ようこそ青春の排球部へ   作:もと将軍

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稲荷崎戦の前に2つありましたので、投稿します。


春高前に…

 

「早速ですが、ビッグニュースです。影山君と綾隆君に全日本ユース強化合宿の招集がかかりました」

 

「「「「全日本!!?ジャパン!」」」」

 

「すげーーーーっ」

 

「ユースというのは…19歳以下の日本代表…でしたよね…?」

 

「うん。凄いね…なんか…凄いとしか言えない」

 

 皆は驚いているが、オレ的には面倒なことになったとしか思えないな。

 

「オレは拒否します」

 

「なんで!?」

 

 と真っ先に日向がオレに詰め寄ってくる。

 

「オレはバレーに興味はない」

 

「でも、全国だぞ⁉」

 

「それがどうした。お前が上手くなって行けばいいだろう」

 

「うぐっ…そ、その通りだけどさ」

 

「ま、まあ合宿は12月の頭の5日間で1月の春高直前になりますので、強制ではありませんから。影山君は?」

 

「行きます!」

 

「行くべきでしょう。本当なら綾隆も行くべきなんだけどな…」

 

 主将がオレを見て言う。その圧に自然とオレは顔を背けてしまった。

 

「日本のトップが集まるところですよ!それに、俺達の性質上…今更守りに入ってもしょうがない」

 

「おれはっ!」

 

 ここで日向が武ちゃんに向かって自分には来てないのかと聞く。

 

「全日本だよ。ぜ・ん・に・ほ・ん。19歳以下の日本代表ワカッテンノ???」

 

 首を傾げながら日向に言うが、その顔は真剣で突っ込みではないようだ。

 だが、月島だからか、煽りにしか見えない。

 

「分かってるよ!!!」

 

「えーーっと、お声がかかってるのは影山君と綾隆君だけでして」

 

「ガーーーーん…」

 

 フラフラと倒れる日向。

 だが、まだ話は終わってないようで、武ちゃんは皆の注目を集めるために、パン!と手を叩く。

 

「はい聞いて、話はもう一つあります。同じく12月の頭、宮城県内の有望な1年生だけを集めた合宿を行うと条善寺高校の穴原先生か連絡を頂きました。こちらは1年生だけということですが、言ってみれば『疑似ユース合宿』ですね」

 

「疑似ユース…」

 

「ウチからも一人、お声がかかっています」

 

 その言葉に日向が反応する。

 

「月島君」

 

「すっげーツッキー!!!県トップの1年だ」

 

「合宿…」

 

 月島は合宿というものが嫌いなのだろうな…

 

「先生おれはー⁉」

 

「えーっとこっちは、月島君だけ…ですね」

 

「春高も近いですし僕は「がんばって来いよ月島ぁ!!!」」

 

 断ろうとした月島を主将がかぶせるように大きい声を出す。

 

「あの、綾隆が良くて僕がダメなのは」

 

「あいつは一度決めたら曲げないからな」

 

「それでは僕も「月島、オレは家庭の事情だ」」

 

 月島の逃げ道をオレが潰す。ばれてしまったのなら、それを有効に使わないとな。

 

「……」

 

「では、二人とも参加ということで連絡しときますね」

 

 帰宅途中。清水先輩に呼び止められ、一緒に帰ることになった。

 

「それで、なんで行かないの?」

 

「興味ないからですが」

 

「家庭の事は?」

 

「まあ、確かに多少関りはあるのかもしれませんが、それはもう気にしてませんよ。そもそも親はもういませんから」

 

「そっか…」

 

「ええ。今回オレが行かないのは、興味がないのとわざわざウチの情報を相手に上げる必要は無いと考えたからです」

 

「全国優勝するため…?」

 

「当然です」

 

「それはまた、何か気が変わったの?」

 

「皆で何かを成し遂げるのも、青春なのかなと思いまして」

 

「そうだったそうだった。綾隆はそんなどこにでもいる高校生をめざしているんだったね。でも全国優勝したらもうどこにでもいる高校生とは違うよ?」

 

