコートへ落ちる。

 それを影山が拾い、空いたセッターのポジションに西谷先輩が入り、東峰さんにトス。

 見事に、バックアタックを決め、先制点は烏野だった。

 

「「~~~~~っ!!」」

 

「決めた奴らが一番びっくりしてる!!」

 

「綾隆もよく上げたな!!」

 

「どうも」

 

 オレにもハイタッチをしに来たので、手を出すと全力で叩かれた。イタイ…

 

「相変わらずだな…」

 

「影山ナイッサー」

 

 影山がサーブをするも、ギリギリのアウト。

 

 今度は相手側の岩泉がサーブを打つ。こっちもなかな強烈だ。

 また…オレかよ…レシーブをし、影山にパス。

 トスはまたも田中先輩へ…今度は綺麗に決めた。

 

「おらああああ!」

 

「田中ナイスキー」

 

「くっおれもボール触りたいっ…!」

 

 日向だけがまだ触っていない。

 そして、何周かして日向へトスが上がる。

 

「しゃあああ」

 

 相手のブロックに阻まれこっちのコートに落ちるが、月島が良いところにいたため、落ちるのを防いだ。

 

「ナイスちゅきしま!」

 

 田中先輩…

 だが、ボールは相手コートへ返る。

 

「ふがぁぁ!?」

 

 突如日向の悲鳴が聞こえて来た。

 前を見ると、影山が日向を全力で蹴った。

 

「冷静にし…やれ…なれボゲぇぇ!!」

 

 お前がな…全員がそう思っただろう。

 

 もう一度…影山が日向へ上げる。

 超速攻だ。

 日向は…どうやら冷静のようだな。

 ブロックを躱しスパイクを打った。

 その球はリベロの腕に当たるものの、後ろへ飛んで地面に落ちる。

 

「おああああああ!!」

 

 日向と影山がハイタッチをし、喜んでいる。

 

7-5 烏野リード

 

▽▽▽

 

 途中タイムを取り、選手がベンチに集まる。

 

 青城VS烏野の試合は第一セット目の序盤から、接戦を繰り広げていた。

 

 青城のベンチでは、選手だけで話し合いが行われている。

 これも青城の強みだ。

 

「なんか...向こうの16番…レシーブ上手くない?」

 

「ああ…確かにな」

 

 及川が皆に聞き、岩泉が肯定する。

 

「前回は出てなかったじゃねーか。今も主将のケガによる影響で代わりが出ているのかと思っていたが…」

 

「うん。実際、今、主将出てないしね。代わりなんだろうけど、16番は狙わない方がいいんじゃないかな…もう少し観察しないと分からないけど」

 

「ああ。そうだな」

 

「俺のサーブで崩してみるよ。一セット目に知っておいた方がいいし。皆は16番以外ね」

 

「「「「了解」」」」

 

 そして、コートに出て行く。

 

 

▽▽▽

 

 

 そこからも交互に点を取り合う。

 日向の攻撃にはブロックは着かなかった。さすが青城だ。すぐに対応してくる。

 オレを狙ってくることは少なくなったが、及川はオレを狙ってサーブを打ってくる。

 まあ…返すが。

 相手も相手で、セッターじゃない人も当然のように上げてスパイカーにつないでくるため、こちらは翻弄されていた。

 以前よりかは守備をできるようになっても、今は主将がいないためかなりの戦力ダウンだ。

 

 

18-17 烏野 リード

 

 日向がブロードで横に走り、跳ぶ。

 今回はどうやらブロックが着いて来た。

 だが…相手のブロックが上手く、クロスには打てないようにストレートにコースを絞らされていた。

 コースを絞らされた日向のスパイクはいとも簡単にレシーブされ、そのまま決められた。

 どうやら、青城は及川だけのチームではないようだ。

 

23-22

 

 ここでまた、及川のサーブ。

 いつもと雰囲気が違う。

 ギアを上げてくるか...

 

「さっ来ぉぉぉおい!!」

 

 サーブトスが上がり、及川が跳ぶ。

 弾丸サーブが飛んでくるが...

 

「アウト」

 

 オレは軌道を読み、避けた。

 旗が上がる。

 烏野の得点だ。

 

24-22

 

「おあっぐうううう!?ごめんんんん」

 

 と、及川は悔しがっている。

 

「すっげー!取ってみてー!」

 

 西谷先輩は嬉しそうにしているが、他は怯えていた。

 次は、決められた。

 

24-23

 

 ここで、相手側のメンバー交代でいかにもヤンキーって感じのが入って来た。

 

 相手のサーブから始まる。

 オレがレシーブで影山にパスをし、田中先輩がスパイクを打つ。

 だが、ブロックにあたり、相手のチャンスボールとなった。

 

「チャンスボール!」

 

 及川がトスを金田一にあげるが、金髪が入ってきて奪い取る。

 それを全力のスパイクを打った。

 

 だが…………アウトだ。

 

25-23

 

 最後はあっけないな。

 烏野が一セットを取ったものの、皆も余り喜べておらず、ん?と、いう顔をしている。

 それにしても、青城には似つかわしくない選手だな。

 オレなら、場をかき乱す選手をコートに入れたりはしない。

 だが、青城はあの金髪を上手く扱うのだろうか?

