ようこそ青春の排球部へ   作:もと将軍

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教科書

 

「お前がレギュラーで出ればいいんじゃないの?」

 

練習が終わり、食堂で梟谷と音駒の選手達とご飯を取ってから風呂場に向かったオレと月島。

2人だけで静かだった。天井から滴る水の音が風呂場に響く。

無言の時間を破るように、月島はオレに言う。

 

「いや…それでもオレはベンチを温めている方が性に合っている。色んな選手を分析するのも好きなんだ」

 

「ふ~ん...」

 

「それに木兎さんを何回か止めたのも月島がストレートをちゃんと切っていたからだ」

 

「ふ~ん…」

 

凄く不機嫌だ…

 

「どうしたんだ?」

 

「手を抜くにしても程度ってもんがあると思うんだけど」

 

「…やるときやってるから」

 

「やってない」

 

そんなちょっと精神年齢が下がった会話をして、風呂を出た。

 

 

▽▽▽

 

 

「すっごかったねぇ~烏野にはまだあんなのが居たんだね」

 

「だろぉ~!また、おんっもしろくなってきた!」

 

木兎は強い奴を見つけて嬉しそうだな。

でも、こっちとしては烏野は絶対負けたくない相手。

だがら、あんなのが居るとか冗談じゃない…

でも、ゴミ捨て場の決戦をするには、烏野にも勝ち上がって来てもらわないとダメなわけで…あいつの存在は必要不可欠だ…

 

「なに、難しい顔してんの?

また面白い奴がでてきたってのによ!」

 

「だってあいつ…まだまだ本気だしてないでしょ…全く嫌んなっちゃうよ」

 

「え~そうか?

オレは上には上が居てくれる方が楽しくて良いけど!」

 

全く…木兎らしいな…でも何で試合には出てこないんだろう?

サボり魔とか言ってたし…

もしかしてさっきの会話が関係してる?

木兎が無駄にカッコイイ事言ったしな…

なら、あいつを焚きつけたの俺らか…?

それで……チョットやる気だして来ちゃった感じ?

やっべぇ事しちゃったかも…

これは…黙っていよう。

背中だけじゃなく身体中から嫌な汗をかきながらそう思った。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

翌日…合宿三日目

 

VS 梟谷

 

「へいへいへ〜い!あ~やたか!今日は出る?ぶち抜いてやるぜ~!がっははははは」

 

もう誰か言わなくても分かるだろう…そんな自由人がいきなり現れて一切こちらのことを聞かず、一方的に言いたいことを言うだけ言ってどっか行った。

おい…この雰囲気どうしてくれるんだ…

オレは何も言わず、そそくさとベンチに移動する。

皆の視線が痛い…

 

「昨日何かしていたのか?」

 

同じくベンチメンバーの菅さんが話しかけてきた。

 

「ああ...はい、昨日の自主練の時に、強制的にブロックを跳ばされましてね…何回か偶々当たってしまい木兎さんに火がついてしまったんですよ」

 

「ほう…」

 

「たまたまですからね…」

 

「そう言うことにしておくよ」

 

もういい…

 

 

「シャアアア!!」

 

木兎さんの叫び声が響く

 

「ヒぇ~4番の人今日もスゴイ…」

 

「4番のスパイクは止められなくても手に当てるだけでもいい!」

 

コーチがそう言うが…

 

「止められなくてもいいんですか?」

 

月島がそう言った。全員がギョッとして月島の方を見る。

 

「いいや?ドシャットできんなら願ったりかなったりだ」

 

試合は再開し、

 

「レフトだ!4番」

 

木兎さんにトスが上がる。その対面に月島が入っていき…跳ぶ。

月島は指の先に力を込め、手を前に出す。

異様な圧があった。

木兎さんは、それを避けるようにフェイントで躱した。

 

「フェイントォォォ!」

 

「くっそが!」

 