「…そうかもしれませんね」

 

「綾隆はどこにでもいる高校生を目指すために全国優勝を目指すのかもしれないけど、皆は普通ではない特別な人を目指すために全国優勝を望んでいるんだからね」

 

「なるほど…反対ですね」

 

「そうだよ。全国優勝したら、以前よりも普通とは程遠い人になるけど、それでも目指す?」

 

 もう一度、清水先輩は尋ねてくる。

 

「はい」

 

 オレは本気だと清水先輩の目を見て言う。

 

「それはどうして?」

 

「探してるんです」

 

「何を?」

 

「自分なりの答えを。それとある人物を」

 

「それは誰なの?」

 

「さあ。今はまだ分かりません」

 

「…??全国で優勝したら分かるの?」

 

「いえ、分からないでしょう」

 

「どう言う事?」

 

「全国で優勝することは、ただの通り道に過ぎません。その過程に意味があるんです」

 

「全国での優勝が通り道って…はぁ……」

 

「…いけませんかね?オレ個人の気持ちを優先するのは」

 

「良いんじゃない?と言うか、皆も全国優勝を目指すのは個人の想いだよ。それがたまたま、同じ方向を向いていただけ。それが何故なのか、皆違うんじゃないかな」

 

「そうですか。それなら、オレはオレの目標に向かって全国で優勝をします」

 

 白鳥沢戦で考えさせられた、好きと死の答えはまだ出ていない。

 オレが頂点で君臨し続けることに意味がある。

 

 

 翌日も普通に練習をしていた。

 

「綾隆ぁ~レシーブ教えて!」

 

 そう言えば、そんな約束していたな。

 皆が何故かオレに注目する中、日向に教える。

 

「レシーブで何が最も大切だと思う?」

 

「ん~~?どうやって綺麗に上にあげるか!」

 

「そのためにどうするかって聞いてるんだ…」

 

「ん~分かんない!!」

 

 なぜこいつは分からないことに自信満々なんだ…

 

「それは位置取りなんじゃないか?西谷のような技術力は一朝一夕で上手くならねぇからな」

 

 さすがは主将だ。

 

「はい、そうですね。それともう一つ、どのような球が来るか分かっていたら対処は出来ます。オレが牛若のボールを拾えたのもそれが理由です」

 

「どうやったらそんなことが出来る?」

 

「まぁ…一つは慣れです。あらゆる球種に慣れることでしょう。」

 

「そ、それは時間がかかりそうだな」

 

「そうですね。前に田中先輩や日向が空中でスローモーションに見えると言ってましたよね?」

 

「ああ、言ったな。そん時はすげー気持ちいんだぜ」

 

「おれも!おれもです!」

 

「それを自ら、その領域に入れますか?」

 

「え⁉いや…無理だな…まさか、お前は…」

 

「入れます。入れなければ取れないでしょう」

 

「お前のその異様な先読みを理解できた…」

 

 皆に人じゃないように見られるが、構わず続ける。

 

「日向。速すぎて見えない。硬直してしまう。そうなるのなら、時間を止めてしまえばいいんじゃないか?」

 

「そ、そそそそんなことできねぇよ!スローモーションだって、偶に乗ってるときに入れるくらいなんだし!」

 

「そうか…」

 

 オレは日向の方に向き直る。

 距離は3メートルほど、日向の顔を目掛けて全力の右ストレートを放つ。

 

「ホギャーーーーーー!!!!」

 

 日向は危機一髪で避けた。

 

「お、おお前!!何やってんだよ⁉」

 

「おいおい、綾隆!なに血迷ったんだ?」

 

「え?なにって、スローモーションに入れるように特訓してるのですが」

 

 素手だから良いだろうと考えていたが、それも駄目なのか…

 

「なに当たり前みたいな顔をして、言ってんの?」

 

「はぁ……久しぶりにお前の世間知らずを再認識したわ」

 

「お前な…喧嘩とか、殴り合いとかしたら試合に出られなくなるんだからな…気をつけろよ」

 

「え、そうなんですか…それは参りましたね」

 

 特訓でも駄目なのか…

 

「悪いな、日向。大丈夫か?」

 

「だ、だだ大丈夫~」

 

「日向!足がくがくなってんぞ!ぷははははは」

 

「だ、だって!怖かったんですもん!」

 

 

 そうして、日向にレシーブを教えられないまま合宿の日になった。

 オレは関係ないため、学校に行き練習に参加するのだが…日向が居ない。

 

 いつも真っ先に学校に来て練習してるのに、オレより遅いとかありえない。

 風邪か?