 もしできるのなら、楽しみだな。

 

 だがまぁ、これでオレの出番は終わりだ。

 

 

 

第二セット

 

金髪…16番はスターティングメンバーだ。

笛の合図とともに東峰さんがサーブを打つもアウト。

 

「くそ!」

 

「惜しい!」

 

「ドンマイ!」

 

サーブは及川だ。及川も全力のサーブを打つが、アウト。

 

「ドンマイ!次一本だ」

 

強烈なサーブの応酬…なかなか面白いな

しかし次は月島でサーブは普通…

綺麗に上げ、及川のセット…トスは16番

 

「狂犬ちゃん!」

 

真横から入ってくるんだな…

三枚ブロックが着くが、超インナーにスパイクを打つことで、ブロックを避けた。一歩間違えればネットにかかる攻撃だ。

なるほどな…16番のあの攻撃は、並外れた背筋と腹筋によるものか…超インナースパイクだけでも厄介なのにな

 

その後も、続けざまに得点を重ねていく青城。16番による三連続得点だ。

 

しかし、ぎりぎり繋いだボールを16番はフェイントなどをせずに、全力スイング…三枚ブロックに捕まりドシャットを食らう。

16番は先生に責められるも

 

「攻撃は強打が決まらなきゃ気持ちよくねぇっす!」

 

と、言い返していた。田中先輩や日向と同じ、本能で動く奴か…青城にはいない…これは新たな青城だな

 

また、超インナースパイクを打とうとするが、ネットにかかり烏野の得点。16番は点をもぎ取っていくが、失敗も多い。

 

11-13 青城リード

 

日向のサーブで始まる。

相手のスパイクを上げ、シンクロ攻撃。そして、日向のバックアタックによる超速攻…しかし、読まれていたのかブロックに阻まれ、ドシャットを食らった。

 

「随分チビちゃんを空気にしてんなぁと思ったよ。今が使い時だと思った?俺も思った☆」

 

悪い顔だな…

 

日向と影山は平常心を保とうとしているが、崩れている。

 

11-14

 

ここで、菅さんがベンチに呼ばれた。

コーチと話している。

 

13-16

 

ここで、及川のサーブが決まった。 

主将の横を通り抜けていく。

相手は大盛りあがりであった。

逆に烏野は静まり返る。

 

13-17

 

もう一度及川の弾丸サーブ。

だが、ネットにあたり入る。身構え過ぎたからか、西谷先輩が遅れて上げる。月島がアンダーで上げ、田中先輩が16番を狙ってブロックアウト。

 

14-17

 

そして、選手交代

菅さんが入り、サーブだった月島がコートから出る。

菅さんのサーブは普通のサーブ(フローター)。だが、そのサーブはネットギリギリを攻め16番に膝を地面に着かせレシーブをさせる。これで、16番は攻撃に参加できない。

攻撃手段を絞らされた青城の攻撃は、ブロックに当たり威力が弱まる。

そして、影山から日向へ

 

『タンっ!』

 

と、言う音と共に日向が空へ高く跳ぶ。

いつもより、少しだけ高い跳躍。

それでも日向の身長では、ブロックにかかる高さだ。

だが、その少しの高さの分だけ空中での余裕が生まれる。また、ブロックを跳ぶタイミングが今までと異なる。

日向のスパイクはブロックの上から叩き下ろされ、コートへ勢いよく落ちる。

 

「うぉおおおおお」

 

「しゃあああああ」

 

青城はかなり驚いているな。

もともと厄介な日向が更に厄介な存在へと進化した。

 

15-17

 

 

▽▽▽

 

 

時は遡り…

 

「では、続いて...ウチに足らないことって何だと思いますか?」

 

オレは皆に問いかける。

 

「足らないこと?」

 

「それを得るための合宿だっただろ?」

 

「はい、そうですね。

新しいことを習得し、それに慣れた今こそまた新たなことを挑戦するのが烏野です」

 

「まあ、それはその通りだが…」

 

「そんな新しいことをポンポン思いつかんけどなぁ」

 

「そうですね。

オレも全く新しいことをしようだなんて思っていませんよ」

 

「ん?じゃあ何をするんだ?」

 

全員の頭の上に?マークが見える。

 

「そうですね…やることは、応用などです」

 

「「「「応用…」」」」

 

「はい…シンクロ攻撃の使い方だとか、そんなところです」

 

「「「シンクロの??」」」

 

「はい。これは以前、烏養先生が仰っていたことなんですが、日向の超速攻は使い方がもったいないと」

 

「それが、シンクロとどう関係が?」

 

「シンクロから一人抜けてしまいますよね」

 

「「「「ああーそう言う事か」」」」

 

オレがそこまで言うと全員、理解してくれたようだ。

 

「日向分かったか?」

 

「お?おお、おう!」

 

分かってないな…

 

「まあ、後で説明する」

 

「それで、まず何からやればいいのか…」

 

「そうですね。オレが色んな選手を見て感じたことを言っていきます」

 

「そうか、頼んだ」

 

「なら、先ずは日向に足りてないこと」

 

「おれ?」

 

「こいつに足りてないこととかありすぎだろ」

 

「う、うっせぇな!」

 

「まあレシーブは一朝一夕ではいかないし、サーブも同じだ。

今改善できそうなことをやる」

 

「おお!!なんだ、それは!?」

 

嬉しそうな日向が早く言えと捲し立てる。

 

