ゆっくり楽しんでください!
「ミソラちゃん、痛くはありませんか?」
「うん、大丈夫だよヒフミちゃん」
「相変わらず無茶するよね、ミソラさん」
現在私はヒフミちゃんから簡単な治療を受けていた。
不良との戦いの後、逃げ出した不良は待機していたヴァルキューレの人達に捕まりそのまま連れて行かれた。
その後、気を取り直してみんなで祭りを楽しもうとしたところ、ヒフミちゃんに「先にミソラちゃんの治療が先です!!!」と少し慌てた様子で制止されてしまった。
どうやら撃たれたときの衝撃でいくつかの弾は自分に傷を与えていたようだ。
正直この程度ならたまにあることだし、直ぐに治るから気にしないことがほとんどだけど、ヒフミちゃんがそれでもと言うので治療を受けることになった。
やっぱりヒフミちゃんは優しい。
「はい、これで大丈夫です!」
ぺたり、と傷口にペロロ様の絆創膏が貼り付けられる。
身体の所々にペロロ様の絆創膏が貼り付けられた私の姿はまさにペロロ様に包まれていると言ってもいいんじゃないかな。
いや、包んでいるのはヒフミちゃんの優しさなのかもしれない。
ヒフミちゃんに治療されたのは初めてのことではないけど、毎回のように治療に使う道具のほとんどがモモフレンズで構成されている。
一体いくつ持っているのだろう?
ちなみに治療に関してはユヅキちゃんのほうが多少知識も持っていて上手だったりもするのだが、ヒフミちゃんのやってあげたいという意思を尊重してくれたみたいで、ヒフミちゃんの手持ちで足りない治療道具を貸してあげる程度に留めている。
実際ヒフミちゃんがしてくれるのは嬉しいし、ヒフミちゃんも上手だから私にとっては何の問題もなかった。
「さて、治療も終わったことだし、祭りに戻ろう……って思ったけど、時間的に花火の準備が始まる頃だね。僕達も場所を確保しにいこうか」
「さんせぇ〜い♪」
スマホを見ながらそう提案するユヅキちゃんにエイリちゃんが元気に答える。
私とヒフミちゃんも目を合わせると頷き合う。
「ん? なんだろう?」
花火を見るための場所を確保しようと移動していると、浜辺を囲むように人だかりが出来ていた。
みんな困った顔をしている。
恐らく私達と同じ花火を見るための場所を確保しようとしてる人達かな。
一体なにがあったんだろう?
「我らは海護戦線! 只今よりこの海を封鎖する!」
「何言ってやがる! ふざけんな!」
「そうだそうだ! 花火の邪魔してんじゃねぇ!!」
近づいてみると海護戦線と名乗る集団が海を封鎖していた。
当然花火を見に来た人達からは非難の声が上がっている。
「うるせぇ! お前らにこのまま行かせたら海を汚すだけ汚してそのまま帰るつもりだろう!? そんなこと許されるか!!」
……うん、それについては間違ったことは言ってないから何も言えないかも。
実際海で遊んだあとに片付けない人とかポイ捨てする人とかもいるから、たまに依頼として海の掃除に行くこともあるし。
それにしてもやってることが過激じゃないかなと思う。
それよりも、海護戦線って団体に聞き覚えがない。
彼らが掲げてる旗に『海護』って書いてあるから文字の通りに考えるなら海を護るために活動してるのだろうか?
