ここからは一話の次の日の話です。
皆に手抜きがバレた次の日
オレはいつも通りマネージャーの仕事を手伝っていた。
やる気を出し、ひたむきに努力する皆を見ていると、何だか居心地が悪くなり、マネの仕事を手伝うことで気を紛らわしていたのが始まりだ。そのため、部員や清水先輩には頼りにされることが多くなった。
「あ、いたいた。綾隆に聞きたいことあるんだけど」
部員のビブスを洗濯していると、清水先輩に声を掛けられた。
「はい、なんですか?」
「マネージャーを探しているんだけど…1年でまだどの部活にも入っていない人いる?」
それをオレに聞くのか…この人、性格悪いのか…?
「あーすいません...オレ、そんなに他の人と話さないので…」
オレは申し訳無さそうに、そして悲しい雰囲気を作ってそう言った。
「あははは…だよね」
と、そんなオレの気持ちは残念ながら伝わらなかったようで、笑いながらそう言われてしまった。
その一言で、オレの鋼鉄のハートは粉々に破壊された。
「……あ、ああ...ですが、進学クラスなら入っていない子もいると思いますよ?」
何とか立ち直ることができたオレはそう提案をした。
「あ~そうだね。明日行ってみるよ」
だが…この時期にマネを探すのは珍しいな…
余程足りていないのだろうか?
そう張り切っている清水先輩に問いかける。
「はい…マネが足りてないんですか?」
「ん~まあ、それもあるけどね…私達3年は次の大会が終われば居なくなる。
強くなる皆を見て来年とか再来年の事、改めて考えたんだ。
私も自分の仕事をやっておかなくちゃ」
「そう言うことだったんですね…」
本当に嫌になる…皆は日に日に成長している…対してオレは、マネの仕事の手伝いを取られないかの心配をしている…
「マネの仕事が取られるんじゃないかって心配してる?」
なぜ…バレた。
「…いえ…そんなことは…」
「綾隆は今後、忙しくなるでしょ?」
清水先輩が確信めいた顔をして言ってくる。
何故だろうか?
そう思い理由を聞く。
「え?何でですか?」
「だって、手を抜いてるんでしょ?
今日の朝にね、テストのことを澤村に聞いたよ。」
「あれは偶然ですよ...偶然」
そうはぐらかしたが、清水先輩は首を横に振って否定する。
「悪いけど...信じれないな」
「どうしてですか?」
「だって、綾隆は何でも器用にこなす。誰か欠けたら、出るのは綾隆...それに偶に見せる分析力は目を見張るものがある。
手を抜いていることは何となく分かっていたよ。
これでもこの部のマネージャーだからね…皆のことはちゃんと見ていたよ。
こんな手伝いをしている辺り、目立ちたくないって思ってるのかも知れないけど…」
まあ…いつも怪しい目で見られていたからな…
「さすがですね...清水先輩は…」
「ふふ…」
と、小悪魔のような笑みを浮かべてこちらを見る。
「でもさ...その隠していけるのも時間の問題だと思うよ」
「…」
清水先輩の言葉に少し詰まってしまった。
清水先輩は洗濯物を干しながら、質問をしてきた。
「なんでバレー部に入ったの?」
「何となくと言ったはずですが…」
前に確かにそう言った筈だ…
「本当にそうなの…?」
今日はやけに突っかかってくるな…
何となくも嘘ではないのだが。
「...特別弱くも強くもない、普通の部活だと聞いていたからです」
「あはは...それで、入ってみたら強豪校並みの練習量で、皆やる気に満ち溢れていて、居場所がなかったってところか!
