分けたほうが良かったかも…
烏野高校に戻り体育館で一度ミーティングをするために入った。
体育館に入って、主将が改めて言った。
「ちょっといいか...狙うのは、全国大会優勝だ」
……
「え、それ以外に何かあんスか?」
影山らしいな。
「またお前はそォいう言い方ァァァ!!!」
「お前バカだな!改めて言っただけだろ」
日向と影山のケンカが始まった。
「春高行くとしか言って無かったから…」
「当然!!」
「そのつもりだ」
「あ、僕は何でもいいです」
そこへコーチが入って来た。
「モチーベーションは申し分無し。
それじゃあ目の前の強敵の話をしよう。
県内で最も完成されたチームを青葉城西とするなら、白鳥沢は県内で最も未完成なチームだ。
はい、では綾隆から」
「はい…先ず白鳥沢の弱点から」
「弱点??」
「はい、白鳥沢の弱点は、セッターです。」
「「「「「セッター??」」」」」
「はい、白鳥沢は牛若を軸に戦っているチームです。
それを成り立たせているのが今の白鳥沢のセッターです。」
「エースに尽くすセッター...」
影山が呟く。
「そうだ…そのセッターに揺さぶりをかけるためにも牛若の邪魔をする。」
「結局牛若か~」
「はい、ですが止めると言うよりは気持ちよく打たせない。
合宿で日向がイライラしていたように、スパイカーにとってのストレスを与え続ければ、影山でさえ躊躇する。」
「「うっ...」」
二人とも思い出したのだろう。
顔が険しくなる
「コーチが言っていた、トータルディフェンスもそうですが、絶対にブロックがつくことが重要です。」
「なるほど、牛若に精神的ダメージを与えれば、セッターにもダメージを与えられると言う事か」
「あ!二石一鳥だ!」
日向を皆はかわいそうな目で見る。
「それを言うなら一隻二兆だろうが!ボゲェ!!」
影山がそう言った。
「何か惜しい!!」
「まぁ…オレ達がやることは1セット目を捨ててでも相手の攻撃に慣れることです。」
「後は?」
「真っ向勝負です。
烏野らしく」
「「「「「おっしゃああああ!!!」」」」」
「旭を全国に連れてかないといけないしな!」
「ああ、頼むぞ、皆…あ、でも…オレが居なくても行けると思うと何かしょぼくれるな…」
「めんどうか!チームなんだぞ!応援くらいしろよ!!」
「わ、分かってるよ!!」
▽▽▽
「翔陽達、決勝進出だって...」
「マジすかっ」
「さすがだ」
「んで、これから牛若とやんのか、かーわいそ~
あ、でもそろそろ化け物君が目覚めた頃かな?」
「「「化け物?」」」
「烏野にはまだ隠れた化け物がいるんですよ...もし、出てくるようなら…牛若は食われちゃうかな」
▽▽▽
翌日
10月全日本バレーボール高等学校選手権大会
宮城県代表決定戦 決勝
「澤村!!応援来たよ!!すごいよ!決勝なんてもうっもうっ凄いよ!やばいよ!」
「あんたのボキャブラリーがヤバい」
主将の同級生の人が応援に来てたのか…主将も案外モテルんだな
「て言うか、顔!痣!!」
「あ~…」
菅さんが邪魔しないようにオレ達を離すように背中を押した。
「翔ちゃん!!」
日向にも応援が来ているのか…何か人望の無さを感じる。
しかし、そんなオレにも声を掛けてくれる人がいた。
「どうやら、緊張はしてないようだな」
聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと…
牛若が仲間を引き連れて来ていた。
皆は、ビビってオレの後ろに一歩さがる。
「生憎と緊張したことはありませんので...」
「そうか、怖気づいていないのなら良い。
昨日言った気持ちは変わってないのか?」
先生もコーチも選手、周りの一般客までオレと牛若の会話を黙って聞いている。
「ああ、オレが負けることは想像できないな。」
「烏野のエースはケガで出られないと聞いたが?」
「それくらいのハンデは必要でしょう。
ですが…まぁ、オレも全国常連と言われている白鳥沢に興味が湧いています。
そちらこそ、失望させないでくださいね」
牛若はフッと笑い、言う。
「面白い…そう言えば名前は?」
「清田綾隆だ」
「そうか」
そして、去って行った。
「お前ぇ~何牛若にケンカ売ってんの⁉」
菅さんが手を握ってきた。
「ななななな何⁉知り合い⁉」
東峰さんは狼狽えている。
「「やるなぁ!あやぽん!!」」
味方からも色々と責められ、周りからは…あいつ死んだなと言われている。
「お前…ホント怖いもんなしだよな」
▽▽▽
「うわ~緊張する〜」
「谷地さん…俺もだ」
コートに入れないひとかと東峰は観客席に向かった。
いつも通りな2人が烏野応援席で試合が始まるのを待っていると、またスーパーのお兄さん達が応援に来た。
「おっ…!ロン毛の兄ちゃん!手大丈夫か?」
「あ、はい。もう痛みはありません」
「ま、全国まで見学だな!」
「ええ。そうですね」
「なんだ?あんまりショックじゃないんだな?」
「まあ…試合に出られないのは悔しいですが、全国へ行くとあいつが言ったので…」
「お…?そうか」
「うぉーい!偵察してるやつ、連れてきたぞ〜!こいつスパイだぁ!」
そう言って、男一人を引き摺って近付いてくるのは、田中の姉だ。
確かに男は帽子を深くかぶり、サングラスを掛けて見るからに不審者だった。
「待ってください!関係者です!兄なんです!月島の月島蛍の兄です!」
「月島の!?…なんか似てないな」
「だな…」
そして、烏野観客席には関係のない3名が一般客が座る。
一人はおじさん。2人はただの観客。
おじさんは、ふん!とグチグチ何か文句を言っているが、誰も気にしないようにしていた。
▽▽▽
コートに入ると、観客で席が満席だった。
「し~らとりざわ!!」
『ドドンドドンドン!!』
「し~らとりざわ!!」
『ドドンドドンドン!!』
白鳥沢の応援で会場が満たされている。
烏野の応援もかなりいるはずだが、何も聞こえない。
「もっかい便所…」
「胃薬を…」
「センターコート!!」
「ノヤっさんチアだ!チアだぞ!!」
「うらやましいいい」
「田中西谷さわぐな!!」
「おちっおちっちゅちゅちゅ」
「いつも通り!!」
ホント…烏合の衆と言う言葉が良く似合うな。
そこへ白鳥沢が入って来たことで、さらに応援の音が大きくなった。
ウォーミングアップをしている際、スパイク練で牛若が打つとそのまま、二階へ上がった。
凄いパワーだな
「おい、お前ら。昨日のアレやったれ」
田中先輩が日向影山に[挨拶をしてこい]とボールを渡す。
超速攻からの真下打ちが決まり、会場は歓声が上がる。
『これより。全日本バレーボール高等学校選手権大会、宮城県男子代表決定戦。宮城県立烏野高校 対 白鳥沢学園高等学校の試合を開始いたします』
『両チームのスターティング選手を紹介致します』
『白鳥沢学園
1番 牛島若利 4番 大平獅音 5番 天童覚
8番 五色勤 10番 白布賢二郎 12番 川西太一
14番 リベロ 山形隼人
烏野高等学校
1番 澤村大地 16番 清田綾隆 5番 田中龍之介
9番 影山飛雄 10番 日向翔陽 11番 月島蛍
4番 リベロ 西谷夕
観客の皆様、両チームの健闘に盛大なご声援をお願い致します。』
割れんばかりの拍手が体育館の中を響き渡る。
本気で相手を潰しにかからなくても、全力のプレーくらいは出したいものだ。
白鳥沢は、それができるだろうか。
五色 白布 天童(山形)
川西 牛島 大平
ーーーネットーーー
影山 月島 綾隆
田中 日向 澤村
(西谷)
いつもと違うスタート。
『ピーーーー!!』
試合開始の合図と共に主将がサーブを打つ。
しかし、アウト
「ラッキィィーー!!」
白鳥沢の応援団が烏野を煽るように騒ぐ。
相手からのサーブがネットにかかり前に落ちる。
取れるボールだが、お見合いをしてしまい、ボールを落とす。
一気に2失点。
相当緊張しているようだな。
「おちつけええええええええ!!
自滅してる余裕ねェぞォォォ!!
何にビビってやがるテレビか!!!
浮かれてんじゃねぇええ!!!」
菅さんが騒ぎ出すが、一番落ち着きがない…皆はそれを見て落ち着きを取り戻した。
「分かった!分かったからスガも落ち着け!!!」
次のサーブは主将が確実に取り、月島がスパイクを打つが上げられ…来た、牛若のスパイク
オレと月島と影山の三人がブロックに着く。
牛若のスパイクは何度も見ている。
タイミングは分かってる。
ストレートを開け、西谷先輩への道だけを開ける。
牛若は、狙い通りストレート打ち、西谷先輩のど真ん中に行くが、後ろに弾いた。
なるほど...威力だけではない。
スピンも凄まじいな。
そして、左か…
良いものを見た。
「3本ください。必ず慣れて見せます」
西谷先輩の言葉に皆が頷く。
頼もしい人だな
0-3
元々1セットは捨てるが、慣れなければ意味がない。
ようやく、田中先輩が1点返した。
1-4
オレのサーブだ。
『ズッパァァアン!!』
と、相手コートに響き渡り、相手チームの応援を黙らせる。
「「「「「「ナイスサーーブ!!!」」」」」」
殆んど全力サーブ。
イメージは及川...しかし、威力は及川よりも低め。
それでも弾丸と化したサーブが相手コートに突き刺さる。
_________________
「「「「うおおおおおお!!」」」」
観客席も大盛りであった。
「昨日よりもスピード上がってない?」
そう聞いたのは冴子姉。
「ああ!この雰囲気の中、あんなサーブを良く打てた!まだ、緊張もしているだろうに」
「緊張はしてないと思いますよ…」
坂の下商店の兄ちゃんの言葉に、小さく突っ込むひとか。
「なんで?」
「綾隆…緊張したことないって言ってましたし、試合前に白鳥沢のエースと普通に話してました。
ケンカ売ってたような…」
「あの時、谷地さん気絶しかけてたから…まあ牛若とも対等に話してましたね…」
東峰は苦笑いで説明した。
「「まじか…これは期待できそうだな」」
_________________
2-4
そして、もう一度同じ所へ、反応はしたものの捉えきれず後ろに跳んでいく。
3-4
次はリベロが取り、牛若がスパイクを打つ。
西谷さんの腕に当たるも後方へ跳ぶ。これで、2本目。
3-5
牛若のサーブが来た。
一本目は主将に行き、弾いてしまった。
3-6
「さっ来おぉぉぉおい!!!」
2本目のサーブで、西谷先輩へ
見事に有言実行の3本目で上げて見せた。
「あ、上がったァァァア!!!」
その上がったボールを打とうとする影山。
それに釣られブロックに跳ぶ白鳥沢をあざ笑うかのように、田中先輩へセットアップ。
ちゃんと決めた田中先輩。
「っしゃあああ!!!」
「ソォォオイ!!!」
「対白鳥沢なのに影山よゆーだな」
「俺今んとこ及川さんより怖いもん無いんで」
「ワハハ!!なるほどね!!」
4-6
しかし、また点を取られ続け。
4-9
一気に離されてしまったか…
こちらのミスと相手のラッキーが殆どだったが、これ以上は離されたくはないな。
ネットの向こうから圧を感じる。
[俺が打つ]
そのような圧を放てるのは、一人だけだろう。
牛若がオレに対してブロックガン無視でバックアタックを打ってきた。
オレはそのボールの軌道上に移動し、上げる。
[そんなものか?]とでも、言いたいのだろう…オレは心が沸き立つのを感じていた。
[寄越せ]
と、オレは影山に無言の圧を送る。
「ナイスレシ…ハッ」
それに全員が気が付いただろう。
オレの圧を感じ取った影山は、ニッと笑い高いトスを上げる。
いつも誰かは一緒に入ってくるが誰も入ってこない。
オレの前には三枚のブロックにレシーブもオレだけを見て構える。
...上等。
『ドォン!!』
と、高く跳ぶ。
正しい跳び方を日向へ。
絶対に決めると言う圧の出し方を田中先輩と東峰さんへ。
全力で右腕を振り下ろし、ブロックの上からボールを叩き落とす。
オレはまだ技術的な面では、牛若には劣るのだろう。
だが、それは当然だ。
オレがバレーを始めたのは今年からで、牛若は幼い頃からやっていたのだからな…
それでも…オレがバレーにおいて牛若に劣るわけではない。
幼い子供がいくら上手い選手だったとしても、素人であろうと大人の圧倒的な力の前では無力なのと同じだ。
技術で劣るのなら、高さ、スピード、力の身体能力でねじ伏せればいい。
肉体的なことでは負ける気はしない。
弾丸と化したボールが牛若の方へ...牛若の腕に当たり後方へ飛んでいく。
遅めの挨拶だが、返せただろう。
牛若はこちらを向き、フッと笑う。
5-9
「「「うォォォオオオオ!!」」」
コーチと先生、清水先輩は立ち上がって喜んでいる。
上を見ると、田中先輩の姉の胸の中に埋もれているひとかがもがきながらもガッツポーズを作っていた。
「何だお前!!できすぎだろ!!」
コート外から子供のようにハシャグ菅さんと。
「ナ...ナ、ナイスキー」
物凄く悔しそうな日向。
「ナイスキー」
影山は嬉しそうに言ってくれた。
「影山、前衛に来た時なんだが…」
「できんのか?俺はできる」
「ああ、問題ない」
_________________
「スゲェな!あいつ!」
木下さんが、綾隆を褒めたたえる。
