雲一つない晴天の空、風とともに流れてくる自然の音、夏も終わり涼しくなってきた季節、今日は散歩するには絶好の日。だから、私は今この心地の良い自然を感じながら何も考えずに歩いている。
こうやって散歩をしていると、たまに思いも寄らない発見や出会いがあるときがある。
例えば、いつの間にか新しいお店が出来上がっていたり。
例えば、困ってる人を助けて、それがきっかけで新しい人と仲良くなれたり。
例えば―――
「あ、ハクアちゃん」
「お、ミソラちゃんだ〜♪ やっほー!」
大切な友達と何気もない平凡な一時を過ごせたり。
「ルーちゃんもハクアちゃんも元気そうでよかった」
「あはは♪ ここ一ヶ月くらいは顔合わせてなかったもんね?」
特別自警部はその特異性よりこういうことはたまにある。
部活動という扱いではあるが、元々が自分の信じる正義の為に何かに縛られることなく個別に活動していた自警団、ここはその集まりでありそれは今でも変わらない。
統率が取られておらず、それぞれが自分の意志で自由に活動しているのが正義実現委員会との違い。そのかわりに、指揮系統が凍結しても動くことができる。それがこの部活が作られた目的であり、実はグループで活動することはそこまで求められていないのだ。
実際のところは私が色んな部活のお手伝いしてるところ、それを支援してくれるって話でできた部活だけど、私以外の人間には前者の理由で伝えられてるし、本当にそういう理由も含まれているのかもしれない。
とにかく、この部活は誰の指示もなくみんながそれぞれ自分で考えて人助けやボランティアを行っている。そして、ハクアちゃんはその筆頭。
ハクアちゃんは自由な性格故に一人でのびのびと活動する方が好きな人である。一時期正実にいたこともあったらしいけど、その性格もあってすぐに辞めてしまったらしい。
お手伝いとかお願いしたら普通にしてくれるから優しい人ではあるんだけど、どこで何をしているのかわからないってときが結構ある。
「そういえば自警部の権限、ミソラちゃんに移ったんだって?」
「うん、ティーパーティーが入れ替えになったから、そのタイミングで」
実は今まで特別自警部は一応ティーパーティーの管理下にあった。
管理下にあったと言っても、自警部という独立した団体を公認する上で、本当に独立させても問題ないのか、お試し期間の間だけ保険として残されていた権限らしい。
つまり、その権限が私に移ったということは事実上正式にティーパーティーの管轄を離れ独立した団体になったということ。と言っても、この権限が私に移ったとして出来るようになったことといえば新しい子を自警部に迎え入れることが出来るようになったことくらい。
同じ独立した団体としてシスターフッドがいるけど、あそこまでティーパーティーと対等な立ち位置で発言が出来るというわけじゃない。
新しい子を入れられるようになったけど、部活動として新しい子を募集する気はない。元々がグループとして活動するというより似た道を歩む個人が集まったグループみたいな感じだから必要ないかなって。
もちろん、きっかけがあれば入れてあげることはすると思うけど、私が大々的に募集することはない。つまりは、権限が私に移ったとして、自警部としての活動はほぼ何も変わらないのだ。
そう言えば、さっきさり気なく話したけど、ティーパーティーも同じタイミングで変わったらしい。
新しい人が確か……桐藤ナギサさん、聖園ミカさん、百合園セイアさんの3人だったかな。どんな人達なんだろう?