「ジャンプ力だ」

 

「「「「「ジャンプ力???」」」」」

 

「身長じゃなくてか?」

 

「身長はどうにもならんだろうが!!」

 

「日向はただ、身体能力にすべてを任せた、言わば脳筋、単細胞だ」

 

「おい!ひどすぎるだろ」

 

「いや、的確な言葉だよ」

 

月島にも言われ唸るしかできない日向…

 

「日向…[跳ぶ]と、言う事を考えたことはあるか?」

 

「ん~ない!」

 

「だろうな...これからそれを教える」

 

「うぉおお!!おれ、もっと高く飛べんのか??」

 

 

▽▽▽

 

 

日向のジャンプはまだまだ改善の余地があるが、それでも多少は違ってくる。

 

菅さんのサーブから始まり、またも16番を狙い攻撃に入らせない。

相手のスパイクを主将が取り、菅さんと影山がスイッチした。

そして、菅さんのシンクロ攻撃からの影山へのトス。

影山のスパイクが決まった。

 

「うおおおしっ!!」

 

「うしゃあああ!!」

 

16-17 青城リード

 

『ピーーー!』

 

ここでタイムを取った青城。

 

「菅さん…次は同じ手は行きませんよ。狙う相手を変えた方がいいですね。」

 

「だよなぁ~うし!分かった!」

 

菅さんはいつもより強めに左奥に打つ。

青城は少し動揺しつつも、繋ぎこちらに返ってくる。

日向のまたも高いジャンプをするが、オープンなためブロックがしっかり着き、ワンタッチで威力が弱くなる。

ここは青城が確実に決めた。

 

「くそぉ~悪いな、アドバイス貰ったのに」

 

帰って来た菅さんがオレに謝る。

 

「あれは、仕方ないと思いますよ。ナイスプレーでした」

 

「おう!サンキュー」

 

16-18

 

その後も取って取られての繰り返しが続き。

 

17-20

 

しかし、ここで16番が勢いを増して、連続で点をもぎ取っていく。

 

18-22

 

だが、オレの隣でコーチに念を送っている人物がいる。

 

19-23

 

念を送っていた奴...山口がピンサーとして、出場する。

観客はそれに気が付き、「ビビりピンサー」とか言っているのが聞こえる。

しかし、山口の顔は前回と違って、怯えた表情はしていない。

 

「山口10点取れ!!!」

 

「それ試合終わるけど」

 

「許す!!」

 

時に馬鹿のいう事は、人の心に直接訴える。

山口の顔には余裕が見て取れる。

 

笛が鳴り、一呼吸着いてから、フワッとボールを上にあげる。

軽い助走で、軽く跳びボールを押すように打つ。

ボールはネットを超え、相手陣地へ

 

「アウト!」

 

青城リベロがアウトだと判断し、避ける。

 

しかし、コートギリギリで落ちて入った。

 

「「「「「「おっしゃああああ」」」」」」」

 

たった1本...されど、この1本は烏野に大きな変化をもたらす。

 

反撃の一本だ。

 

まさに、ピンサーとしての役割を果たした。

 

オレは日向が出て行こうとするのを止める。

それほどに、大盛り上がりであった。

 

20-23

 

「山口もう1本!!」

 

「思いっきり行け~思いっきり行けよ山口~」

 

菅さんが小声で、言っている。

 

「大丈夫ですよ。逃げる方が絶対後からしんどいって思う方だと思うんで、山口も」

 

縁下さんがそう言った。

縁下さんも一度逃げ出したとのか…

 

山口がジャンフロを打つ。16番の目の前で伸び、16番の身体に当たりコートに落ちる。

 

「サービスエース2本目ーーーーーっ」

 

「よしっ…!!!」

 

また決まったか...なかなか、面白いな...ジャンフロ

 

21-23

 

「「「「山口もういっぽぉぉぉん!!!!!」」」」

 

山口のジャンフロは、オーバーで簡単に対処され、相手の攻撃が山口に迫る。

及川からのトスは、岩泉へ...全力のスパイク。

 

しかし、ボールを落とさないように身体に当てて防いだ。

影山が何とか繋ぎ、月島がブロックにひっかけた。

こちらの得点。

 

22-23

 

「もう一本」

 

「うん!!!!!」

 

月島が山口にエールを送る。

 

やはり...これがツンデレと言う奴か

 

山口がサーブを放つ。

そのボールはネットに当たり、相手コートへ落ちる。

 

23-23

 

「ネットイイイイン!!!」

 

山口がサーブを打つ。

今度はオーバーで取られ、綺麗に上げられた。

相手のスパイクが迫るが、月島のブロックにより、威力が弱まる。

 

烏野も崩れながら、東峰さんまで渡る。

東峰さんがスパイクを打ちブロックに阻まれるも...ブロックアウト。

 

24-23

 

烏野が逆転した。

山口は本当に成長したな。

いや...山口だけではないか、皆成長している。

それを見ているのは楽しいと感じた。

 

山口のサーブはリベロに完璧に取られ、岩泉が決めた。

 

24-24

 

拮抗した試合を見るのは、面白いな…

それからは互いに交互に決めていく

 

26-26

 

及川のサーブが来た。西谷先輩が横に跳びながらレシーブをするが、受けきれず観客席まで飛んで行った。

最早、スパイクのようなサーブだ。

 