「綾隆はいつも実力を隠して来ましたからね…合宿のときだって、木兎さんを何回か止めてましたし、当然と言えば当然かもしれませんね」
「あの梟谷のエースを!?」
「はい」
「なんで、隠してたのかは知らねぇがやる気になってくれたことは素直に嬉しいな」
「…そうですね」
普通妬んだりするだろう…
菅さんはどこまでも優しい人だ。
_________________
「谷地さん!手すりに噛み付くのはやめといた方がいいよ!」
一方、観客席では、またひとかが手すりに噛みついており、東峰に止められていた。
「ハッ!?み、みみ見なかったことにしてください!」
ひとかの慌てように皆は、ほっこりしていた。
「それにしても、凄いね…あやぽん」
あやぽんと呼ぶのは田中の姉。
「ええ…俺のレギュラーの座が危うくなってきた…」
東峰はいつものようにビビっている。
「だっはっはっ…そこは頑張るんだな!」
_________________
8-10
「ナイスレシーブ」
オレは前衛に出て来ていた。
田中先輩のサーブで始まり、何度かラリーを行った後…影山がオレにトスを送る。
そのトスはいつもより、外へゆったりとした軌道を描く。
三枚のブロックが着くが、残念。
オレのスパイクは綺麗に抜け、コート端っこに刺さる。
リベロもさすがに取れなかったようだ。
観客も白鳥沢も烏野も驚いている。
高さや威力ではない。
「「「ひ...左ィィイ⁉」」」
「お、おおおおお前今日どうしたんだ⁉
遂にエースの座を奪いに来たか⁉」
田中先輩が慌てながら詰めてくる。
「エースはお前でもねぇだろ。
いや、何でもできるなら俺が一番レギュラーの座が危ないな...」
それに突っ込みながら、冷や汗を流している主将。
「そんなこたぁねぇ~っすよ!だいちさぁん!」
「お前...ホントに何でもできんだな」
口々に褒められる。
_________________
「何なの!?あやぽん、今日凄くない!?」
やはり、こっちも大盛り上がりであった。
「いや、昨日から凄かったぞ…だが、確かに今日は一段とギアを上げてきたな」
「てか、左って何だよ!?すげぇな!」
「ホントに凄いですね!」
「ああ…後はブロックだな…牛若を止めてくれぇ~」
「でも単体で牛若レベルなんじゃないの⁉」
「どうだろうな…牛若はたった一本の矛で戦えるが、綾隆は多彩な攻撃で戦うって感じだな…牛若の左に慣れるのが先か、綾隆の多彩な攻撃に慣れるのが先か…」
「あ!それで、綾隆は1セット目は慣れるための時間って言ったんですね!」
「そんな事言ってたの⁉」
「はい、綾隆がいつも相手を分析して策を立ててたんですよ!」
「何でもアリだな…あいつ」
_________________
9-10
『ピーーーーー!』
白鳥沢のタイム。
戻ると清水先輩たちからタオルを貰った。
「ホントにやる気になってくれたのね」
「まぁ約束はしましたしね」
「お前ちょっと隠しすぎじゃねぇか?」
と、コーチが訝し気な顔をしながら話しかけて来た。
「左の練習でもしてたのか?」
「オレは両利きです」
字を書く時は右に矯正されているが、それ以外の事をするときはどちらでもできるようにしてある。
「「「「両利き…」」」」
「お…おれも…うぐぬぬぬ」
「山口、オレがサーブで狙ってるのは、五色だ。
お前が入って来た時に狙えそうなら狙った方がいい。
ジャンプサーブとジャンフロでは速度の緩急が違うからな」
「お、おう」
「お前そんなこと考えてたのか…」
「こわっ!」
_________________
「厄介な奴が出てきたなぁ」
「ええ、今まであの選手は目立ってなったのですが…」
綾隆を脅威に思うのは、当然選手だけではない。
寧ろ、選手よりもバレーの経験年数が多く、様々な選手を見て来たからこそ、そう感じるものだ。
「ワカトシくん、試合前もあの16番と話してたけど、知り合い?」
天童は疑問に思ったことは何でも聞くタイプだ。
そして、牛若は聞かれたことは何でも答えるタイプだった。
「ああ、昨日トイレの前で会った」
「トイレの前!?」
「ああ、及川と話していたら入ってきた。
及川も奴にやられたようで怒っていたな」
「それで、あの16番を気に入ったわけだ。」
「まぁ…そうだな、確かに面白い選手だ」
「10番も??」
「いいや、嫌いだ。
根拠のない自信は嫌いだ」
牛若の顔つきが変わった。
綾隆との勝負は楽しいと感じるが、日向との勝負はどうやらそうではないようだ。
「益々、おんもしれぇ!」
「それにしても厄介だぞ、あの16番...左も警戒しないといけないとは」
「関係ない…取られた分は取り返せ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
________________
タイムが終わり出て行く。
そこから、オレは後衛に回ったときは、主にレシーブで貢献し牛若の攻撃に慣れるように時間稼ぎのようなものをしていた。
オレが後衛の時は、主に日向が超速攻や高く飛んで決めたりする。
オレの見本で少しずつできて来たか…
そして、月島によるブロックもタイミングがあってきて、良い感じに相手セッターにストレスを与え続けている。
それでも、牛若は止まらない。
圧倒的なパワーで点をもぎ取っていく。
15-19
ようやく点を返し、オレのサーブが回って来た。
このまま引き離されるのは良くないな…
『ズッダァーン!!』
と、コートの端に刺さる。
「「「「ナイスッコーーーース!!!」」」」
_________________
「今のは仕方ない!切り替えろ!」
リベロが取れないサーブ。
流れを持っていかれるような、サーブを決められたが、白鳥沢に焦りはない。
さっきのサーブは相手を賞賛するところ。
仕方ない。そう割り切っていた。
さすが、全国常連だ。
「わりぃ!」
そう言って、向き直り構える。
だが…
_________________
16-19
『ズダァーン!』
再び同じコースに突き刺さる。
「「「「うおおおおお、ナイスコース!!!」」」」
威力を落としてやる価値はあったな...
リベロが二回連続で取れないとなると、精神的な攻撃になっただろう。
_________________
「おいおい...まじかよ」
これには流石の白鳥沢にも、動揺の色が見える。
「うひゃー!妖怪サーブじゃん」
天童だけがいつも通りの反応だった。
「次は取る!」
そして、もう一度構えた。
だが、少し。ほんの少し左へ。コート端の方へ寄った。
それを怪物が見逃すはずが無い。
_________________
17-19
リベロが僅かに右に寄ったな。
白鳥沢でレギュラーを取るってことは、かなり優れた選手だ。
実際、田中先輩や日向の攻撃をノーブロックでレシーブしたりするほどの技術の高さだ。
だが、そんな奴にでもつけ入る隙は必ず出てくる。
「「「「「ナイッサーーーーブ!!!」」」」」
五色よりに8割くらいの力で放たれたサーブは、五色とリベロの間に落ちた。
18-19
「「「サッコォォォオオオイ!!」」」
高く上げ高く飛ぶ。
だが、ボールは前に落とされる。
身構えたレシーバーの腕にギリギリ届いたが、こちらに返って来た。
それを影山が直接、相手コートに叩きつける。
「影山ナイス!」
「綾隆もナイスサーブ!」
19-19
「綾隆もう一本ナイサー!」
リベロがレシーブし、五色に決められる。
19-20
_________________
「ようやく一本返した~!」
白鳥沢の観客席では、力が抜けるように安堵していた。
「何本取られたんだよ」
「これやべーんじゃねーの?」
「でも、こっちが先に20点乗ったぞ」
_________________
「よ~やく返せたね」
天童が思ったことを声に出す。
それを牛若が反応し言う。
「ああ。
だが、問題ない。このまま引き離す」
「「「「しゃあああ」」」」
牛若の言葉に選手には笑みが浮かんでいた。
絶対的エースがそう言ったのだからこそである。
_________________
しかし、相手がサーブを失敗しこちらの得点となった。
日向が前衛に上がって来た。
こちらとしては、点を取るチャンスであった。
日向は横へ跳び、ブロックを躱す。
だが、
『ダァン!』
と、こちらのコートに響き渡る。
白鳥沢の5番天童が日向影山の超速攻をドシャットした。
今日は大人しいと思っていたんだが、出て来たか[ゲスモンスター]
「若利君を倒したければ俺を倒してから行け~」
20-20
だが、天童はこれで後ろに下がる。
21-24
日向が超速攻で牛若を狙うもそれを軽々と上げた。
『パン!』
「寄越せ」
セッターが牛若に上げ、日向のブロックへ目掛けて打った。
『バッヂィィン!』
「あだだだだ」
日向は自身の手をふぅふぅと息を吹いている。
格の違いを見せられたな。
一セット目は取られたが、元々そのつもりだったため問題ない。西谷先輩によるトータルディフェンスで上げられるようにもなって来た。
21-25
------------------------------------------------
「若利君ナイスキー!」
「ああ」
「なんか今日はやる気に満ち溢れてるね。俺もやる気が出て来たよ」
「確かに今日の天童さんはやる気を出すのが早いですね」
そう二人の会話に割って入った五色。
そう言われた天童は満面の笑みを浮かべて言う。
「まぁね~面白れぇのが何人かいるからね」
「本番は2セット目からだな…きよ…16番はエースとしても申し分ないはずだが、まだ余り使われていない。」
牛若が皆に向けて気を引き締めるように言う。
「だね~楽しみになってきちゃったよ」
--------------------------------------------------
一セット目を取られ、ベンチでコーチを囲む。
「一セット目、牛島の得点は16点。
一人で半分近い点を叩きだしている。
が、牛島にボールが集まるという事は、それだけ白鳥沢を崩しているという事。牛島だって人間だ。必ずスタミナの限界がある。直接点になっていない攻撃も必ず後々効いてくる。忘れんな!」
そうだ。
1セット目は慣れることが目的だった。
そして、ブロックもタイミングは合ってきている。
何も焦る必要もない。
こちらの手札はまだ見せていない。
全て計画通りに事は進んでいる。
ここからはもう、一セットも落とさない。
オレがそう決めたのなら、もう決定事項だ。
だが、そうならないで欲しいと思ってしまう。
オレの想像を超えてきて欲しいと願ってしまう。
そう考えながらコートに入って行く。
五色 白布 天童(山形)
川西 牛島 大平
---------ネット--------
月島 綾隆 澤村
影山 田中 日向(西谷)
第二セット開始
五色のサーブから始まった。
五色もジャンプサーブで速いボールが跳んで来る。
しかし、主将が完璧に上げた。
からのシンクロ攻撃で一点目を取る。
だが、やはり点を取る力にたけている白鳥沢はすぐに取り返してくる。
取って取られてをくりかえし
3-2
ここで、日向が超速攻で突っ込むが、またもや天童に阻まれる。
その後、また影山日向が天童に止められた。
3-5
だが、影山も負けてばかりではない。
天童の真上をぶち抜くように日向へセットアっプで点を取った。
4-5
「ギリギリ…さっきの今で俺のド真上ブチ抜いて来るなんて相当な負けず嫌いだね!」
天童が面白そうに影山に言う。
8-9
川西 五色 白布
牛島 大平 天童
ーーーーーーー
影山 月島 綾隆
田中 西谷 澤村
川西のサーブ。
田中先輩がちゃんと取り、影山のトスからレフトのオレへ上げる。
オレに2枚ブロックが着いてくる。
「右だ右!!」
「あれ…?」
天童の素っ頓狂な声が聞こえる。
オレは目線を一瞬右を見る。
それに合わせて天童は右にブロックを寄せたので、その間をオレは抜いた。
「読み合いはオレも得意なんですよね」
オレは作った笑みを向け、煽る。
我ながら、さぞかし不気味な笑み何だろうなと思う。
「腹立つぅぅーー!!」
「「「ナイスキー!!」」」
皆が喜びハイタッチをしに来るが月島だけ、もの凄く不機嫌だった。
「ナイスキー…」
「月島決めたのはこっちだぞ」
「あっ…」
9-9
_________________
「5番が左へ手を動かした…おそらく、目線で判断したんだろうな。
それを綾隆が利用したんだ」
烏野観客席では、いつも通りスーパーのお兄さんが説明していた。
「そんな高度な駆け引きなの⁉」
それを、田中の姉が大げさに驚いていた。
「ああ...あの少しの空中戦でよくそんな判断し、行動に移せるものだ。」
「俺...要らないかも…」
そんな高度な駆け引きをしていたことを聞かされ、ネガティブを発動した東峰にひとかが励ます。
「あ、東峰さんはチームにとって必要ですよ!!」
_________________
オレのサーブ。
狙うは五色。
もうほぼ全力でも問題ないな…
五色は何とか上げるもセッターが上げられるところまで届いていない。
アンダーで上げられるトスは必ず...牛若。
この態勢はオレか...