なのによく辞めずにいてくれたね…」
「...?」
オレにはこの練習量がどれくらいすごいのか分からなかった。
友達もいないオレには他の部活がどのようなものなのか知らなかったからだ。
そして、あの部屋で生き抜いたオレにはこの程度の練習を、シンドイとは思えなかった。
「あれ…?何か違った?」
「あ…いえ。ここは練習量が多い方なんですか?」
だから、興味本位でそう聞いてしまった。
「え⁉多いよ⁉しんどいとか思わなかったの⁉」
清水先輩は驚き、声が上擦りながら聞いてくる。
「あーいえ...思ってましたよ…」
オレはそう肯定したが、どうやらもう時既に遅かったようだ。
「ふーん...中学ではもっと多かったってこと?」
ジトッとした目で睨まれ、そう聞かれた。
「え…オレは中学は帰宅部ですが…」
「へっ?待って⁉初心者だったの?」
また、飛び跳ねるように驚いて聞いてくる。
「そうですけど…?」
「なのに…あんなにできるって…すごいね」
そんなに実力を出したわけではないのだが…
何がすごかったのだろう。
「清子さぁ~ん……おい…こら…あやぽん…てめぇ、何清子さんと二人で話してるんだい?」
怖い顔をした田中先輩が来た。
まぁ…いつも通りだ。
そして...次のやり取りもいつもやること。
「はい、田中先輩…清子先輩が直々に手洗いしたビブスですよ」
「おぉ~さすが、あやぽん!」
それだけで、体育館に帰っていった。
「随分と手慣れたね…」
「まぁ…いつもやっていることですから」
「そんなにチームの事が見えていて、実力も申し分ない綾隆がちゃんとやれば、このチームはもっと強くなると思うんだけど?」
「オレは皆と同じような志を持てませんので、オレが入れば逆にチームとして機能しなくなりますよ」
オレはそう理由を話した。これは紛れもない本音だ。
これで納得してもらえるとは思っていない。
だが、少し話せばオレのことは諦めてくれると思ったのだが…
「そんなことを気にしてたの?」
清水先輩に呆れた表情でそう言われた。
「え?」
「あのね…何事もやって見ないことには分からないもの。
私がこの部活のマネをやるってなったときも成り行きだった。って、それは前にも言ったか…
まあさ!そんな事気にしなくていいんだよ!
取り合えずやって見て、当たって砕ければ答えは分かるよ」
「…そうですかね」
「そうだぞ…高校生のくせして考えすぎだ!
高校生のうちに失敗して色々と学べばいいんだよ!」
と、割り込んで来たのはコーチだ。
「……まぁ気が乗れば…」
オレはそう答えるしか無かった。
だが、オレは今、何を言われても実力を出したいと思わない。
オレが実力を出すこと…
そんな事はもう、あってはならない事だ。
それにようやく手に入れた自由を失いたくない。
「おう!早く気が乗ってくれることを祈ってる」
「私がいる間に見せてね」
「…はい」
「さぁ!戻るぞ、お前も練習に参加しろ」
オレは練習に戻り、いつも通りのプレーをしたが、みんなからの視線が痛かった。
練習が終わり、部室にて勉強会が始まった。
昨日、月島にすべてを任せたはずなのに、オレも残ることになった。
日向影山が問題を解き、直ぐに一問目を解いた日向がオレ達に見せる。
問題は穴埋めで、意味を見なくても分かる問題であったが…
鬼の目にも( 金ぼう )
まじかよ…しかも棒は平仮名か…
「鬼に金棒だと思ったの??問題文は読んでないのかな?」
月島が呆れながら言う。
「鬼って見て問題も良く読まないで、ガーーッて書いちゃったんでしょホント単細胞」
月島が煽り、他の1年もそれに続く。
特に影山は日向の事になると、罵倒が激しい。
「影山も人の事言えないんだけど!全体的に日向よりできてないんじゃないの⁉英単語くらい自分で何とかしなよ!?」
影山も影山だ。
アルファベットくらい覚えろよ…
「日本人に英語が分かるか!?」
バンッと台に肘を打ち付けて言う。
これが台パンか…面白いものを見た。
「じゃ、東京行は諦めるんだね」
月島がそう言い、言われた2人は呻く。
オレはここで考える...
この2人が来れなかったらオレが確実に出ないといけなくなる...それはつまり、サボれるマネ仕事ができないことを意味する…それは深刻な問題だ...ここはやる気を出せるようにしなくては…
「影山も日向も強い相手とやりたいのなら英語を話せないと駄目だぞ?