「しゃああああ!!」

 

「いいぞいいぞトオル!!」

 

「もう一本!!」

 

青城は大盛り上がりだった。

 

「くっそがああああああ!!」

 

「これは、二人では無理だ」

 

主将の言葉で、東峰さんもレシーブに入った。

 

もう一度、及川の弾丸サーブが跳んでくるが、主将が何とか上げた。

しかし、そのまま返っていく。

それを金田一が直接叩く。

 

「田中ナイスだぁ」

 

田中が拾い、影山が東峰さんに上げる。

しかし、それも青城は止めて、岩泉にスパイクを決められ、第二セット終了した。

 

26-28 青城

 

「切り替えるぞぉ」

 

「うす!!」

 

「結局フルセットか…最初の練習試合、IH予選そんで今…なんだかんだ青城とは一番濃い試合やってるよな」

 

青城とは、フルで戦る運命なんだろうな…

 

 

 

「3セット目は田中と綾隆を変える。

守備強化だ!田中は足を休ませておけ!後半から出すぞ!」

 

「はい!!」

 

 田中先輩がベンチに下がる。

 

「うっす!!頼んだぜ、綾隆」

 

「...はい」

 

 だが、守備強化なら東峰さんの位置にオレを置くべきだろう。及川のサーブが跳んで来る東峰さんの位置に、オレを移動させないのは、東峰さんによるバックアタックの時に日向の囮を持ってくるためか。

 

「烏野ファイッ」

 

「「「「「おーーすっ!」」」」」

 

 

ネットーーーーーーーーーネット

 

綾隆  影山  月島

 

西谷  澤村  東峰

 

 

最終セット開始

 

 最初の2連続を16番に取られた。

 及川によるサーブで、何とか上げる烏野、影山がオレにトスを上げる。オレは16番の腕に当て、ブロックアウトにより点を取った。

 田中先輩の後は継がないとな…

 

1-2

 

 今度は16番がオレを狙って打ってきた。この態勢は…

 オレは避ける。勢いよくコート外へ出て行き、アウト

 

2-2

 

 試合が進み

 

4-4

 

 

「綾隆、一本ナイッサー」

 

 オレのサーブだ。

 まだ序盤だが、ここで仕掛けて起きたい。

 オレはエンドラインを越えてもまだ後ろに歩く。

 オレの行動に敵味方関係なく、訝し気な表情をして見てくる。

 

『ピーーーーーーー!』

 

 笛の合図がなり、サーブトスを高く上げる。

 そして、走り高く飛ぶ。

 7割程度の力で打つ。

 オレのジャンプサーブで狙うところは、リベロだ。

 誰もが驚いただろう。

 1セット目は普通のサーブ。

 今までチームメイトにも見せたことは無い。

 オレのサーブをリベロが大きく後ろに逸らした。

 

「うおおおおおおお!!!!!」

 

「おおおおおお前!ジャンプサーブできるのか!?」

 

「な...な…ナイスサーブ」

 

 皆が寄ってくるが、影山だけはくやしそうだった。

 あと日向も。

 

「たまたまです」

 

「おいおい、リベロからサービスエースを取っておいて何言ってんだ…」

 

 

5-4

 

 次も狙うのは、リベロ…威力はそのままで足元を狙う。

 前かがみに何とか取るが、そのままこちらに返って来たボールを東峰さんが叩き落とした。

 良い感じにイラついているな…

 

「ナイス!旭!!!」

 

「ナイスサーブだ!綾隆!!」

 

6-4

 

 

 このままやれば、点差は離せるが、今後もオレが出なければならなくなる事が多くなる...それはオレにとっては困る。

 だが…ここでは止まらない。

 春高に行くと言う約束もあるが、それ以上にこの県でこんなにも白熱した試合ができるとは思えなかった。

 そして、及川のセットを見て、気付いたこともある。

 この相手と少し戦り合ってみたいと思った。

 

 オレのサーブにも、もう慣れて来ただろう。普段から及川のサーブに慣れている青城ならすぐに対応する。

 

 なら、オレも新しいことをすれば問題ない。

 

 サーブトスを軽く上げる。

 軽い助走、軽いジャンプ...イメージは山口。

 山口の動作を頭の中で再現し、そのまま動く。

 

 急なジャンフロで狙われていると思わなかったであろう岩泉が、アンダーで対応してしまい、取りこぼした。

 

「はぁ!?」

 

 と、相手コートから聞こえてくる。

 

「うおおおお!!!」

 

 日向が大興奮でオレの元へ来る

 

「「どうしちゃったの!?あやぽん!?」」

 

 と、コート外からの田中先輩と飛びついて来た西谷先輩が、叫んでいる。

 

「な、な…なナイスサーブ」

 

 悔しそうな影山からお褒めの言葉をいただいた。

 

「ま、負けてられん!」

 

「次!一本!!!」

 

 東峰さんと主将が言う。

 嬉しそうな表情をしてボールを渡される。

 案外隠していても怒られないんだな…

 

7-4

 

 次は、ジャンプサーブを打つ。

 その速さの違いに、後衛から前衛に移動しかけた及川は動けなかった。

 しかし、それが功を奏したのか、おでこに当たりネットを超え、こちらのコートに落ちた。

 

「はっはっは!想定通りなのだよ!」

 