オレは真正面で受け、確実に上げる。…痛いな。
「「ナイスレシーブ!!」」
シンクロ攻撃。
オレも参加する。
ブロックに来たのは天童だけ、オレはもう一度目線でフェイントを入れる。
五色とリベロの間を抜いた。
「今度はフェイントがフェイントだと思いましたか?」
「キィーー!絶対叩き落としてやる!!」
10-9
サーブをリベロが取り、牛若にブロックアウトされ取り返された。
相手のミスがあればこちらもミスを、こちらが決めれば相手も決める。
11-10
牛島 川西 五色
大平 天童 白布
ーーーーーーー
日向 田中 影山
澤村 綾隆 月島
牛若のサーブはオレの所に向かってくる。もう慣れたな…
「「「「ナイスレシーブ!」」」」
日向が真っ先に走り出す。
「間違えたぁぁぁああ」
日向に釣られた天童が叫ぶ。
主将が逆サイドからスパイクを打つが上げられた。
だが、そのままこちらに返って来た。
そして、日向が逆サイドに走り出して決めた。
12-10
_________________
「ハァ~~思わず見とれちゃうようなセッターは今までも何人か見て来たけどさ、今回の場合あの10番のタイミングの早ぇことよ。ほんのワンテンポ遅れればもう届かない」
「さっきの間違えたぁあはスルーの方向かな?」
「ギクッ!」
_________________
天童は間違える時も偶にあるが、合う方が多い。
「ワンチィィ!!!」
天童がフェイントを入れたのか気が変わったのか、逆サイドに走っていき、田中先輩のスパイクに触る。
トスが牛若に上がり、ブロックを抉じ開けられ決められる。
12-11
17-15
山形 五色 白布
牛島 大平 天童
ーーーーーーーー
田中 影山 月島
西谷 澤村 綾隆
オレのサーブを上げ、速攻を仕掛けてくる天童。
しかし、天童は跳ぶフェイントをかけてから跳ぶ。
『ダン!』
白鳥沢のコートで落ちる。
「アレっ」
月島がブロックした。
「「「「うおっしゃああああ」」」」
「どうも普通のほうです。一人時間差、ウチの野生児は騙せても僕には通じないんでよろしくどうぞ」
と、何か言われていたのか、月島が天童を煽る。
「烏野の一年腹立つ奴ばっかだと思ってたらお前ダントツ!あ、お前もだ!」
月島に煽られ切れた天童がオレも巻き込んで来た。
「どうも」
「あ、どうも」
頭をかき嬉しそう月島が言うのを見てオレもマネしておいた。
「腹立つ!!!」
18-15
「ワンチ!」
「チエッ」
「ワンチ!」
「チャンボチャンボ!!」
月島の何度目かのワンタッチによりチャンスボールが回って来た。
田中先輩のスパイクが、五色と白布の間に落ちた。
「ッしゃあああああ「今のは工だべや馬鹿がぁぁぁああ!!!」」
田中先輩の咆哮が掻き消された。
急な白鳥沢の監督の怒りの叫びに会場が静まる。
「見合いなら女とやれやアアア!!!」
「ハイッ!!!」
白鳥沢の五色…絶対意味を理解せずに返事をしたな。
案外あいつも単細胞なのかもしれない。
19-15
こちらがかなり有利になったが、向こうも負けじと食らいついてくる。
一点を返されると、牛若のサーブで一気に2点をもぎ取って行った。
19-18
牛若のサーブを崩れながらも上げ、田中先輩のブロックアウトにより烏野に得点が入る。
20-18
日向が前衛に上がってきたが、月島のサーブを綺麗に上げられ牛若の大砲により決められる。
20-19
しかし、こちらも点を取る力なら負けていない。
日向が前でちょこまかと動くことで、田中先輩が生きてくる。
そして、今日初めて使うシンクロ攻撃に日向が紛れることで、更に点を重ねる。
そして、こちらのマッチポイント。
24-21
日向のサーブだが、
『ピーーーー!』
交代の合図
出て来たのは、山口。
_________________
日向のように、[おれが居ればお前は最強だ]なんて、カッコいいことは言えないけど。
力を貸せるところまでは来たよ...ツッキー
狙いは決めている。
綾隆が1セット目、散々狙っていた場所。
今は前衛にいるけれど、そこへ打つ。
よし…!狙い通り、五色が取った!
何とか上げられたが、トスもアンダーで打ちやすいトスではない。
『ドォン!!!』
目の前をボールがバウンドしていく。
_________________
24-22
流石は、王者と呼ばれるだけのことはある。
態勢が崩れていようと、トスが低かろうと力技でねじ伏せる。
こちらのマッチポイントでリードしているはずだが、相手がリードしている感があった。
その後、追いつかれ会場のムードも完全に白鳥沢になった。
24-24
日向は今、後衛だがそれは月島が前衛にいるという事。
「ワンチ」
「ワンチ」
「ワンチ」
こちらにとっては、小気味の良い音だが、相手にとってはさぞかし不快だろう。
「若利!!」
囲い込む。
「行きます。ゆっくり、せぇーのっ」
月島のタイミングに合わせてブロックを跳ぶ。
ストレートを開け、西谷先輩の視野をクリアにする。
『パァン!!』
西谷先輩のレシーブ音が響く。完璧に綺麗に影山の頭上に上がった。
_________________
セット終盤、やっと上がった貴重なレシーブ
ゼッタイ16番!
マジかよん
ホントに烏野一年...腹立つ!!
_________________
「よっしゃああああ!!」
思えば、何度もレシーブで上がってはいたが、ここまで綺麗に上げれたトータル・ディフェンスは初めてだな。
25-24
だが、やはりと言うべきか...そう簡単にセットを取らしてくれない白鳥沢。
互いに取って取り返してを繰り返すデュースの中。
27-27
『ピーーーー!』
白鳥沢の選手交代
天童が出て、ピンサーで三年の瀬見が入って来た。
強烈な一本が跳んで来るが、主将が上げる。だが、短い…
しかし、日向が前へ突っ込んでいく。
そこから超速攻で点を取る。
「はぁ⁉」
相手セッターが思わずそう漏らした。
_________________
「そこから速攻かよ⁉」
烏野観客席でも驚きの声が上がっていた。
普通なら、速攻を使ったりしない。
日向影山のコンビを知っていても、上げられるとは思っていなかった。
「ほんっとめちゃくちゃだな」
「理屈が通じないのは烏野もだな」
_________________
30-29
再びこちらのマッチポイント。
日向が後衛へ、月島が前衛に来た。
相手は鬱陶しいのが来たと言わんばかりの表情が顔に出ている。
_________________
あの5番のゲスブロックが120点か0点のどちらかなら、リードブロックは平均75点キープって感じか…
まぁ…ウチのブロックは未熟も良いところだけど…あいつがもう少し真剣にやればブロックも完成に近づくんだけどな。
傍目には120点獲りに行く方がカッコよく見えるのかな…
相手セッターにブロックを欺いてやったと言う快感も達成感も与えてはならない。
執拗に。
執念深く。
且つ敏捷に。
絶対にタダでは通さない。
100点に繋がる75点がリードブロック。
________________
ツッキーが何度もブロックを跳び、何度目かの「ワンチ」が聞こえる。
俺は前日ツッキーとの会話を思い出していた。
『僕が牛若に勝てるわけないじゃん。身体が違う。経験が違う。バレーに費やしていた時間も違う。勝てるわけないでしょ…
ただ』
「ワンチ」
あ、またツッキーのブロック。
「繋げ繋げ」
「影山ラスト!」
烏野は崩れながらも繋ぎ相手コートへ返している。
相手セッターがかなりイラついているのが良く分かる。
そして、いつもの牛若へのトス。だが、低くタイミングが僅かに速いトスが牛若に上がった。
あっ…来た。
_________________
牛若にセットされたトスは、いつもとそこまで変わらない。
ただ、ほんの少しだけ速く低いトス。
相手を振り切るため。
相手ブロックから逃げるため。
中学時代、影山の悪癖だったようなトス。
そのトスが牛若へセットされた。
異様な雰囲気を纏った人物が一人、コートのネット際で構えている。
何度も繰り返したワンタッチ。
そのワンタッチは誰が最も鬱陶しく感じていただろうか。
試合前に綾隆が言った。
白鳥沢の弱点はセッター。
人は自分が強者だと主張したいもの。しかし、白鳥沢のセッターにはそれが感じられない。だが、それとは別に主張していることがある。
ウチのエースを見ろ。そう言う気持ちを持っている。
それが、今の白鳥沢を成り立たせている。
なら、そのエースがカッコよく決められてなかったら…?
プロでさえ、焦ることはある。冷静さを欠くこともある。
それが、高校性なら…精神的に未熟な年齢のセッターにはどう感じたか…
それは、セッター本人よりも月島が良く知っている。
ほんの僅か苛立ちと焦りを含んだ綻びを...待ってたよ。
月島は一気に詰めブロックを跳ぶ。
_________________
白布が牛若へ上げたトスは低く牛若にとって助走も余裕も持てないものだった。
妙に静まり返った会場。
静かな月島に異様なオーラ。
オレはいつも通りにブロックを跳ぶ。
だが、月島はオレとボール一個分を開けブロックを跳ぶ。
スパイクを打つと同時に月島は空けたスペースを閉めた。
『ダァン!』
相手コートにボールが落ちた。
_________________
『ただ
何本かは止めてやろうと思ってるだけ』
はっ...!ツッキーらしいと思った。
特にやる気をださず、練習もサボり気味。
それでも、ツッキーの本質は負けず嫌い。
絶対にやると思っていた。
やっぱり、ツッキーらしい!