世界で活躍する人は色んな国の言葉を話す。話せなかったら、試合中コミュニケーションを取れないからな。
逆に色んな国の言語を話せれば、いろんな奴と話すことができ、強い奴と戦うことができる」
「「おおぉぉ!!」」
単細胞達は立ち上がり両手でガッツポーズを作っている。もうひと押し…
「それに考えて行動する人は多くの知識を保有している。その分の差で負けることもあるかも知れんな」
「「ぬぅおおお!!!」」
「やるぞ!影山!」
「お、おう!」
実に簡単な作業だ。
二人ともやる気を出してくれたようで何よりだ。
これで後は月島が上手く教えるだろう。
「ナイスだ、綾隆!だが、お前が出たくないために二人を焚きつけた…なんて言わないよな?」
主将に褒められたが、その後軽く睨まれた。
「ありませんよ…そんなこと」
「ふ~ん...そうか...
ああ、そうだ…お前ら、学校でも聞いただろうが、最近通り魔がいるみたいだ。早く帰れよ!」
「「はい!!」」
翌日
「あの!ちょっといいかな!」
体育館で練習中にバレーの女神…清水先輩が練習を止め、皆は清水先輩の周りに集まった。
清水先輩の後ろから、ロボットのような動きで顔がヒョコっと出てきた。
金髪ショート、目がパチクリしている。
清水先輩が美人で、こちらの女子はかわいい系だな。
オレがそんなどうでも良いことを考えていると、清水先輩が新しいマネの紹介を始めた。
「えっと…新しいマネージャーとして仮入部のー」
「やっ谷地仁花です!!!」
かなり緊張しているようで声が上擦っている。
皆、新しいマネ候補に喜んでいた。
しかし、今日は顔見せだけのようで帰っていった。
「日向」
オレは日向を呼ぶ。
「んうぉ?」
相変わらず能天気な顔をしながら振り向き、こちらに向かって走ってくる。
「お前、明日谷地さんに勉強を教えてもらいに行ってこい…」
「え?なんでだ?」
「谷地さんは進学組だ。
谷地さんに勉強を教えてもらえば、学力は伸びる。
そして、仲良くなれば、この部のマネとして正式に入部してもらえる」
「おお!お前、天才か⁉これはあれだな!二石一鳥だな!!」
こいつ…
「まぁ…もうそれでいいんじゃないか?」
「いや!良くないよ!!」
と後ろにいた山口が突っ込む。
「なら、お前も一緒に行こう!」
「は?なんでだよ…オレは赤点は取らんぞ」
「あ!やっぱお前手を抜いてるから余裕なんだろ⁉
なら、お前が教えてくれればいいじゃんか⁉」
「いや、だから…」
「一緒に行くぞ!
それに、お前も友達増やさないと、一生笑えねぇままだぞ!」
こ…この単細胞ごときが…お…落ち着け
「分かった…」
と、言うことで翌日の昼休みにオレ達は谷地さんに会いに行った。
日向が先頭で1-5の扉を勢い良く開けて入っていく。
クラスの人達は何事だと、こちらを見る。
「谷地さん!!」
と、日向が大きい声で呼んだ
谷地さんはジュースを飲んでいて、吹き出しそうになり、挙動不審になっている。
「これ影山で、こっちは綾隆!!谷地さん、勉強好き⁉」
「嫌いじゃ無いけど」
そう言われるや否や日向は谷地さんの前の席に座り、谷地さんの机にノートを置いて笑顔で言う。
「なら!!教えて!!」
さすがはコミュ力お化けだ。
相手に壁を作らせない。
「わ…私で良ければ…」
そして、谷地さんのノートを写す。
綺麗な字だな…
そして、綺麗に纏められたノート。
「すげー!!なるほど!!すげー!!」
「うへへへへへへへ…いや...あの」
と、満更でもなさそうにしている。
素直な人なんだと直ぐに分かった。
「日向君は」
「日向でいいよ!!」
「日向は勉強嫌い?」
「キライ…ずっと座ってんのがもうツライ」
そう言いながら表情も辛そうな顔になっていく日向。
「でも頑張るのはその東京遠征?に行くため?」
「そう!!東京の強豪とガッツリ練習試合するんだ!!」
この二人を見ているのは面白いな…喜怒哀楽が良く分かる。
「……すごいね…私そんな風に何か本気でやった事ないや」
谷地さんは、自分の事に自信を持てない人か…
少し観察しただけで分かるほどに、自信のなさそうな表情をしている。
「そんなもんだろ…誰もが日向みたいに本気で挑んでいるわけではない。」
オレはそう言う。
オレ自身が本気でしていないと言うのもあるが、月島も本気でしている訳では無い。
