当たり判定の無い背景オブジェクトの壁で防御したら何も効かなすぎて強制和平交渉に持ち込んで平和を築く旅にでます!   作:セントラルド熊(ぐま)

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世の中には攻撃力を高く盛って突き詰めたお話は多々ありますが、

防御能力で簡潔に強さを表現した作品は少ないと感じ、

 主人公が高い防御力で大切な味方を、時には敵になる前の分かり合えるかもしれない誰か
改心の可能性を残した敵をも守り、主人公一人ではなくその冒険で出会った仲間たちの能力と連携し、人々が抱えている怒り、悲しみ、心の闇、しがらみを解決したり、
解決までには至らなくとも少しでも和らげていくことで世界に希望の光を増やし続け、
やがて主人公や仲間たち、世界の人々に降りかかる災いをつかさどる強大な悪の正体と対峙していきます。

善とはなにか 悪とはなにか その答えを出す冒険を描きたいと思います。


第一壁 転移と邂逅 (前半)

 いいことと悪いこと 善悪とはなんだろう

 

 

 

悪とはなんだろう 何かを盗むこと?人を騙すこと?人を憎悪で貶めること?

 

人を殺すこと?                   人を傷つけること

 

動物を殺すことは 食べるためならいいという

 

生きるために仕方なく 誰かが自分や大切な人を襲ってきたら

 

それは許されるという

 

 

 

 悪とはなんだろう いつどこで生まれたのだろう

 

 

 

善とはなんだろう 何かを与えること?人に本当のことをいうこと?

 

人に愛の言葉をかけること?人の命を救うこと?    人を癒すこと

 

動物が襲ってきたら殺すのはいいという 楽しむためならいけないという

 

本当にしてほしいことを知らずに 助けたと勘違いするのは傷つけるだけで

 

それは許されないという

 

 

 

 善とはなんだろう いつどこで生まれたのだろう

 

 

 

どうして人は悪いことをしてはいけないのだろう 

 

どうして人はいいことをしなければならないのだろう

 

2つは人々の中で、生まれた時はどちらでもなく、生きていくうちに善と悪は分けられる 

壁で仕切られるように

 

 

 

 眼鏡の少年 真加部真守まかべまもるは登校時の駅で電車の遅れにあう。誰かが飛び込んでしまったらしい。

 

ホームの人々が口々に囃し立てて騒がしい朝

 

 

 

「また電車が止まったあ!会社に遅刻しちゃうよ!」

 

「バイト先に電話しよう」

 

「ライブ間に合わないんだけど!(# ゜Д゜)どうしてくれんの?」

 

「ホント迷惑!!死にたいなら一人で死ねばいいのに!他人をまきこんでんじゃねえよ!!」

 

「速く片付けろよ駅員!」

 

 

 

 真守はこれが嫌でしょうがなかった。朝は目覚めると雀の可愛らしい声に和み、陽の光で眠気を取り払い、母親の作った目玉焼きとソーセージのおいしさを頭に残して爽快な気持ちで家を出る。だがこれでまた台無しだ。

 

電車が遅れたことではなかった。真守はまだ見ぬ人の痛みを想像する感受性の強い少年 電車を止めた人物を責める人々の声 心無い呪いの罵声

 

 どんなに気分を整えて登校してもこれで気分を悪くしてしまう。

 

飛び込んだ人物を責めるなど真守にはありえなかった。あんな鋼鉄の塊に自ら割り込むほどの命を捨てざる得なかったその人の痛み、悲しみを想像する。 

 

何があったのか?見ぬふりしようとしても真守の頭の構造上それはできない。

 

なぜホームの人々は誰かが命を捨てなければならなかったほどの痛みを思わないのだろう。自分に予期せぬ邪魔が入って怒る声ばかりが聞こえる。

 

 その人の弱さが悪いのか そういう人々が多いから追い詰められたのではないか?