それにしては白側(こっち側)でそんな名前で活動してる団体の話に覚えがない。
そういう活動してるなら浜辺の掃除とか、そういう依頼の中で名前の一つや二つ出てもおかしくないと思うのだけど。
「ユヅキちゃん、海護戦線って聞き覚えある?」
「あぁ、彼らは確か海を護るっていう名目で無断で海を独占しようとしたり、海に眠る宝を探してる団体……だった気がする。昔に子供たちを浜辺から追い出して封鎖してたのを何人かヴァルキューレ送りにした記憶がある」
なるほど、黒側(あっち側)の人達だった。
まぁ、こんなことしてる人達が白なはずもないか。
「あぁ!! 自警部のみなさん!!」
封鎖された浜辺の前で困り果てたようにしていた役員の人がこちらに気づいたのか慌てた様子で向かってくる。
「助けてください! 海護団体と名乗るやつらが浜辺を封鎖してしまって……これでは今日一番の大イベントが……」
ユヅキちゃん、エイリちゃんとそれぞれ目を合わせて頷き合う。
「うん、任せて」
「私もお手伝いします、ミソラちゃん」
「ありがとう、ヒフミちゃん」
手伝ってくれるというヒフミちゃんにも目を向けて頷く。
そして、私達は海護戦線の方に向かって歩みを進める。
「なんだ、貴様らは」
「トリニティ、特別自警部。無断で海を封鎖するのは止めて」
「無断ではない。自分のものを護ろうとして何が悪い?」
海護団体のリーダーらしき人物は首を振ってそう答えた。
「海はみんなのもの、貴方達のものじゃない」
「違う、我々のものだ」
駄目だ、話に聞く耳を持ってない。
こうなればやることは一つ。
「力ずくでも取り返す」
「小娘が、我々に歯向かうか」
この一言を引き金に銃撃戦が開始される。
こうなることを予見して周りの人達はユヅキちゃんが避難させてある。なので周りの被害とかは考えなくていい。
私も銃撃戦の中に飛び込んでいった。
複数の海護戦線の団員が銃を向けて発砲してくる。それに対し私は先制で愛銃からの弾丸を撃ち込みながら近くの木に身を隠す。
2人くらいの悲鳴が聞こえたから、何発かは当たったみたいだ。
このまま敵中に突撃していきたいところだけど、浴衣姿だからちょっと動きづらい。この姿だといつもみたいに動き回るのは難しい。それなら、動きづらいなりの戦いをするほうがいいだろう。
エイリちゃんにはライフル、ユヅキちゃんには盾、あの二人に関しては元々動かなくてもいい戦闘スタイルだからきっと問題ない。
私にできる戦い方と言えば……
「ミソラちゃん、私がミソラちゃんをサポートします」
「ヒフミちゃん……うん、お願い」
リロードして攻撃の準備を終わらせればヒフミちゃんに目を向ける。
「ヒフミちゃん、合図を出すからあれをお願い」
「わかりました!」
ヒフミちゃんは頷くとペロロ様バッグの中から円盤を取り出す。
今この瞬間も敵の銃声は続いているが、徐々にその数も減っている。きっと、隠れ続けてる私達に距離を詰めるか、出てきたときにいつでも弾を撃ち込めるように様子を見るかしようとしてるんだろう。
流石に、隠れ続けてる敵相手に無駄な弾を撃ち続けられるほど弾も無限にある訳じゃないはず。
さっき海護戦線の人と話してたときにちょっとだけ相手の持ってる武器を見たけど、私が隠れてる木ごと破壊できるような高火力の武器を持ってる人はいなかった。
そうなれば出来ることは距離を詰めて直接攻撃するか、出てくるのを待って出てきたところを一斉に叩くかくらいだろう。
だから、狙うなら銃撃が止まったその瞬間。
3……
銃声はまだ止まない。
2……
リーダーらしき人物が大きな声で何かを命令してる声が聞こえた。それに合わせて次々と銃声が止んでいく。
1……
最後の銃声が止まった。少しだけど足音も聞こえてくる。距離を詰めて取り囲むつもりかな。
……やるなら、今
私はヒフミちゃんに向けて右手を上げて合図を出した。
ヒフミちゃんは合図を確認すると、こくりと頷き、円盤を敵のど真ん中目掛けて投擲した。
円盤が地面へ到達すると、円盤を中心にペロロ様が出現する。
「「「!?!?」」」
突然出現したペロロ様に敵の視線が集中する。反射的に発砲した敵の弾丸はペロロ様のホログラムをすり抜け、別の敵へと命中した。
その隙を突くように私も木の陰から顔を出してペロロ様に気を取られている敵への攻撃を開始する。
一人、二人と次々に撃ち倒していく。ヒフミちゃんも少し遅れて攻撃を開始、同じように敵を倒していく。
そして、ペロロ様のデコイが機能しなくなる頃には、リーダーらしき人物たった一人しか残っていなかった。ユヅキちゃんもエイリちゃんも上手くやってくれてるみたい。
「くっ、覚えてなさい!!」
リーダーらしき人物はそんな言葉を吐き捨てて逃げていった。ヴァルキューレの応援は呼んであるし、無理に追う必要もないだろう。ここの片付けもしなきゃいけないしね。
「お疲れ様、ミソラさん、ヒフミさん」
「ナイスコンビネーションだったよぉ〜♪」
「えへへ、ありがとうございます」
「うん、ありがとう」
エイリちゃんとユヅキちゃんが帰ってきた。二人とも怪我はないみたいでよかった。
「あとはヴァルキューレの応援が到着するのを待つだけだね。既に花火師の準備と、鎖とか封鎖使われてた道具の撤去は始めてるよ。準備が遅れてるから、花火が上がるのは予定より少し遅れそうだけど、問題なく始められそうだよ」
「うん、わかった」
花火は無事にヒフミちゃん達と見られるんだ。よかった。
「それから、逃げたリーダーのことだけど、ルーちゃんが追跡して位置情報をヴァルキューレに共有してるから、近い内に捕まえられると思う」
流石ルーちゃん、ハクアちゃん自慢の相棒だ。そう思いながら空を見上げると、月の輝きに照らされるように空を羽ばたくルーちゃんの姿が。
どうして? どうして、敵のリーダーを追跡してるはずのルーちゃんがそこに……『私達の上』を飛んでいるの?
