「……相も変わらず治安が悪い」
先程襲って来た10組目の不良たちを地面に放り投げながらそう呟く。
今日来ていたのはゲヘナ学園。トリニティとはかなり仲の悪い学園で、トリニティとは真逆と言っていい自由と混沌を校風とし、破天荒、型破り、粗暴な生徒が多くキヴォトスの銃社会と合わさって大変治安が悪い。まあ、仲が悪いのは最近では同族嫌悪だと思い始めたけど。暴力の方向性が陰湿かそうでないかの違いしかない。
でそんなゲヘナになんで来たかと言えば温泉だ。ゲヘナの自治区にはヒノム火山がありその影響で温泉が湧いており温泉関連の施設が多い。それに温泉開発部という部活もあるらしい、ただ温泉がありそうな場所ならところ構わず許可も取らず爆弾で掘るらしいのでテロリスト認定されている。僕に実害が無ければそれで良いから気にしないけどね。
レッドウィンターの自治区にも温泉があるらしいけどゲヘナよりは遠いから今日は近場のゲヘナの温泉に来たわけだ。でもレッドウィンターは雪景色が綺麗だからそっちの方が行く頻度は高いんだよね。最近はバイクに乗るのが楽しいからあれだけど移動に関しては飛んでしまえば距離はあまり関係ないしね。
「いらっしゃい、毎度どうもね」
いつもの定位置にいる猫の店主に料金を支払って女湯に向かう。このキヴォトスでは殆ど生徒、つまりは女子で人口は構成されているからてっきり男子湯とか無いと思ってたけどあるんだよね、動物型の住人やロボット達が入るらしい。動物型の住人はわかるがロボットは錆びたりショートたりしないのだろうか?
しっかりと頭と体を洗って外に出て早速露天風呂に浸かる。
「ふぅ〜やっぱりいい湯」
やっぱり温泉は日本人の魂だ。
「で?そこに隠れているのは誰?」
「……き、気付いていたのか」
僕が来ると同時に隠れた気配、邪なものは感じなかったがずっと隠れられているのも気に食わない。
出てきたのは二本の角としっぽが生えた少女、特徴的にはゲヘナの生徒か。いや、見た事あるな。指名手配されてたな。
「温泉開発部部長、鬼怒川カスミ」
「しかも知られていた……」
ふむ、初対面のはずなのだが怯えられているな。
「君と僕は初対面だがそんなに怯えてどうしたんだい?」
「……ははっ、そりゃあ怯えもするだろう。トリニティの処刑人に出会ったんだからね」
処刑人……ああ、最近なんかそう呼ばれ始めたね。あんまり否定できる要素が無いんだよね。トリニティではイジメしてる奴を停学にしたりキヴォトス全域では不良生徒をヴァルキューレに突き出したり、やってる事はそっち側なんだよね。昔もそんな渾名もつけられてたしなんか運命的なものをかんじるよね。
「捕まってヴァルキューレか風紀委員会に突き出されないかヒヤヒヤしてるよ」
「別に捕まえはしない」
「へ?」
「別に積極的に捕まえてる訳じゃないし、気に入らない奴を潰してたらそうなっただけだ。実害が無ければ良い」
「なるほど……君はどちらかと言うとこちら側じゃないかい?」
「まあ、トリニティはあまり好きじゃないな」
実際入る学園は何処でも良かったわけだし。見た目が似てる子が多いトリニティに何となくしただけだからね。
「なるほどなるほど、どうやら温泉も好きなようだしどうだい?温泉開発部に──」
「断る」
「おおう、即切りだな」
「やる事があるから。それに温泉に入るのは好きだが開発はしなくていい」
「そうか……。まあ、入りたくなったら言いたまえ!」
「入りたくなったらね」
まあ、おそらく無いだろうけど。
「ところでこの温泉はどうだい?」
「良いところだね」
「そうだろうそうだろう!なんたって私が一番最初に掘り当てた温泉だ!」
「へぇ」
この温泉はお気に入りで何回も入りに来ているんだがこの子が掘り当てたのか、この子が何か僕に対してやらかしても一回は見逃してあげようか。
「いやぁ、最初だから手探りな部分も多くてな。かなりの量の爆薬で吹き飛ばして自分も吹き飛んだのはいい思い出だ。ハッハッハツ」
前から思っていたがキヴォトスの住人はネジが何本か飛んでる子が多いね。
それからしばらくカスミとの会話を楽しみつつ温泉を堪能して温泉から上がる。
「いつもの」
「あいよ」
温泉から上がったら店主にお金を払ってコーヒー牛乳を頼む。前世から温泉の後はコーヒー牛乳を飲んでいる。何故が普段飲む時よりも美味しく感じるんだよね。
「店主!私にはフルーツ牛乳を頼む!」
「あいよ」
カスミの方はフルーツ牛乳を頼んだようだ。
二人で揃って喉を鳴らしながら勢いよく飲んでいく。
「ぷはぁ、うん、美味しい」
「ぶはっ、やはり温泉上がりはこれだな!」
そして二人揃って銭湯を後にし別れる。
「また温泉ででも会おうじゃないか!」
「そうね、なにもなければね」
「おおぅ、怖い事を言わないでくれ」
少しカスミを脅かしながらトリニティに帰る。
「さて、帰ったら古書館で情報を集めるか」