 

それでも 

 

 真守は鬱屈した想いをしまい込んで学校に向かう。会社に行く父親もそうだが、多少の嫌なことをしまい込む最低限の我慢を誰しもして人は生きるのだと自分の甘え、不甲斐なさと、環境で他人から受ける圧力に折れる被害

 

その境界もたいていは曖昧なものだ 真守はそれもわかろうとした。

 

数年後のちかいうちに社会に自ら出るのだから

 

 

 

???「今日も誰かがいなくなったみたいだねー」

 

真守「?」

 

???「飛び込んで電車が止まったんだろう?いろいろ社会は便利になってるのに、むごいことが起きるのはなんでだろうね 可哀想に」

 

 

 

 遅れた電車に乗って改札から出た気さくに真守に話しかけてくる高齢の女性

 

その人は真守が高校生になって電車登校をするようになってからこの駅で高い頻度で会って話す人だ。話すついででたまにジュースやコーヒーやパンをくれる。このお婆さんのおかげで弁当を忘れた日も助かっている。

 

 

 

 お婆さんは近くで昔ながらの駄菓子屋のようなコーナーもあるゲーム屋を営んでいる。それで入ってくる子供たちを相手にしている。他の大部分は人気の名作や新作のボードゲームなどを売っていた。店と兼用の実家の居間には将棋盤が置いてあり、同世代の老人とも打って負かしているという。

 

格闘ゲームとシューティングの筐体も4台ある。PCのアダルトゲームも一時期は置いてあったがいろいろあって撤退した。

 

 

 

真守「ええ・・・またありました。」

 

 

 

???「また元気がないねえ 嫌になったかい?もう当たり前に起こることで

 

なんとか無くせないのかねえ」

 

 

 

真守「みんな・・・予定が遅れたことを迷惑がるばかりで、人が自分で命を絶つって悲しいことじゃないですか?ヤバいことですよね それがボクは嫌だ

 

いい子ぶるとかじゃなくて生理的に正直な気持ちです。」

 

 

 

???「おや、みんなではないよ?たまたま嫌な声がその場に固まっててそれしか聞こえないだけさ みんなが仕方なく死んだ人を責めたりはしない

 

口に出さないだけで その人たちだって一度はむっとしただろうけど

 

その後に黙って冥福を祈るぐらいはしていると思うよ?人間はそんなものさ

 

 

 

真守君はやっぱりいい子だよ 生理的に正直に、人を思いやれるんだから

 

世の中は真守君に近い人のほうがずっと多い そしてこれから人の世界が進んでいくうちにもっと増えていくはず 文明ってのはそういうものだと

 

おばちゃん思うねー そういう人はほうっておいていい人たちに眼を向ければ

 

真守君は気が楽になれると思うよ じゃあ長話もなんだしこれ!」

 

 

 

 お婆さんはそう言って苺牛乳とソーセージの挟まったパンを真守にくれた。

 

 

 

真守「えへへ・・・今日もありがとうございます!」

 

???「いってらっしゃい!今日も元気に!」

 

 

 

 嫌な想いもこのおばあさんとの触れ合いで大きく軽減され、真守は少しだけでも世の中に失望せず気楽に生きていけるのだった。

 

 

 

 学校の教室に入ると、気になる話題があった。

 

 

 

「聞いたあ?あの子飛び降りたらしいよ?」

 

「それそれ見た見た!男に騙されて振り回されたんだよね!」

 

 

 

 1人の女生徒の突然の訃報 彼女は真守と仲のよかったクラスメイトだった。真守とはゲームや漫画のサブカル趣味が合い、たまに他の女子に見せるスマートフォンの画像で着ていた服はゴスロリで可愛らしかった。少し気にはなっていた。どうして

 

 女子2人が泣いていた。2人は彼女の友人で大きくショックを受けていた。

 

 

 

「あ・・・マモル君・・・」「あの子・・・死んじゃった・・・」

 

真守「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何があったの?」

 

 

 

「あの子、自分が大切にされてると信じてて、でもそううまく思い込まされてただけで たまたま携帯みちゃったら他の女の子のいやらしい画像いっぱいあって、怒ったら殴られて自分もそういうの撮られたって!相手は逮捕されたけど」

 

 

 

「あの子 ゲームとか漫画とか好きだけど そういうのただ好きな男子じゃなくて、できれば一人前の男の人と付き合ってみたいって思ってて

 

背伸びしてみたって・・・そいつは優しくてしっかりしてるって思ってた。

 

でも甘かったって」

 

 

 

 真守も茫然としたが、悲しむ生徒ばかりではなかった。むしろ少数派

 

 

 

「なんか誘った男がさあ 同じオタクっぽかったんだって でもイケメンでモデルみたいな奴で そういう趣味の女に近づいていい感じになるの

 