……まさか
ゴゴゴゴゴゴッ!!!
「っ!?」
「ふぇ!?」
「きゃっ!?」
その瞬間、大きな音を鳴らしながら地面が揺らぐ。唐突の揺れに辺りからざわめきの声が聞こえてくる。
暫くすると揺れは止み、間もなく――ザバァァ!! っと大きな水飛沫を上げながら海の中から巨大な何かが飛び出してきた。
「あれは……」
海から飛び出してきたそれは赤く、丸みを帯びたイカのような姿をしている。その巨体は、10本もの足を巧みに使い浜辺まで上がってくる。
「わぁ〜♪ でっかいたこさんだ〜♪」
「えっ、イカじゃないの?」
タコなのかイカなのか、イカっぽい気がする。機械音を鳴らしながら、イカっぽい何かの頭部が割れ、中から人が出てくる。
あれは、さっきの逃げたリーダーだ。
「くっくっく、これが我らの最終兵器だ!! 我々に歯向かったこと、後悔するがいい!!!」
そう言うと敵のリーダーはイカのような何かの中に入り、そのままイカのような何かはその大きな足を叩きつけるように振り下ろしてくる。
「くっ……!」
ユヅキちゃんが振り下ろされた足を盾で防ぐが、そこに追い打ちをかけるようにもう一本の足を上げる。
「させないよぉ〜!」
上げられた足が振り下ろされんと動きを見せた瞬間――バァン!! エイリちゃんがカバーするようにライフルで足を弾き飛ばす。
「どうしましょう……このままじゃ……」
「うん、色んなところに被害が出るね」
というより、海を護るっていいながら自分達が一番荒らしてるじゃん。
「やっぱり、ここで倒すしかないね」
「うんうん、やっちゃお〜♪」
私達はイカのような何かを見ながら銃を構える。
「っ!!」
「ここだねぇ〜!」
薙ぎ払うように迫りくるイカのような何かの足をユヅキちゃんが盾で防ぎ、すかさずエイリちゃんが足の付け根にライフルの弾を撃ち込み、繋ぎ部分を破壊した。
「えいっ!」
―――ダダダダッ!! とイカのような何かの動きが止まった隙を突き、私も距離を詰めて銃弾を撃ち込んだが、硬い装甲に銃弾は通らず、少し傷がつくだけだった。
「硬いね、このイカさん……っ!!」
「ミソラちゃん!」
反撃とばかりに振り下ろされる足をなんとか避けるも、強い風圧に私の身体はいとも簡単に吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられないようになんとか受け身を取り、着物に付着した砂を払う。この着物あんまり汚したくなかったのに。
「お姉ちゃんどうする〜?」
「どうしようか、火力が圧倒的に足りてないね」
確かに、攻撃自体はユヅキちゃんの盾でなんとか防げているけど、攻撃力が足りてない。
「うん、あれを使おう」
「あれの出番だね〜♪」
あれ? あれって何だろう?