西谷先輩が飛び込むが届かなかった。

しかし、それを理解できた人たちは、嬉しそうだった。

 

 

▽▽▽

 

 

7月 快晴 最高気温 34℃

合宿遠征 三日目 午後

 

拝啓 お母さん様

東京は涼しい場所と言えど東北より暑いです。まる1週間の合宿遠征3日目 もうすぐ折り返し地点、皆バテつつある様です。

そして、日向と影山君の衝突から約3週間、一緒に練習するようになっても、未だまだ会話はありません。

皆の日々の進化に驚くばかりです。

元気の無かった月島君が少し心配だったけど、特別元気に見えないのが彼の基本の様でバテつつもいつも通り飄々としていて少し安心です。

でも日向と影山君の新しい速攻はあまりうまくいってません。

この合宿中に一回でも成功するのが見たいなぁ

それから、例の彼はいつも通り、上手くサボっています。

彼がちゃんとやれば絶対このチームはもっと強くなるのに!!と、モヤモヤが晴れません。

 

 

▽▽▽

 

 

「くっそぉぉぉぉおおお」

 

日向は超速攻が全く決まらないため、イライラしている。

そして、次のチャンスが来て、日向は突っ込んでいく。ギリギリ届き、指の先で触って相手のコートに落ちた。

こちらの点数となったが…

 

「オイ!!!今手ぇ抜いたな!!!」

 

その言葉は、影山には聞き捨てのならない言葉だ

当然…

 

「手を…抜く?…俺が?バレーで??…もう一回言ってみろよ…」

 

「今のは落ちてくるトスじゃなかった!!」

 

そんな事で怒るものなのか…?

 

「止めんな影山!!!」

 

影山はハッとして、顔を上げる。

何か迷いがなくなった顔をしているな。

どうやら、自分のすべきことが分かったようだ。

 

そこからは、一切超速攻をやらなかった。

この合宿では、補欠でも出るため、オレもそれなりに出て、それなりに点を決めていく。

オレはどこでもできるので、いつもポジションは変わる。普通はありえないよな…?

 

その日も、全敗で坂道を走る。

そして、夜の芝生を寝転がる。

これがルーティーンとなっている。

 

少し休んだ後、逃げるためにもマネの仕事を奪いに行く。

 

 

▽▽▽

 

 

ふぅ~今日も見事に全敗か...まだまだだな俺達も。

俺達3年は芝生に寝転んで夜空を見上げていた。

 

「こんなにも全敗が続くと清々しいな」

 

と、旭が言う。

確かに…と俺もそう思った。

 

「しっかし、日向たちは大丈夫かな?」

 

菅も心配してるみたいだ。

 

「まぁ…あいつらのケンカって今に始まったことじゃないし、俺達は信用して待つだけだべ」

 

「そうだな」

 

「へいへいへい!!あ~やたか居る?」

 

梟谷の木兎と音駒の主将が来た。

綾隆を探してるのか…

 

「ああ、あいつはマネの仕事を手伝うためにもう上がったぞ」

 

「ええ⁉マネの仕事!?」

 

「ああ、あいつはサボるためによくマネの仕事を手伝ってるんだ」

 

「それ昨日も聞いたよ」

 

「梟谷の主将に言ったんだよ」

 

「ええ~今日こそはボッコボコにしてやろうと思ってたのにぃ」

 

「昼もそんな事言ってたけど何かあったのか?」

 

「いや~こいつは昨日の自主練のとき、お宅の綾隆に結構止められちゃったんだよね~それで、今日こそはって、張り切ってんのよ!」

 

「なに⁉あいつが梟谷の主将を?」

 

「あれ...やっぱ聞いてなかった感じ?」

 

「ああ、そう言えば、昼に聞いたな...偶々当たっただけだって言っていたけど...」

 

菅も少し聞いてたみたいだ。

 

「たまたまじゃねぇよ!!あいつ、「木兎さん抜けると良いですね」って、煽って来たんだぞ!」

 

妙に物真似が上手いな...