でもある程度になると豹変してあとはお察し  そういう女って男見る目なさそうじゃん?だからまんまと騙されてさあ 他にもいっぱい付き合ってた女がいてー問い詰めたら酷いことされたって遺書が」

 

 

 

「そうなんだー でもあの子けっこうメンヘラじゃなかった?あんまショックじゃないっていうか 周りにいっつも冴えない男子ばっか寄せてたじゃん

 

いかにもそういう男が好きそうな子だったよねw」

 

 

 

「当の本人はクズイケメン本命でそいつら搾取されてただけってのがねwww笑えるww」

 

 

 

「おいおい不謹慎だろうw」

 

 

 

「本人もまた搾取されてた獲物の一人だったってのが食物連鎖かんじるw

 

生物の勉強ww」

 

 

 

「メンヘラが自業自得で身を滅ぼしただけって思えば悲しさ感じないww」

 

 

 

「ねえww一応冥福祈っとくけど なんみょーほーれん」

 

 

 

 ここでもこうだ あの子は悪い人ではなかった。話してると楽しかった。

 

友達だった。しばらくしたら好意が膨れ上がって告白することも考えた。

 

まだ恋人などではない関係だったが大きな喪失感

 

 ただ高いレベルの恋愛に夢見ていただけ 愚かにも思えるが その過ちをもって笑い話にされる。真守は彼女とメール交換もしてその日の楽しいことや

 

なにより彼女がときより匂わせる悩みを真摯に聞いていた。

 

力になれていると少しでも思っていた。だがそれは勘違いだった。

 

 真守は立て続けに起こる悲しみ、それを軽く扱うことで和らげようとする

 

人間の軽薄さ、醜さに無力だった。

 

 

 

 彼女の葬式に出る。彼女の遺影に向けて線香をあげて手を合わせて家を出ると彼女の母親が裏庭でタバコをふかして参列者と雑談している。

 

 

 

「・・・なんかねえ・・・放任しすぎたかなって・・・離婚もあって負い目感じてたから怒らないようにしてたけど・・・バカになっちゃった・・あーあ」

 

 

 

 数日後から真守は学校に行かなくなった。街にも 

 

真守は引き籠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくは布団をかぶり、塞ぎこむだけだった。

 

それでも、失意に堕ちてばかりはいられない。現実の人間の暗黒面に耐えられず眼をそらしても、あのお婆さんの言っていたことも片隅に残る。

 

自分の見たかったものはなにか 正したいことはなにか

 

自分の理想の世界を作りたい。それは・・・・・・ゲームだ

 

あのお婆さんの生業も照らし合わせて 

 

あのお婆さんはゲーム屋をしながらいい言葉をかけてくれた。

 

あのお婆さんの境地をなぞって至りたい。そうすれば強くなれるかもしれない

 

 

 

「僕はひきこもりだ 学校が面倒くさい でもただこもっているわけじゃない

 

僕はゲームを作ることにした。家事も日中は僕が進んでやっている。

 

どうせ 今の世界はテレビ、ネット、リアルを見ても嫌な人間が多い・・・

 

と思う。

 

 そんな社会から流れてきて纏わりついてくるよくわからない道を選ぶより

 

これがやりたいと思ったことを見つけた。だから学校を離れることに後悔はなかった。あんな子たち

 

どうせ卒業後それぞれ違う人生のみんなとなんとなく過ごすのは意味がない。

 

これでいいんだ。」

 

 

 

「ゲームのジャンルはRPG いわゆる剣と魔法の世界 とはいえ勇者が道中の敵と戦って最後に魔王を討伐して世界を救うというのはよくある古されえたものだ。僕自身そんなシナリオのゲームを飽きるほどプレイしてきた。僕は新しい展開を望んだ。だからこそやりがいがあるんだ。」

 

 

 

部屋にこもりPCを見つめてキーボードの上を踊る指以外は彫刻のように動かない彼だが、その身の中には己の本分を掴みかけて燃焼し始めた情熱と

 

その目には生きた光がともし始めてきている。

 

薄暗い独房で外界を絶って無為に過ごす生気の抜けた死んだ魚の目で排泄物を製造し続けるだけの肉の器物とはまるで異なるものだ。

 

 

 

「ステージを作るってなかなか進まなくて萎えてくるなあ・・・( -᷄ω-᷅ )

 

そうだ ゲームには特典がつきものだし、最強武器とか

 

だけど攻撃力の高い武器はありふれてる。何より標的がどう崩れるかの表現も作りこまなきゃならない。同じように萎えそうだ。

 

 

 

 それにボクはもう「攻める」とか「傷つける」とかしばらくは嫌だ! 