_________________
たかがブロック一本。
たかが25点中の一点。
たかが部活。
「しゃああああああ」
意図せず、叩き落とした方の腕を上げ振り下ろし
気が付けば、僕の咆哮で会場は満たされていた。
_________________
【もしも。その瞬間が来たら
それが
お前がバレーにハマる瞬間だ】
木兎さんの言葉がフラッシュバックした。
月島のその咆哮は間違いなく、月島がバレーにハマった証拠だ。
その瞬間を一番間近で目撃し、オレ自身も心が躍ると同時に少し羨ましくも思った。
「「「「「うぉおおおおおお!!!!!!!」」」」」」
セットを取ったからか、牛若のスパイクを叩き落としたからなのか、それとも月島の咆哮なのか。
多分全てなんだろう…烏野は全員が立ち上がり喚起した。
第二セット終了
31-29
「月島ぁぁぁああああ」
「月島ぁ!お前マジ月島!マジでもうマジで!」
田中先輩と西谷先輩が月島に絡みに行く。
_________________
「兄貴めっちゃ泣いてる!!よっぽど弟のブロックが嬉しかったのね!」
月島君のお兄ちゃんが号泣している。
「蛍がちゃんとチームに溶け込んでいる…!」
あはは...そっちか
「そっちね!!」
「蛍すごいじゃん。あの牛若ドシャットだよ」
「……多分、今ほんの少しだけ白鳥沢のトスが乱れた」
月島君のお兄ちゃんがそう言ったけど、私にはよくわからなかった。
「え、そうだった?」
「気がしたレベルですけども」
色々と考えて行動した結果、繋がったブロックだったことを教えてもらった。
私は思ったことを口に出していた。
「月島君は頭が良いからバレーもそれ以外の事も常に色々と考えてる人だと思うんです。」
「あいつ偏屈だろごめんな」
「いやそんな!..上には上が居ますので慣れてます…」
「そ…そうか」
誰かと言わずとも通じた。
「でも、今、月島君は一本のスパイクを止めることだけを考えていたんだなぁと思いました。
ただ、純粋にテストの難問を解くみたいに」
「うん」
「月島ァァァアア!!」
日向の声がここまで聞こえた。
「100点の一点!!だな!!」
月島君が、君もミドルブロッカーならやって見なと、言う顔をしているのがここからでも良く分かる。
余程、嬉しかったんだろうな...
_________________
第3セット
1セット目2セット目共にデュース続きで、皆息が切れている。
だが、あと2セット取れば問題ない。
コーチの話を横耳で聞きながら、相手コートを観察する。
相手セッター…崩れるどころか、切り替えている。
先程よりも気合が入り、両頬に自分でビンタを食らわしていた。
先程よりも厄介だな…崩れていくと思ったが…まぁ、その分オレが取れば問題ないな。
「影山、3セット目はいつもよりオレにまわしてくれ」
「おう、別に構わねえがなんかあんのか?」
「ああ、ちょっとな…」
開始
1セット目と同じ周りからスタートする。
五色 白布 山形
川西 牛島 大平
_________
影山 月島 綾隆
田中 西谷 澤村
主将のサーブを上げ、いつも通りの高いセットアップからの牛若のスパイク。
牛若もさっきまでよりも、威力が上がっているように感じた。
「「「ナイスキー!!」」」
「「「いいぞいいぞ!!牛島!」」」
白鳥沢の応援にも熱がある感じがする。
0-1
やはり、白鳥沢のセッターは感覚が鋭くなっていっている。
0-6
だが、完璧に上げてしまえば、こちらのもの…
天童が居なければ、空中線はこちらの方が強い。
オレが叩き落とし、ようやく一点を取る。
1-6
オレのサーブが回ってきた。
狙うべき場所は、決めている。
コース端を狙い、8割ほどの力で打つ。
「「「ナイスコース!!」」」
「お前…何でそんなに際どいコース狙えんだ…?」
「威力は抑えてますから」
「「「あれでか…」」」
「もう一本ナイッサー」
2-6
軽く飛び軽く押すように打つ。
今までジャンプサーブだったオレがジャンフロに切り替えたことに対応できず、取りこぼした。
______________________
「うぉおお!!でた!二刀流!!」
「しっかし、綾隆は中学どこだったんだろうな、あれだけ上手ければ名前くらい聞こえてくるはずだけどな」
金髪さんが言う。
「綾隆は、初心者ですよ?」
「「「「は!?」」」」
四人とも目を見開いて私を見た。
私もそう思ったよ…
「綾隆は隠し事多いので、良く分かりませんがバレーは高校になってから初めてやったって言ってました。」
「本物の化け物だな…」
「ああ…天才と言うやつか」
「凄いんだね〜綾隆は」
「そうなんですよ!いつもやる気ないんですけど…今日はやる気マンマンです!」
「谷地さん…」
「ひとか、綾隆のこと…」
いつの間にか両手で握りこぶしを作って、フンガフンガ言って興奮していた。
_________________
3-6
「 綾隆〜もう一本!!」
そして、また轟音が相手コートで響く。
4-6
『ピーーーー!』
白鳥沢によるタイ厶
「綾隆〜!すげぇじゃねぇか!!」
「どうも」
「なんだ?嬉しくねぇのか?」
「まだ、点差ありますからね」
「かぁー!取り敢えず喜んどけば良いんだよ!」
「はぁ…そうですか」
_________________
「どうする?正直かなり厄介だぞ?」
「ああ…双子みたいだな…」
「どうするも何も…取るしかないだろう」
「五色、取れるか?」
「はい!取ってみせます!」
「行くぞ」
「「「おおぅ!」」」
_________________
「五色!前だ!」
ジャンフロで五色を狙った。
五色はセッターまで上げられなかったが、代わりにリベロが牛若に上げる。
「せーーーのっ」
『パアン!』
「だっしゃあああああ」
月島ブロック誘導によりの西谷先輩が完璧にレシーブをした。
牛若の攻撃も何とか上げられるようになった。
それでも牛若による得点は半分近い...まさに怪物だな。
「綾隆」
影山からオレへのトス。
『ドォン!』
と、言う音と共に高く跳び、左手で叩き点を取る。
「「「ナイスキー!!」」」
4-6
三セット目...気合が引き締まった白鳥沢。
こちらが少しでも気を抜けば、点差をつけられる。
白鳥沢が前のセットまでと違うことはもう理解しているだろう。
烏野も気を引き締め直し、顔が真剣な顔に変わった。
点を取れば、相手は取り返してくる。
強い力で押せば、相手はより強い力で押し返してくる。
それを更に、こちらが強い力を出して押し返す。
この繰り返し…
力づくで点を取り合うのも...悪くない。
落として生き残る戦いではない...純粋な力を競い合って互いを高めていく。
面白い。
「サッコォォオオオイ!!!」
軌道が変化しながら落ちるボールを確実に掴むようにオーバーで上げ、速攻で決められる。
また点の取り合いが始まる。
烏野は主にオレのスパイクとシンクロで…
白鳥沢は、牛若を始め個々の力で点を取っていく。
_________________
「おいおい…あの16番一年だってよ!!」
「マジか…!牛若と張り合ってんじゃねぇか!!」
「烏野も白鳥沢も攻撃力高すぎだろ」
ムフフフ...でしょうでしょう
「谷地さん…顔に出てるよ。」
「谷地さんってポーカーフェイスできないんだな…」
「はっ...!また、やっちゃった」
「谷地さんらしくて良いと思うよ」
東峰さんがそう励ましてくれた。
「しっかし、綾隆を中心に点を取って行ってるな…少し点の取り方が変わったか?」
「そうなの?私にはよくわかんないや」
「多分…これは誘導なんじゃないでしょうか?」
「「「「誘導…?」」」」
月島君のお兄さんがそう言って説明してくれた。
「はい、今までは日向君の超速攻により烏野の攻撃を成り立たせてきましたが、今では日向君の攻撃を隠している感じがします。」
「え?でも、あの速い攻撃とか使ってるよね?」
「ええ、ですが[紛れる]とか使って無いですし、日向君の高いジャンプも使っていない。何と言うか戦い方が烏野らしくない。
若しかしたら、体力を温存するためでしょうか?」
「三セット目は捨てるってこと?」
「それは分かりませんが、5セットマッチなんて初めてでしょうし…」
「昔っからそんくらい考えてくれりゃあなあ」
後ろから声が聞こえ、皆が後ろを向く。
「「「「ゲッ!!!」」」」
「「「「チワース!!!」」」」
「相変わらず良い面子揃えてんだろうなあ鷲匠先生。」
「か、烏野にも凄いのが入ってきてまして…」
「ほぉぅ…こないだ、手をケガしてた策士じゃねぇか」
「策士?」
「あ、以前綾隆の策で梟谷から一セット取ったんですよ。
多分、今回も綾隆の策かと…」
「「「ほぇ~~」」」」
_________________
10-13
『ダァン!』
こちらのコートに響く。
今まで止められることが少なかったシンクロが叩き落とされた。
ネットの向こうでは、天童が満足げに笑っている。
「うん…勘。」
天童のブロックは一人で点を取るもの。
それは、時に相手の心を折る事にも繋がる。
烏野は一人一人の攻撃力は決して、弱くはない。
だが、シンクロ攻撃のような全員で戦ってきた烏野には一人の力で叩き落とされると、精神的にダメージを受ける。
顔には出さないが、皆雰囲気が良くない…
11-13
11-14
11-15
12-15
12-16
ずるずると離されていき、菅さんが入り何とか点を返す。
だが…
『ズパァアアン!!』
コート内に響く音。
牛若に完璧なトスが上がれば、止めることは難しい。
何とか持ちこたえていた気持ちを折るかのような一本。
皆の顔が暗い。
_________________
「うわぁ~庶民を黙らす一本って感じ?」
「やっぱ、牛若はチゲェな」
「一年坊主も何とか食らいついていたんだけどな」
ぐぎぎぎぎ...
「谷地さん…顔顔」
「うぅ...」
_________________
12-17
13-17
13-18
13-19
14-19
14-20
15-20
山形 五色 白布
牛若 大平 天童
ーーーーーーーー
田中 影山 月島
西谷 澤村 綾隆
相手のミスで、ようやく烏野に得点が入る。
「ラッキーラッキー!!」
「綾隆ナイッサー一本!!」
「大分士気が下がっちゃったね~さっきまでの勢いはどこ行っちゃったのかな~?
もう心折れちゃった?ルン!!」
天童がオレを挑発してきた。
「白鳥沢のセッターがこのセットで立ち直るのも、ここで烏野の士気が下がるのも全て計画通りです。
天童さん……心折れずに食らいついて来てくださいね」
「「「……」」」
オレがそう言うと、白鳥沢から睨まれた。
オレのサーブの為、エンドラインまで歩いていく。
皆の士気は下がってはいるものの、まだあきらめてはいないようだ。
影山や月島はいつも通り、日向もまだ諦めた顔をしていない。
先輩もだ。
ここで、勢いに乗れたら再び進撃を開始できるだろう…今まで以上に。
『ピーーーー!』
サーブの笛が鳴る。
今まで...バレーに対して真剣に取り組んだことが無かった。
スパイクやレシーブ、トス、サーブは全て誰かの真似事...
それで勝てていたし、それ以上を頑張ろうなんて思ったことがない。
笛が鳴っても打たないオレに視線が集まる。
_________________
「おいおい、ビビったか?」
「まぁ、無理もねぇーよ。
これ以上離されたらやべーもん」
後ろで、何か言ってるのは分かっていたけど、あまり聞こえていなかった。
東峰さんも皆、綾隆を見ている。
何かをしそうな雰囲気
会場が応援を忘れて、静かになっている気がする。
_________________
笛が鳴ってすぐに打たない綾隆…
皆も綾隆を静かに見ている。
私も隣に座っているコーチも何も言わない。
何かする。
そう思えてならない。
私は固唾を飲んで見守る。
_________________
及川のサーブ。
牛若のサーブ。
オレが今まで見て来たサーブ。
そして、今までのオレが経験してきたことから、オレ自身に合ったサーブへ改変させる。
いつもより前に高く上げる。
そして、前に高く跳ぶ...ジャンプサーブ。
できる限り、ネットに近い位置で、圧倒的な高さから叩き下ろす。
『ズッダァァァアアアン!!』
相手は反応しきれず、相手コートに突き刺さる。
「「「「うぉぉぉぉおおおおお!!!」」」」
皆が飛び跳ねながら近寄ってくる。
「「「ナイスサーブ!」」」
16-20
_________________
「おーまいがー」
「は…」
「かっ……!!!」
後ろの人達は声が零れている感じだった。
一人のおじさんは帽子を握り締めている。
「すっげぇぇええ⁉なに今の⁉」
「めちゃくちゃ早いじゃねぇか...オレ絶対取れんな」
「大人顔負けだな」
「及川と同等...いやそれより早いんじゃないか?」
「こりゃあ…凄いな」
私は特に話すことなく、綾隆から目を離せなかった。
_________________
「「「うぉぉぉおおお!!」」」
先生もコーチも私も気が付けば、立ち上がり声が出ていた。
打って気が付けば、相手コートに落ちていた。
相手は青い顔をしている。
次も...もう一本を!