2年生も2人のレギュラーを除けば本気でしていると言う訳では無いだろう。
まぁ…真面目に練習はしているのは見ていて分かるが…
「そうだぞ…こいつはいつも適当に流して、本気でやらん!」
そんな手を抜いているオレに日向がそう文句を言ってくる。影山もオレを睨みつけてきた。
「オレはいつだって本気だ」
「あはは...でも行動を起こしている時点ですごいよ」
少し羨ましそうに谷地さんはそう言う。
「なら…この機会にやって見るといい」
「え⁉でも…真剣にやってる人たちの邪魔しちゃうかもしれないし…」
「そんなことは考えなくていいと思うぞ…オレも先輩に当たって砕ければいいって言われたしな」
「そうそう…オレは田中さんの股間にゲロ吐いたり、教頭のヅラをぶっ飛ばしたけど、今もなんとかやってる!」
「それ、本当に大丈夫だったの?」
「こいつが馬鹿やった後処理をするのが、マネの仕事だ。」
「な、なんだと⁉」
「お前がコンビニで吐いたゲロを誰が掃除したと思ってるんだ?」
「す…すいません…」
「あははは…それ、私にできるかな…」
苦笑いで谷地さんはそう言った。
チャイムが鳴ったので、オレ達は帰ることにした。
部活
体操着に着替え、顔をだした谷地さんに気付いた日向が、近付いて行く。
「谷地さん!!午後の英語の小テスト…さっき教えてくれたとこでて、1/3も取れた!」
「やったーーー!!」
もう仲良くなっている日向のコミュ力に驚かされる。
それを横目で見ながら、体育館を出て選手のドリンクを作りに行くと、オレに気付いた谷地さんがこちらに近付いてきた。
「あれ?綾隆はマネージャーだったの?」
オレも呼び捨てか…まあいいが。
「いや...違うぞ?手伝っているだけだ。
オレは補欠だからな」
オレは胸を張っていう。
オレが唯一誇りを持っているもの…それが補欠だ。
「え…でもみんな練習しているよ?」
「あぁ…まぁオレはサボりたいだけだ」
「ええ!?サボり!?あっシィーーー!」
オレが口元に人差し指をあてると、谷地さんは慌てて手で口を抑えた。
だが、そのシィーー!もデカい。
「ああ...でもサボっていてもチームの迷惑にはなっていないだろ?
寧ろ、マネの仕事を手伝うことでチームの役に立っている。
やる気が無くてもチームの役に立つことはある」
「う?…お、おお?」
サボることは駄目なのだと思っているんだろう。
だが、役に立っていると言う、良いことをしている風に言い切ると納得せざるを得なくなったようだ。
賢いのに単純な子だ…可愛い奴だ。
「だからな…自分の為にやっていいんだ。そんなにチームのことを考えずに自分が少しでも成長したいと思ったらやって見るべきだと思うぞ」
「な…なるほど!!」
オレの言葉に納得したのか、両手で握りこぶしを作ってガッツポーズをし、何度も首を縦に振り頷いた。
「サボることを良いことをしているように言わないで…」
おっと…清水先輩が来てしまった。
「良いこと言ってたけど、サボることは良くないわ…」
「はい…すいません...」
「全く…やっぱり、サボるためだったのね…もう少しやる気出せないかしら…谷地さんが入ってきてくれたら、あなたはマネの仕事からお払い箱よ」
なんだと…それはかなり困るな。
「谷地さん…二人で役割分担して清水先輩を楽させよう」
「あははは…そうだね…私も仁花でいいよ」
「あ…うん」
「まぁチームのことを考えて行動するのは大切なことだけどね…チームなんだからこそ迷惑をかけて良いんだよ」
「そ…そうですか」
だが、ひとかはまだ何か悩んでいるようだ。
「何か迷っているのか?」
オレがそう問いかけたのだが…
「あぁ~やぁ~たぁ~かぁ~!!早く戻ってこい!!試合だ!」
コーチがカンカンに怒っている…仕方ない…戻るか。
「では…戻ります」
「「うん、行ってこい!」」
二人に見送られ、オレは大人しく練習に戻ることにした。
午後6時…部活が終わり、日向たちは勉強会でまだ残るようだ。
オレはこっそり逃げだして、部室をあとにする。
だが…
「綾隆!仁花ちゃん送っていくのだけど…」
ばったり清水先輩達に会ってしまった。
一瞬残って勉強しろとでも言われるのかと思ったが、どうやら違うようで安心した。
ん…?これはオレも一緒に送っていけと言う事だろうか?