 

防具がいい。敵を倒しきるよりも自分や味方を守りきるほうが素敵じゃないか

 

何より防御の表現って複雑な表現いらなそうで簡単そうだし

 

手抜き・・・いや手軽でスッキリだ。防御力は9999で

 

 

 

いや・・・ちょっとまてよ?それだと物理的に強いだけでまだ足りない。

 

毒で壁を溶かされたらダメだ。

 

毒 炎 雷 氷 酸 

 

状態異常遮断も・・・て、これだと状態異常の種類ごとに耐える表現をつくらないといけないじゃないか!やっぱり面倒だ

 

 

 

物理や化学攻撃だけじゃない

 

空間ごと豆腐みたいに斬る剣だってあるはず 時間を止められて回り込まれでもしたらいくら硬くてもなんの意味もない!バリアとかはそれで攻略されるだろう バリアは却下だ

 

 

 

それに単純に物凄い速い攻撃で構える前に攻められたら?

 

防具なら盾だけど、盾なら弾き落とすことができるし無敵とは言えない

 

何かいいのは・・・

 

 

 

やっぱり真面目にステージづくりに戻るか この煉瓦の壁は地下ダンジョンに

 

この石造りの壁は街の道路の脇に・・・楽だな ただ敷き詰めればいい

 

当たり判定もないし・・・・・

 

 

 

当たり判定?・・・・・・そうか!思いついたぞ!

 

無敵の防御に難しい御託はいらない!なんもいらないんだ!

 

当たって変化を受けるなんて防御力9999あってもその時点で脆いじゃん

 

閃いた!持ち運びのアイテムにはしなければいけない

 

でも防御力自体に作りこみしない 何もしなければそれ自体はどんな攻撃をあてても壊れない 何も起きない 変化がない 誰にも変えられない

 

当たり判定なんてつけなければいい!

 

それに壁! 

 

盾とかを持つ時点で構えというものが生じる バリアも呪文詠唱とか

 

最強最速の攻撃を持つ相手にはそんな余裕はない

 

壁を出す!ただ出す!構えも詠唱もなく無言で立ってるだけで普段は隠れている壁が出るんだ

 

攻撃を見てからでもまだ遅い ならば相手の攻撃が起こると同時に

 

反射的に自動発動するようプログラムすれば!一瞬に!0秒ってくらいに!

 

当たり判定もゼロ!発動時間もゼロ!

 

できたあ!

 

また手抜き・・・いや画期的な閃きだ!・・・・・・

 

 

 

 

 

一度休息期間にしてもいいよね よっし」

 

 

 

 両手で膝を叩いて万歳で上半身を伸ばし凝り固まった体をほぐす。

 

ここは二階 椅子から立ち上がって部屋の窓へ歩きだして外の景色を眺める。

 

 

 

「ぷはー‼

 

晴れてるなー そういえば何日も散歩もしてないや やることやりまくったし部屋の換気もしたし

 

気分も喚起するか―…ん?(クンクン)…くっさ!風呂も忘れてたからなあ まず朝風呂だ」

 

 

 

善良なる努力のひきこもりと言えども 長期の彫像化による熟成した香りだけは悪性のひきこもりと同質でしかないのだった。

 

 

 

「さてと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

だがシャワー室へと踵を返したその時である。

 

 

 

「え?・・・・・・・」

 

 

 

わが目を疑う

 

窓の外を見返した真守の瞳に

 

 

 

太陽の光を割り込み映ったのは  

 

 

 

大型トラックの前面

 

 

 

なにかの拍子なのか 車体が豪快に飛び上がり、

 

真守の家の二階の自室まで空中に舗装された見えない坂の道路を昇るが如く

 

無情な鉄塊は乗りあがり 真守ごと家屋に突き刺さったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘だろ?・・・・・・・・・・・・

 

これは何?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

カミサマ・・・・・こんなのありかよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

「事故だ!トラックが家の二階につっこんだぞ‼大変だー‼」

 

「きゃああああ‼」

 

「窓に人がいた‼見たもんオレ やばいぞ‼救急車だ‼」

 

 

 

鳴りやまない通行人たちの悲鳴と喧騒がざわめいて 真守の意識でフェードアウトしつつある。

 