 

「あいつ...本当に良く分からん奴だ…」

 

「まあいねぇなら仕方ねぇな!俺達行くわな!」

 

「じゃあね~」

 

と言って、去って行った。

 

「全く...すごい奴なのかね...あいつは」

 

「もう少しやる気をだしてほしいものだな。でも無理矢理やらせるのは、違うしなあ…」

 

菅がそう言う。それはそうなんだよな。

結局俺もバレーが好きだからやってるだけで、好きと思わないやつに強制的にやらせるのは違う。

 

「俺...ポジション大丈夫かな...」

 

俺と菅は、どうにか綾隆にやる気を出してもらいたいものだと考えていたが、旭が弱気なセリフ吐いた。

少しイラっとした。

 

「やばいかもな」

 

「ええ⁉そこは嘘でも大丈夫だと言ってくれよ~」

 

「「やばいかもな」」

 

俺と菅の言葉が被った。

 

「おい…」

 

さてと、俺達も自主練を始めるか…

 

 

▽▽▽

 

 

最終日

 

最後の対戦相手は梟谷学園

 

しかし、ずっと負け続けたため士気が低い。

いつもうるさい3人も静かだ。

 

「これは偶然聞いた話だから黙っておくべきかと、思ったんだが…」

 

「何スカ?」

 

「この練習試合、全部終わったら…監督達の奢りでバーベキューらしいぞ…」

 

その言葉は馬鹿を立ち上がらせるのに十分であった。ふっ…オレも少し楽しみである。

 

「B」

 

「B]

 

「Qー!!」

 

「お肉肉肉お肉肉!合わせて肉肉お肉肉!…」

 

と、恥ずかしい踊りをしている。しかも、影山…

 

「ここらで一発気持ちよく勝って上手い肉を食おうぜ」

 

「「「「おっしゃああああああ!!」」」」

 

そして、試合が始まる。

 

「旭さん!ナイッサァー!!」

 

旭さんのサーブから始まる。

強烈なサーブが相手コートへ放たれる。

レシーブを崩し、トスも少し流れた。木兎さんへ上がる。

態勢を崩しながらも木兎さんは腕を振りぬく。

そこへ、月島が跳んでブロックをするが、惜しくもアウト。

 

その後、日向が入っていきフェイントをした。

まさか...日向が…

烏野全員が驚愕している。

 

良い流れだ…梟谷学園と互角の勝負をしている。

とは言っても相手が、烏野の変わりようについて行けてないだけだが。

そんなノリノリの烏野だが、三枚ブロックを揃え木兎さんの前に立ちはだかるが、それでも止まらない。

 

「なんつー超インナーに打ってくるんだ…」

 

菅さんの呟きに、ひとかが理解できない顔をする。

 

「三枚ブロックの更に内側への強打は凄く難しいの

肩が柔らかくないと負担も掛かるしね」

 

と、清水先輩が補足している。

 

両者一歩も引かない。

10-9で烏野が負けている。

 

ここで、日向が動いた。

超速攻の入り方…

影山は一瞬迷ったが、日向につられてかトスを送る…そのトスは頂上で止まる。

その一瞬止まる時間があれば…

日向は流れるようにそれを打つ。

 

ブロックは誰もついてこれない…レシーブも反応できていない

ボールは勢いよく相手コートに落ちた。

 

「「~~~~~~~!!!!」」

「ってふざけんな!やるなら先に言っとけ!」

「だって今イケるって感じしたろ?したろ?」

 

二人は喧嘩を始めた…またかと思ったが、違うな…ようやく戻った。

 

「やった!やったーーーー!!」

 

二人よりも喜んでいる一人の女子がいる…ひとかだ。

 

これで、またチームの士気が上がる。

しかし、次も同じことをしようとしたが、失敗した。

 

だがここからは、先輩たちのターン

西谷先輩からの東峰さんのバックアタック。

シンクロ攻撃。

 