 いや、あいつなら風邪くらいなら来るだろう…

 

 まさか…乗り込んだか?

 あいつなら、風邪で休むよりあり得そうだ。

 

「はっ⁉」

 

 菅さんが素っ頓狂な声を出す。

 もう一度、縁の下さんが説明するのをオレも聞く。

 

「日向、例の1年の強化合宿に乗り込んだらしいです。で、今、白鳥沢にいるって…」

 

 隣で山口が水を吹き出している。

 あいつは、本当に馬鹿なんだなと再認識した。

 

「ぷっひゃっひゃっひゃっひゃ」

 

「やるなぁ!翔陽!!」

 

「ほんと…やってくれる…」

 

 主将がそう圧をだしながら言い、皆が黙る。

 そして、体育館の外から、多分教員室からコーチの怒鳴り声が聞こえてきた。

 余程、怒っているんだろうな。「日向君、一生懸命と無鉄砲は別物ですよ??」と、低い声で言ったのは誰だろうか?オレは知らない人だろう。

 

「春高まで一か月。バレーで唯一究極の個人技を磨いて貰おうと思う。サーブだ」

 

 落ち着きを取り戻したコーチが、サーブを練習するように言う。だが…

 

「綾隆…お前が日向に行けなんて言ってないよな?」

 

「え、なぜオレがそんなことを?」

 

「日向にしては、ちょっと頭使ったなと思ってな」

 

「日向にしてはちょっとですよね?オレならそんなバカなことをしませんよ」

 

「どうだか…自分じゃねぇからと思って行かせたのかとおもったぜ」

 

 し、失礼すぎる…

 

「そんなことはしませんよ」

 

「ほ~ん。どうだか…」

 

 ちっとも信じてくれない。

 周りで皆がクスクスと笑っている。ひとかや清水先輩まで…

 日向め…後でオレも怒っておかなければ…

 

「いつもそう言う事してるからだよ」

 

「いつもはしてません」

 

「「「してる」」」

 

 オレ以外、満場一致か…仲いいなこの部は。

 

 日向がどんなことをしているのは知らないが、あの白鳥沢の監督がしているのだろう。受け入れられただけ、凄いものだが…相当キツイ時間となるだろうな…精神的にも。

 

 翌日の学校で、ふらふらと教頭先生の部屋から出てくる日向を見つけた。

 その顔に少しイラっと来た。こいつのせいで、オレは悪役に仕立てられたのだ。

 

「ギョヘーーーーー!!」

 

 間一髪避けた日向の声が廊下に響く。

 

「何やってるのだね!君たちは!」

 

 教頭先生に怒られるが…

 

「ヒィィィィィ~~!!」

 

 オレが睨むことで、鬘をこの場に残して去って行った。

 

「お前のやった行いが、オレのせいにされていたのだが…?」

 

「す、すみませんでした」

 

 しおらしく謝る日向。

 大分、精神的に来ているのだろう。

 

「お前、なにやってるんだ?」

 

「ボール拾い」

 

「そうか。なら、それを最後までやるんだな」

 

 ここで話すことはもうないため、日向に教頭の鬘を被せ、教室に戻り大人しく本を読む。

 

 部活が終われば、オレは帰宅する。

 皆は自主練をしているが、やはりオレはそう言うことをする気にはなれない。

 

▽▽▽

 