「団体活動ってあんまり好きじゃないけど、ミソラちゃんなら安心できるよ〜!」
「そうかな?」
「うんうん、だってミソラちゃんって私と同じタイプの人間でしょ?」
確かに、部活動のお手伝いとか、色んなことを学んでみたいからって始めたことだし、感情を学んでいくうちに好きな人達が喜んでくれることも嬉しいって思うようにもなった。それを続けていくうちにいつの間にか自警部の仲間が出来て、色んな人に頼りにされるようになって……。でも、私がやってきたことは一貫して好きなことを、やりたいことをやっただけ。そういう意味では私もハクアちゃんと同じ自由な人間なのかもしれない。
「だから、私たちものびのびと活動できる。ね、ルーちゃん?」
ルーちゃんの背中を優しく撫でながらハクアちゃんはルーちゃんに語りかける。ハクアちゃんからの問いにルーちゃんは同意するかのように鳴き声を上げた。
気がつけば、私たちの周りには軽く20を超える小鳥たちが群がっていた。
ハクアちゃんといるときは大体こんな感じ。
ハクアちゃんにそれだけ鳥に好かれる魅力があるのか、気がついた時には多くの鳥たちに囲まれている。たまに、野生の大きな鳥もやってくるけど、ハクアちゃんはその子もまるで自分のペットかのように手懐けて遊んであげている。こんな芸当は私にはできない。
でも、私のところにも小鳥たちは集まってくれてるし、私のことも仲間だと思ってくれてるなら、小鳥たちにとって安心できる場所であるなら嬉しいな。
「さて、みんなご飯の時間だよ〜!」
時計を見ればいつの間にか12時を過ぎ、ハクアちゃんはポケットから小鳥用の餌を取り出しては近くに撒いていった。それを見た小鳥たちは一斉に餌が撒かれた場所に群がり、その小さな身体で、小さな嘴で啄んでいく。
「かわいいね」
「でしょ? この子達は凄いんだよ。こんな小さな身体で、このか弱い身体で広い世界を羽ばたいてる」
確かに凄い。
この小さな身体で私たちよりも広く世界を見ている。その羽に傷の一つでも付けば飛べなくなってしまう程に繊細なのに、この大空を飛び回れる力強さがある。
「ミソラちゃんもご飯あげてみる?」
ハクアちゃんはそう言って餌をこちらに差し出してきた。
私は頷いて受け取ると、餌を掌に乗せて小鳥たちに近づけてみた。すると、何羽もの小鳥が私の手の上に器用に乗っかり、掌の上の餌を啄んでいく。啄む度に肌に触れる嘴の感触は私に擽ったさを感じさせる。
うん、かわいい。ハクアちゃんがこの子達を好きになる気持ちがわかる気がする。
「さて、みんなのご飯も終わったことだし、私たちもご飯食べてちょっといいところに行かない?」
「いいところ?」
「うん! 私の大好きなところに連れて行ってあげる!」
大好きなところ、どんなところなんだろう? また、新しいものが知れるのかな。
そう思うと僅かに胸が高鳴る。
私とハクアちゃんが立ち上がると、バタバタと羽を大きく羽ばたかせながら小鳥たちが空高く飛び上がる。その様子はまるで空に舞い上がる花びらのようにだった。
「ミソラちゃん、大丈夫?」
「大丈夫、伊達に自警部で走り回ってない」
「あはは! さっすが!」
昼ご飯も食べ終わり、現在は山登りの最中。食後の運動にしては少し重い気もするけど、ハクアちゃんの好きなものがこの山の上にあるんだって。
それにしても中々見れない光景を、体験を現在進行系でしている。辺りには何羽もの小鳥が飛んでいて、私達についてくるように動いている。そして、ルーちゃんは私達が走ってるにも関わらず、器用にもハクアちゃんの頭の上で羽を休めのんびりとしている。なんであれで落ちないんだろう。
「そろそろ歩こっか、この辺りは足場が悪くなってるし足を滑らせたら大変だからね」
「うん、そうだね」
大分上まで走ってきたところ、いつの間にか上り坂であることを除けば走りやすかった道も悪くなってきて、横幅も狭くなってきていた。確かに足を滑らせて落ちたりでもしたら無事では済まなさそう。
足を止め、歩きだす。走るのをやめた途端、周りを飛んでいた小鳥たちも休むかのように私達の肩や頭に乗る。ハクアちゃんは両手を広げながら楽しそうに歩き、広げた腕にも小鳥たちが止まっている。あれ、腕痛くならないのかな。
「さて、ついたよ!」
「……すごい」
ハクアちゃんに連れられ、たどり着いた山頂。そこから見る景色は絶景と呼ぶ他なかった。
視界全体に広がる大空、その大空を照らす光り輝く太陽、自らの肌を撫でるように吹く心地のいい風、大空の下には広い街並み、まるで自らが空を飛んでいるのだと錯覚してしまうほどの広い空の景色が広がっていた。
「私、この景色が好きなんだ。この広い大空を見てると、私は自由なんだって、嫌なことも全部吹き飛んじゃう」
「うん、わかる気がする」
なんて言えばいいのかわからないけど、この空を見てると頭を空っぽにできる。辛いことも、嫌なことも全部忘れて、それほどまでにこの爽快な空に目を惹かれる。
「ありがとう、ハクアちゃん。ここに連れてきてくれて」
「ううん、私が連れていきたいって思ったから連れてきたんだよ」
「今度、みんなで見に来たいな」
「みんなって……自警部のみんな?」
「うん」
首を傾げながら聞いてくるハクアちゃんの問いに頷いて返す。
「それも、いいかもね。自警部のみんな優しいから」
「うん、きっとみんな喜ぶ」
そんな話をしながら私達は日が沈むまで広い大空の下で話し合った。
今回は少し短めですがハクアちゃんのメモロビみたいなやつです。
ハクアちゃんは何にも縛られない自由人という意味ではゲヘナ寄りの考え方とも言えますが、自分が楽しみたいから周りも楽しませたい考えで自警部してるのでとてもいいこです。
あと小鳥のようにふんわりもふもふしてます。
もふもふしてあげてください(?)
こっちも感想評価くれればモチベあがっちゃいます