ミスもあったが、それでも歯車が嚙み合ってきた。

そして、熱くなった木兎さんがサーブを大きく外した。

 

「先生」

 

オレは動くことにした。

ここに居るチームの分析はもう完了している。

今の烏野が少しの策を授けるだけで、どれだけできるのか純粋に気になった。

 

「あ、ああ...タイム!」

 

皆が訝し気な顔をしながらオレの周りに集まる。

 

「今から、木兎さんはミスが多くなると思います。

しかし、これはチャンスではありません。

なぜなら、梟谷は木兎さん率いるチームではないからです。」

 

「え?どう言うことだ?」

 

「梟谷は木兎さんをみんなで支えるチームです。

なので、木兎さんを崩しても勝ちではないと言うことです。

崩れた後、チームメイトが木兎さんを元気づけるでしょう。

そうなると、木兎さんの行動が読めなくなります。

ただでさえ読みにくい木兎さんが更に読めなくなるのは厄介極まりない。

それをこちらで管理しましょう。

現在19-19で引き分け..丁度いいタイミングです。

木兎さんにはストレートを完全に防ぎクロスを打たせる。

木兎さんに時折気持ちよく打たせ、気持ちを保たせます。」

 

「それだと…点を取られ続けるかもしれんぞ?」

 

「いけませんか?

点をもぎ取る事をこの合宿で練習してきたはずですが…点の取り合いでは勝てませんか?」

 

「はっ…上等!!」

 

「23点を過ぎれば、完全に止めにかかっても良いと思います」

 

「「「「は、はい」」」」

 

出るメンバーで、話し合いながらコートに戻って行った。

木兎さんや日向影山は、自由な奴らだと思う。だが…自由とは必ず安定したものの中で成り立つ。

確かに、木兎さんはプレーで人を引っ張る。

だが、それだけで成り立つものではない。

それを理解できたのは烏野に来てからだ。

主将と言う存在がなければ、日向影山は今ほど活き活きしていなかっただろう。

それは梟谷も同じことだ。

 

「お前…そう言うのが得意なのか?」

 

「まあ…分析は得意な方ですかね」

 

コーチに聞かれたオレはそう返して補欠場に戻る。

 

「ようやく真面目にやる気になった?」

 

清水先輩が話しかけてくる。

 

「…オレはいつでも真面目です」

 

「ふふ…そう言うことにしとこうか」

 

「最近オレの信用なくないですか?」

 

オレがそう聞くと

 

「「「「うん、無いよ」」」」

 

と、周りの人も乗っかってきた。

 

「そうですか…」

 

田中さんのサーブから始まった。

そして、木兎さんのスパイクが開いているクロスに突き刺さる。

あれは分かっていても取れなさそうだな...

 

19-20 梟谷リード

 

シンクロ攻撃で取り返す。

 

20-20

 

続いて、赤葦のツーアタックが決まり

 

20-21 梟谷リード

 

それを、影山がツーで返し取り返す。さすがだ..

 

21-21

 

終わったチームがこの戦いを見るために囲んだので一気に観客が増えた。

 

月島のサーブで始まる。

そして、また木兎さんのストレート、しかし、それを何とか繋いで返す。

今度は逆サイドからのBクイック、だが、日向の反射神経によりソフトブロックとなる。

こちらのチャンスだ、日向が突っ込む。これは普通の速攻で点を取った。

 

22-21 烏野リード

 

リードした烏野に周囲は大盛り上がりである。

しかし、ストレートを防がれようともストレートごり押しで取り返す木兎さん…

 

22-22

 

サービスエースを決められ

 

22-23 梟谷リード

 

今度は超速攻でもぎ取る。

 

23-23

 

本当に良い戦いだ。

だが…ここからである。

影山による弾丸サーブを何とか上げる梟谷だが、そのままこちらのコートへ帰ってくる

 

「オーライ!!」

 