 私、谷地ひとかは今日も授業が終われば、すぐに体育館に移動する。

 マネの仕事は多い。

 二人で割ってもまだまだ忙しい。

 だけど、皆はもっと忙しいのだろう。

 ほとんど休憩なしで練習して、部活の時間が終わっても自主練をしている。

 そんな中、綾隆だけは自主練をせずに私たちの仕事を軽く手伝って帰っていく。

 初めはもっとやる気をだして!と強く当たったこともあった。でも、自主練はしてないけど、ちゃんとやる気を出してくれているのは分かるし、なによりこの部活に残ってくれたことに一安心だ。

 綾隆の異常性を理解しても、皆は特に変わらず綾隆と接してる。

 それが良かったのか、綾隆も前よりかは皆と話すことが増えた。

 

「綾隆!おつかれ」

 

「ありがとう」

 

 皆に水の入ったボトルを渡す。相変わらず表情の変化がない。

 あの時だけだったのかな…笑ったのは。

 また見たいなと思う気持ちもあるけど、その無表情に安心感がある。

 正直、今はどちらでも良いと思う自分が居る。

 

 綾隆が私達とともに歩んでくれるだけで、私は満足だ。

 

▽▽▽

 

 おれがいないコートを体育館の二階からジッと眺める。

 悔しい。そういう気持ちが無くなっては無いけど、この皆が試合をしているのを上から見るのがマイブームだ。

 綾隆のレシーブはおれには無理だ。

 あいつは…よくわからん。

 もっと…シャッてやってシュッて教えてくれたら良いのに。

 綾隆から教わるのを諦めたが、レシーブを諦めた訳ではない。

 皆のプレーを見て、おれに出来ることを探す。

 

「ドリンクそい!」

 

「サンキュー!」

 

 皆のことを見て、慣れたからか何を欲しているのかが分かるようになってきた。

 

「お前んとこの…あのあいつだ。えっと、」

 

 とんがりが話しかけて来た。

 烏野の誰かを言いたいのか、影山ならすぐに名前は出てくるから違うか。う~~ん…

 

「ん?」

 

「あれだ、あの化け物みたいな」

 

「綾隆か?16番!」

 

「あ、そうそう。16番だったか。それで、あいつはユースに行ったのか?」

 

「……いや…行ってない。断ってた」

 

「「はぁ⁉」」

 

 国見も入ってきて、驚いている。だよなぁ…おれも未だに信じらんねえもん!

 

「何でだよ」

 

「あいつは、バレーに興味ないからって言ってた」

 

「はぁ?なんだよ。言ってくれるじゃねぇか。それで、俺らに手を抜いて勝ちましたってか?」

 

 おおぉとんがりが怒っている。あいつ怒られちまえば良いのに。

 

「あいつのことはおれもよく分かんねぇけど、最近は、よ~~~~やくやる気を出してくれた!来年は本気でやってくれるんじゃねーか?」

 

「そん時は叩き潰してやるぜ」

 

「まけねぇ!」

 

「おらぁ!!球拾い早く入れ!!」

 

 おっ…やっべ。

 

「はい!!入ります!!」

 

▽▽▽

 

「おはよ。綾隆」

 

「おはようございます」

 

 通学中、清水先輩に後ろから声を掛けられた。

 

「今日は練習試合だね」

 

「そうですね」

 

「勝てそ?」

 

「練習試合ですよ?別にどちらでも良いのでは?」

 

「もう…これだから、綾隆は…もしかして、練習試合だから出ないつもりだったんじゃない?」

 

「…そんなことはないですよ」

 

「そんなことは合ったみたいね」

 

 確かにそんなことを考えていた。

 

「良いから出ておきなさい。やることは多いのだから」

 

「はい…」

 

 それも確かにその通りだ。

 オレもやるべきことはある。

 

 学校に着き、ネットを張り他校が来るのを待つ。

 

「菅さん」

 

「ん?何だ?」

 

「今日は左に上げて貰ってもよろしいですか?」

 

「ああ、そうだな。了解!」

 

 常波を迎え入れ、さっそく練習試合を始める。

 まあ、皆が自分のやりたいことをやったため、内容はズタボロ…

 一セット目を取られた。その後は段々と噛み合い、セットを取っていく。

 烏野に新しい武器と言えば、田中先輩と木下さんのサーブだな。

 