 及川はすぐさま立ち上がり、仁王立ちで笑っていた。

 

「何かスッキリしたな」

 

「聞こえてっから!!」

 

 どうやら、及川はチームメイトに余り良くおもわれていないようだ。

 

7-5

 

「ド...ドンマイ!」

 

「切り替え切り替え」

 

 その後、16番のサーブにより、2点を奪われ同点となった。

 なかなか、離させてくれないな。

 試合は進む。

 

▽▽▽

 

 タイム中。

 

「16番出て来たな」

 

「ああ。やっぱり守備強化だと思うよ」

 

 青城のベンチでは、また16番の話題で話が進んでいた。

 

「うん。あいつは狙わない方が良いね。打つだけ損だ」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

▽▽▽

 

 

9-10

 

 及川のサーブで崩れ、そのまま相手コートに返る。

 及川のトスから16番へ上がる。

 しかし、オレと月島は交代し、月島がドシャットを決める。

 

「ドシャットぉぉぉぉおお!!!」

 

「今の君がやればよかったんじゃないの?」

 

「ん?月島の方が、ブロック上手いから替わったんだが?」

 

「あっそう…」

 

10-10

 

 続いて、もう一度16番に上がりスパイクを打つが、月島が冷静に判断しアウト。

 

11-10

 

 崩れた16番…国見と交代する。

 その後、コート外で何か揉めているのを見逃さなかった。

 

13-12

 

 もう戻って来たか...まぁかなりラリーが長かったからか…だが、戻ってきたと言う事は…

 

「狂犬ちゃん」

 

 及川のトスが16番に上がり、16番は例の横から入ってくるスパイクだ。

 

 だが…残念だったな。

 クロスを締めているのはオレだ。

 

 周りはスローモーションに変化し、ぼやけて見える。

 しかし、ボールが進む道を光がさしている。

 いつもよりも音が良く聞こえる。

 隣で飛んでいる日向の呼吸音が良く聞こえ、後ろでは誰がどこにいるのかが分かる。

 オレは、ボールが進む道にタイミングよく手を置く。

 

『ダァン!』

 

 勢いよく相手コートに落ちた。

 

「ドシャットォォォオ!!」

 

「ナイスブロック!!」

 

 皆が飛び跳ねながらオレにハイタッチを求めてくる。

 対して、青城は悔しそうにこちらを睨む。及川は一番悔しそうにオレを見て来た。 

 丁度良い。

 

「気持ちが入れ替わった16番にトスを上げ、決まれば青城のムードが上がると思いましたか?

オレも思った★」

 

 及川に聞こえるように言った。

 

「この…クソ…クソガキがぁぁあ」

 

 今にもこちらに襲い掛かってきそうになっているのを岩泉が止める。

 

「落ち着け!挑発だ。」

 

 向こうで、わちゃわちゃしているが、オレには関係ない。

 オレがチームの方に向き直ると、皆がドン引きしていた。

 

「お…お前、敵でも3年だぞ…」

 

「あ、あの及川さんを…」

 

「ヒィィ悪魔…」

 

「おお!大王様を怒らせるってことは...大魔王様!?」

 

「おい...何だその不名誉なあだ名は…」

 

「ま、次サーブ綾隆だ。

たたみかけろ」

 

「はい」

 

14-12

 

 オレはまだ全力でジャンプトスを打たない。

 

 狙うは、及川…が出てくる場所

 しかし、やはり青城のエースだな...

 

「甘いわァ!」

 

 岩泉が上げ、16番のスパイク...強気だな。

 東峰さんの手に当たるもコート外へ出て行き、アウト。

 今回は決められたか…

 

「おっしゃああああ!!」

 

14-13

 

 

 青城が勢いに乗ってしまったか…

 そして、不味い事態が起きた。

 

 先程のブロックで手を痛めたのか、東峰さんが手を抑えている。

 

「東峰さん手が!!手がぁぁあ!!」

 

 試合が一時タイムになり、コーチと清水先輩が駆け寄って来た。

 

 

▽▽▽

 

 

 日向の叫び声に皆が気が付いた。

 何があったかは分からないけど、私は補給箱を持って手を抑えている東峰に駆け寄る。

 

「おい!どうした!」

 

「ブロック時に当たり方が悪かったみたいですね」

 

 コーチの問いに綾隆が答えた。

 

「旭…」

 

 澤村も顔を歪ませて見ている。

 

「っ...」

 

「一度医務室に行くぞ!」

 

 コーチから言われ、悔しそうにする東峰。

 

「旭…俺達に任せておけ」

 

「…ああ、すぐに戻る」

 

 東峰はそう言うけど、

 無理だ...誰がどう見ても骨に異常をきたしている。

 でも…三年でここで負ければ終わりの試合...しかもここで勝てても次の試合にも出られない…不安と悔しさが入り混じっていて、その場から動かない。

 

「東峰さん

そのケガでは次の試合も無理ですね。

全国まで大人しく体幹トレーニングに努めてください。

後で、体幹トレーニングの仕方教えますね。」

 

 綾隆からの意外すぎる意見に皆が綾隆の方をキョトンとした表情で見る。

 なぜ見られているのか分からなかったのか、綾隆は首を傾げた。

 

「ぷっ...あはははは。綾隆がそんな事を言ってくれるとはな...安心してコートを出られるよ」

 