_________________
会場内の人達は、今のサーブに目を見開き興奮している。
だが、白鳥沢の選手たちは、暗い表情であった。
「ドンマイ…」
「まじかよ…」
「次一本だ!」
「……」
_________________
「「「「「……」」」」」
相手の応援団が黙っているのを見て、もう一度サーブを打つ場所に戻る。
「「「「もういっぽ~ん!!!」」」」
もう一度ジャンプサーブ…
『ズッダァァァアアアン!!』
と、再びコートに響く。
「「「ナイッスコース!!」」」
17-20
リベロの横に突き刺さる。
『ピーーーーーーーー!!』
白鳥沢のタイム。
「あやぽ~~ん!!ナイスサーブ!!」
「どうも」
「またそれかよ...あやぽんらしいな」
「ああ、すげぇぜ。あのサーブどうなってんだ」
「俺取ってみてぇ~!」
_________________
「何だ及川居たのかよ。
どっちが勝ってもムカつくから行かねーつってたろ?」
「げっ…どっちが勝ってもどっちかの負けっ面は拝めるからね!」
「うんこ野郎だな」
「悠長にいじけてられないんだよ」
「そうだな…お前の唯一の特技のサーブを超える奴が現れたもんな」
「唯一じゃないし!!!ってか俺の特技はトス!!」
_________________
「どうするか…」
「「「「...…」」」」
「さっきまではこっちのムードだったのに、完全に逆だね~
あいつの言うとおりになってきてるよ…ホントムカつく」
「取り合えず、触るしかないだろう」
「そうだな上がったら。俺に回せ」
_________________
『ピーーーーーー!!』
笛がなり、高くボールを上げる。
後ろに固められた守備。
なら、当然真ん中に落とす。
虚を突かれた白鳥沢は、足が動かずコートに落ちる。
「「「三連続サービスエース!!!」」」
18-20
「もう一本!!!」
「綾隆ナイッサ」
「ナイッサ」
もう一度ジャンプサーブ。
ただ、今回は左手...いつも右で打ってきたため、右の方が威力は強いが…左は取りにくい上にコントロール重視。
相手が横っ飛びにダイブするが、弾き後方へ飛んでいく。
19-20
「4連続ぅ~!!」
_________________
「ボールが来るまでの待つ姿に異様な貫禄がある…」
「化け物だな...」
「今日の綾隆は今までにないくらい、やる気が出ている気がします!」
「あ~ってことは、白鳥沢が化け物の目を覚ましてしまったってことか」
「お、俺あんなの取れないぞぉ...どうするんだよ~大丈夫かよ~おいぃ」
「味方だろ?」
「あ、そうでした…」
_________________
「サッコォォォイ!!」
轟音からの静寂…
緩急の差をつけたジャンフロ。
前かがみに取るも、つなぐだけでアンダーで帰って来た。
「チャンボチャンボ!!」
シンクロ攻撃は主にオレにブロッカーが着いてくる。
それを分かっていたのか、田中先輩に上げ決めた。
「「「「ナイスキー!!」」」」
「「「うぉおおおおおおお!!!」」」
「追いついたぁぁあああ!!!」
20-20
_________________
「ホントどうなってんだ!あいつすげぇぜ!!」
隣でコーチが一人で喋っている。
私は綾隆のプレイに目が離せないでいた。
ずっと手を抜き続けて来た彼が、全力を出している。
私とひとかちゃんがずっと求めて来たもの。そのせいで、強く当たってしまったこともある。
ひとかちゃんの方を見ると、ひとかちゃんもこちらを見て全力の笑顔を私に向けた。
私はにこりと返す。
前に彼は力を使う事が怖いと言っていた。
自分が最も恐ろしいとも言っていた。
でも、私には全然怖いとは思えない。
寧ろ、頼もしく、カッ…カッコいいとも思う。
…若しかして綾隆はこれでもまだ本気ではないと言うの?
綾隆の本気とは…策略によるものなんじゃないだろうか…
まぁ別にどちらでも私には綾隆のことを怖いとは思えないけど
_________________
「「「「もう一本~~~~!!!!」」」」
「「「サッコォォォオイ!!」」」
周りから色々と叫んでいるのは分かるが、オレには何も聞こえてこない。
跳んで全力で打つ。
五色が腕に当てて何とか上げた。しかし、大きく外へ出て行った。それを何とか牛若が拾い天童が打った。
だが、今、烏野の前衛には月島がいる。
「ワンチ!」
叩き落とせはできなかったが、こちらのチャンスボールで後ろからオレのバックアタック。
今まで、タイミングをずらすために滞空時間を延ばしていた。
そのため相手はそれに合わすため、少し遅れて跳ぶ。
なら、早く打てば良いだけだ。
影山だからオレに難なく合わせてくれる。楽だな…
「「「ナイスキーー!!」」」
ブロックが頂上に到達する前に、ブロックの上から打った。
だが、そのまま地面には落ちずに触れることはできていた。
段々と慣れてきているという事だろう。この短時間によく合わせるものだとオレは感心した。
これが王者としてのプライドと言う奴か…
「綾隆ぁ~お前スゲェゼ!!」
田中先輩がオレの頭を掴み飛び跳ねている。
「皆さんがシンクロでブロックを分散してくれていたおかげですよ」
「それでも二枚は付いていただろう」
「三枚と二枚は全然違いますよ」
「まぁそれはそうだけどさ」
「次も決めたレ!!」
「はい」
もう一度サーブ位置に戻って笛の合図を待つ。
21-20
_________________
「おいおい…とんでもねぇな。
俺達の時は全然本気じゃなかったってか?」
「ぐぬぬぬ…ホントムカつく野郎だよ!」
「3セット目の序盤は、白鳥沢が優位に思えていたんだがな」
「ふぇっ!どうせこれは奴の誘導だよ!」
「誘導?」
「烏野にとっては初めての5セットマッチ。
ただでさえ、毎回の攻撃に全員参加する烏野は3セットでさえバテていたからね。
最初は三セット目を捨てて4.5セットを取るのかと思ってた。でも、違った。白鳥沢のセッターの調子を上げさせいい具合に乗って来た白鳥沢を叩きのめすことで士気を下げさせた。
そして、そのまま3セット目を取り4セットで終わらすんだろ。
それをまさか、個で白鳥沢を上回るとは思わなかったけど…」
「ほぉーん、なら白鳥沢はこのセットを落とせば絶体絶命ってわけだ」
_________________
『ピーーーー』
オレのジャンプサーブを何とか上げた五色。
それをアンダーで牛若へ上げる。しかし、月島達3枚ブロックによりコースを絞らされた牛若はストレートへ打つ。
そこには当然待ち構えていた西谷先輩が綺麗に影山の頭上に上げた。
シンクロ攻撃で全員が攻撃に参加する。
今回は月島へ上がって打つもこれはリベロが拾う。そしてまた牛若に上がった。
「ワンチ!」
月島の壁に阻まれ威力が弱まるがそれでもコート外へ飛んで行った。
しかし、あらかじめ後ろに下がっていたオレが拾い繋ぐ今度は速攻で月島が真ん中をぶち抜くも
「ワンタッチィィ!!」
天童が阻み、向こうのチャンスボール。
そして、天童の速い速攻を月島がブロック。
だが、吸い込まれこちらのコートに落ちた。
「すいません」
「いや、今のは仕方ない。切り替えろ!」
「はい」
一方向こうのコートでは…
「「「しゃああああああ!!!」」」
応援団も含め盛り上がっているのが分かる。
21-21
_________________
「やっとあの16番のサーブ終わった~」
「何本とられたんだ?」
「15-20からだから六点か…上げてもレシーブが崩れていたからな」
「と言うか16番、何でミスしねぇんだ?機械かよ」
「それな~一回もミスしてるとこ見たことねぇな」
_________________
ここで牛若のサーブか…
強烈なサーブが跳んで来るが、ネットに当たり落ちてしまった。
「「「ネットイィィィン!!!」」」」
「ミラクルボーイ!WA・KA・TO・SHI」
天童が調子に乗っている。
さっきまで沈んでいた雰囲気が逆転したことで良くなってしまったか…
「ドンマイ!次一本取るぞ!」
「「「おおお!!!」」」
21-22
牛若のサーブを西谷先輩が上げた。
「「「「ナイスレシーブ!!」」」」
影山のトスはオレへセットされる。
『ズッパァァン!!』
相手コートで響く。
白鳥沢が押している状況から覆して見せることで心が折れると踏んでいた。だが心が折れることなく食らいついてくる。
今までよりも更に強い力で押し返してきた。少し計算が間違っていたか…だがまぁ問題は無いな。
白鳥沢が50.60…若しくは90の力で来てもオレが100を出せば良いだけ。
寧ろ心が折れず向かってくることに感謝しよう。
「「「綾隆ナイスキー!」」」
「どうも」
22-22
月島のサーブを上げ牛若が決められるも、今度は日向の超速攻で真ん中をぶち抜く。
影山のサーブが相手コートに突き刺さりブレイク。
24-23
「影山~~!!ナイッサーー!!」
影山のサーブを上げ、牛若のバックアタックを月島は居ないが三枚で阻む。
一回目のレシーブを影山が何とか上げる。
オレがトスの位置に入り、シンクロ攻撃で全員が入ってくる。
目を瞑った日向にオレがトスを持っていく。
虚を突かれた白鳥沢は反応しきれず、日向のスパイクがコートに突き刺さった。
25-23
三セット目は烏野が取った。
「「「「ウォおおおおお!!」」」」
「手に当たるのも、また良い!!」
「な…ナイス…トス」
「嬉しそうな顔をしろよ!影山」
ベンチに戻ると皆が出迎えてくれた。
「ナイスゲームだったぜ!オラ!とにかく座れ!少しでも休め!」
「綾隆、影山!次も行けるか?」
コーチがオレ達二人に聞いて来た。
3セット目で最も動いていたオレとこの試合中誰よりも精密さを求められてきた影山の体力が心配だったんだろう。
「はい」
「俺も行けます」
「お前ら体力底なしかよ!」
即答したオレ達は菅さんに突っ込まれた。
「こいつらはただの化け物ですよ。突っ込む方が馬鹿らしくなるだけです。」
月島…失礼すぎるだろう。
「そんな訳が無いだろう。
次のセットで終わらせるために3セット目無茶したんです。」
「なら、次のセット…全てを出し切って来い!!」
「「「「「はい!!!」」」」
第四セット
「し~らとりざわ!!!し~らとりざわ!!!」
会場は、白鳥沢の応援で満たされていた。
「おーし、このセットで終わらせるぞ!!烏野ファイ!!」
「アーーイ!!」
円陣を組み気合を入れ直してから、コートに入りポジションに着く。
五色 白布 山形
川西 牛島 大平
ーーネットーー
月島 綾隆 澤村
影山 田中 西谷
4セット目…最初のサーブは五色。
何か力んでいたのか、ホームラン。
「ラッキーラッキー!!」
1-0
「綾隆…牛若が早いタイミングの攻撃に入ってきて、僕と綾隆の2枚のブロックになったらいつもより少しだけクロス側を締めよう」
「分かった」
主将のサーブを綺麗に上げた白鳥沢。
月島の想定通り、牛若が早いタイミングで攻撃に入って来た。
オレは月島の指示通りにクロスを完璧に締めた。そして、烏野の守護神の視界をクリアに…
牛若のスパイクは西谷先輩が綺麗に上げた。今まで3枚ブロックの時しか綺麗に上げられていなかったレシーブが上げられるようになった。
そのボールは影山からオレへセット。
クロスへ打ち決まった。
「オアアアア!!」
西谷先輩が叫びながらオレの背中を叩いて来た。
「ナイスレシーブです」
「お前もナイスキーだ!」
その後月島にも同じことをしていた。
「アーイ!!」
「イ”ッ⁉」
2-0
_________________
4セット目が始まって2連続得点で烏野側の観客は盛り上がっていた。
「夕すごいじゃんっ!!」
「いや~ブロックも良い感じよ」
「なーんかツッキー殻破って来てる感じ?」
確かに月島君のブロックは試合中に進化している気がする。
それは私のようなバレー初心者にでも分かるくらいに…
そして、それは個人のブロッカーだけじゃなくてブロックの司令塔として凄くなっているんだと思う。
_________________
『ズッパァァアン!!』
しかし、今度は牛若が決めた。
変わらずの牛若頼り。ここまで来ると清々しくもある。
川西のサーブを上げシンクロからのオレのスパイクで返す。
3-1
_________________
「「「うげぇぇぇぇええええ」」」
「またあの16番のサーブ~」
「やべーじゃん、いきな離されちゃうよ」
「俺だったら取れるな…」
「今そんな冗談聞いてられるほど余裕ねぇよ」
白鳥沢の応援団も綾隆のサーブには祈るしかない。
しかし、今だ綾隆は試合でサーブを失敗したことが無い。
そして、当然今回も…
『ズッパァァァァン!!』
白鳥沢のコート端に突き刺さる。
機械のように精密なサーブに白鳥沢の選手も応援団も顔を青くして押し黙る。
「「「「しゃああああ」」」」
「「「「ナイスコース!!」」」」
反対に烏野側の声が良く聞こえる。
先程までは応援団の数が少なかったため、全く聞こえていなかった烏野の声援はようやく選手に聞こえた。
目立つことが好き、応援されることが好き。そんな選手が烏野には半分以上いる。
そんな選手に声が届いてしまった。
烏野の勢いは上がっていく一方であった。
4-1
_________________
「「「「「あやたか~~もう一本ナイッサー!」」」」
ジャンフロでセッターが出てくる位置を狙う。
…ジャンフロはまだまだ改善ができるな。
態勢は崩したもののアンダーで牛若に上げた。
「ワンタッチィ!」
影山が牛若のスパイクを阻む。
影山はこう見えて、応援されるのが好きであり、勢いに流されやすい。
根本的な部分は日向と同様である。
後方へ吹き飛ばされたボールをオレが後ろに走り取る。
影山はレフトへトスを上げる。
フワッとしたトスで、綺麗な放物線を描いている。
そのトスは田中先輩へ。
「待ってましたァァア!!!」
そして、影山以上に調子付きやすい田中先輩が見事ブロックアウトで点を取った。
「田中ナイスキー!!!」
「あざーす!!」
「ナイスキーです」
「お前もナイスワンタッチだったぜ!」
完全に烏野ムードだな…
5-1
_________________
「「「「「うぉおおおおおおお!!!」」」」
「いいぞ…いいぞ…烏野!」「いいぞ。いいぞ。烏野!!」「いいぞ、いいぞ、烏野!」
烏野の応援団のバラバラな声援が聞こえる。
ふふ…何だか余りのズレた応援に笑えて来た。
4セット目にして烏野の空気になった。これも綾隆の計算通りなのだろうか?