▽▽▽

 

 全日本ユース。

 本日の練習を終え、皆が食堂に集まっていた。

 

「いや~~やっぱ知ってるやついるとちょっと安心だなーー」

 

 そういうのは、森然高校1年の千鹿谷栄吉。栄吉は現在、影山とご飯を食べている。

 だが、影山とは特別仲良くもなく、夏合宿などで顔を合わせただけだった。

 その影山はいつも何を考えてるのか分からず、ブロッコリーと栄吉を見比べていた。栄吉は結局一人気まずい空気になっていた。

 ただ、影山としてはブロッコリー2号と名付けていただけだった…

 

「おい」

 

 後ろから声を掛けてくる人物はサクサ。牛若と同じ全国三本の指に数えられる実力者。

 

「俺まだビデオ見れていないんだけど、白鳥沢は何で負けたの?若利君は不調だったの?」

 

「絶好調に見えましたけど」

 

「はぁ~~じゃあ何で負けたんだよ?どんな手を使った?誰か若利君止めた??」

 

「ああ、まあ、止めてました。それに一人スパイクで張り合ってるのが居ましたので」

 

 要らんことを言う影山。

 

「そいつ誰?何年?なんて奴?どこ中?」

 

「え?中学はしらないです」

 

 どうでも良い情報だけを答える影山だった。

 

「ごめんね~~悪いね。こいつ超っっっ絶ネガティブなのよ!自分を脅かしそうな奴が気になって仕方ねえの!」

 

 そう言いながら入って来たのは、小森元也。リベロだ。

 

「俺はネガティブじゃない慎重なんだ」

 

 その後もひと悶着あったものの、サクサが風呂に入りに行ったことにより、この圧迫した場所は解放された。

 

 そして、その翌日。

 

「おい。お前、俺を見たことあんのか?」

 

 また影山は話しかけられた。今度は、星海光来。

 

「?ここに来てから見てます」

 

「そうじゃねーよ。今までにオレの試合を見たことあんのかつってんだよ」

 

「無いッス」

 

「じゃあもっとビビれよ驚けよ!!初見からずっと「へぇー!」みたいな顔しやがって!」

 

「「⁉」」

 

 プレーしてるときとは別人のように変わったため、皆が驚きを隠せなかった。

 

「大抵の奴はこの身長の俺をナメた後、俺のプレーを見てビビる!そこまでが一連の流れなんだよ!!」

 

「はあ…まあ、星海さんより飛んでる人が俺のチームにも居るので」

 

 相変わらず、思ったことをズバッと言う影山。

 がビーン!と言う顔になるものの、すぐに戻し問い詰める。

 

「はあ?そいつ誰⁉何年?何組?どこ中?最高到達点は?」

 

 こいつめんどくさと数人がそう思った。

 

「1年の…3組だったと思いますけど」

 

「さ・い・こ・う・と・う・た・つ・て・ん・は?」

 

「350㎝だったはずです」

 

「んがっ…⁉そいつ…何センチ?」

 

「176だったと…」

 

「なぬっ⁉あ、あんまり変わらねぇだと…」

 

「フッフ。いやーキモ据わってるねーちなみに飛雄君はなかなか刺々しい第一印象やったけど、プレーは大分おりこうさんよな…」

 

 またも割り込んで来る珍客が居た。

 セッター宮あつむ。

 

「……は?」

 

 

▽▽▽

 

 

「ん?」

 

 清水先輩とひとかと一緒に帰っている中、不思議なものを発見し足を止める。

 

「「どうしたの?」」

 

「いや…これ何かなって…」

 

「「えっ??」」

 

「サンタさんだよ」

 

「サンタサン…?」

 

「知らないの⁉」

 

「え、綾隆ってクリスマスもしらないの?」

 

「まあ、クリスマスは知ってますよ。イエスの誕生日でしょう。それがどうしたんですか?」

 

「え…」

 