そんな事が田中先輩達にバレたら、後でなんて言われるか分からない…
まぁ今までも何度か一緒に帰ったことはあるが、今回は女子2人だからな…
「あ、そうですか…お疲れ様でした」
スルーしようと思ったが、腕を掴まれ止められる。
「送っていくの」
そう言われたらもう、逃げ場はないな…
「はい…」
二人で、ひとかを送っていくことになってしまった。
「そう言えば、綾隆はどこに住んでるの?」
清水先輩が切り出した。
「オレは駅の近くに住んでます」
「へぇ~いいところだね…今度みんなでお邪魔しよっか…」
「ええ…なんも無いですよ」
「でも…そう言うみんなで集まるのが青春だと思うよ」
青春…少し反応してしまった。
「ふふ…これは今度行かないとね」
「勘弁してください…あぁそれで、何か悩みがあったんじゃなかったか?」
オレは話を変えるため、ひとかに部活中に聞けなかったことを聞くことにした。
「あ、うん…実はお母さんがね…厳しくて…」
………
「そんな事は関係ないだろ?
親のことを考える必要なんてない。
それに、自分がやりたいと思うのなら、親ぐらい説き伏せて見ろ。」
少し威圧してしまったか?
「あ…うん、そうだね」
ひとかが一歩下がってしまった。
「ほらほら…どうしたのさ、急に…」
そんなオレ達の間に清水先輩が割って入る。
「あ…悪い」
「ううん、綾隆の言うとおりだよ…私頑張ってみる」
「その意気だ。頑張れ」
「さっきの綾隆は初めて見たよ」
「もう…忘れてください」
「それは嫌だね」
「あ、ありがとうございました!!ここで大丈夫です!!」
ひとかはそう全力て頭を下げてお礼を言う。
そして、駅に走って入っていった。
「うん!またね、ひとかちゃん」
「じゃあな」
夜の寂しい駅にオレと清水先輩だけが残された。
オレ達は近くのベンチに座り、少し駄弁ることにした。
「ありがとうございます」
自販機でジュースを奢ってもらった。と言うか、ジュースで釣られてしまった。
「いいえ。
綾隆はさ…バレー楽しい?」
またか…
「どうでしょう…成り行きで始めましたが、今ではこれが日常ですからね…楽しいかどうかは良く分かりません」
「そっか…私も成り行きで始めたけど、今では大事なものになってる」
「そう言うものですか…」
「そう言うものだよ…綾隆にもその内分かる日がくるよ」
「そうだと良いですね」
「ホント…綾隆って感情が薄いなぁ…私がいなくなるまでには笑顔の一つくらいは見せてよ?」
もうすぐ死ぬような言い方だな…
だが、オレもこれは卒業するまでと言う事は分かっているため、突っ込みはしない。
「頑張ります」
「うん!じゃ、帰ろっか!」
「そうですね。送っていきますよ」
「私もここから近いし、大丈夫」
「そうですか、では、お疲れ様でした。」
「うん、おつかれ」
次の日に、ひとかは日向と走って、お母さんを説得したらしい。
そして、烏野に新しいマネができた。
皆は大喜びであった。
そして、オレの大切なマネの仕事が少し減り、練習に参加する時間が増えてしまったのだった。