やっぱり、烏だけあってどう頑張っても私たちは悪役にしかなれないのだろう…本当に笑える。
「ん?どうかしたのか?」
少し笑ってしまったことにコーチが気付いて聞いて来た。
「この空気を作ったのも綾隆の計算だと思うと烏野が悪役にしか見えなくて…」
「はははは…そうだな。烏らしくて良いじゃないか!」
「そうですね」
「ええ…良いのですか⁉」
_________________
「く…くっそぅぅ……お?山口…?どうした?」
日向が皆のプレーを見て悔しがっている…まぁこれはいつものことなんだけどなぁ…
その隣にいる山口も珍しく味方のプレーを見て悔しがっているのが俺にまで伝わって来た。それを日向も感じたようで山口に問うた。
「綾隆…俺の存在を忘れさせるようなサーブをするんだよ…」
「わ…分かる。おれも囮の役を取られた感じだ…ぜってぇ負けねぇ!!」
ホント日向らしいな。
「いや…俺もだよ…あいつトスも上手いじゃんか…俺の存在意義って…」
「菅原さん!!気をしっかり!!」
「ですが、まぁ頼もしいですよね。牛若と単体でやり合えますし、皆の使い方とか熟知していて綾隆の策でプレーするのは本当に楽しいですよね。」
縁下がそう俺達に言った。それは…確かにその通りだ。
全員を上手く使いこなすから、プレーしている選手は楽しく感じるだろう。
「だな…それは言い返せん」
「おれも楽しいです!でも!おれはもっと上手くなっておれがチームを引っ張れるようになります!!」
「おう!そうだな、俺も負けねーぞ」
「俺もです!もっとサーブ練習して綾隆以上のサーブを打てるようになります!」
俺達はそう言い目に炎を灯した。
_________________
人を操作するのは、本当に楽しいと思う。
それが味方であれ敵であれ操作された人たちの見せる感情は美味だ。
バレーはルールがあって団体競技である…絶対にミスをしないとは言い切れず、選手のその時の調子で試合に負けたりもする。高校生ではそれが良くあることだ。
しかし、その絶対に勝つとは言い切れない緊張感がまた心地良い。
そして、その時の調子すらもオレが操作したい。
少し昔の悪い癖が出て、心を折りに行ってしまったが、寧ろその場で自分たちを成長させオレ達に食らいついて来た。
今回もまた成長してオレ達に食らいついてくるだろう。そして、それを見た烏野もまた成長していく。
「綾隆ナイッサー!」
「「「サッコォォォォォォオオイ!!!」」」
やはり、まだ諦めてはいないようだ。
ありがたい。
オレはそう感じながら、ジャンプサーブを放つ。
「しゃあああああ!!!」
山形(リベロ)が上げ、咆哮した。
それを天童による速い速攻で真ん中を抜かれてしまった。
「遅ーいよ~~ブロックは読みと嗅覚だよ?」
「ブロックとはシステムです」
天童に煽られた月島はそう言い返した。
5-2
牛若のサーブが来る。
主将が上げるも向こうのコートに返ってしまった。牛若のサーブも威力が上がっている気がする。
「チャンボチャンボ!!」
「牛島さん!」
牛若のバックアタックをオレがレシーブし上げる。
「「「ナイスレシーブ!!」」」
田中さんに上がり、スパイクを打つが天童に阻まれる。それを西谷先輩がギリギリで拾う。
「「「「うぉおおおおおおおお!!!上がった!!」」」」
会場は大盛り上がりだ。
「しゃああああああ!!」
西谷先輩の咆哮も響き渡る。
影山がアンダーで月島へ持っていく。そこから速攻か…月島も良く合わせたな。何かとこの二人は相性がいい。
しかし、白鳥沢も何とか繋ぐ。天童にまた上がるも…一人時間差でタイミングをずらす。
だが、それを月島が阻む。叩き落としはできず、相手はもう一度やり直す。
「牛島さん!」
またか…バックアタックで牛若はオレに打ってくる。何だ?オレを狙ってるのか?
スローモーションになった世界で軌道を演算し先回りする。
「「「「ナイスレシービュウ!!!」」」
ベンチから聞こえてくるが、皆は活舌が悪くなっていっている…余程盛り上がっているんだな…
「「「はぁああ!?」」」
白鳥沢からはイラついた声が聞こえてくる。
「影山」
「綾隆!」
オレへのトス。
3枚ブロックが着いてくるが関係ない。相手より長く跳び上から叩く。
『ズッパァァァアアアン!!!』
相手コートに響く。
白鳥沢の応援団は黙るが、牛若は逆だった。心底楽しそうな感じを醸し出している。
天童も笑ってはいなかったが、いつになく真剣な顔をしていた。
6-2
「「「「ナイスキー!!!」」」」
「はい」
「うぉおおお!!!やったるぞおおお!!!」
やる気満々の日向がコートへ入ってくる。
日向が入って来たことにより点が取りやすくなる。だが、月島のサーブは相手のチャンスボールにもなりやすい…
案の定、チャンスボールとなった月島のサーブにより天童の速攻で取られた。
6-3
だが、こちらが相手のサーブを上げられれば…
『スパァァン!』
日向影山の超速攻が決まる。
「うぉぉおぉおおお!!!よしゃああ!」
「日向ぁぁあ~ナイスキー!!!」
「あざーす!!」
「ナイスキーだ!日向!」
「ハイ!」
「「「うぉおおおおお」」」
「うるさい!!!お前ら!!!」
「「「……」」」
7-3
「ああぁぁあアウトかあああ!!!」
「す...すいません…」
「惜しかったな影山」
影山のサーブはコートギリギリのアウトだった。
オレに張り合ってきたな…
「残念だったな影山」
オレは試しにサムズアップをしながら煽ってみた。
「全てお前に上げるからな」
「す…すまん、冗談だ」
おぅ…睨まれた。顔こわっ…
影山を煽るのは辞めておこう…
7-4
ようやく天童が下がったか。こちらは更に点が取りやすくなった。
日向の超速攻を上げ、トスは五色へ。
日向と主将が二枚でブロックを跳ぶ。
五色の得意なストレートを確実に締めたがそれでも更に外から打ってきた。
7-5
_________________
「よーし、今のはすげぇな!すげぇけども!俺達は違う方法で点を取るまでだ!」
「おぁ!」
そうだ…レシーブ・スパイク・ブロック・サーブ各々の個人技・攻撃・守備・バリエーション、毎年新しくなってチームと発展途上の選手で全てを完璧にするなんてできやしない。
手持ちの武器の何を強化するのか、皆それを選択してきている。
何を選んで鍛えて来たか…そしてこれがどれだけ嵌るのかの勝負。
烏野に新しく加わった武器…綾隆と言う存在が嵌っているこの状況がチャンスだ。
_________________
9-7
ウ~~来たこれ、嫌な攻撃。烏野のシンクロ攻撃。
……でも、烏野の主将がレシーブ直後で、16番は何度も使っている…なら…
『ダァン!』
スパイカーを絞られればシンクロの意味はない。
「「「「川西!!川西!!」」」」
いつもより応援が良く聞こえる。心地よく感じ、まだまだこれからだと自分を鼓舞するのが分かる。
9-8
_________________
新しくトリッキーな技と連携…ならばそれも研ぎ澄まされた個の力で踏み潰そう。
烏野16番…確かにすごい奴だ。バネ、パワー、センス…どれを取ってもウチのエース以上だ。
だが、おそらくまだ初心者…研ぎ澄まされた個の力ってのはまだまだ先がある。
_________________
個人の身体能力・高さとパワー…それだけが強さの証明なら試合はもっと単純だ。
でも、そうじゃねえから奥が深く…そうじゃねえから面白いんだ。
_________________
「わははは!相変わらずだな…鷲匠先生。良い面子揃ってんなぁ!
烏野も白鳥沢も戦い方は違うが互いに力ずくで点を取ることを好む同類だ。
これはコンセプトの戦いだな…鷲匠先生とは昔っからそうじゃった...良い機会じゃねぇか!