「はぁ~~~ダメだこりゃ。仕方ない。クリスマスと言うものを教えてあげよう」

 

 その後、清水先輩とひとかにクリスマスというものを詳しく教えてもらった。

 たかが一人の誕生日だと言うのに、これほど盛り上がるものなのか…

 

「なら、綾隆はクリスマスは予定空いてるの?」

 

「部活じゃないですか」

 

「まあ…それはそうだけどさ」

 

「その後だよ!」

 

「それなら空いてますよ」

 

「なら、皆でパーティでもする?」

 

「それもいいかもしれませんね」

 

「はい!」

 

 という事でクリスマスをしったすぐに予定は埋まってしまった。

 

 そして今日、奴らが合宿から帰ってくる。

 また、五月蝿くなるな…と思いながら学校に向かう。体育館の前に着くとにぎやかな声が聞こえて来た。

 

「月島身長伸びたか?」

 

「親戚か」

 

「5日間で伸びてたまるか」

 

「「チワーース!」」

 

「ご迷惑をおかけしました」

 

「どうせお前残ってたって役に立たねえだろ」

 

「うっせえなぁもー!何回もいわれなくても分かってます!」

 

「ケンカから平和を感じる」

 

 オレが体育館の外から眺めていると、横で清水先輩がそう言った。

 

「ですね…」

 

 そして、今日もサーブ練習。

 

「綾隆~~!一本来いやぁ!!」

 

 西谷先輩が反対側から大きな声で叫ぶ。

 軽く上げ、軽く跳び押すように打つ。

 

 オーバーで取ろうとして、下に落ちて行った。

 

「ニュウッ!!」

 

 西谷さんの弱点。それはオーバーが苦手なところだ。

 その後も木下さんのジャンフロを落としていた。まあ、これは練習あるのみだ。

 

『バンッバンッバンッバンッ!!』

 

 ボールを地面に叩きつけて、サーブを打つためのリズムを整える影山。

 高く上げて、高く跳ぶジャンプサーブ。

 

 そこから放たれた影山のサーブは、コートから外れアウト。だが、そこへ日向が静かに移動しボールを腕に当てた。

 当てただけで、上げてはいなかったが、今までの日向なら反応すらできていなかっただろう。

 合宿の成果はあったようだ。

 

 

 翌日。

 面倒な日だ。

 伊達工業と練習試合。

 

「ねあいシャース!!」

 

「「「「「シャース!!」」」」」

 

 もうお願いしますの原型は無いな…

 何とも凄い圧にウチのエースが委縮してしまった。

 

「伊達工のブロックは間違いなく県内トップ。全国でも確実に通用するブロックだ。春高予選以降、更にレベル上げるって聞く。全国でそういうブロックが立ちはだかった時、狼狽えないように」

 

「「「「「はい!!」」」」」」

 

「それで、綾隆はどうするんだ?」

 

「それは任せます。ただ、一セット目は外から見ます」

 

「りょーかい。それじゃあ、お前ら、行ってこい!」

 

「「「「「はい!!!!」」」」」

 

 オレはベンチの方へ向かって行ったのだが、伊達工からの視線が凄かった。

 

「お前…めっちゃ見られてるな」

 

 菅さんがそう言ってくる。

 

「そうですね…」

 

「相手からしたら、嘗められているとか思うだろうな」

 

「そうですかね…ただ、敵を分析するには外から見るのが一番なだけですけど…」

 

「だとしても、相手からはそれは分からねぇだろ?」

 

「それは…その通りですね」

 

 試合が始まり、相手から放たれたサーブを綺麗に上げ、日向が突っ込んでいく。

 だが、トスは東峰さんへ。他のチームなら日向に釣られていただろう。青城や白鳥沢であろうと一人か二人は日向に釣られ、大抵、他のスパイカーはブロック一枚かゼロで打つことが出来る。

 だが、伊達工は東峰さんに三枚のブロックをつけ、叩き落とした。

 なるほど、IH予選の時は全く興味なかったため、分析していなかったが、伊達工が県最強の壁と言われるのも納得できる。

 全国に行けば、伊達工…主に眉毛なし君のようなブロッカーが大勢いるのかもしれない。

 これは、良い練習になるな。

 …

 ……だが、伊達工にとってはどうだろうか…

 日向影山の超速攻は他で見ることは、まず無いだろう。それは、果たして練習になるのだろうか?