影山のそのままセットで、日向の超速攻が決まる。

この場で最強の梟谷にまたしてもリードで大歓声が沸き起こる。

 

24-23 烏野リード

 

田中さんのサーブを綺麗に取られ、Aクイックで決められる。

 

24-24

 

向こうからのサーブを綺麗に上げ、日向の超速攻ではなく、囮に使いエース東峰さんのバックアタックが決まる。

 

25-24 烏野リード

 

またも赤葦のツーが決まる。

こう白熱した戦いはどうしても忘れる。

 

25-25

 

向こうからのサーブを何とか上げる。

エンドラインの近くまで影山が移動する。

しかし、影山である。

そこからレフトに綺麗に上げ、田中さんがスパイクを打つ。

だが、相手もかろうじて上げた。

赤葦がトスを上げ、前衛に上がってきた木兎さんが入ってくる。

クロスを完全に防いだ。

それに驚きながらもストレートへ打つ。

だが…そこは月島の領域である。

オレや音駒のやったように手を移動し、ストレートを防ぐ。しかもブロックの位置を入れ替わっていた。

まだ、少し甘いブロックにより高く上がったが、コートギリギリに入り、こちらの点になる。

 

月島…ニヤニヤが隠せてないぞ…

ドシャットではないにしろ、木兎さんを止めたわけだ。嬉しいのだろう。

 

26-25 烏野リード

 

終盤崩れる木兎さん…当然..相手がトスを上げるのは木兎さん以外になる。そして、木兎さん以外での空中戦は烏野の方が強い。

最後は綺麗にブロックを決め

 

27-25

 

何とか勝てたか…いや…勝てたのか。素直にすごいと思った。

烏野の合宿中の成長速度に梟谷が呆気に取られたのもあるだろう。一セットだけではなく3セットとなれば、勝つことは難しかっただろう。

それでも、一セットだけでも勝つのは難しいと思っていた。

大歓声が聞こえる…まるで本当の大会のように..木兎さんはしょぼくれているが、この後のバーベキューで大丈夫だろう。

 

「「「「「「うぉおおおおお!!!!」」」」」」

 

オレ達のチームも公式戦かのように喜んでいる。

 

「やったやったやったあーーーー!!!」

 

ひとかが一番喜んでいるかもしれない

 

「すごいね!あなたの策がハマったじゃない」

 

「たまたまですよ」

 

「あははは..言い逃れ下手過ぎない?」

 

「…努力します」

 

全試合が終了したため、オレ達は外に移動する。

 

「オホン…1週間の合宿、お疲れ諸君!」

 

この練習試合を開いた猫又監督が前へ出て選手を労う。

 

「した!」

 

「空腹にこそ美味いものは微笑む!存分に筋肉を修復しなさい」

 

「「「「「「「いただきますっ!!!!」」」」」」」

 

一斉に肉を頬張る。

取り合いだ。

オレもあの白い環境で学んだことをフルに発揮し肉をかっさらって行く。

肉よりも清水先輩を守る変態軍団もいたが、気にしない気にしない。

 

オレは挙動不審にしている少女に肉を渡しに行く。

 

「ひとか。これ」

 

「え⁉いいの?」

 

「ああ。オレも十分に取ったからな」

 

「ありがとう!!」

 

オレの皿から半分くらい、ひとかに渡して、近くの椅子に腰かける。

 

「なんで、自分から出て行ったの?」

 

「さあ…何でだろうな」

 

「私が見たいって言ったから?」

 

「…それもあるかもしれないな」

 

「え…ごめんね?嫌なことやらして」

 

「謝らなくていい、本当に嫌なら出て行ったりしない。それに試合に出たわけではないからな…」

 

「そ……そっか、今度は試合に出てるところを見せてね!」

 

「…ああ」

 

「綾隆…やっぱり試合に出ないために策をだしたんでしょ」

 

「げっ…」

 

清水先輩...