高校生と言う今現在どっちが強いか勝負と行こうじゃねえか」
烏養前監督が何やら嬉しそうに一人で話している。
だけど、言いたいことは私にも分かった。
見ていて心が沸き立つこの試合…点取り合戦はどちらが制すのか…当然!烏野が勝つと信じたい。
でも、決してあきらめる様子を見せない白鳥沢…どちらが勝つかなんてまだ分からない…
_________________
『ピーーー!』
笛が鳴り、五色がサーブを打つ。
綺麗に上げた烏野はまたシンクロで攻撃に全員が参加する。
天童がいないため楽になったかと思いきや...12番…川西が予想してブロックをしてきた。
特に目立ってなかった人までが、調子を上げて来た。また、厄介な人が出て来た。
だが…
『ズッパァン!』
オレのスパイクがコートに突き刺さる。
「ちっ…!左か!」
それでも読みあいで負ける気はしない。
10-8
_________________
主将のサーブを上げた白鳥沢…川西が速攻に入ってきて、ライトで上がるのを待機している牛若。
だが…
タン!タン!と相手コートに落ちる。
そろそろ来ると思っていた。
「ナイス綾隆!」
「よく分かったな!」
「はい、白鳥沢ならそろそろツーが来ると思ってましたので…」
「どんだけ読み合いが得意なんだよ」
11-8
しかし、次は連続で点を取られ11-10となってしまった。
だが、何度かラリーが続き烏野に点が入る。
12-10
_________________
「はぁ~一点一点が重いよぉおお」
「そうだな、ウチはこのセットを落とせば終わり…しかも今は相手がリードしているからな」
「応援の私らでさえこんなにも伝わってくるのに…選手たちは凄いね~よくやるよ」
白鳥沢の応援団、観客もその重みを感じ取っていた。
それを一番感じるのはやはり選手であって、どれだけ集中していてもその緊張は纏わりついてくる。
先程までの勢いが壊れてしまう事も良くあることだ。
そして...それは徐々に崩壊していくときもあれば、一気に崩壊するときもある。
「って…もう…回って来たの…⁉」
「おいおい…こんな時にやべーだろ…」
「離されたくねーぞ…」
白鳥沢の応援団、観客は16番のサーブに気付きネガティブになっている。
だが…やはり、それが最も嫌だと感じるのは選手だろう…
一気に流れを持っていかれるサーブ…1セット目から苦しめられてきたサーブであり、慣れはしたものの威力は衰えるどころか上がり続けているように感じてしまう…そんな絶望的なサーブがまた来る。
これを上げられるかどうかで試合の流れが大きく変わる。
_________________
「「「「綾隆~~~!!ナイッサー!!」」」」
高く上げたサーブトス。毎度同じ場所、同じ高さに上げる自分が気持ち悪い。
『バッヂィィン!!』
「あああくそ!」
五色の手に当たるも後方へ吹っ飛ぶ。
皆が前から駆け寄ってくる。
「「「「ナイスサーブ!!!」」」」
13-10
「もう一本~~!!!」
狙う場所は決まっている…そこへ真っすぐ打つ。
軌道が変化しながら、相手コートにネットを超え侵入する。
「アウト!」
「えっ…あっ…」
またも五色に当たり落ちる。
「すまん、言うの遅れた。」
「っ...いえ…だあああ。すみません!」
崩れ始めたか…?一年レギュラーで確かに上手く才能を感じる。
だが、まだレシーブは甘い。
「どうした五色…お前のその実力で何を焦る必要があるんだ」
ちっ…牛若が五色にそう言っているのが聞こえた。
牛若は事実を言っただけだ。その言葉以上に良い言葉は無い…
崩すのは無理か…
14-10
ジャンプサーブを打つもこれは見事に五色が上げて見せた。
「しゃああああ」
「「「ナイスレシーブ!」」」
五色の咆哮が聞こえてくる。そのボールをツーで打とうとする...白布。それに釣られてブロックを跳ぶ月島。だが…トスに切り替えて牛若に上げる。
『ズッパァァン!!!』
こちらのコートで響く。
今までで一番威力が強いな…
「天童の言葉を借りると…
のってきた」
牛若の言いそうにない言葉がオレの耳に届く。
その言葉に白鳥沢の雰囲気が良くなるのが感じ取れた。
このまま崩されるのはこっちかも知れないな…
14-11
牛島 川西 五色
大平 天童 白布
ーーーーネット
田中 影山 月島
西谷 澤村 綾隆
「「サッコォォォォオオイ!!」」
笛が鳴り、牛若がサーブを打つ。
そのサーブで放たれたボールは西谷先輩と主将の真ん中...そして、白線ギリギリに落ちた。
14-12
次はオレに向かってきた。
真正面だったため、普通に上げ、助走に入る。
シンクロ攻撃で攻める。田中先輩のスパイクだが…
『ダァン!』
天童に叩き落とされる。
「ぐわぁぁくそ!すいません!」
「ドンマイ!」
天童はドシャットしたにも関わらず喜んでいなかった。いつもの煽りも入れず、オレを指す。
「俺はお前を叩きのめさないと気が済まないんだよ」
と、言った。
「俺は眼中にないってことですか、コラ⁉」
「ないない」
「あぁん⁉」
「はいはい、田中乗らない乗らない」
「...はい」
そう来てもらわないとこちらとしても面白くない。
「もういっぽ~ん!」
牛若のサーブは、ネットにかかり烏野コート側に落ちる。
「前ェーー!」
「クッソがっっつ...!」
主将が前に飛び込みながら拾う。
だが、そのボールは白鳥沢のコートにそのまま返ってしまう。
天童が速攻に入ってくるが、月島が阻む。
「ハァっ」
天童が怒りの声が漏れる。
叩き落としはできなかったため、白鳥沢の再びチャンスボールになってしまった。
だが、次のスパイクも月島が阻む。
「ワンチ!」
「青根さんみてぇ…!」
日向の声が聞こえた。伊達工の眉毛無し男君のことを言っているのだろう。
「ナイスワンタッッッッチ!」
だが、天童も黙っていない。逆サイドの田中先輩をブロックするため走る。
打てたもののコースを絞らされ、綺麗に上げられた。
そして、次は牛若に上げられた。
「アウト!」
「ラッキー!!」
牛若のスパイクはアウトだったが…月島に当たった気がしたが…
そして、オーバーコール。
やはり月島の手に当たっていたようで、白鳥沢の得点。
「月島...お前…」
「くそっ…!」
月島は手を抑えて痛そうに顔を顰めていた。
「牛若のスパイクに触ったときに切れたんだ…東峰と同じ感じだな。
ただ…今回はまだ軽い」
コーチが入っきて、月島をコート外へ出す。
清水先輩が月島を医務室に連れて行った。
代わりに成田さんが入ることになった。
ウチ...ケガ多いな。
14-13
少し厳しくなったな。元々東峰さんがケガで出られず、そして、守りの要である月島がアウトか…
「「サッコオオーイ」」
牛若のサーブ。
毎度毎度凄まじいサーブだ。
「ナイッレシーブ!!」
西谷さんが上げる。
皆、凄い集中力だ。
月島の悔しそうな顔を見たからだろうか。
影山が成田さんに上げる。
やはりどこまで行っても影山は影山だな。
疲れて、休みたいだろうに…速攻を使い相手に警戒心を忘れさせない。
「ワンタッチィ!」
だが、天童のブロックで威力が弱まる。
おっ…
「ナイス綾隆」
相手のツーアタック。
それを察知したオレは前に出て上げた。
そして、もう一度成田さんへ。
合わない…だが、指先に当たって上手くブロックを搔い潜った。
川西がギリギリで繋ぐも、白鳥沢が崩れた。
こう言う時は、牛若だ。
……ちっ。
オレは横に跳びながら、牛若のバックアタックを上げる。
今…西谷さんに打つ向きだったが、打つ瞬間に打つコースを変えた。
少し出遅れてしまったため、セッターの頭上に返せなかった。
「ナイスレシーブ!」
「影山!」
「はい!」
と、影山がボールの方に駆け寄ったが、足が止まり膝をついた。
『トントンットット』
ボールがそのまま落ちた。これはかなり不味い状況だ。
『ピーーーーー!』
コーチもそう思っていたのだろう。だが、仕方ない。
影山と菅さんを交代する。
悔しそうな影山だったが、よろよろ歩きコートを出た。
「お、お、おーし!行くぞぉお前ら!」
ダメだこれは。
コートに入って来た菅さんは、物凄く緊張していた。
「す、す、菅さんファイトっす!」
「そ、そうだぞ!菅!」
それを見た皆も何だか緊張し始めた。まぁ雰囲気は烏野だな。
だが、このままでは不味いな。
せめて月島が戻って来てくれたら良いんだが。
14-14
またも牛若から強烈なサーブが放たれる。
それをちゃんと上げて見せた西谷先輩。
菅さんから、オレへトスが上がる。
ここまで、一度もミスが無く止められていないオレに上がるのは当然の事なのかもしれない。
だが、その菅さんからのトスは何処か神頼みのような、逃げのトスのようなものを感じた。
ここで、逆転をされたくはない。だから、点を取らなければならない。
_________________
俺がバレーをする理由。
そんな事は単純だ。
叩き落とされた奴の顔を見るため。それ以外にやる理由なんてない。
あの顔を見た後で、ワンタッチで満足何てできない。
叩き落としてこそのブロック。
叩き折ってこそのバレーボール。
そして、俺がこのコートの上に存在する理由。
そんな事決まっている。
ブロックで点を取るため。
今まだ俺が一度も叩き落とせていない奴が目の前にいる。
若利君と同じ。いや、それ以上の相手が目の前にいる。
俺がこいつを止めなければ、俺はここに存在する意味はない。
セッターは3年だが、このセット中盤で出て来て緊張している。
神頼みのようなトス。低く助走を確保できていない。
横で跳ぶシオンと少しタイミングをずらす。
シオンが落ちるところに俺が腕を伸ばす。
『ダァン!』
相手コートに落ちたボール。
そうそう!この響き!
ちっ悔しそうな顔しろってんだよ。
でも…
「しゃぁぁあああああああ」
気付けば、自分の口から咆哮が出ていた。
俺の時代。
俺の存在価値。
さいっこうだぁ~!!
_________________
これは完全に読まれてしまったな。
自分のコートに叩き落とされたボールを見て、オレは心地よく感じていた。
オレは全力で打った。今できる全力を。
それを叩き落とされた。確かに、低いトスで打ちづらくもあった。だが、そんなことは大して関係ないことだ。
60や80だった力をここへ来て、100以上の力を出してきたと言うことだ。
「すまん!綾隆!!お前ならと思って、何も考えずにトスを上げてしまった!」
「いえ、オレが叩き落とされただけですから。
まぁ次からは高いトスをお願いします」
「お?綾隆?」
「「「おぉ?」」」
皆から注がれる視線を無視して、ポジションに着く。
勝つ。
それは、簡単なことだ。あの部屋では知識をつけ、カリキュラムの本質を身につければ、他者を圧倒することができた。
それはバレーでも同じことだった。だが、オレが上に立てば全力で追い抜かそうとしてくる。
こいつらのバレーに対する気持ちは一体何処から来ているのだろうか。
これが好きと言うものなのだろうか。
その想いがあるから、自分を高めようと努力するのか。
敗北を死と捉えるあの部屋とは異なった考え方だ。
その好きと言う感情をオレは知らない。
だからこそ、知りたいと思う。
好き 対 死…どちらの感情を持っている方が上へ行けるのだろうか?
オレが上にいる限り、こいつらはそれを教えてくれるのだろうか。
「「「ナイッサー」」」
「「サッコォォオイ」」
牛若のサーブがこちらに飛んで来る。
菅さんの真上に返し助走に入る。
『ドォン!』
高く跳ぶ。
ブロックに付いてくるのは3人。
『ズッバァァアン!!』
ブロックをぶち抜き、相手コートに落ちる。
100を超える力を出すなら、オレは200を出そう。
そうすれば、いつでもオレが上に立っていられる。
「うぉおお!!」
「ナイスキー」
「サンキュー綾隆!三枚ブロックに見事に付かれてヒヤッとしたけど、さすがだな!」
「あ、どうも」
「成田ナイッサー」
「は、はい!」
15-15
「牛島さん!」
牛若にトスが上がる。
3枚ブロックに阻まれるが、後方に吹き飛ばされる。
だが、後ろに下がっていたオレが拾う。
シンクロ攻撃。皆が一斉に走り出す。
天童を掻い潜るには、数が必要だ。
トスは田中先輩へ上がる。
「しゃああああ」
田中先輩が吠える。
「田中ナイスキー!」
「あざーっす!」
16-15
20-18
オレが前衛に回って来た。
それは牛若も回って来たという事。
田中先輩のサーブから始まり、レフトから五色。
ブロックの更に外から腕に当て、ブロックアウト。
20-19
五色のサーブ。
五色もなかなか強烈なサーブだ。
レシーブが乱れ、オレがコート外に拾いに行く。
「ライト!」
主将が手を上げ、主将にトスを上げる。
主将のスパイクを乱れながらも繋ぐ。
そんな時は…
「せーのっ」
オレの掛け声でブロックを跳ぶ。
そして、西谷先輩の視界。
「だっしゃあああ」
完璧に上げて見せた西谷先輩。
そのボールをオレにセット。高めのトス。
このチームには左利きが居なかった。なので、菅さんと左を合わせたことがないため、右でしか打つことができない。
相手もそれは感じ取っているのだろう。
クロスを閉めるように3枚のブロックが付く。
だが、問題ない。
『バヂィン!』
ブロックの指先に当て後方へ飛ばす。
「ナ…ナナナイズキー…綾隆」
「何だその顔は?」
「お、おれの技を~」
余程悔しかったのだろう。
今までで一番顔がくしゃくしゃになっていた。
だが、これはオレのやり方ではないため、あまりすることは無いだろう。
「まぁ頑張れ。お前、サーブだ」
「うぅ~頑張りますぅ」
21-19
チャンスボールとなった日向のサーブ。
そんな時の白鳥沢は速攻。
だが、ブロッカーは月島ではない。触るのがやっとだった。
飛ばされたボールを日向が拾う。
そして、トスは再びオレへ。
『ズパァン!!』
「「「なっ…!!」」」
三枚ブロックを抜いて、クロスに突き刺さる。
相手から驚きの声が漏れたのが聞こえた。
「「「うぉおおお!!」」」
「何だお前!梟谷のエースみてぇじゃねぇか!!」
「まぁ真似しただけですから」
「「「「それがすげぇんだよ」」」」
呆れた表情で皆が言う。しかも被っただけに非難を浴びせられたような気分になった。
「日向もう一本ナイッサー!」
「はい!」
ナイッサーではない日向は気合を入れて、エンドラインの方へ向かった。
22-19
ようやく点数に開きが出た。このまま終わらせたいものだ。
『パサッタンタン』
やると思った。
「ご…ごめんなさいぃぃぃ」
「ドンマ「ぼけぇーー!!日向ボゲェーー!!」」
日向のサーブはネットにかかり、烏野コートに落ちてしまった。
コート外から影山の罵倒が聞こえてくる。
もう十分回復したんじゃないか?影山のやつ…
22-20
_________________
俺は影山のようなトスを上げることは出来ない。
あんな精密で綺麗なトスには憧れる。
及川のように自分で才能を開花させられるだけの努力をしてきたわけでもない。
それでも俺はバレーが好きで、こいつらともっともっとバレーをしていたいし、もっとコートに居たい。
……
なら、なら!俺がビビったトスを上げてどうする!