「変なこと言いましたか?」

 

「いいや...何にも」

 

 東峰は笑いながら、コートを出ていく。

 私も東峰に着いていく。

 綾隆のプレーを見られないのは悲しいけど、綾隆が全国へ行くって言ったんだ…信じよう。

 

 

▽▽▽

 

 

 田中先輩とオレが交代し、オレが東峰さんの場所に入る。

 

 16番のサーブから始まり、田中先輩が上げる。

 

「だっしゃあああ!!」

 

「ナイスレシーブ!!」

 

 影山から日向へ超速攻だが、コースを絞られ普通に上げられる。

 青城の上手い連携により点を取られる。

 

14-14

 

「くっそぉお」

 

 日向は悔しそうに呻く。

 

「日向…すべて出すぞ」

 

「お?おお!!やるのか!あれをやるのか!?」

 

 目をギラギラさせ、飛び跳ねる。

 

「ああ、勝つって言ってしまったしな」

 

「よっしゃー!」

 

 そして、またも16番のサーブを田中先輩が上げる。

 そして、シンクロ攻撃。

 日向が飛び出してこないことに青城は驚いている。

 

 シンクロの中に紛れた日向に上がりスパイクを決めた。

 

「おっしゃあああ!」

 

「よし!!」

 

 影山と日向でハイタッチをしている。

 東峰さんが抜けたことで、チームの士気が下がるかと思ったが、杞憂に終わった。

 

15-14

 

 日向のサーブは威力も弱く、相手からすればチャンスボールだ。

 しかし、前衛はオレと月島だ。リードブロックで確実に威力を落とす。

 

「ワンタッチ!」

 

 田中先輩が上げ、影山からのトスでオレは16番を狙いスパイクを打ち決める。

 

「ナイスキー!!」

 

16-14

 

 もう一度、日向のサーブだが今度はネットにかかり相手の得点。

 

「日向ボゲェ!!」

 

16-15

 

 試合は進み

 

19-18

 

 及川のサーブが回ってくる。

 スローモーション。時が止まったかのような世界から、オレへ向けて打ってくるのが分かる。

 来る場所に移動し真正面で来るのを迎え入れる。

 

「ナイス!!レシィィィイイブ!!!!!」

 

 影山から田中先輩へ行くが、ブロックに捕まってしまった。

 

「だぁあああ!クソ!!すんません!!」

 

「ドンマイ!ドンマイ!」

 

19-19

 

「てめぇ!及川!16番狙うなって自分で言ってただろが!!」

 

「ごめーん!だって~」

 

 と、聞こえて来た。

 しかし、また次のサーブもオレの所へ来た。

 今回も確実に捕らえ上げる。

 ...何とも強烈なサーブだな。良い見本となる。

 

 今度は田中先輩がちゃんと決めてくれた。

 

20-19

 

「お前なぁ!!」

 

「さっきのはミスったんだって~!!」

 

 月島サーブも普通のサーブの為、チャンスボールだろうな...そして、金田一のブロードで相手のポイント。

 

20-20

 

「大王様ってやっぱすげーな」

 

 前衛に回って来た日向がそう影山に言う。

 

「……わかんのか」

 

「なんかスゲーのは分かる!」

 

 影山は少し不貞腐れている。

 

「だがしかし!おれが居ればお前は最強だ!!!」

 

 コート場が一気に烏野の雰囲気になった。

 

「!?…かっけぇなオイ…!」

 

「まったくだよ」

 

 と、及川と岩泉の会話が聞こえてくる。

 

「拾われまくりが何言ってやがる」

 

「なんだと!!!」

 

「根拠のない自信いいね!」

 

 岩泉のサーブを主将が上げる。

 

「おれに持って来おおおおおおいやあああああ!!!」

 

 日向が叫びながら走って跳ぶが、ネットに近すぎないか?

 しかし、それに合わせて影山がトスをネットの真上に上げた。

 

「叩き落とせ!」

 

 日向は手首のスナップだけで、叩き落としアタックラインの線より前に落とした。

 

「うお!?うお!?」

 

「おい真下だったぞ!狙ったのかよ⁉」

 

「日向がネットに近かったんで、トスも近付けました。

上手くいって良かったです」

 

 影山らしいな。

 天才と馬鹿は紙一重。というが、影山を見ている限り、馬鹿だから限界を理解せず、ひたすらに突き進める。つまり、天才と馬鹿はイコールなのではないだろうか?

 

21-20

 

 だが、青城も一切譲らない。

 ピンチサーバーが入ると同時に16番の異様な気合の入りようで、すぐに点を返される。

 

22-21

 

 影山サーブで崩れるも、及川は影山が取るようにボールを返した。

 

「綾隆!」

 

 影山はオレにパスをする。

 タイミングよく入ってくる日向…そして跳ぶ。

 日向は目をつむって全力でスイングした。

 オレはそれを目掛けてトスを上げる。

 

 そんなことが来るとは思わずに、敵はブロックを跳ばなかった。

 誰も微動だにせず、ボールはコートにバウンドし後ろへ飛んで行った。

 

「しゃあああ!!」

 

「うおおおお⁉なんだお前ら!綾隆もできたのか」

 

「オレは影山のような頂上で止めるなんて芸当はできませんし、正面向かないとできません。」

 

「いや、それでも十分すげぇよ!!」

 

 相手の顔には絶望の表情さえ見える。

 

23-21

 

 しかし、ここで終わらせないのが、3年の意地。

 その想いを受け継いだ16番の強烈なサーブでサービスエースを取られる。

 そして、その後も点を取られた。

 

23-23

 

 またの同点...