 

 

真守の自室の世界は変わった。川岸の岩のように砕けた壁 割れた窓のガラス欠片

 

「これだと」人生をかけた本気の作業をこなすために夜に飲み干されたエナジードリンクの空き缶

 

小さい時からやりこみ、プレイヤーから作り手へと変わるため研究し続けた数々の往年と新作のゲームソフト 

 

 

 

紅い血だまりの海

 

 

 

全てが床に残骸と化して配置されて その世界が終焉を迎えた。

 

 

 

真守の五体はすり潰され 全ての力が抜け 意欲 希望 絶望 悲しみ 後悔 あらゆる感情が蚊風のように抜け 空っぽの骸 亡骸へと 目は消灯して瞼が閉じられた。

 

 

 

 

 

少年の生は終わった。

 

 

 

???「やってくれたねえ・・・真守君・・・かわいそうに・・・

 

    だがただでは終わらせないよ 絶対にこのままで済まさない

 

    そっちがそんなズルするならば・・・こっちもいくよ?

 

    真守君は新しく始まるんだ・・・そして奪われたものを取り戻す

 

    あなたはとうとう戦いに巻き込まれた だからあなたの思い描く

 

    無敵の力を目覚めさせる・・・こちらのとびっきり強いコマとして

 

    

 

 いつもの駅前で待つ老婆が トラックの刺さった真守の自宅の部屋を

 

近所の通路で人混みに紛れて後ろ手を腰に組んで落ち着いて見ていた。    

 

 

 

 

 

現代日本ではない 闇の空間があった。しかしその空間はただ黒く染まらずにおり 黒い色に流れがあった。

 

静かだった。だが激しかった。凄まじい本流 音のない闇の濁流

 

 

 

「僕は・・・・・

 

 

 

 死んだのか・・・・・」

 

 

 

真守の意識はこの空間で かすかに目覚め始めた。

 

 

 

「死んだ・・・・え?ちょっと待てよ?・・・・どうして死んだとわかるんだろう?・・・・・

 

死んだなら考えることもない…言葉も出てこないはず・・・意識すらないんじゃ?・・

 

何もないはずじゃ?・・・もしかしてここはあの世なのか?・・ここは…死後の世界?・・・」

 

 

 

亡くなったはずの意識がまたはじまった時 命を失った時までの多くの想いが強くなり

 

巡りだした。

 

 

 

「・・・・はッ‼・・・そうだ・・・僕は・・・僕にはやることがある・・・やるべくことが・・

 

やりたいことがある!どうして今なんだ? まだ死ねない!僕は作り上げるんだ!僕のゲームを!

 

 

 

引きこもったことか?心のない人たちと向き合う面倒なことを捨てて、

 

みんなのように街や学校に行かなかったから?それが罪なのか?

 

心が蝕まれそうなことを弾いて自分にとって本当に必要なことのために

 

他のいろいろなものを捨てるのは悪いことなのか?

 

 

 

 

 

闇の流れがその世界に横たわって浮かんだ少年の意識のオーラだけの体を彼方へ運んでいく。

 

 

 

「いや 違うだろそんなの

 

納得できないよそんなの!嫌なんだ! いや・・・嫌よりも「ダメ」なんだ!

 

ここで僕が消えるのは!・・・・ボクだって強くなって誰かを救ってみたい!

 

世界をよくしたい!

 

絶対にダメなんだ! ボクは死にたくない!・・・僕は蘇りたい!・・・僕はまだ・・・

 

 

 

         「ボクは・・・生きる!!」

 

 

 

 

 

 

 

暗黒の空間の闇の海流はそれぞれが別方向にのたうつように向こうに進んでいた。

 

だが大きく開いていた各々の角度と幅が 徐々に狭まり始めた。

 

まるで真守の強い心の叫びに応えたかのように 

 

その流れは一つの点に向かう様に狭まり やがてすべての流れが合流した。

 

 

 

(ピカッ)

 

 

 

 突然闇の流れが結んだ一点からかすかな小さな光が、そしてまばゆい閃光が生まれ、ビッグバンのように大きく育って無明の闇を塗りつぶして光の軌跡が急速に展開する。

 

 

 

「!?うわあ!」

 

 真守はまぶしさに瞼を閉じ右手で顔をとっさに覆う。

 

やがて光は空間の全てを覆いつくし 黒い流れは消え去った。先ほどまでとは真逆の輝かしい白金の新世界が誕生した。

 

 

 

 閉じた目を光に潰されぬよう恐る恐る見開いた。

 

 

 

「あの日、あなたには何も起きないはずでした。心を晴らし、また電子の箱の前に座して挑み続ける日々を送るはずだった。しかし、あなたの存在を障害ととらえた悪意ある者の手により命を落としたのです。」

 

 

 

「え? あのトラックの運転手が僕を憎んでいたということ?