決してそんなことは考えてない。

 

「何?ゲッてこっち来てよ...紹介するから」

 

「え?紹介ですか?」

 

ついて行った先にはマネ達が集まっていた

えーーー凄く帰りたい…

 

「紹介するね…よくマネの仕事を手伝ってくれてサボってばっかりいるけど、今回の対梟谷の策を考えたのが、この綾隆だよ」

 

「へ~イケメンだね」

 

「よろしく~」

 

「ちょっと~責任取って木兎の機嫌直してきてよ~」

 

口々に言われる。

 

「ああ…どうも」

 

どうすればいいんだ…

 

「取り合えず、ここ!」

 

と、言って椅子を差し出され座らされる

 

「ところで…ひとかちゃんとは付き合ってるのかな??」

 

「えええええ⁉」

 

ひとかは顔を真っ赤にさせながら叫ぶ。

一瞬、清水先輩の目が怖かったのは気のせいか?

 

「付き合ってませんよ」

 

「ホントだ…一切表情が動かない!ケラケラ」

 

なんだ…揶揄われただけか。

そこから少し会話をし、あるものを渡される。

 

「はい、あげる」

 

ん…?これはアイスってやつか。

袋から出し一口食べる。口の中に冷たさと甘さが広がっていく。

これは…美味いな。

オレが夢中になって食べていると

 

「「「「「あははは」」」」」

 

マネ達に笑われた。

 

「…何ですか?」

 

「アイスを初めて食べたのかな?」

 

「口元が緩んでいるよ」

 

「そうですかね...こんなけ美味しければ緩みますよ」

 

そう笑われていると

 

「おぉい!あ~やぁたかくぅ~ん!!こっちにきなさぁいよぉ~」

 

音駒の主将か...怖い顔だな

 

「呼ばれてるので、行きますね」

 

「え~もうちょっと拝んでいたかったのに」

 

オレは音駒の主将の所に行った

 

「お前、随分と良いご身分じゃないですか」

 

「いえ…呼ばれただけですよ」

 

「まぁいい...それよりこれを何とかしろ」

 

指が刺された方を見ると、木兎さんが涙ながらに肉を頬張っていた。

 

「え…オレが木兎さんを止めた訳ではありませんよ?」

 

「でも、お前が考えたんだろ?」

 

ちっ...こっちにもばれていたか

 

「あー...木兎さん、今回はオレ達の勝ちですね」

 

「お…おい」

 

「まあ今度の一次選抜の後の合宿ではちゃんと相手になりますよ」

 

「ん…?」

 

木兎さんは顔を上げる。

 

「それとも、このまま下がって行き、一次選抜であっけなく負けますか?」

 

「んなわけねぇだろ⁉その後にぶっ潰してやるよ!!」

 

すっかり立ち直る...回復も早いな。

だが…

木兎さん達は一次選抜は出ないだろうに…何で引っ掛かるんだ?

オレが適当に言ったことにまんまと乗って来た木兎さんであった。

 

「楽しみにしてます」

 

「おお~さすがだ」

 

そこから離れると、マネにまた回収された。

そのたびに主将たちに睨まれた。

 

ちなみにだが、しっかりとマネ全員分の連絡先は登録しておいた。

 

すっかりお腹も膨れて、全員で片付けをし、それが終わると

 

夏休み合宿終了。

 

オレ達はバスに乗り込み宮城に帰る。

 

何だかんだ面白いものだった。

この何と言い表せば良いのか分からない感情を明確に理解できる日が来るのだろうか。

 

 

青春と言うものを経験できた。

 

また1ページ青春と言う教科書を捲る。

だが、まだこの教科書は序盤も序盤。

分厚い教科書を読むのは後、どのくらいかかるのだろうか…

 

 

青春を語るのであれば、外せないものは恋愛だろう。

 

中盤から学ぼうと考えていたが……

 

案外、そろそろ恋愛の教科書を作っても…

 

良いのかもしれないな。

 

 

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