 これから、烏野は強くなっていく。

 オレもこのチームで戦っていくと決めた。

 どのチームにも負ける気はしない。

 だが、諦めず向かってきて貰わなければ困る。

 伊達工にも、もっと成長してもらわないとな…

 

 とは言え、今、押されているのは烏野。

 影山がコーチと話していたところを偶然聞いた。‘’おりこうさん‘’とユースの他のセッターに呼ばれたらしい。

 もう少し先に伝えても良いと考えていたが、気付かされたのなら、今がチャンスだろう。

 

 オレが一人で考え事をしている内に、西谷さんと少し揉めたり、東峰さんに「じゃあ決めてくださいよ」と言ったりしていた。

 確かに外から見ていて、皆のミスにより点を失っている。皆が何かを試そうとしていることを気が付ければ良いのだが…今の影山は無理だろうな。

 

 そして、19-25で第一セットを取られた。

 

「俺は良いトス上げてます!!もっと決めてください!!!」

 

 遂に爆発した影山は皆に向かって、そう想いをぶつける。だが…それで良いのだ。

 

「久々に王様節じゃない?」

 

 ちょっと嬉しそうな月島。だが、今、そんな月島の煽りは影山の耳には届かず、頭を下げ謝ろうとする。そんな影山の前にタオルを伸ばし首に当てた、オレンジ頭が前に出て言う。

 オレが出て行かないとダメかと思っていたが…杞憂だったな。

 

「前から思ってたけど、王様って何でダメなの?横暴だからだっけ?自己中だから?でもどっちみち影山が何を言っても納得しなかったらおれは言う事聞かない!」

 

 日向の言葉に皆が微笑む。

 日向の分析は済んでいるはずなのに…行動を予測するのが難しい。

 

「俺は内容はどうあれ言い方にムカついたら聞かない」

「左に同じ」

 

「だから、お前がどうかはあんまり関係ない!つーか王様ってフツーにかっけえじゃんかよ」

 

「スパイカーが打ちやすい以上に最高のトスは無いそれは確かにコミュニケーションで探っていくもの。でも、ケンカしないってことじゃねえと思うぞ」

 

 コーチが影山に言った。続いて、東峰さん、田中先輩が影山に今、挑戦していることを伝える。

 今回はオレの出番が無かったな…まあ良いことだ。

 第二セット。オレはベンチのまま。

 月島が速攻に入っていくが、影山のトスは少し高い。そのまま、コートに落ちる。

 意図的に外してきたか…及川のトスを見て思っていたこと。上手いセッターはスパイカーに錯覚させる…か。

 

「おい。合わせェねぇからな」

 

「……あっそう。別にケッコウデスケド…」

 

 ナチュラルに煽る影山に今度は月島が爆発寸前だ。

 次の速攻時。

 月島が…跳ぶ。

 いつもより、高く跳びブロックの上から叩く。アウトだったが、良い感じだ。

 

「跳んだな」

 

「セッターは支配者っぽくていちばんカッコいいだろうがッッ」

 

 日向が影山の真似をしながらコートへ出て行く。

 

「あんな風に言ってたことすんなり消えるわけない。どんなにいい子ぶろうとしてもお前の本質は王様なのだ。観念するがいい」

 

 そして、タオルを王冠のようにして影山へ飛びつき、即席の王冠タオルを影山の頭に乗せて言う。

 

「新!コート上の王様誕生だ!」

 

 影山は日向にタオルを投げる。顔に食らった日向は「アギャッ」と呻く。だが、影山の顔には笑みが浮かんでいる。

 吹っ切れた影山は、また一段とセッターとして成長するのだろう。

 「俺は他人の気持ちが……」と影山は皆に自分の本心を言う。

 言いたいことを言えるようになった。

 他人の気持ちを知ろうと努力をしようとしている。

 これは、想像以上に凄い選手が出来上がるのかもしれない。

 