急に実力を出してきた綾隆に頼り切っていては駄目だ。
相手サーブがネットに当たり、こっちのコートに落ちる。
それを俺が拾う。
「西谷ぁぁああ!!」
俺がやるんだ!
影山にトスワークで勝てないのなら、及川に努力量で負けているのなら、俺に出来る新しいことをやるだけだ。
西谷からのトス。西谷以外全員シンクロ。
そのトスは俺へ。
ブロック1枚!
『スパァン!!』
俺のスパイクは相手コートに突き刺さった。
「しゃああああ!!」
相手には絶望的な一点。
それを俺が取った!
23-20
_________________
主将からのサーブ。
白鳥沢が絶対決めたい時に上がるスパイカー。
決まっている牛若だ。
「せーのっ」
オレの合図に3枚でブロックを跳ぶ。
『バッチィン!』
吹き飛ばされ後方へ。
それを主将が何とか拾い繋いだ。
それを田中先輩がギリギリで繋ぎ、成田さんがアンダーで返す。
「せーのっ」
もう一度牛若に上がり、2枚のブロックで跳ぶ。
『パァン!』
「くっそぉ」
西谷先輩が拾うがセッターにかえってない。
オレがアンダーで繋ぎ、成田さんが返す。
「せーのっ」
またか…3回連続牛若。
今度は3枚のブロックが揃う。
『バッヂィィン!』
また後方へ飛ばされる。飛ばされるのは仕方ないが、いくら何でも飛ばされ過ぎだ。反応の速い田中先輩でなければ、取れないだろう。
やはり...成田さんには悪いが、月島がいないとブロックが成り立たないな。
そして、今回もスパイクに繋げず返すだけになった。
相手のチャンスボール。
天童の速攻により、真ん中を抜かれ、田中先輩の手に当たり後方へ飛んで行った。
「「「しゃあああああ」」」
白鳥沢からの大歓声。
23-21
ここで来た牛若のサーブ。
『ズッダァアアン!!』
こちらのコートに突き刺さった。
「「「「いいぞ!いいぞ!若利いいぞいいぞ若利!」」」」
白鳥沢の応援団もまだ諦めていないようだった。
23-22
長いラリーを取られ、その後にサービスエースを取られた。
それはこちらの精神的にキツイものだった。
だが、もうそんな事は気にしなくても良いみたいだ。
空気を変えるように戻って来たメガネ。月島。
まるでヒーローのような登場だ。
「小指は包帯でギチギチに固定しました。プレーに支障はありません」
月島がコーチを説得している。
月島らしくない行為に皆がポカンとした表情で月島を見つめている。
月島も完全にバレーにハマったな。
23-23になり、月島がコートに入ってくる。
『ピーーー!』
牛若のサーブを主将が上げる。
「しゃあああ」
「「「ナイスレシーブ!」」」
菅さんのトスからのシンクロ攻撃で攻める。
田中先輩が打つもレシーブされ、牛若のバックアタック。
その前に立ちはだかるブロッカーのメガネ。
『バヂィン!』
右手に当たるが威力を幾分か弱めてくれた。
烏野のチャンスボール。
オレにセットされる。
『バヂィン!」
相手のブロックを吹き飛ばし、後方へ跳ぶが何とか拾い上げ繋いだ。
崩れたときは必ず牛若。
本日何度目かのスパイクで、試合終盤だと言うのに威力が上がっている。
そんなスパイクの前に立ちはだかる月島。
それを避けるように打つ。その先に待ち構えているのは、烏野の守護神だ。
そして、次は田中先輩に上がった。足を叩きながら助走に入り跳ぶ。ブロックに当てコート外に落ちた。
「だっしゃあああ!!」
右腕を上げ喜びの咆哮する田中先輩。
それに皆が駆け寄っていく。
「ナイスキー田中!」
24-23
牛島 山形 五色
大平 天童 白布
ーーーーネットーーーー
田中 菅原 月島
西谷 澤村 綾隆
これでマッチポイントだ。
静かにエンドラインの方へ向かう。
周りの雑音が遠くなっていく。
振り向きネットと向き合う。
ボールを手に取り、お腹付近に持ってくる。そのボールを数秒見つめて顔を上げる。
相手選手は真剣な顔つき、相手の応援団は絶望的な表情をしている。
『ピーーーーー!』
高く上げ高く跳ぶ。
そして全力で打った。
コート端の方。
際どいライン。
今まで決め続けた場所だ。
それを何とか五色は身体で当て繋いだ。
「ナイスだ!!五色!!」
「っ…フォローお願いします」
「牛島さん!!」
アンダーで牛若へトスを上げた。
「せーーーのっ」
ここで三枚ブロックがクロスを閉めるのを止め、ストレートを閉めた。
態勢を崩しながらも、クロスへ切り替えて打ち抜いた牛若。
その球はオレの所に来る。
「「「「ナイスッシィィィィブゥ!」」」」
_________________
「すっげ…」
そう言ったのは、多分日向だと思う。
俺もそう思う。目の前で繰り広げられる試合は、高校生の試合を大きく逸脱しているように感じた。
俺もこんな風になりたいと思うが、それ以上にミスはしたくないと思っている。
分かっているさ…こんな守りに入っているから俺は駄目なんだ。
だが、綾隆のような圧倒的なポテンシャルを見せつけられると、俺も何かできるんじゃないかって思うんだ。
「くっ…」
俺の後ろで悔しさを隠そうとせず、顔が怖くなっている影山。
こいつだって、十分に化け物だ。
だけど、体力切れで試合に出られない影山は、また努力して上へ上へ目指していく。
俺とは違う。
俺も努力をしなければ何も変わらないだろう
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「菅さん」
オレが菅さんを呼ぶ。
オレに上がったトス。
オレの前には3枚のブロック。構わず牛若が守っているところへ打つ。
牛若はレシーブをするも、やや後方へ上がった。
「牛島さん!ナイスレシーーーブ!!」
それを繋ぎ、もう一度牛若へ。
難しい態勢だろうに、牛若は勢いよく踏み切って高く跳ぶ。
コート後ろよりに守られたディフェンス。
スローモーションの世界。
【いつもよりスローモーションだった】
和久南のエースが言っていたことがフラッシュバックした。
偶にこう言う時がある。
入ろうとして入ったわけではない。
だが……あー入ってしまったか…もう仕方ないな。
周りがいつもよりもボヤケて見えない。だが、牛若とボールが進む軌道はいつもより、くっきりはっきりと見える。
牛若が落とすよりも早くオレが動く。
真ん中に移動しボールが落ちてくるのを待つ。
「「「チャンスボール」」」
オレが高く上げ皆の助走距離を確保させる。
そして、シンクロ攻撃から田中先輩に上がる。シンクロ攻撃では菅さんと合わせたことがない。だからオレはただの囮役になる。
天童には見破られているだろうな。
田中先輩に2枚のブロックが付く。
ブロックに阻まれるも叩き落とされはせずに、ふんわりと返って来た。
もう一度菅さんへパスし、オレへ高く上げる。
高く跳ぶ。
全力で打つ。
ブロックを避けるように。
『バッヂィィン!』
おっ。
「ワンタッヂィィィィ!!」
天童が触って威力を弱めた。
それを繋ぎ大エースへ。
「開けます!せーーーのっ」
今度はクロスを閉め守護神の視界を開ける。
「くっそが…」
上げたが後ろに逸れた。
主将が後ろに飛び込みながら上げた。
コート中央に上がったボール。オレがそこまで駆け寄って行き跳ぶ。
ネットから離れた位置からスパイクを打つ。前に立ちはだかるブロックを躱して、コート端に勢いよく飛んで行った。
「ちっ…」
少し離れた位置だと言うのに、天童の舌打ちが聞こえた。
しかし、山形が横に跳びながら拾い上げた。さすがはリベロだな。
今度は天童の速攻。
「はぁ⁉」
今度は月島が阻む。
相手コートに返り、レフトから大平のスパイク。
「ワンチ!」
それも月島が阻み威力を落とす。
西谷先輩が上げる。
「チャンスボール!」
シンクロ攻撃で全員が入っていく。
主将に上がった。何気に初めてだな。
落ちていくボール。
天童に読まれていたようだ。
こちらのコートに落ちそうなところで、西谷先輩が上げる。
「「「「ナイス!ブロックフォロー!!」」」」
もう一度、助走距離を確保し助走に入る。
オレに上がる。
これを最後のスパイクにしよう。
ここで決めて終えよう。
『ドォン!!』
高く跳ぶ。
スローモーションに変わった世界。
ここに打て。
知らせるようにクッキリと打つ場所が見える。
それに従うように打つ。
『ボォッ!!』
と、スパイクを打つ時の音が聞こえた。
ボールの核を捉えた音だ。
弾丸と化したボール。ブロックを通り抜け牛若の方へ飛んでいく。
牛若の少し前に勢いよく落ちて後ろにタンッタンタンと弾む。
静まり返った会場。
副審の振った旗のみの音が聞こえた。
『ピッピピーー!』
主審の笛の音のみが聞こえ、その音と共に会場内で歓声が溢れかえった。
「「「「「うぉぉぉおおお!!」」」」」
コート内にいる3人の3年が中心にフラフラと集まって行き抱き合っていた。
「「「うぉおおおお」」」
観客席を見るとひとかは田中先輩の姉に抱きかかえられて気を失っていた。
コート外から日向が飛び跳ねながら駆け寄ってきて、影山は悔しそうな嬉しそうな複雑な顔をしている。
オレは西谷先輩と田中先輩にサンドイッチにされ抱きつかれた。
「「うぉおおおお」」
皆同じ喜び方だな。
「あやぽんやったなあ!!」
「あ~はい、そうですね。あの重いです」
「うぉおおお!すげぇぜ!あやぽん!」
「あ~はい、そうですね。あの重いです」
ようやく解き放たれ、二人は月島に同じように飛びつきに行った。
コート中央に向かって行き挨拶をした後、コートを出る。
『ばふっ』
清水先輩がオレの胸に飛び込んで来た。
「ぐすっ...ああやたたか」
感極まっていて興奮し号泣しているため、何を言っているのか分からなかった。
さっきまで喜びに満ちていてた先輩たちの顔が一気に怖くなった。
だが、引き離すことが躊躇われたためどうすれば良いのか分からなかった。
だから、自然と行動にでた。
オレは清水先輩の頭に手を乗せ優しく撫でる。
暫くして、落ち着いたのか顔を赤らめながら離れてくれた。
外に出る前に牛若に声を掛けられた。
「清田綾隆。次は負けない。だが、今日の試合は楽しかった」
「オレも楽しかったです」
「おれも負けません!!」
「絶対及川さんより上手いって言わせます」
オレと牛若の話を聞いていたのか、日向影山が割って入って来た。
ふっと笑って牛若は去って行った。
結果的に計画通り、四セットで勝った。
少し残念に思う気持ちもあったが、全力でプレーすることもできた。
良い思い出となった。
春の高校生バレーボール選手権大会に出場することとなった。
清水先輩との約束は果たしたわけだ。
つまり、オレの役目はたった今、終わったわけだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。