 

それとも運転手も弱みか何かを握られてやらされていた?

 

僕は運送業界に怨まれるようなことなんてしてないぞ?

 

それに一階ならともかくどうやって二階まで乗り上げたんだ?」

 

 

 

「いいえ、あなたの世界に生きる者が物理的な細工により行ったはかりごとではありません」

 

 

 

「・・・どういうことですか?・・・物理的じゃないって・・・」

 

 

 

「それは運命・・・因果の操作によるもの あなたの・・・というよりは

 

あの乗り物の運転手の運命を捻じ曲げることで あなたを間接的に葬った。

 

あの人こそ悪意ある者の最大の被害者であるでしょう。」

 

空間に水面に映る鏡像のような光景が映った。

 

作業服の男性 事務室から出発の報告をして トラックを走らせ

 

彼の視点になり 玄関のドアを開けると玄関に彼の妻 遅れて廊下の向こうから幼い息子と娘が走り寄ってきた。

 

抱えあげられた息子の笑顔が大きく拡大された。

 

そして

 

映ったのは真守の家の近所の通行路

 

いつもの安全運転第一の運転 目的地へ荷物を届けて事務所へと戻り

 

家族の待つ家へ帰るはずだった。だが

 

トラックの前に道路に沼の様な円が現れそこからローブを纏う 幽鬼、死神のような何者かがゆるやかに 不気味に這いだして進路上に立ちふさがったのだ。

 

 

 

「・・・・え!なんだこいつは?止まって!やばいぞ!止まるんだ!」

 

過去の映像でも思わず脅威が迫る運転手を案じてしまった。

 

 

 

 だが運転手にはその存在が全く見えていなかった。

 

そのまま眼前の何もないはずの方向にトラックが走る。

 

 

 

トラックがその者の近距離に迫った時 その者が脇に添えていた左手の掌を上にして持ち上げて掲げると トラックの前輪の裏側の地面から突きあがってきた。どす黒い泥で形作られた指 手首 肘までの巨大な腕 巨人の腕の様な

 

腕が5mほどの高さまで真上に伸び 

 

10tほどはある大型トラックは空へ突き上げられてしまった。

 

 

 

「・・・なんだ・・・これ?・・・・」

 

 

 

 真守の家の二階の窓に衝突したあの時の別の視点の一連の詳細を真守は茫然と見ていた。あまりに非現実的で超常的な現象に 

 

ありえない あってはならない凄まじい悲劇に

 

 

 

「逃げろおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「逃げるんだああああ!!」 

 

 

 

 実はあの時気づいていなかった。トラックが空を飛んで二階に突っ込むなど

 

その事実を脳が受け入れがたく思考も動きも止められていた。

 

 

 

だが家屋へ衝突すると悟ったとき、その部屋のなかに少年がいるのに気づいた運転手は何度もクラクションを鳴らしていた。

 

そして叫んでいた。せめて少年に逃げることを伝えて 突然の災いでも

 

間に合わなくとも この一瞬で最後まで 運転手自身から惨事に巻き込まれる少年の無事へと願いが移って

 

 

 

 

 

 真守は表情を悲しみに曇らせた。

 

死後に最初に思ったのは自分の理不尽な死による無念の怨嗟ばかりだったがその後に死を運んだトラックの運転手への怒りを思い出そうとしていた寸前。しかし知った。あの運転手も決して不注意を欠いていたわけでもましてや悪意をもっていたわけでもなかった。真っ当に社会に貢献して家族とともにただ幸せで日々を生きていただけだった。

 

死においやってしまう少年を最後まで藁をもつかむ思いで案じていたことも

 

 

 

「あのう!! あのトラックの人はどうなったんですか!?まさか

 

あの人も・・・・亡くなって?・・・・」

 

 

 

「あの方は無事です。法による調べを受けることになりましたが

 