「ミソラさん、ヒフミさん、ちょっと時間稼げる?」
「うん、任せて」
「え? あ、が、頑張ってみます!」
よくわからないけど、ユヅキちゃんの言うことを信じよう。そう考えて銃を再び構える。
「ペロロ様!」
ヒフミちゃんの投げたペロロ様爆弾が薙ぎ払おうとする足を弾き飛ばす。
『くっ、貴様ら!! しぶといぞ!!』
「それはこっちの台詞」
ダァン!!―――とイカのような何かから聞こえてくる声に反発するように神秘を込めた銃弾を撃ち込み、別の足を弾き飛ばす。
どうやら、神秘を込めた銃弾なら弾くだけでも出来るみたい。これなら、問題なく時間を稼げそう。
薙ぎ払い、振り下ろされ、叩きつけられる足をなんとか捌きながらしばらく時間を稼いでいると―――
―――ドォォォン!!! と、大きな砲撃音と共にイカのような何かの足が2本吹き飛ばされる。
「あれは……!!」
「めるかば君だ」
砲弾が飛んできた方向を見ると、『めるかば君』に乗ったエイリちゃんがこちらに手を振っている。中にユヅキちゃんがいるのかな。
ともあれ、めるかば君がいれば火力面も解決できそう。
「メルカバ砲、はっしゃー!」
再びめるかば君から砲弾が発射されるが、イカのような何かは足をクロスさせるようにして砲弾を防いだ。
うーん、あの足をなんとかしないと本命は叩けなさそう。
「ヒフミちゃん、手伝ってくれる?」
「はい、任せてください、ミソラちゃん」
「エイリちゃん――」
小さな声でエイリちゃんに話しかけて作戦を伝える。
エイリちゃんは耳がいいから、この距離でこれくらいの小さな声でも聞こえる。その証拠に、私の伝えた作戦を理解したのか元気よく頷いた。
「じゃあ、行くよ、ヒフミちゃん」
「はい、私も準備は出来てます!」
右手を上げて、エイリちゃんに合図を出す。エイリちゃんが再びユヅキちゃんに合図を出し、メルカバ砲が発射される。
『何度も同じ手が効くものか!! 弾き返してくれる!!!』
イカのような何かは砲弾を弾き返そうと先ほどと同じように2本の足をクロスさせようと動かす。
このタイミングだ!
「いくよ」
「はい!」
ヒフミちゃんはペロロ様爆弾で、私は神秘を込めた弾丸でクロスしようとする足をそれぞれ弾いた。
「お姉ちゃん行くよ〜! て〜!」
「てー!」
『ぐっ……!!!』
頭部にクリーンヒットしたその砲弾は巨大な機体を大きく揺らした。
『こ、の、小娘が!!!!』
今の攻撃はかなり効いたのか、怒り狂ったようにめるかば君目掛けてその巨体を飛び上がらせる。エイリちゃんはそれを予測していたのか既にライフルを構え、そのまま――
――ダァン!! エイリちゃんの愛銃から放たれた神秘の籠もった2発の銃弾は空中にいるイカのような何かに命中し、その反動で巨大な機体は空中で一瞬動きを止める。
「これで、終わりだよ〜!」
「メルカバ砲……」
「「発射!!!」」
すかさず空中で止まった巨大な機体に狙いを定めた砲塔から砲弾が放たれる。
『ぐっ……! おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
めるかば君から放たれた一撃は、空中で踏ん張りの効かなくなったその巨大な機体を攫うかのように簡単に空高くまで吹き飛ばし――
――ドォォォォン!!!!!
大きな爆発音と共にその巨大な機体を空に散らした。
「た〜まや〜♪」
「うーん、汚い花火だね」
「ふぅ……なんとかなりました……」
「ヒフミちゃんも、エイリちゃんも、ユヅキちゃんも、みんなが居たから勝てた」
「うん、誰か一人でも欠けたら倒すのは難しかったね」
私の言葉にこくりと、ユヅキちゃんが頷く。その後、それぞれに目を向け合わせるとみんなから微笑みが返ってくる。
その場に、笑顔の華が咲いた。
―――ヒュー……
ドォォォン!!!
間もなく、月が照らす夜空に大きな音を響かせながら一輪の輝かしい華が開花した。
そこから、いくつもの花火が夜空を照らしていく。
「わぁ……! きれいですね!」
「うん、綺麗」
暗い夜を照らす華は、私達までもを輝かせてくれるよう。
「よし、ここは私に任せて〜♪」
ふと、エイリちゃんがそんなことを言ってめるかば君の中に入っていった。
私とヒフミちゃんがきょとり、と首を傾げていると、エイリちゃんが持ち運び式のピアノを持って出てきた。
「思い出に残る祭りにしないとね〜♪」
そう言いながらエイリちゃんはピアノを演奏する準備をする。準備が終わると椅子に座り、白鍵部分に手を添える。
そして、優しい手つきで華麗な音を奏でていく。
その演奏は会場全体に響き渡り、花火の音が、色とりどりの輝きが演奏を更に魅力的に彩っている。
空に咲く花火に、響き渡る美しい音色に、この夢のような時間に、会場にいる全ての人々の心が奪われていた。
花火とエイリちゃんの演奏が巧妙にマッチした誰の思い出にも残るその曲名は―――
青春っていいよね(いいよね)
ヒフミちゃんの持ち物はほぼペロロ様に囲まれてると思ってます。
最後らへんの流れは個人的に好きだな〜って思うんですけどみんなはどう感じてくれますかね
これから少しずつでも投稿ペース上げられたらと思います。
感想とか評価とかくれたらモチベ上がるかもしれません