「うらっ。行ってこい。東峰はまだ本調子じゃないんだ」

 

 コーチに背中を押され、東峰さんと交代する。

 警戒心を剝き出しにした伊達工に歓迎され、コートに入る。

 

「「「「サッコォォオオオイ!!!」」」」

 

 練習試合だと言うのに、気迫が凄いな。

 サーブトスを高く前に上げ、床を蹴ると『ドォン!』と音がする。

 溜めた右腕を一気に振りぬく。相手コートで気持ちの良い音が鳴る。

 相手には絶望の表情が浮かび上がっている。だが、止める気はない。もっと高みへ来てもらわないとな。

 

 何本目だろうか…ようやく取り返した伊達工。

 ローテが周りオレは前衛に回って来た。

 

「チッ…左か」

 

 やはり左利きの選手は中々いないのだろう。

 オレに対応するのが難しいようだ。

 伊達工はどのチームだって、互角に戦える強さがある。

 だが、烏野だけは最も苦手なチームだろう。

 数での翻弄、オレの両利き、ブロックガン無視の超速攻、それに加え紛れるがある。

 どれもブロックの天敵だ。

 そこからは一方的だった。

 全てのセットを取り、オレが出ていない時も烏野の強みである数での翻弄を活かして、伊達工ブロックを掻い潜っていた。

 だが、それでも伊達工は負けじと喰らい付いてくる。眉なしのサーブ、新たなセッター、新しい武器を使い格上だろうと強気の姿勢を見せている。

 来年が楽しみだ。

 

「「「「ありがとうございました!!!」」」」

 

 練習試合が終わり、掃除しながら、それぞれ話し合っている。

 敵同士なのに意見を出し合えるのは、互いに高みを目指しているからだろうか? 

 まあ、なんにせよ、良いことだ。

 

「……春高頑張ってください」

 

 わざわざ練習試合に見に来ていた伊達工の三年生が、オレ達に応援の言葉を送る。

 

「はい、ありがとうございます」

 

 帰るか…皆の自主練を横目で見ながらオレは体育館を出る。

 

「試合が終わっても自主練をする人たちは変態という認識で良いですかね?」

 

「何で、後ろに居るって分かったの?驚かそうと思ったのに…」

 

 後ろからこっそり追いかけて来た清水先輩に言うと、残念そうな表情を隠そうともせずに、文句を言った。

 

「何となくです。オレの質問には答えてくれないんですか?」

 

「皆勝ちたいからよ。

はぁ…まだまだ貴方のこと理解できないわ。そんなことより…」

 

 オレの質問に簡潔に答え、更に文句を言った清水先輩だが、話を変えるようで真剣な顔になる。

 

「年末年始、どうするの?」

 

「いえ…特に予定はないですが」

 

「そ、なら…一緒に神社にお参りにいかない?年越しを神社で過ごすの」

 

「クリスマスも一緒に過ごしましたが…?」

 

「いけない?」

 

 少し寂しそうな表情をする。

 

「いけなくはないですが……ひとかも誘いますか」

 

「だめ」

 

 清水先輩は短く発した。だが、その声は強く思わず足を止めて振り返ってしまう程の力のある声だった。

 清水先輩は唇を固く結び、こちらを強く睨んでいる。

 

「2人で行きたい」

 

 暗い夜道。

 黒い髪に黒い目、そして黒いジャージ姿の清水先輩。

 街灯の明かりに照らされて、見える顔は……パッと直ぐに言い表せなく……鮮烈。そう言っておくのが無難だろう。

 そして、なにより…また1ページ捲れる。そんな予感がした。

 

「分かりました」

 

 そう言わざるを得ない。

 全国大会の前に、何が起こるのか楽しみだ。

 

 

 

 




クリスマスを知った直ぐに予定が埋まるだと……?

なんでやねん!このぼけ!だいっきらい!
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