あの様な不可解なできごと あなたの世界の知見ではあの方が悪意で起こした出来事だとは判断することはできないでしょう?彼が咎めにより大きなものを失わされることはありませんでした・」

 

 

 

「よかった!!・・・・」

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

「本当に・・・・よかった・・・・」

 

 

 

話を遮って出た言葉 真守は安堵していた。強く 

 

運転手のせいではなかったこと。

 

運転手の命が助かったこと

 

取り返しのつかないことをさせらた罰を受けなかったこと。

 

善良な人として失ったものが何もないことに 自分が死なせられたことを一度

 

脇に置いて忘れるほど やるせない心の痛みの多くが消えていた。

 

 

 

「しかし・・・」

 

 

 

鏡面の場面が映し変わった。あの運転手の家の中が映された。

 

運転手は居間のソファーに腰掛け 後頭部に両手を当ててうつむいている。

 

その体が震えている。

 

妻と子供たちは彼の体に寄り添っている。

 

 

 

「・・・・この人は・・・」

 

 

 

「彼は打ちひしがれています。彼が起こしたことではありません。法は彼をさばきませんでした。けれど奪われた命は戻ることはないと 法ではない彼自身の罪として受け取った。その重すぎる業を背負って生きていくことが 果たしてできるのかと」

 

次に映し出されたのは 真守の両親だった。真守の遺影を見て

 

父はふさぎ込み 母は激しく泣いている。

 

運転手もその場に来ていた。二人に向けて両手を床につけ頭を深くさげて

 

謝罪している。激しく何度も 頭を床に打ち付けて叫びつづけていた。

 

後悔と自責の念を 償いきることが到底できないと 言葉をなんど放っても

 

 

 

場面が変わった。インターネットの掲示板 SNSに投稿された文章

 

その多くは 運転手へ向けた批難 それどころか運転手への辛辣な中傷も

 

 

 

「・・・止めろよ・・・・その人は何も悪くない!・・・その人のせいじゃないのに・・・僕を殺したのはその人じゃない!・・・あいつのせいだ!

 

僕を殺したのはあの訳の分からない奴なんだ!・・・なぜなんだ?・・・なんでこんなことに・・・あの化け物はなんで・・・僕が邪魔だって?

 

なぜ僕を自分で消しに来ないんだ?なぜ他の人を巻きこむ必要があるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの一瞬で僕は・・・・壁があればいいと思った。家の壁じゃなくて

 

強くてバリアーみたいな壁が一瞬で現れたら僕もあのトラックの人も守れたんじゃないかって もしあの化け物みたいな奴と出会ったら 

 

戦いというものになったら 誰かと喧嘩して勝とうと思ったことなんてないけど もし戦うなら初めから攻撃するより まず自分や味方の人に攻撃が当たらないように攻撃に反応して一瞬で出てきて 一枚だけじゃなくたくさん呼び出せて 疲れていても 眠って無防備な時でも勝手に表れて エネルギーやコストとか関係なく何度でも使える 

 

それに あの運転手だって悪くなかった。だれかにやらされて仕方なく

 

何かされたとしてもその相手が敵かは限らない そうだ あの化け物みたいなのだって もっとやばい上の奴らに脅されて命令されたのかもしれない

 

だからまずは自分の攻撃力がやばいとかじゃなくて相手の攻撃を完全にとめて それから事情を聴きたい。対話して確かめたい。

 

もし敵じゃないかもしれない相手を倒してしまったら 何かがこじれていくかもしれないし ていうか僕が誰かを殺してしまうとか できれば考えたくないっていうか 仲間になれたかもしれない誰かを敵にまわさないチャンス

 

そういうのはないよりあったほうがいい思うから」

 

 

 

「あなたを再び世界に送り出します。ただしそれは元の世界ではなく別の世界

 

で あなたはあなた自身の人生も取り戻し そしてあの運転手の人生も戻したいと思った。そのためには災いを企てた黒幕にたどり着き 邪悪を終わらせなければなりません。」

 

 

 

「別の世界?で」

 

 

 

「では 新たな命を受けとってください。あなたの進む道に光があり続けることを」

 

 

 

光球がさらに強く光を放った。初めに闇で、次は真っ白い光で空間から視界がなくなった。つぎに音までもが出た。地響きのような轟音で空間そのものが激しく揺れ動いた。

 

 

 

「!?わあ!」

 

 

 

 

 

 真守は二度目の意識の途切れを経験した。

 

 

 

《/b》

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