時間も経って自慢のトライクを走らせて自宅へと帰り、急ぎ収納棚が一体になったテレビ台から何冊かの図鑑本を手に取って、パラパラと捲って該当する姿や解説文があるかを虱潰しに探していく。とはいえ虱潰しに探しているせいで、肝心の正体を掴むのに労力を要するのは考えものだ。
人が木に変わる事態の方は、時間が経つごとに被害者を増やしていってる。木のほうではなく元凶である四足歩行の1つ目にフォーカスを当てて探しているが、こういう時ほど物知りな奴が欲しいなぁ。無い物ねだりしても仕方ないんだけどな!
とはいえ1つ目で、人型では無い妖怪ともなれば絞込みはマシになる。基本的に1つ目の妖怪というのは何かしらの形で片目の機能を喪った人間が大元になっている場合が多い。ただあの妖怪は四足歩行という点から察するに、人ではなく獣から想起された妖怪と見て間違いない。
だとすると1つ目で、獣のような姿から想起される妖怪となると数は絞られてくる。化けるタイプでは無いのは確実として……あーもう情報が少ない! このままだと埒が明かない! こっちの式神には正体を看破するタイプは居ないし。居たとしても“はい”か“いいえ”で答えられる質問じゃないと駄目だし、見るからに受け答え出来なさそうな妖怪だし。
「だークソっ、飯食ってねぇのにこんな面倒な事させんなっての!」
っと、愚痴が漏れた。でもこれぐらいは許してほしい、名前を知らない妖怪について姿形だけで探しているのだから、その非効率さに対する愚痴が溢れても仕方ないじゃないか。
「やーっぱし、1度現場に行くしか無いか? こっちの索敵担当も、ここからじゃ射程外だし……はぁ、行くしかってヤツかこりゃ」
気怠げに言いながら外出準備を済ませて、家のドアに鍵をかけたら愛車のトライクを使って渋谷へと駆けていく。何の対策も立てられないまま出かけるなんて正気の沙汰では無いが、兎にも角にも動くのなら動いて突破口を見つけないと。
渋谷区に到着して、件のあの木のあるスクランブル交差点から少し離れた場所に停車。あの妖怪が居るか探し回ってみるが、それらしき姿は見当たらない。だがここからなら式神を使って探し回れる。
力を集中させ、自分の
「来い、【バグズ・サーチャー】」
その呼びかけに応えるように、自分の体の内側から服の袖口や手のひらから100匹ほどのスズメバチが出てきた。相変わらず見た目の絵面的にはヤバいんだが、自分から半径1kmの範囲を索敵可能な上、多少の攻撃的行動も出来るようにするにはスズメバチの方が都合が良かったのだ。
それはそれとして、現れた式神へ命令を出して行動させる。1つ目で獣みたく四足歩行をする妖怪を探し出して伝えてくれと命令を出し、100匹のスズメバチ型の式神は渋谷の町に広がった。あとは報告を待つだけだが、その間にニュースを確認して──。
「ッ━━!?」
祓われた!? さっきので10匹消えて、いやまだストックは9990あるし増やせもするが、一体誰が。とにかく式神に命令を出して式神が消えた場所に何が居るのか探って……異音!
「っとぉ!?」
異変を感じて咄嗟にトライクから降りた途端、座席シートに矢が刺さった。おいこら弁償代! ってそうじゃなくて、まさか式神を祓った奴か? だとしても狙った理由は……まさか探られることを拒んでる? 誰が? 一体なんのために?
相手の姿も見えない、かなり遠くから撃ってきたかそれとも不可視の術か。このまま探りを入れてたら、延々と妨害されるのが目に見えてる。意地でも邪魔されたくないってか?
「上等だ、クソッタレ。それならこっちにだって考えがあらぁ」
まずは路地裏に入って、そっからバグズ・サーチャーをもう一度召喚。今度は地表スレスレで、出来る限り人の間を縫うように移動するように命令を出して、妖怪を探し出す。意地でも探し出してやるからな!
感想、評価よろしくお願いします。