 一点ずつ取って行き、及川のサーブ

 

26-26

 

『ダァアアン!!』

 

 と、コート内に音が響く。

 

「うおァッしゃああ」

 

「もう1本!!」

 

26-27

 

 直ぐに主将は及川の方に向き直る。

 凄い集中だな…

 そして、また主将目掛けて飛んでいく。

 主将は完璧に上げて見せた。

 シンクロ攻撃でオレのバックアタックにより取り返す。

 

「「「「ナイスキー!!」」」」

 

27-27

 

 オレのサーブだ。

 狙うは、及川が出てくるところをジャンフロで…

 ボールは思い通りの軌道を描き、リベロの腕をはじいて落ちた。

 

「ぐうぅああ!!」

 

 相手からはうめき声が聞こえてくる。

 

「ナイスサーブ!!」

 

 味方からは歓声が送られる。

 

28-27

 

「もう1ポーン!!!」

 

 高く上げ高く跳ぶ。

 しかし、軽く押すだけ...前に落とす。

 

「ちっ!!!」

 

 相手のレシーブが崩れトスも高く上がっていない。

 しかし、16番は左で叩き決めてくる。

 

28-28

 

 岩泉によるサーブはネットに当たりこちらのコートに落ちた。

 

28-29

 

 しかし、次はアウトにより点を頂く。

 

29-29

 

 月島に代わり、菅さんが入る。

 菅さんのサーブはネットギリギリを攻め岩泉を牽制。

 相手が繋ぎ、スパイクが跳んで来るがネットに当たり前に落ちる。

 

「俺がとるっ!!」

 

 菅さんが前にダイブして拾った。

 そして、シンクロ攻撃……だが、影山は全てを囮にツーで返した。

 誰も触れることなく落ちる。

 

「かっげやまぁああああ!!!」

 

30-29

 

 菅さんのサーブがまたコート前の方で落ちる。

 拾われ、スパイクを打たれるも、田中先輩がおでこで上げる。涙目だ…

 

 影山と菅さんが交代し、菅さんのセットからのシンクロ攻撃がオレに上がり、打ち下ろす。

 青城は何とか拾うが、コート横側へ出て行った。

 しかし、及川が走りながら、岩泉を指さす。

 そして、コート外からのセカンドテンポ+超ロングセットアップ

 タイミングはドンピシャで関心してしまうほどの素晴らしいエースへのトス。

 それを岩泉がスパイクを打つ。

 

 だが...悪いな。

 

 オレもここで負けるわけにはいかない...

 視界がスローモーションになり、周りがぼやける。

 必要な情報だけがスッキリと見える。

 岩泉の身体の向き振り下ろす手から軌道が見えてくる。

 ボールが通る道に移動する。

 主将の少し前に立ち、少し後ろに跳びながら衝撃を和らげる。

 それでも少しずれてしまったか...多少影山から離れた位置にボールが上がる。

 

「「「「ナイスレシーブ!!!」」」」

 

 日向と影山が動き出す。

 

 セットアップのモーションが読まれ、青城は日向に三枚のブロックを付けた。

 だが、影山は構わず日向にトスを上げる。

 日向がコースを打ち分け、及川の手に当たって後方へ飛んでいく。

 

『トンッ!!トンットントントントン』

 

 静かな会場にボールが弾む音だけが聞こえる。

 会場内のすべての人がそのボールを目で追う。

 悔しさも嬉しさも無い。ただ茫然とそのゆっくりと止まるボールを見ていた。

 

『ピッピピーーーーーーー!』

 

 静寂な会場に審判の笛の音だけが響き渡る。

 笛の音で再起動した人たちは、それぞれの感情を表に出す。

 嬉しさ。 

 悔しさ。

 頭を抱えて残念そうにしている人たち。

 コート中央に集まって喜びに満ち溢れている人たち。

 この試合を見て興奮している人たち。

 

 

 

 感情を爆発させている人たちの中、オレは…オレだけが無だった。いや、無ではない。冷たく、心が冷めていく。

 嬉しいか。いや、嬉しくない。

 残念。その言葉が適切だろう。

 オレは期待していたのだろう。

 全力を出したうえで、自分を超えてくれる存在を。

 

31-29

 

 試合終了 勝者 烏野

 

 

 

「「「「「「「よっしゃあああああああああ」」」」」」」」

 

 

 ネットを挟み、挨拶をしたのち、コーチの周りに集まる。

 コーチからはお褒めの言葉を頂くが、先生は涙ながらに話していたので何を言ってるのか分からかった。

 

 影山と及川が二人で話しているのを横目で見ながらコートを後にする。

 一度コートから出て陣地に戻り腰を下ろす。

 皆から賞賛の声を浴びせられた。

 トイレに行くため烏野の陣地を後にすると、及川と牛若が二人でいるところに遭遇してしまった。

 

「聞けよ牛島。

俺は自分の選択が間違いだと思ったことは一度もないし、俺のバレーは何一つ終わっていない…取るに足らないこのプライド、絶対に覚えておけよ」

 

「?」

 

「ああ、それとね。俺ばっか注視してると思っても見ない方向からブッスリ刺されるからね」

 

「?どういう意味だ」

 

「俺の後輩、頭悪いし、まだぜーんぜん俺に敵わないけど、それでも独りでなくなったあいつは強いよ。

カラスは群れで大きな白鷲でさえ殺すかもね...一人単体で白鷲に匹敵しそうなカラスもいたな」

 

「?」

 

「げぇ⁉お前いたのか⁉」

 

 ようやく気付いたか…

 

「...ふん!」

 

「及川さん...オレは結構楽しかったですよ?」

 

 何を言っていいのか分からなかったので、一応そう言っておいた。

 

「う…うるせぇ!!お前のことなんか嫌いだよ!!」

 

 嫌われるようなことはしていない...いや、したな。かなり煽ったのを思い出した。

 

「そうですか」

 

「こいつが言ってたやつか?」

 

「あ?ああ、そうだよ」

 

 物凄く顔を顰めながらそう言う。

 

「そうか、試合になったら容赦はしない」

 

「そうですか、オレも今回は春高行くって約束してしまったので、勝たせてもらいます」

 

「随分余裕を持った言い方だな…」

 

「悪いが、オレが負けるのは想像できないな」

 

「ふっ...楽しみにしている」

 

 そう言って、牛若は去って行く。

 

「俺おまけみたいになってんですけど...!」

 

 仕方ないので、及川の方を見る。

 しばらく視線を交差させたのち及川が口を開いた。

 

「…何か、いつかお前にトスを上げる気がする」

 

「?…」

 

 良く分からないことを言われた。

 ありえないな。オレはバレーを続ける気などない。

 

「ふん!じゃあね」

 

 そう言って去って行く。

 オレもトイレに行き、戻ることにした。

 戻り荷物をまとめていると、ひとかが近付いてきた。

 

「お疲れ!!今日はどうだった⁉楽しかった?」

 

「ああ、そうだな。案外楽しめたのかもな…それより、うがいしたか?」

 

「うがい?」

 

「オレ達が競っているときに、ひとか手すりに嚙みついていただろ?」

 

 オレがそう言うと、みるみる顔が真っ赤になっていく。

 

「ほぅぎゃ!!みみみみ見てたの?」

 

「見えたんだ」

 

「わわわわ忘れて!!むむむむむ無意識なんだもん!!」

 

 もの凄く焦っているな。

 

「ああ、分かったから口を洗ってこい。

手すりは割と汚いぞ」

 

「はい……」

 

 戻って来たひとかとバスに乗り込む。

 乗って、すぐに皆は寝てしまった。

 オレは一人窓の外を眺めていた。

 

 

▽▽▽

 

 皆が寝静まり、横でかわいらしく寝息を立てるひとかちゃんを見て私も目を瞑った。

 

「やはり爆睡ですね...」

 

「無理もねーわ、強敵と二試合だもんよ...おわっ!お前寝てなかったのか…」

 

 コーチは綾隆が起きていることに気付き、声を上げた。

 私は、その声で目を覚ました。

 

「まぁ…はい」

 

「それにしても、凄い活躍でしたね...綾隆君」

 

「ああ!ホント驚いたぜ...サーブと言い、レシーブと言い...お前が何かやる気を出す理由があったのか?」

 

「まぁ、そうですね。」

 

 そう答えた綾隆だけど、やる気はでていなさそう…

 

「それは良かったぜ...」

 

「ですが...やはり本気でやるのは無理ですね」

 

「「「ん?本気じゃなかったの(か)?」」」

 

 あ、私も思わず突っ込んでしまった。

 

「…はい」

 

「…それは…何ででしょうか?」

 

 先生も聞いていいのか迷いつつも聞くことにしたみたいだ。

 

「オレはオレ自身の事を最も恐ろしく、愚かな人間だと思っているからです。

最近...皆と一緒にいると余計にそう感じます...」

 

「「「……」」」

 

 先生もコーチも私もどう言っていいのか分からず黙りこくる。

 一体何があれば、そうなるのか…想像もつかない。

 

「すいません…」

 

「いえ!僕が聞いてしまったことなので、気にしないでください!!!

でも、少し安心しました。」

 

「?」

 

「以前はそのようなことでさえ、話してくれませんでしたから…話してくれるようになって僕は嬉しいですよ。

綾隆君は確実に成長しているという事ですよ!」

 

「成長ですか...そうだと良いですね」

 

「ああ、人は環境で変わっていくからな。

烏野は良い奴らだろ?

だったらいい方向に向いているという事だよ!」

 

「そう言うもんですか」

 

「ああ!いい方向に考えた方が人生楽しいもんだ!」

 

「そうだよ...綾隆が力を貸してくれたお陰で、東峰が居なくても青城に勝てたんだから...チームとしてもいい方向に進んでるんだよ

ひとかちゃんに聞いたけどいつもよりイキイキしてたって言ってたよ」

 

「な!いい方向に進んでるだろ?」

 

「そうかも知れないですね」

 

 だんだんと分かり合えている証拠なのだろうか...綾隆も私たちのことを考えてくれていることが分かる。

 それだけでも十分満足だ。

 




次回は白鳥沢です!

更に長い………ポテチ2個かな…?
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